【完全型心房中隔欠損症】心内修復術予定の7歳女性 | ゴードン・ヘンダーソン・看護計画の解説

小児
  1. 事例の要約
    1. 基本情報
    2. 病名
    3. 既往歴と治療状況
    4. 入院から現在までの情報
    5. バイタルサイン
    6. 食事と嚥下状態
    7. 排泄
    8. 睡眠
    9. 視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
    10. 動作状況
    11. 内服中の薬
    12. 検査データ
    13. 今後の治療方針と医師の指示
    14. 本人と家族の想いと言動
  2. 疾患の解説
    1. 疾患名
    2. 疾患の概要
    3. 病態生理
    4. 主な症状
    5. 診断方法
    6. 治療方法
    7. 予後
    8. 看護のポイント
  3. ゴードンのアセスメント
    1. このパターンのポイント
    2. どんなことを書けばよいか
    3. このパターンのポイント
    4. どんなことを書けばよいか
    5. このパターンのポイント
    6. どんなことを書けばよいか
    7. このパターンのポイント
    8. どんなことを書けばよいか
    9. このパターンのポイント
    10. どんなことを書けばよいか
    11. このパターンのポイント
    12. どんなことを書けばよいか
    13. このパターンのポイント
    14. どんなことを書けばよいか
    15. このパターンのポイント
    16. どんなことを書けばよいか
    17. このパターンのポイント
    18. どんなことを書けばよいか
    19. このパターンのポイント
    20. どんなことを書けばよいか
    21. このパターンのポイント
    22. どんなことを書けばよいか
  4. ヘンダーソンのアセスメント
    1. このニーズのポイント
    2. どんなことを書けばよいか
    3. このニーズのポイント
    4. どんなことを書けばよいか
    5. このニーズのポイント
    6. どんなことを書けばよいか
    7. このニーズのポイント
    8. どんなことを書けばよいか
    9. このニーズのポイント
    10. どんなことを書けばよいか
    11. このニーズのポイント
    12. どんなことを書けばよいか
    13. このニーズのポイント
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    21. このニーズのポイント
    22. どんなことを書けばよいか
    23. このニーズのポイント
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    26. どんなことを書けばよいか
    27. このニーズのポイント
    28. どんなことを書けばよいか
  5. 看護計画
    1. 看護計画作成のポイント
    2. 看護診断・看護問題の立案
    3. 看護目標の設定
    4. 看護計画の立案
  6. 免責事項

事例の要約

完全型心房中隔欠損症の診断を受け、心内修復術の予定で入院した7歳女児の事例。介入日は10月15日で入院3日目、手術予定日の前日である。

基本情報

A氏、7歳、女児、身長119cm、体重21kg。父(38歳)、母(36歳)、弟(4歳)の4人家族で、キーパーソンは母である。小学校2年生で、学校では活発に活動しているが、体育の授業では疲れやすさを訴えることがある。性格は人懐っこく明るいが、やや内気な面もあり、初対面の人には緊張する傾向がある。感染症はなし、アレルギーは卵白に軽度のアレルギーがあり食事制限をしている。認知力は年齢相応で、会話によるコミュニケーションは良好である。

病名

完全型心房中隔欠損症(secundum型)。10月16日に開心術による心内修復術(パッチ閉鎖術)の予定である。

既往歴と治療状況

1歳6か月児健診で心雑音を指摘され、精密検査の結果、心房中隔欠損症と診断された。欠損孔の大きさは約15mmで、当初は自然閉鎖の可能性を考慮し経過観察となっていた。しかし5歳時の心エコー検査で欠損孔の縮小傾向が認められず、右心系の拡大左右短絡率の増加が確認された。6歳時には軽度の肺高血圧症も認められ、今後の成長や心機能への影響を考慮し、7歳での手術が推奨された。これまで特に内服治療は行っておらず、年2回の定期受診で経過観察を継続していた。

入院から現在までの情報

10月13日に手術目的で小児循環器科に入院した。入院時は運動時の息切れ易疲労感を主訴としており、母によると「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」とのことであった。入院後は術前検査として心電図、心エコー、胸部レントゲン、血液検査が実施された。10月14日には心臓カテーテル検査が全身麻酔下で施行され、肺動脈圧や短絡率の詳細な評価が行われた。検査後は問題なく経過し、同日夕方には歩行も可能となった。本人は入院や手術に対して不安を示しており、「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」と訴えることがある。母は付き添い入院をしており、父と弟は面会時間に訪れている。10月15日には麻酔科診察と術前オリエンテーションが実施され、プレパレーションとして絵本やパンフレットを用いた手術の説明が行われた。看護師が手術室や集中治療室の見学を提案したが、本人は「怖い」と拒否し、母と一緒に写真を見ながら説明を受けることを選択した。現在は明日の手術に向けて、21時以降は絶飲食の指示が出ており、点滴ルートは確保されていない。

バイタルサイン

来院時のバイタルサインは、体温36.8℃、血圧98/62mmHg、脈拍92回/分(整)、呼吸数22回/分、SpO2 96%(room air)であった。現在(10月15日17時)のバイタルサインは、体温36.5℃、血圧102/64mmHg、脈拍88回/分(整)、呼吸数20回/分、SpO2 97%(room air)であり、安定している。軽度の運動負荷では脈拍が110回/分程度まで上昇し、SpO2は94%まで低下するが、休息により速やかに回復する。

食事と嚥下状態

入院前は普通食を摂取しており、食事摂取量は良好で偏食はほとんどない。ただし卵白アレルギーがあるため、卵を含む食品は除去している。嚥下機能は正常で、誤嚥のリスクはない。食事は1日3回規則正しく摂取しており、間食は適度に取っている。入院後も小児食(卵除去食)を提供され、摂取量は8割程度である。母によると「病院のご飯は少し苦手みたい」とのことで、好きなおかずは完食するが、苦手なものは残すことがある。喫煙と飲酒の経験はない。

排泄

入院前の排泄状況は自立しており、排尿は日中5〜6回、夜間は0〜1回である。排便は1日1回、普通便であり、便秘や下痢の傾向はない。入院後も排泄パターンに大きな変化はなく、トイレでの排泄が自立している。カテーテル検査後は一時的に安静が必要であったが、尿器を使用して排泄することができた。下剤の使用はない。

睡眠

入院前の睡眠時間は21時から6時半頃までで、約9時間半の睡眠を取っている。睡眠の質は良好で、中途覚醒や早朝覚醒はほとんどない。入院後は環境の変化や手術への不安から、入眠に時間がかかることがあり、「眠れない」と訴える日もあった。母の付き添いにより安心感は得られているが、23時頃まで起きていることもある。夜間の睡眠時間は約7〜8時間で、やや不足気味である。眠剤等の使用はない。

視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰

視力は両眼ともに1.0で、矯正は不要である。聴力も正常で、日常会話に支障はない。知覚は正常で、痛みや温度感覚の異常はない。コミュニケーション能力は年齢相応で、自分の気持ちや症状を言葉で表現することができる。ただし、初対面の医療者には緊張して口数が少なくなることがある。母や担当看護師とは良好な関係を築いており、笑顔で話すことができる。信仰は特にない。

動作状況

歩行、移乗、排尿、排泄、入浴、衣類の着脱はすべて自立している。ADLは年齢相応で、日常生活に介助は不要である。ただし、運動耐容能はやや低下しており、体育の授業や長時間の歩行では疲労感が強く出現する。階段昇降は可能であるが、数階分上ると息切れを訴える。転倒歴はなく、バランス感覚や運動機能に問題はない。

内服中の薬

現在、定期的に内服している薬はない。

検査データ

検査項目入院時(10/13)最新(10/15)基準値
WBC6800 /μL7200 /μL4000-9000
RBC4.52 ×10⁶/μL4.48 ×10⁶/μL4.00-5.50
Hb13.2 g/dL13.0 g/dL11.5-15.0
Ht39.8 %39.2 %35.0-45.0
PLT28.5 ×10⁴/μL27.8 ×10⁴/μL15.0-35.0
TP7.1 g/dL7.0 g/dL6.5-8.0
Alb4.3 g/dL4.2 g/dL3.8-5.0
AST28 U/L26 U/L10-40
ALT18 U/L16 U/L5-35
BUN12 mg/dL13 mg/dL8-20
Cr0.42 mg/dL0.40 mg/dL0.30-0.70
Na140 mEq/L139 mEq/L135-145
K4.2 mEq/L4.0 mEq/L3.5-5.0
Cl104 mEq/L103 mEq/L98-108
CRP0.08 mg/dL0.06 mg/dL<0.30
BNP82 pg/mL<18.4

服薬管理は不要である。BNPの軽度上昇は心房中隔欠損症による容量負荷を反映しているが、臨床的に許容範囲内である。

今後の治療方針と医師の指示

10月16日8時30分に手術室入室予定で、開心術による心内修復術(パッチ閉鎖術)を施行する。手術時間は約4〜5時間を予定しており、術後は小児集中治療室(PICU)に入室し、人工呼吸器管理と循環動態の管理を行う。術後1〜2日で人工呼吸器から離脱し、状態が安定すれば術後3〜4日で一般病棟に転棟する予定である。術前の指示として、10月15日21時以降は絶飲食、手術当日朝は前投薬(ミダゾラムシロップ)を内服し、点滴ルート確保は手術室で実施する。術前の清潔ケアとして、10月15日夜に入浴または清拭を実施し、手術当日朝は臍処置うがいを行う。母の付き添いは手術室入室まで可能で、面会は術後PICUで短時間可能となる予定である。

本人と家族の想いと言動

本人は「手術は痛いの?」「いつおうちに帰れるの?」と繰り返し尋ねており、手術や入院に対する不安が強い様子である。プレパレーション時には「頑張る」と言うものの、表情は硬く緊張している。「ママと一緒がいい」「弟に会いたい」との発言もあり、家族と離れることへの不安も感じられる。一方で、「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」と前向きな発言もあり、手術の必要性について一定の理解を示している。母は「この子のためだとわかっていても、やっぱり不安で仕方ない」「小さい体にメスを入れるのは辛い」と涙ぐみながら話すことがある。しかし、「先生たちを信じて、娘も頑張るって言ってるから親も頑張らないと」と前向きに捉えようとしている。父は「仕事の都合で付き添えないのが申し訳ない」「妻と娘を支えたい」と話し、面会時には娘を励まし、明るく接している。弟は「お姉ちゃん早く帰ってきて」と言いながらも、入院中の姉のために絵を描いてプレゼントするなど、家族全体で手術を乗り越えようとする姿勢が見られる。


疾患の解説

疾患名

心房中隔欠損症(ASD: Atrial Septal Defect)

疾患の概要

心房中隔欠損症は、心臓の右心房と左心房を隔てる壁(心房中隔)に孔が開いている先天性心疾患です。本来、出生後は心房中隔によって右心房と左心房は完全に分離されていますが、この疾患では孔が残存しているため、血液が左心房から右心房へ流れ込む状態になります。

病態生理

正常な心臓では、全身から戻ってきた静脈血は右心房→右心室→肺動脈→肺へと流れ、酸素化された血液は肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身へと流れます。

心房中隔欠損症では、左心房の圧力が右心房より高いため、酸素化された血液の一部が左心房から右心房へ流れ込みます(左右短絡)。これにより以下のような影響が生じます。

  • 右心系への容量負荷:右心房、右心室に過剰な血液が流れ込み、拡大する
  • 肺血流量の増加:肺循環に過剰な血流が流れる
  • 肺高血圧症のリスク:長期間放置すると肺血管に負担がかかり、肺高血圧症を引き起こす可能性がある

欠損孔が大きいほど短絡血流量が多くなり、症状も強く現れます。A氏の場合、欠損孔は約15mmで、右心系の拡大と左右短絡率の増加が確認されており、6歳時には軽度の肺高血圧症も認められています。

主な症状

小児期は無症状のことも多く、学校健診などで心雑音を指摘されて発見されることが一般的です。欠損孔が大きい場合や年齢が上がると以下のような症状が現れます。

  • 易疲労感:少しの運動ですぐに疲れる
  • 運動時の息切れ:階段昇降や運動時に呼吸が苦しくなる
  • 呼吸器感染症にかかりやすい:肺血流増加により感染リスクが高まる
  • 体重増加不良(乳幼児期):エネルギー消費が増加するため

A氏の場合、運動時の息切れと易疲労感が主訴であり、「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という状況が見られています。

診断方法

  • 心雑音の聴診:胸骨左縁第2-3肋間で収縮期雑音が聴取される
  • 心電図:右軸偏位、不完全右脚ブロックなどが見られる
  • 胸部X線:心拡大(特に右心系)、肺血管陰影の増強
  • 心エコー検査:欠損孔の位置、大きさ、短絡血流の評価が可能。最も重要な検査
  • 心臓カテーテル検査:肺動脈圧、短絡率の詳細な評価を行う。手術適応の判断に用いる

A氏は1歳6か月児健診で心雑音を指摘され、精密検査の結果、心房中隔欠損症と診断されました。10月14日には心臓カテーテル検査が実施されています。

治療方法

保存的治療(経過観察)

欠損孔が小さく(5mm以下)、無症状の場合は経過観察となることがあります。自然閉鎖の可能性もありますが、通常は生後1年以内に閉鎖しない場合、自然閉鎮は期待できません。A氏も当初は自然閉鎖の可能性を考慮し経過観察となっていましたが、5歳時の検査で縮小傾向が認められませんでした。

外科的治療

欠損孔が大きい場合や、右心系の拡大、肺高血圧症が認められる場合は手術適応となります。

開心術によるパッチ閉鎖術

  • 人工心肺を用いた開心術で、胸骨正中切開により心臓にアプローチする
  • 自己心膜または人工パッチを用いて欠損孔を閉鎖する
  • A氏に予定されている治療方法

カテーテル治療

  • 足の付け根の血管からカテーテルを挿入し、閉鎖栓(デバイス)で欠損孔を塞ぐ
  • 低侵襲だが、欠損孔の位置や大きさによっては適応とならない

A氏の場合、欠損孔の大きさが約15mmであり、右心系の拡大と肺高血圧症が認められたため、7歳での開心術によるパッチ閉鎖術が推奨され、10月16日に実施予定となっています。

予後

手術による心内修復後の予後は一般的に良好です。術後は以下のような経過が期待できます。

  • 循環動態の正常化:左右短絡が解消され、右心系への負担が軽減される
  • 症状の改善:易疲労感や息切れが軽減し、運動耐容能が向上する
  • 肺高血圧症の改善:早期に手術を行えば、肺高血圧症も改善する
  • 正常な成長発達:身体活動の制限がなくなり、健康な生活が可能となる

A氏の「たくさん走れるようになる?」という期待は、手術により実現される可能性が高いといえます。

術後の注意点

  • 定期的な受診:術後も定期的な心エコー検査などでフォローアップが必要
  • 感染性心内膜炎の予防:術後6か月間は歯科処置前などに抗生剤の予防投与が推奨される
  • 活動制限の段階的解除:医師の指示に従い、段階的に活動を拡大していく
  • 将来の妊娠・出産:女性の場合、手術後は通常、妊娠・出産が可能となる

適切な時期に手術を受けることで、将来にわたって正常な心機能を維持し、制限のない生活を送ることができます。

看護のポイント

術前の観察とケア

  • バイタルサインの観察:特に呼吸数、SpO2、脈拍に注目し、運動時の変化を観察する
  • 活動耐容能の評価:易疲労感や息切れの程度を把握し、過度な運動負荷を避ける
  • 不安への対応:特に小児の場合、発達段階に応じたプレパレーションを行い、手術への不安を軽減する
  • 感染予防:術前の清潔ケアを徹底し、呼吸器感染症の予防に努める

術後の観察とケア

  • 循環動態の観察:バイタルサイン、SpO2、尿量、末梢循環の観察を頻回に行う
  • 呼吸管理:人工呼吸器からの離脱後は、深呼吸や咳嗽を促し、無気肺や肺合併症を予防する
  • 創部管理:感染徴候の観察、清潔保持、疼痛管理を行う
  • 早期離床の促進:医師の指示に従い、段階的にリハビリテーションを進める
  • 家族への支援:術後の経過や起こりうる合併症について説明し、家族の不安を軽減する

退院に向けた指導

  • 活動制限の段階的解除:医師の指示に基づき、どの時期からどの程度の活動が可能か具体的に説明する
  • 定期受診の重要性:術後のフォローアップの必要性を理解してもらう
  • 感染予防:手洗いの励行、歯科処置前の抗生剤予防投与について指導する

ゴードンのアセスメント

このパターンのポイント

健康知覚-健康管理パターンでは、患者とその家族が疾患や治療をどのように理解し、受け止めているかを評価します。特に小児の場合、発達段階に応じた理解度と、家族の受け止め方の両面から捉えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
  • 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
  • 現在の健康状態や症状の認識
  • これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
  • 疾患が日常生活に与えている影響の認識
  • 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)

疾患の発見から現在までの健康管理の経過

A氏の心房中隔欠損症は、1歳6か月児健診で心雑音を指摘されたことがきっかけで発見されました。その後、年2回の定期受診で経過観察を継続してきたという経過があります。この6年間の定期的な受診は、家族が医療者の指示を守り、継続的に健康管理に取り組んできたことを示しており、術後の通院や生活指導においても協力が期待できる重要な情報となります。

当初は自然閉鎖の可能性を考慮されていましたが、5歳時の検査で欠損孔の縮小が認められず、6歳時には軽度の肺高血圧症も確認されました。このような段階的な経過の中で、手術の必要性が明らかになっていったことは、家族にとって徐々に現実を受け止める時間があったことを意味しており、急な手術決定と比べて心理的準備が進んでいる可能性を考慮する必要があります。

本人の健康状態の認識と手術への理解

7歳という年齢のA氏は、自分の体調の変化を「疲れやすい」という形で認識しています。母親の「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という観察から、A氏自身も日常生活の中で他の友達との違いを感じている可能性があり、この体験が手術の必要性を受け入れる土台となっているかもしれません。

プレパレーション時の「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」という発言は、7歳なりに手術の目的を理解しようとしている様子を示しており、発達段階に応じた説明と確認を繰り返すことで、さらに理解を深められる可能性があります。一方で「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」という訴えは、手術に対する不安と恐怖が混在していることを表しており、理解と感情は別物であるという視点でアセスメントすることが重要です。

家族の疾患理解と受容のプロセス

母親の「この子のためだとわかっていても、やっぱり不安で仕方ない」「小さい体にメスを入れるのは辛い」という言葉には、手術の必要性を理解しながらも、感情的に受け入れることの難しさが現れています。これは親として自然な感情であり、同時に娘の病状を深く理解していることの表れでもあるため、この両価的な感情に寄り添う関わりが必要となります。

しかし、「先生たちを信じて、娘も頑張るって言ってるから親も頑張らないと」という発言からは、医療者への信頼と前向きに取り組もうとする姿勢も読み取れます。父親も「妻と娘を支えたい」と話し、家族全体で手術を乗り越えようとする姿勢が見られることから、家族の協力体制を活かした術前・術後の支援計画を立てることができるでしょう。

健康リスク因子の把握

A氏には卵白アレルギーがあり、食事制限を継続しています。これは入院中の食事提供や術後の栄養管理において重要な情報であり、家族がこれまで適切に食事管理を行ってきたことは、退院後の生活指導においても自己管理能力が期待できることを示唆しています。

また、現在まで特に内服治療を必要としていなかったこと、他の重大な既往歴がないことは、手術におけるリスク評価において重要な情報となり、周術期管理において有利な条件として捉えることができます。感染症の既往がないことも、術後の感染予防計画を立てる上で参考になる情報です。

アセスメントの視点

A氏と家族の健康知覚-健康管理パターンを評価する際は、小児期の発達段階に応じた理解と、長期にわたる経過観察の中で形成された家族の疾患認識の両面から捉えることが大切です。

A氏は7歳なりに自分の体調と手術の意味を理解しようとしており、家族は医療者への信頼を持ちながらも自然な不安を抱えています。このような理解度と受容の段階を把握することで、術前・術後の心理的支援や説明の方法を個別化することができます。また、これまでの定期受診の継続や適切な食事管理から、家族の健康管理能力は高いと評価でき、術後の生活指導においても協力が期待できる強みとして、看護計画に活かしていくことが重要です。

ケアの方向性

このパターンから導かれる看護ケアの方向性として、以下の点に着目してみるとよいでしょう。

A氏に対しては、7歳の理解力に合わせたプレパレーションの継続が必要です。絵本や写真などの視覚教材を用いながら、手術の流れや術後の経過について繰り返し説明し、A氏のペースで理解を深められるよう支援します。また、「痛いのは嫌だ」という訴えに対しては、痛みのコントロール方法があることを伝え、不安の軽減を図ることが大切です。

家族に対しては、医療者への信頼関係を基盤としながら、不安や心配を表出できる場を提供することが重要です。母親の両価的な感情を受け止め、「不安に思うのは当然のこと」と保証しながら、手術に関する正確な情報を提供し続けます。父親や弟も含めた家族全体のサポート体制を活かし、面会時間の調整や付き添いの継続など、家族の希望に沿った環境調整を行います。

また、卵白アレルギーの情報を確実に引き継ぐために、多職種間での情報共有を徹底し、術後の栄養管理においても安全な食事提供ができる体制を整えます。これまでの良好な健康管理行動を評価し、術後の生活指導では家族の自己管理能力を信頼しながら、必要な情報を段階的に提供していく方針が適切でしょう。

このパターンのポイント

栄養-代謝パターンでは、患者の栄養状態と代謝機能を総合的に評価します。食事摂取状況だけでなく、疾患が栄養状態に与える影響、成長発達段階における栄養の必要性、そして治療に伴う栄養管理の変化について多角的に考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 食事と水分の摂取量と摂取方法
  • 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
  • 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
  • 嚥下機能・口腔内の状態
  • 嘔吐・吐気の有無
  • 皮膚の状態、褥瘡の有無
  • 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)

成長期における栄養状態の評価

A氏は7歳の女児で、身長119cm、体重21kgです。この数値から成長曲線上の位置を確認し、同年齢の標準的な発育と比較することが重要になります。心房中隔欠損症による血行動態の変化は、成長や発達にエネルギーを必要とする小児期において、栄養の利用効率や必要量に影響を与える可能性があります。易疲労感や運動時の息切れといった症状は、エネルギー消費と摂取のバランスを考える上で重要な情報となるでしょう。

血液データでは、Hb 13.0 g/dL、Ht 39.2%、RBC 4.48×10⁶/μLと、いずれも小児の基準値内に保たれています。また、TP 7.0 g/dL、Alb 4.2 g/dLという値は、現時点での栄養状態が良好であることを示しており、これまでの家庭での栄養管理が適切に行われてきたことが読み取れます。

食事摂取状況とアレルギー管理

入院前は普通食を摂取しており、食事摂取量は良好で偏食はほとんどないという情報があります。これはバランスの取れた食習慣が確立されていることを示す重要な点です。ただし、卵白に軽度のアレルギーがあり、卵を含む食品は除去しているという情報には注意が必要です。アレルギー管理が適切に行われていることは評価できますが、手術前後の栄養管理においても、このアレルギー情報を正確に引き継ぎ、安全な食事提供を継続する必要があります。

入院後の食事摂取量が8割程度であり、母の「病院のご飯は少し苦手みたい」という発言は、環境変化や不安が食欲に影響を与えている可能性を示唆しています。好きなおかずは完食するが苦手なものは残すという行動は、7歳という発達段階では自然な反応ですが、術前の栄養状態を維持する観点からは、どのような工夫で摂取量を確保できるか考える必要があるでしょう。

嚥下機能と水分管理

嚥下機能は正常で誤嚥のリスクはないという情報は、術後の経口摂取再開を考える上で重要な基盤となります。小児の場合、全身麻酔や人工呼吸器管理後の嚥下機能の回復を慎重に評価する必要がありますが、もともとの機能が良好であることは予後を考える上でポジティブな要素といえます。

手術前日21時以降の絶飲食という指示が出されていますが、7歳の小児にとって長時間の絶飲食は、空腹感や口渇感による不快感、不安の増強につながる可能性があります。なぜ食べられないのかという理解を促しながら、絶飲食時間中の精神的なケアも含めて考えることが大切です。

術前後の栄養管理の視点

現在は点滴ルートが確保されていませんが、手術当日には点滴による水分・電解質管理が開始されます。Na 139 mEq/L、K 4.0 mEq/Lと電解質バランスは良好に保たれており、術前の状態は安定していると評価できます。

術後は、侵襲による代謝の亢進や異化作用の促進により、栄養必要量が増加することが予想されます。また、開心術後は循環動態の安定化を図りながら、段階的に経口摂取を再開していく必要があります。現在の良好な栄養状態を術後も維持・回復させるために、どのようなタイミングで、どのような形態の食事から開始するかという計画的な視点が求められるでしょう。

アセスメントの視点

A氏の栄養-代謝パターンは、現時点では概ね良好な状態にあります。血液データからも栄養状態の維持が確認でき、家庭での食事管理が適切に行われてきたことが窺えます。ただし、入院環境への適応や手術への不安が食欲に影響を与えている可能性があり、術前の栄養状態を最適に保つための環境調整や精神的支援が必要です。

卵白アレルギーへの対応が継続的に必要であることや、7歳という成長期にあることを踏まえると、術後の栄養管理では、単に栄養を補給するだけでなく、成長発達を支える栄養という視点を持つことが重要になります。また、心疾患による循環動態の負荷が軽減されることで、術後は栄養の利用効率が改善し、活動性や成長にポジティブな変化が期待できるという長期的な見通しも持っておくとよいでしょう。

ケアの方向性

術前は、絶飲食までの時間に好みの食事を提供し、十分な栄養摂取を促すとともに、絶飲食の必要性を本人が理解できるよう、発達段階に応じた説明を行うことが大切です。術後は、循環動態の安定を確認しながら段階的に経口摂取を再開し、卵白アレルギーに配慮した食事を提供します。

また、入院中の食事摂取量や嗜好を観察し、環境調整や食事内容の工夫を通じて、十分な栄養摂取を支援することが求められます。母や家族と協力しながら、A氏が安心して食事を摂取できる環境を整え、術後の回復を栄養面から支えていく視点を持つことが重要です。

このパターンのポイント

排泄パターンでは、排尿・排便の状態だけでなく、それらを支える腎機能や消化機能、活動性との関連、そして疾患や治療が排泄に与える影響を評価します。術前後で排泄パターンがどのように変化する可能性があるか、また自立している排泄が手術によってどのような影響を受けるかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

排泄パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 排便と排尿の回数・量・性状
  • 下剤やカテーテル使用の有無
  • In-outバランス
  • 排泄に関連した食事・水分摂取状況
  • 安静度、活動量
  • 腹部の状態(腹部膨満、腸蠕動音など)
  • 腎機能を示す血液データ(BUN、Cr、GFRなど)

入院前の排泄パターンの自立性

A氏は入院前、排尿が日中5〜6回、夜間0〜1回、排便は1日1回普通便であり、排泄パターンが規則的に確立されていることがわかります。7歳の小児として、排泄の自立が年齢相応に達成されており、便秘や下痢の傾向もないという情報は、消化機能が良好であることを示しています。

この規則的な排泄パターンの背景には、食事摂取量が良好で偏食がほとんどないこと、活動量が一定程度保たれていることなどが関連していると考えられます。入院後も排泄パターンに大きな変化がなく、トイレでの排泄が自立しているという点は、入院環境への適応が比較的スムーズに進んでいることを示す重要な情報といえるでしょう。

腎機能と水分バランス

血液データでは、BUN 13 mg/dL、Cr 0.40 mg/dLと、いずれも基準値内に保たれています。これは腎機能が良好に維持されていることを示しており、心房中隔欠損症による循環動態の変化が、現時点では腎臓への負担として顕在化していないことが読み取れます。

心疾患を持つ患者では、心拍出量の変化や体循環と肺循環のバランスが腎血流に影響を与える可能性があります。手術による心内修復が成功すれば、循環動態の改善とともに腎血流も安定し、術後の腎機能の維持にも良い影響が期待できます。この点を踏まえて、術前後の尿量や腎機能データの変化を注意深く観察する視点が必要になるでしょう。

術前後の排泄管理の変化

カテーテル検査後は一時的に安静が必要であったため、尿器を使用して排泄することができたという情報があります。これは、A氏が環境や方法の変化に対して柔軟に適応できる能力を持っていることを示しています。この経験は、術後に尿道カテーテルが挿入される可能性がある場合の準備としても参考になります。

開心術後は、循環動態の管理のため尿道カテーテルが挿入され、尿量の厳密なモニタリングが行われることが予想されます。自立していた排泄が一時的に制限されることは、7歳の小児にとって身体的・心理的な負担となる可能性があります。プレパレーションの中で、カテーテルについての説明がどの程度行われているか、本人がどのように受け止めているかを確認しておくことも大切です。

術後の排泄パターンの回復

術後は、麻酔の影響や安静による活動量の低下、食事摂取の中断などにより、排泄パターンが一時的に変化することが予想されます。特に排便に関しては、術後の腸蠕動の回復を確認しながら、便秘の予防や早期発見に努める必要があります。

現在は下剤の使用がなく、自然な排便リズムが保たれていますが、術後は状況に応じて緩下剤の使用や腹部マッサージなどの介入が必要になる可能性があります。また、経口摂取が再開されるタイミングと排便パターンの回復との関連を観察し、水分摂取や食物繊維の摂取を促していく視点も重要になるでしょう。

アセスメントの視点

A氏の排泄パターンは、現時点では自立しており規則的に確立されている状態にあります。腎機能も良好に保たれており、心疾患による明らかな影響は認められません。入院後も排泄パターンに大きな変化がなく、環境の変化に適応できていることは、術後の回復過程においてもポジティブな要素となります。

しかし、開心術という大きな侵襲により、術後は排泄パターンが一時的に変化することが予想されます。尿道カテーテルの挿入による排尿の自立性の喪失、麻酔や安静による腸蠕動の低下、絶飲食から経口摂取再開への移行など、複数の要因が排泄に影響を与える可能性を考慮する必要があります。

ケアの方向性

術前は、現在の良好な排泄パターンを維持するとともに、術後の排泄管理の変化について、A氏の理解度に応じた説明を行うことが大切です。特に尿道カテーテルについては、なぜ必要なのか、いつまで使用するのかを丁寧に説明し、不安を軽減することが求められます。

術後は、尿量の観察を通じて腎機能と循環動態を評価し、カテーテル抜去後は速やかに自立した排泄が再開できるよう支援します。また、腸蠕動の回復を確認しながら排便状況を観察し、必要に応じて緩下剤の使用や腹部マッサージなどの介入を行い、術前の規則的な排泄パターンへの回復を促していく視点が重要です。

このパターンのポイント

活動-運動パターンでは、日常生活動作の自立度と運動耐容能を評価します。特に心疾患を持つ小児の場合、疾患が活動性や成長発達にどのような影響を与えているか、そして手術によってどのような改善が期待できるかを多角的に考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

活動-運動パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • ADLの状況、運動機能
  • 安静度、移動/移乗方法
  • バイタルサイン、呼吸機能
  • 運動歴、職業、住居環境
  • 活動耐性に関連する血液データ(RBC、Hb、Ht、CRPなど)
  • 転倒転落のリスク

ADLの自立性と運動機能

A氏は歩行、移乗、排泄、入浴、衣類の着脱がすべて自立しており、ADLは年齢相応に確立されていることがわかります。これは7歳の小児として正常な発達を遂げていることを示す重要な情報です。転倒歴がなく、バランス感覚や運動機能に問題がないという点も、基本的な運動能力が保たれていることを示しています。

日常生活に介助が不要であることは、術後のリハビリテーションや回復過程においてもポジティブな要素となります。もともと持っている運動機能や自立性を基盤として、術後は段階的に活動を拡大していくことが可能になるでしょう。

運動耐容能の低下とその影響

一方で、運動耐容能にはやや低下が認められます。体育の授業や長時間の歩行で疲労感が強く出現し、母の「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という発言は、心房中隔欠損症による血行動態の変化が活動性に影響を与えていることを示しています。

階段昇降は可能であるが数階分上ると息切れを訴えるという情報も、運動負荷時の心肺機能の限界を表しています。入院時の主訴である「運動時の息切れと易疲労感」は、欠損孔を通じた左右短絡による右心系への容量負荷、そして肺循環への過剰な血流が、運動時の酸素供給能力を制限していることを示唆しているといえるでしょう。

バイタルサインからみる循環動態

現在のバイタルサインは安定しており、安静時のSpO2は97%と良好に保たれています。しかし、軽度の運動負荷では脈拍が88回/分から110回/分程度まで上昇し、SpO2は97%から94%まで低下するという情報があります。休息により速やかに回復するとはいえ、この変化は運動時の心肺予備能の低下を反映していると考えられます。

脈拍の上昇は、運動負荷に対する心拍出量の増加で代償しようとする生理的反応です。しかし、心房中隔欠損により効率的な血液循環が妨げられているため、より多くの心拍数で補わなければならない状態にあるといえます。この点を理解すると、手術による心内修復が、循環効率の改善と運動耐容能の向上にどのようにつながるかが見えてくるでしょう。

血液データと活動耐性の関連

RBC 4.48×10⁶/μL、Hb 13.0 g/dL、Ht 39.2%という値は、いずれも基準値内にあり、貧血は認められません。これは酸素運搬能が保たれていることを示しており、運動耐容能の低下が貧血によるものではなく、心疾患による循環動態の問題であることを裏付けています。

CRP 0.06 mg/dLと炎症反応も認められず、感染症などによる全身状態の悪化はありません。BNP 82 pg/mLという値は軽度の上昇を示していますが、これは心房中隔欠損症による容量負荷を反映したものと考えられます。このように、血液データからも心疾患が活動性に与えている影響を読み取ることができます。

学校生活と社会的活動への影響

小学校2年生で学校では活発に活動しているという情報がありますが、体育の授業で疲れやすさを訴えることがあるという点には注意が必要です。同年齢の友達と同じように走ったり遊んだりすることが難しい状況は、A氏の自己効力感や社会的な活動参加に影響を与えている可能性があります。

「たくさん走れるようになる?」という本人の発言は、手術によって友達と同じように活動できるようになることへの期待を表しています。運動制限がある生活から、より自由に活動できる生活へと変化することは、A氏の今後の成長や社会性の発達にとって大きな意味を持つでしょう。

アセスメントの視点

A氏の活動-運動パターンは、ADLは自立しているものの、運動耐容能に明らかな低下が認められる状態にあります。これは心房中隔欠損症による血行動態の変化が、日常生活や学校生活における活動性に影響を与えていることを示しています。

バイタルサインや血液データからも、心疾患が循環機能に与えている影響が読み取れます。しかし、基本的な運動機能やADLは保たれており、貧血や感染症などの合併症も認められません。この点は、手術による心内修復後の回復を考える上で重要な基盤となります。

手術によって心内修復が完了すれば、左右短絡が解消され、循環動態が正常化することで、運動耐容能の改善が期待できます。術後のリハビリテーションを通じて、段階的に活動を拡大し、友達と同じように走ったり遊んだりできる状態を目指すことが、A氏の成長発達を支える上で重要な目標となるでしょう。

ケアの方向性

術前は、現在の活動レベルを維持しながら、過度な運動負荷を避け、手術に向けて良好な全身状態を保つことが大切です。術後は、循環動態の安定を確認しながら、早期離床を促し、段階的にリハビリテーションを進めていきます。

PICU退室後は、心臓リハビリテーションプログラムに沿って、歩行や階段昇降などの日常動作を段階的に拡大し、運動耐容能の回復を促します。また、退院後の学校生活や体育活動の再開についても、医師の指示を確認しながら、段階的な活動拡大の計画を本人や家族と共有し、安全に活動性を高めていく支援が求められます。

このパターンのポイント

睡眠-休息パターンでは、睡眠の量と質、そして休息が十分に取れているかを評価します。特に入院や手術を控えた小児の場合、環境変化や不安が睡眠に与える影響を考慮し、十分な休息が術前後の回復を支える基盤となることを理解することが重要です。

どんなことを書けばよいか

睡眠-休息パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 睡眠時間、熟眠感
  • 睡眠導入剤使用の有無
  • 日中/休日の過ごし方
  • 睡眠を妨げる要因(痛み、不安、環境など)

入院前の睡眠パターン

入院前のA氏は、21時から6時半頃までの約9時間半の睡眠を取っており、睡眠の質も良好で、中途覚醒や早朝覚醒はほとんどなかったという情報があります。これは7歳の小児として十分な睡眠時間が確保されており、規則的な生活リズムが確立されていることを示しています。

学童期の子どもにとって、適切な睡眠時間は成長ホルモンの分泌や心身の発達、日中の活動性や学習能力に大きく影響します。入院前に良好な睡眠習慣が確立されていたことは、これまでの家庭での生活管理が適切に行われてきたことを示す重要な情報といえるでしょう。

入院後の睡眠パターンの変化

入院後は環境の変化や手術への不安から、入眠に時間がかかることがあり、「眠れない」と訴える日もあったという情報があります。23時頃まで起きていることもあり、夜間の睡眠時間は約7〜8時間でやや不足気味という状態です。入院前と比較すると、睡眠時間が1〜2時間程度短縮していることがわかります。

この変化は、慣れない病院環境、周囲の音や光、同室患者の存在、そして何より手術への不安など、複数の要因が複合的に影響していると考えられます。母の付き添いにより安心感は得られているものの、完全には入院環境に適応できていない状況が読み取れます。

手術前日の睡眠の重要性

手術を翌日に控えた現在、十分な睡眠を取ることは術前の身体的・精神的準備として非常に重要です。睡眠不足は免疫機能の低下や心理的ストレスの増大につながり、術後の回復過程にも影響を与える可能性があります。

しかし、手術への不安が高まっている時期に、「早く寝なさい」と促すだけでは効果的ではないでしょう。A氏が「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」と訴えていることからも、不安や恐怖が睡眠を妨げる大きな要因となっていることが窺えます。この不安にどのように対処するかが、睡眠の質を改善する鍵となります。

母の付き添いと安心感

母が付き添い入院をしており、これによって安心感は得られているという情報は重要です。7歳の小児にとって、特に不安が高い状況下では、親の存在が最も大きな安心材料となります。母がそばにいることで、完全に睡眠が取れなくなっているわけではなく、一定の睡眠時間は確保できている点は評価できます。

ただし、母自身も娘の手術を前に不安を抱えており、「この子のためだとわかっていても、やっぱり不安で仕方ない」と涙ぐむこともあります。母の不安がA氏に伝わり、相互に影響し合っている可能性も考慮する必要があるでしょう。母の精神的支援も含めて、家族全体の休息を考える視点が大切です。

睡眠導入剤の使用について

現在、眠剤等の使用はないという情報があります。小児に対する睡眠導入剤の使用は慎重に判断する必要がありますが、手術前日に十分な睡眠が取れない場合、医師と相談の上、必要に応じて薬剤の使用を検討することも選択肢の一つとなります。

ただし、薬剤に頼る前に、環境調整や精神的支援、リラクゼーション技法など、非薬物的なアプローチで睡眠を促す方法を優先することが望ましいでしょう。A氏の場合、不安の軽減が睡眠改善の最も重要なポイントになると考えられます。

アセスメントの視点

A氏の睡眠-休息パターンは、入院前は良好に確立されていたものの、入院後は環境変化と手術への不安により、睡眠時間がやや短縮し、入眠困難が生じている状態にあります。母の付き添いにより一定の安心感は得られていますが、手術前日を控えた現在、十分な休息が取れるよう支援することが重要です。

睡眠不足は、術前の身体的・精神的準備に影響を与えるだけでなく、術後の回復過程にも影響する可能性があります。A氏の不安を軽減し、安心して眠れる環境を整えることが、看護の重要な役割となるでしょう。

また、術後はPICUでの管理となり、人工呼吸器や各種モニター、頻回な観察などにより、睡眠が断片的になることが予想されます。術前に十分な休息を取ることは、この術後の睡眠不足を補う意味でも重要といえます。

ケアの方向性

術前は、A氏の不安に寄り添い、手術について理解できる範囲で丁寧に説明し、「頑張ったらたくさん走れるようになる」といった前向きなイメージを共有することが大切です。プレパレーションで使用した絵本やパンフレットを見直したり、母と一緒に過ごす時間を大切にしたりすることで、安心感を高めることができます。

環境面では、照明や音の調整、室温の管理など、できる限り快適な睡眠環境を整えます。また、就寝前のリラクゼーションとして、母による読み聞かせや背中のマッサージなど、A氏が安心できる方法を取り入れることも効果的です。必要に応じて、医師と相談の上、睡眠導入剤の使用も検討します。

術後は、PICUでの環境下でも可能な限り睡眠と休息を確保できるよう、処置やケアのタイミングを調整し、昼夜のリズムを意識した環境調整を行うことが求められます。

このパターンのポイント

認知-知覚パターンでは、認知機能や感覚機能だけでなく、痛みや不快感の認識、不安の程度、コミュニケーション能力を総合的に評価します。特に手術を控えた小児の場合、発達段階に応じた認知能力と、手術や治療に対する理解度、そして表出される不安や恐怖を適切に捉えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

認知-知覚パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 意識レベル、認知機能
  • 聴力、視力
  • 痛みや不快感の有無と程度
  • 不安の有無、表情
  • コミュニケーション能力

認知機能とコミュニケーション能力

A氏の認知力は年齢相応で、会話によるコミュニケーションは良好であるという情報があります。これは7歳の発達段階として、言語能力や理解力が適切に発達していることを示しています。自分の気持ちや症状を言葉で表現することができるという点は、看護師が状態を把握する上で非常に重要な能力です。

「手術は痛いの?」「いつおうちに帰れるの?」「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」といった本人の発言からも、手術について一定の理解を持ち、自分の疑問や期待を言葉で表現できていることがわかります。このコミュニケーション能力の高さは、プレパレーションの効果を高め、術後の経過観察においても重要な情報源となるでしょう。

視力と聴力の状態

視力は両眼ともに1.0で矯正は不要、聴力も正常で日常会話に支障はないという情報があります。感覚機能が正常に保たれていることは、周囲の環境や状況を適切に認識できることを意味しており、プレパレーションや術前オリエンテーションの際の情報提供が効果的に行えることを示しています。

視覚教材や絵本、パンフレットを用いた説明を理解できる能力があり、また看護師や医師の言葉による説明を聞き取ることができるため、発達段階に応じた適切な方法で情報提供を行うことが可能です。

手術に対する理解と不安

プレパレーションとして絵本やパンフレットを用いた手術の説明が行われ、A氏は「頑張る」と言っているものの、表情は硬く緊張しているという情報があります。また、手術室や集中治療室の見学を「怖い」と拒否し、母と一緒に写真を見ながら説明を受けることを選択しています。

これらの反応は、手術に対して一定の理解はあるものの、強い不安や恐怖を感じていることを示しています。7歳という発達段階では、抽象的な説明よりも具体的で視覚的な情報の方が理解しやすい一方で、実際に見ることで恐怖が増す場合もあります。A氏が見学を拒否したことは、自分の感情を適切に表現できているという点では評価できますが、同時に不安が強いことの表れでもあるでしょう。

痛みと不快感への認識

知覚は正常で、痛みや温度感覚の異常はないという情報があります。これは、術後の疼痛管理において、A氏が痛みを適切に感じ取り、表現できることを示しています。「痛いのは嫌だ」という発言は、痛みに対する予期不安を表しており、術前のプレパレーションにおいて、痛みのコントロール方法についても説明する必要性を示唆しています。

7歳の小児は、痛みの程度をフェイススケールやVAS(視覚的アナログスケール)などを用いて表現することができる年齢です。術後の疼痛評価においても、これらのツールを活用しながら、A氏自身が痛みを表現できる環境を整えることが重要になるでしょう。

初対面の人への緊張と信頼関係の構築

性格は人懐っこく明るいが、やや内気な面もあり、初対面の人には緊張する傾向があるという情報があります。また、初対面の医療者には緊張して口数が少なくなることがあるものの、母や担当看護師とは良好な関係を築いており、笑顔で話すことができるという情報もあります。

これは、一度信頼関係が築かれれば、良好なコミュニケーションが可能であることを示しています。術後は新しい医療スタッフとの関わりが増えることが予想されますが、担当看護師や母を介して関係性を築いていくことで、A氏の緊張を和らげることができるでしょう。また、スタッフ間で情報を共有し、継続的な関わりを持つことで、安心感を高めることが大切です。

アセスメントの視点

A氏の認知-知覚パターンは、認知機能、感覚機能、コミュニケーション能力はいずれも年齢相応に発達している状態にあります。手術について一定の理解を示し、自分の気持ちや不安を言葉で表現できることは、看護師が適切に支援を行う上で重要な基盤となります。

一方で、手術に対する強い不安や恐怖が認められ、これが表情の硬さや緊張、睡眠への影響として表れています。7歳という発達段階では、具体的で視覚的な説明が理解を助ける一方で、想像力が豊かなため、恐怖も強く感じやすい時期です。A氏の理解度と不安のバランスを見極めながら、適切な情報提供と精神的支援を行うことが求められます。

また、信頼関係が構築されれば良好なコミュニケーションが可能であることから、術前から術後にかけて、継続的に関わる看護師が中心となり、安心できる関係性を維持していくことが重要といえるでしょう。

ケアの方向性

術前は、A氏の理解度に応じた説明を継続し、「頑張ったらたくさん走れるようになる」といった前向きなイメージを共有することで、不安を軽減します。痛みのコントロール方法についても、わかりやすく説明し、「痛いときは教えてね」と伝えることで、術後の疼痛管理への協力を促します。

術後は、疼痛評価にフェイススケールなどの年齢に応じたツールを使用し、A氏が痛みを適切に表現できるよう支援します。また、PICUから一般病棟への転棟など環境が変わる際には、新しいスタッフを紹介し、担当看護師や母を介して信頼関係を築いていくことが大切です。

A氏の表情や言動から不安や不快感を読み取り、言語化を促しながら、適切なケアを提供していく姿勢が求められます。

このパターンのポイント

自己知覚-自己概念パターンでは、患者が自分自身をどのように捉えているか、疾患や治療が自己イメージにどのような影響を与えているかを評価します。特に学童期の子どもの場合、身体イメージの形成や自己効力感の発達が重要な時期であり、疾患による活動制限がこれらにどのような影響を与えているかを考えることが大切です。

どんなことを書けばよいか

自己知覚-自己概念パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 性格、価値観
  • ボディイメージ
  • 疾患に対する認識、受け止め方
  • 自尊感情
  • 育った文化や周囲の期待

性格と基本的な自己概念

A氏の性格は人懐っこく明るいが、やや内気な面もあるという情報があります。学校では活発に活動しているという記述からは、社交性があり、友達との関わりを大切にしている様子が窺えます。一方で、初対面の人には緊張する傾向があるという点は、慎重さや警戒心を持っている面も示しています。

この性格特性は、A氏が周囲との関係性の中で自分を位置づけ、状況に応じて適応しようとする柔軟性を持っていることを示しています。明るく人懐っこい面は、信頼関係が築かれれば良好なコミュニケーションが可能であることを意味し、内気な面は、新しい環境や人への適応に時間が必要であることを示唆しているでしょう。

疾患による活動制限と自己効力感

「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という母の発言は、A氏が同年齢の友達と同じように活動できないことを示しています。学童期は、運動能力や身体的なスキルを通じて自己効力感を育む重要な時期です。友達と同じように走れない、すぐに疲れてしまうという経験は、「自分は他の子と違う」「できないことがある」という認識につながる可能性があります。

しかし、「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」というA氏の発言からは、手術によって自分が変わることへの期待が読み取れます。これは、現在の制限された状態を受け入れながらも、将来の自分に対して前向きなイメージを持っていることを示す重要な表現といえるでしょう。

手術に対する受け止め方とボディイメージ

「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」という発言は、手術や入院に対する率直な不安や嫌悪感を表しています。7歳という年齢では、身体に侵襲が加わることへの恐怖や、自分の身体がどのように変化するのかという不安を抱くのは自然なことです。

開心術では胸部に手術創ができ、術後は創部の管理や痛みを経験することになります。これらがボディイメージにどのような影響を与えるかは、術後の心理的適応において重要な視点です。7歳という年齢では、まだ外見への強いこだわりは少ない時期ですが、手術創が「特別なもの」として認識される可能性もあります。それを「頑張った証」として肯定的に捉えられるか、それとも否定的に捉えるかは、周囲の反応や説明の仕方にも影響されるでしょう。

自尊感情と周囲からの期待

学校で活発に活動しているという情報は、A氏が学校生活において一定の役割を果たし、友達との関係性の中で自分の居場所を持っていることを示しています。しかし、体育の授業で疲れやすいという制限は、この自尊感情に微妙な影響を与えている可能性があります。

母が「この子のためだとわかっていても、やっぱり不安で仕方ない」「小さい体にメスを入れるのは辛い」と話していることや、弟が「お姉ちゃん早く帰ってきて」と言いながら絵を描いてプレゼントしていることからは、家族から大切にされ、期待されている存在であることが窺えます。この家族からの愛情と期待は、A氏の自尊感情を支える重要な基盤となっているでしょう。

「頑張る」という言葉の意味

プレパレーション時に「頑張る」と言っているという情報がありますが、表情は硬く緊張しています。この「頑張る」という言葉には、様々な意味が込められている可能性があります。本当に自分で決意して言っているのか、周囲の期待に応えようとして言っているのか、あるいは不安を隠すために言っているのか、慎重に見極める必要があるでしょう。

7歳という年齢では、周囲の期待や雰囲気を感じ取り、それに応えようとする力が育ってきます。「頑張らなければいけない」というプレッシャーが、A氏の本来の感情を抑え込んでいないか、不安や恐怖を表現することが「弱い」ことだと感じていないか、という視点も持つ必要があります。

アセスメントの視点

A氏の自己知覚-自己概念パターンは、基本的には明るく社交的で、家族から愛され、友達との関係も良好という肯定的な自己イメージを持っていると考えられます。しかし、疾患による活動制限が、同年齢の友達との比較の中で、自己効力感に微妙な影響を与えている可能性があります。

手術に対しては不安や恐怖を感じながらも、「手術したら元気になる」という前向きな期待も持っています。この二面性をしっかりと捉え、不安を表現することを許容しながら、同時に前向きなイメージを支持していくことが重要です。

また、「頑張る」という言葉の背景にある本当の気持ちを理解し、A氏が自分らしくいられる環境を整えることが、術前後の心理的適応を支える上で大切といえるでしょう。術後は、「たくさん走れるようになる」という期待が実現されていく過程で、自己効力感や肯定的な自己イメージがさらに強化されることが期待できます。

ケアの方向性

術前は、A氏の不安や恐怖を否定せず、「怖いと思うのは当たり前だよ」と受け止めることで、感情を表現しやすい環境を作ります。同時に、「頑張ったらたくさん走れるようになる」という前向きなイメージを共有し、手術が自分を変える良い機会であることを一緒に確認していきます。

術後は、手術創について「頑張った証だね」と肯定的に捉えられるよう支援し、痛みや不快感を我慢させるのではなく、適切に表現し対処することが大切だと伝えます。また、段階的に活動が拡大し、友達と同じように走れるようになっていく過程を一緒に喜び、A氏の自己効力感と肯定的な自己イメージの発達を支援することが求められます。

このパターンのポイント

役割-関係パターンでは、患者が家族や社会の中でどのような役割を担っているか、そして入院や疾患がそれらの役割や関係性にどのような影響を与えているかを評価します。特に学童期の子どもの場合、家族内での役割、学校での友人関係、そして家族のサポート体制が治療への適応や回復に大きく影響します。

どんなことを書けばよいか

役割-関係パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 職業、社会的役割
  • 家族構成、キーパーソン
  • 家族の面会状況、サポート体制
  • 経済状況
  • 人間関係、コミュニケーションパターン

家族構成と家族内での役割

A氏は父(38歳)、母(36歳)、弟(4歳)の4人家族で、キーパーソンは母です。この家族構成から、A氏は長女として、また弟の姉という役割を持っていることがわかります。7歳と4歳という年齢差は、A氏が弟の面倒を見たり、お手本になったりする立場にあることを示唆しています。

「弟に会いたい」というA氏の発言からは、弟との関係が良好であり、離れていることが寂しいと感じていることが読み取れます。また、弟が「お姉ちゃん早く帰ってきて」と言いながら絵を描いてプレゼントするという行動からも、姉弟の絆が強いことが窺えます。入院により、この姉としての役割が一時的に果たせなくなっていることが、A氏の心理的負担の一つとなっている可能性があります。

キーパーソンとしての母の役割

キーパーソンは母であり、付き添い入院をしているという情報があります。これは母が主たる養育者であり、A氏の最も身近な支援者であることを示しています。母がそばにいることで安心感は得られているという記述からも、母の存在がA氏の精神的安定に大きく寄与していることがわかります。

母は「この子のためだとわかっていても、やっぱり不安で仕方ない」「小さい体にメスを入れるのは辛い」と涙ぐみながらも、「先生たちを信じて、娘も頑張るって言ってるから親も頑張らないと」と前向きに捉えようとしています。この母の姿勢は、娘のために自分の不安を乗り越えようとする強い意志を表しており、家族全体が手術を乗り越えようとする力の源となっているでしょう。

父の役割とサポート

父は「仕事の都合で付き添えないのが申し訳ない」「妻と娘を支えたい」と話しており、面会時には娘を励まし、明るく接しているという情報があります。これは、父が経済的な家族の支えとしての役割を果たしながら、限られた時間の中で精神的な支援も行おうとしていることを示しています。

付き添えないことへの申し訳なさという発言からは、父自身も娘の傍にいたいという思いと、仕事という責任との間で葛藤していることが窺えます。しかし、面会時に明るく接することで、A氏を励まし、また母の負担を軽減しようとする姿勢が見られ、家族それぞれが自分の役割を果たそうとしていることがわかります。

学校での役割と友人関係

小学校2年生で、学校では活発に活動しているという情報があります。これは、A氏が学校という社会の中で一定の役割を持ち、友人関係を築いていることを示しています。人懐っこく明るい性格という記述からも、クラスメイトとの関係は良好であると推測できます。

ただし、「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という状況は、友人関係に影響を与えている可能性があります。同じように活動できないことで、仲間外れにされたり、自分から遠慮したりしている場面があるかもしれません。「たくさん走れるようになる?」という発言には、友達と同じように遊びたいという願いが込められているといえるでしょう。

家族のサポート体制と結束

母の付き添い入院、父と弟の面会、弟からのプレゼントといった情報からは、家族全体が協力してA氏を支えようとしている様子が読み取れます。家族の面会状況も良好で、このサポート体制は、A氏が入院や手術というストレス状況に適応する上で非常に重要な資源となっています。

「家族全体で手術を乗り越えようとする姿勢が見られる」という記述は、この家族が危機的状況において団結し、互いに支え合う力を持っていることを示しています。このような家族の結束力は、術後の回復過程や退院後の生活においても、A氏を支える重要な基盤となるでしょう。

コミュニケーションパターンと関係性

母や担当看護師とは良好な関係を築いており、笑顔で話すことができるという情報があります。これは、A氏が信頼関係が築かれた相手とは、オープンにコミュニケーションを取ることができることを示しています。

一方で、初対面の医療者には緊張して口数が少なくなることがあるという点は、関係性の構築に時間が必要であることを意味します。術後は多くの医療スタッフと関わることになりますが、担当看護師や母を介して関係性を築いていくことで、円滑なコミュニケーションが可能になると考えられます。

アセスメントの視点

A氏の役割-関係パターンは、家族から愛され、支えられている環境の中で、長女・姉という役割を持ち、学校でも友人関係を築いている状態にあります。家族のサポート体制は非常に良好で、母の付き添い、父の面会、弟との絆など、複数の支えがあることが、A氏の心理的安定と治療への適応を促進しています。

入院により、家族と離れる時間が生じ、弟の姉としての役割や学校での友人関係が一時的に中断されていることは、A氏にとってストレス要因となっている可能性があります。しかし、家族の結束力と良好な関係性は、このストレスを軽減し、手術を乗り越える力となるでしょう。

術後は、循環動態の改善により活動性が向上することで、友達と同じように遊べるようになり、学校での役割や友人関係にもポジティブな変化が期待できます。また、この手術という経験を家族で乗り越えることで、家族の絆がさらに強まる可能性もあります。

ケアの方向性

術前は、家族の面会時間を大切にし、母だけでなく父や弟との時間も確保できるよう配慮します。弟からのプレゼントなど、家族からの愛情を感じられる機会を大切にし、A氏が家族に支えられていることを実感できる環境を整えます。

術後は、PICUでの面会制限がある中でも、可能な限り家族との接点を持てるよう調整します。一般病棟への転棟後は、弟との面会時間を設けるなど、家族全員が手術を乗り越えたことを共有できる機会を作ることが大切です。

また、退院後の学校復帰に向けて、担任教師や友人との連絡を支援し、A氏が学校という役割の場にスムーズに戻れるよう計画を立てることも重要です。家族全体のサポート体制を活かしながら、A氏の回復と社会復帰を支援していく視点が求められます。

このパターンのポイント

性-生殖パターンでは、患者の性と生殖に関する健康状態や、疾患・治療がこれらに与える影響を評価します。小児の場合、成人とは異なる視点が必要であり、年齢や発達段階に応じた身体的特徴、そして将来の成長発達への影響を考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

性-生殖パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 年齢、家族構成
  • 更年期症状の有無
  • 性・生殖に関する健康問題
  • 疾患や治療が性機能・生殖機能に与える影響

年齢と発達段階の特徴

A氏は7歳の女児であり、学童期前期の発達段階にあります。この年齢では、第二次性徴はまだ始まっておらず、思春期前の状態です。身長119cm、体重21kgという身体的特徴は、この年齢の女児として標準的な範囲内にあると考えられます。

学童期は、性に対する関心が芽生え始める時期ではありますが、まだ生殖機能が発達していない段階です。したがって、このパターンのアセスメントは、成人患者とは異なり、現在の性的発達の状態と、将来の成長発達への影響という視点から考える必要があるでしょう。

疾患が成長発達に与えた影響

心房中隔欠損症による血行動態の変化は、A氏の成長発達に一定の影響を与えてきた可能性があります。易疲労感や運動耐容能の低下は、身体的な活動性だけでなく、成長に必要なエネルギーの配分にも影響を与えている可能性があります。

現在の身長・体重が標準的な範囲内にあることは、これまでの成長が大きく阻害されてこなかったことを示していますが、もし手術を行わずに循環動態の負荷が続いた場合、今後の成長や第二次性徴の発現に影響が出る可能性も考えられます。手術による心内修復は、将来の正常な成長発達を支える上で重要な意味を持つといえるでしょう。

手術が将来の生殖機能に与える影響

開心術による心内修復術は、心臓の構造的な異常を修正する手術であり、生殖器や生殖機能に直接的な影響を与えるものではありません。手術創も胸部正中切開となるため、将来の妊娠・出産に関わる骨盤内臓器には影響しません。

むしろ、心内修復により循環動態が正常化することで、思春期以降の正常な性的発達や、将来の妊娠・出産時の心臓への負担軽減につながる可能性があります。心疾患を持ったまま成人期を迎えた場合、妊娠・出産時の循環負荷が大きなリスクとなることがありますが、小児期に適切な治療を受けることで、このリスクを軽減できる点は重要です。

性に関する発達段階と配慮

7歳という年齢では、まだ性に対する強い意識や羞恥心は発達していない段階です。しかし、身体に対する認識は育ち始めており、自分の身体がどのように見られているかを意識し始める時期でもあります。

手術創が胸部にできることについて、将来的に水着を着る場面や入浴場面でどのように感じるかという視点も、長期的には考慮する必要があります。ただし、現在の発達段階では、これらを詳細に説明する必要はなく、成長に応じて適切な時期に情報提供を行うことが大切です。

家族構成と性別役割

A氏は4人家族の長女であり、弟がいるという家族構成です。この環境の中で、姉としての役割や女児としてのアイデンティティを形成していく過程にあります。母が主たる養育者として付き添い入院をしていることからも、同性の親との関係性の中で、女性としての自己認識を育んでいることが推測されます。

家族内で特定の性別役割が強調されているような情報はありませんが、今後の成長過程で、第二次性徴や思春期を迎える際には、母からのサポートが重要になってくるでしょう。現在の良好な母子関係は、将来の性的発達においても重要な基盤となります。

アセスメントの視点

A氏の性-生殖パターンは、7歳という年齢から、思春期前の正常な発達段階にあります。現在の身長・体重は標準的な範囲内にあり、心疾患による成長への大きな影響は認められていません。

手術による心内修復は、生殖機能に直接的な影響を与えるものではなく、むしろ循環動態の正常化により、今後の正常な成長発達、第二次性徴の発現、そして将来の妊娠・出産時のリスク軽減につながることが期待できます。

小児の性-生殖パターンのアセスメントでは、現在の性的発達の状態だけでなく、疾患や治療が将来の成長発達や生殖機能に与える影響を長期的な視点で捉えることが重要です。A氏の場合、適切な時期に手術を受けることで、将来の正常な発達を支える基盤が整うといえるでしょう。

ケアの方向性

術前後のケアにおいて、性-生殖パターンに関連した特別な介入は必要ありませんが、身体的なケアを提供する際には、7歳という年齢に応じたプライバシーへの配慮を行うことが大切です。清拭や更衣などの場面では、不必要な露出を避け、本人の羞恥心に配慮した対応を心がけます。

長期的には、思春期を迎える時期に、心疾患の既往や手術の経験が、身体イメージや自己概念にどのような影響を与えるかをフォローアップすることが重要です。また、将来の妊娠・出産を考える年齢になった際には、適切な医療情報を提供し、心疾患の既往があっても安全に妊娠・出産が可能であることを伝えていく視点が求められます。

このパターンのポイント

コーピング-ストレス耐性パターンでは、患者がストレスにどのように対処しているか、またストレス状況に対する耐性や適応能力を評価します。特に入院や手術という危機的状況において、患者がどのような対処方法を用いているか、そして家族や周囲のサポートがどのように機能しているかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

コーピング-ストレス耐性パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 入院環境への適応
  • 仕事や生活でのストレス状況
  • ストレス発散方法、対処方法
  • 家族のサポート状況
  • 生活の支えとなるもの

入院環境への適応状況

A氏は10月13日に入院し、現在3日目を迎えています。入院後の排泄パターンに大きな変化がなく、トイレでの排泄が自立しているという点や、カテーテル検査後に尿器を使用して排泄できたという情報からは、環境の変化に対して一定の適応能力を持っていることが読み取れます。

一方で、入院後は環境の変化や手術への不安から入眠に時間がかかり、「眠れない」と訴える日もあるという情報や、食事摂取量が8割程度に低下しているという点は、入院環境への適応に完全には至っていないことを示しています。新しい環境での生活は、7歳の小児にとって大きなストレス要因となっており、日常生活の複数の側面に影響を与えているといえるでしょう。

手術という危機的状況への反応

「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」という発言は、手術や入院に対する率直な不安や回避的な感情を表しています。これらは7歳の小児として自然な反応であり、A氏が自分の感情を言葉で表現できていることは、むしろ健全な対処方法といえます。

一方で、「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」という発言や、プレパレーション時の「頑張る」という言葉からは、不安を感じながらも前向きに捉えようとする姿勢も見られます。この二面性は、A氏が手術という危機的状況に対して、否定的な感情と肯定的な期待の両方を持ちながら、なんとか適応しようとしている過程を示しているでしょう。

ストレス対処方法としての母の存在

母が付き添い入院をしており、これによって安心感は得られているという情報は、A氏にとって母の存在が最も重要なストレス対処資源となっていることを示しています。母がそばにいることで、入院という不慣れな環境でも一定の安心感を保つことができ、不安が表出された際にも即座に対応してもらえることが、A氏のストレス耐性を高めています。

プレパレーション時に手術室や集中治療室の見学を「怖い」と拒否し、母と一緒に写真を見ながら説明を受けることを選択したという行動からも、母との関係性の中で安全を確保しようとする対処パターンが読み取れます。これは依存的ともいえますが、7歳という発達段階では適切な対処方法であり、母という安全基地があることで、徐々に新しい状況に適応していくことが可能になります。

家族全体のサポート体制

父と弟が面会時間に訪れており、弟が絵を描いてプレゼントするという情報からは、家族全体がA氏を支えようとしている様子が窺えます。「弟に会いたい」というA氏の発言は、家族との繋がりを求める気持ちの表れであり、家族の存在がストレス状況における重要な支えとなっていることを示しています。

「家族全体で手術を乗り越えようとする姿勢が見られる」という記述は、この家族が危機的状況において結束し、互いを支え合う力を持っていることを示しています。母だけでなく、父や弟もそれぞれの方法でA氏を支えようとしており、この家族のサポート体制は、A氏のストレス耐性を大きく高める要因となっているでしょう。

表現される感情と抑制される感情

A氏は「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」と不安を表現できている一方で、「頑張る」と言いながら表情は硬く緊張しているという情報があります。これは、感情を表現する部分と抑制する部分が混在している状態を示しています。

7歳という年齢では、周囲の期待を感じ取り、それに応えようとする力が育ってきます。「頑張らなければいけない」というプレッシャーや、母や家族を心配させたくないという思いが、本当の不安や恐怖を完全には表現できない状況を作っている可能性があります。この点を理解し、A氏が感情を抑え込み過ぎていないか、適切に表出できているかを見守ることが重要です。

入院前のストレス状況

小学校では活発に活動しているという情報からは、学校生活においては大きなストレス要因はなかったと推測できます。友達との関係も良好で、家族関係も安定しており、入院前の生活は比較的ストレスの少ない環境であったと考えられます。

ただし、「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という状況は、同年齢の友達と同じように活動できないことへの潜在的なストレスとなっていた可能性があります。このストレスは顕在化していなかったかもしれませんが、「たくさん走れるようになる?」という発言の背景には、このような慢性的なストレス状況があることを考慮する必要があるでしょう。

アセスメントの視点

A氏のコーピング-ストレス耐性パターンは、入院や手術という大きなストレス状況に直面しながら、母や家族のサポートを活用して適応しようとしている状態にあります。不安や恐怖を言葉で表現できることや、母の存在を安全基地としながら新しい環境に徐々に慣れていく姿勢は、年齢相応の対処能力を示しています。

しかし、睡眠や食事への影響が見られることからも、ストレス状況が完全には対処しきれていない状態であることも事実です。手術前日を迎え、不安が最も高まっている時期であることを考慮すると、現在のストレスレベルはA氏の対処能力の限界に近い可能性があります。

家族のサポート体制は非常に良好で、これがA氏の最も重要なストレス対処資源となっています。術後は、手術という大きなストレス要因が終了することで、徐々にストレスレベルが低下し、回復過程とともに適応が進むことが期待できます。

ケアの方向性

術前は、A氏の不安や恐怖を否定せず受け止め、感情を表現することを促します。「頑張る」という言葉の背景にある本当の気持ちを理解し、無理に頑張らせるのではなく、不安を感じることは当たり前だと伝えることが大切です。

母や家族との時間を大切にし、A氏が安心できる環境を維持します。また、担当看護師が継続的に関わることで、母以外にも信頼できる存在を増やし、ストレス対処資源を広げていく支援が求められます。

術後は、手術が終わったことを共に喜び、「よく頑張ったね」と労うことで、達成感と自己効力感を高めます。痛みや不快感を適切に表現し対処できるよう支援し、段階的に回復していく過程を家族と共に見守ることで、A氏と家族全体のストレス耐性を高めていく視点が重要です。

このパターンのポイント

価値-信念パターンでは、患者や家族が大切にしている価値観や信念、人生の目標を評価します。特に医療や治療に関する意思決定がどのような価値観に基づいて行われているか、そして患者や家族が何を支えに困難な状況を乗り越えようとしているかを理解することが重要です。

どんなことを書けばよいか

価値-信念パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 信仰、宗教的背景
  • 意思決定を決める価値観/信念
  • 人生の目標、大切にしていること
  • 医療や治療に対する価値観

宗教的背景と信仰

事例には「信仰は特にない」という情報があります。これは、特定の宗教に基づいた医療行為の制限や、宗教的な儀式の必要性がないことを示しています。治療方針の選択や医療行為において、宗教的な配慮を必要とする場面は少ないと考えられます。

ただし、信仰がないということは、価値観や信念がないということではありません。宗教という形式化された枠組みはなくても、家族が大切にしている考え方や、困難な状況を乗り越えるための精神的な支えは存在するはずです。その支えが何であるかを理解することが、看護において重要な視点となるでしょう。

家族が大切にしている価値観

母が「この子のためだとわかっていても、やっぱり不安で仕方ない」「小さい体にメスを入れるのは辛い」と涙ぐみながらも、「先生たちを信じて、娘も頑張るって言ってるから親も頑張らないと」と前向きに捉えようとしている発言からは、子どもの幸せと健康を最優先する価値観が読み取れます。

また、父が「仕事の都合で付き添えないのが申し訳ない」「妻と娘を支えたい」と話していることからも、家族を大切にし、互いに支え合うことを重視する価値観が窺えます。家族全体で手術を乗り越えようとする姿勢は、この家族が困難な状況において家族の絆を最も重要な支えとしていることを示しているでしょう。

医療や治療に対する信頼と決断

手術という大きな決断を家族が受け入れている背景には、医療者への信頼があることが推測できます。母の「先生たちを信じて」という発言は、医師や医療チームに対する信頼が、不安を乗り越える支えとなっていることを示しています。

6歳時に軽度の肺高血圧症が認められ、7歳での手術が推奨されたという経緯からは、家族が医師の助言を受け入れ、子どもの将来を見据えた最善の選択をしようとする姿勢が読み取れます。今手術を受けることが将来の成長や生活の質の向上につながるという医学的な説明を理解し、決断したことは、この家族が合理的かつ子ども中心の価値観を持っていることを示しているといえるでしょう。

子どもの成長と将来への期待

A氏の「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」という発言や、母の「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という観察からは、A氏が友達と同じように活動できるようになることへの期待が読み取れます。

この期待は、単に身体的な健康を取り戻すことだけでなく、普通の子ども時代を過ごすこと、友達と同じように遊べることへの願いを含んでいます。家族がこの手術を受け入れた背景には、A氏が将来、制限のない生活を送れるようにしたいという価値観があると考えられます。

家族の絆と支え合いの精神

弟が「お姉ちゃん早く帰ってきて」と言いながら絵を描いてプレゼントするという行動や、父が面会時に娘を励まし明るく接している様子からは、家族が互いを思いやり、支え合うことを大切にしていることが窺えます。

危機的状況において家族が団結し、それぞれの役割を果たしながら支え合う姿勢は、この家族が困難な状況こそ家族の絆で乗り越えるという価値観を持っていることを示しています。母だけが付き添い入院をしているのではなく、父は仕事をしながら面会で支え、弟も自分なりの方法で姉を励ますという、家族それぞれの貢献が見られる点は重要です。

医療者との協働関係

プレパレーションを受け入れ、術前オリエンテーションに参加し、A氏が「頑張る」と言っていることからは、医療者との協働的な関係を築こうとする姿勢が読み取れます。手術室や集中治療室の見学を拒否したものの、写真を見ながらの説明は受け入れたという点は、A氏と家族が自分たちのペースで準備を進めることを医療者が尊重し、それを家族も受け入れている関係性を示しています。

この相互尊重の関係は、患者・家族と医療者がパートナーシップを持って治療に臨むという価値観が、双方に共有されていることを示しているでしょう。

アセスメントの視点

A氏と家族の価値-信念パターンは、子どもの健康と幸せを最優先し、家族の絆を支えに困難を乗り越えるという明確な価値観に基づいています。特定の宗教的信仰はありませんが、医療者への信頼、家族の支え合い、子どもの将来への期待が、手術という大きな決断を支える精神的な基盤となっています。

家族全体が協力して手術を乗り越えようとする姿勢は、困難な状況においても家族の結束を保ち、互いを思いやることを大切にする価値観の表れです。また、医療者の助言を受け入れ、子どもの将来を見据えた最善の選択をしようとする姿勢は、合理的かつ子ども中心の意思決定を行う家族の価値観を示しています。

A氏自身も、不安を感じながらも「手術したら元気になる」という前向きな期待を持っており、これは困難を乗り越えた先に良い結果があることへの希望という価値観を育み始めていることを示しているでしょう。

ケアの方向性

看護においては、家族が大切にしている価値観を尊重し、それを支える関わりを持つことが重要です。子どもの幸せを最優先する家族の価値観に沿って、A氏の身体的・精神的な安全と安楽を保障するケアを提供します。

また、家族の絆を支えに困難を乗り越えようとする姿勢を尊重し、家族が一緒に過ごす時間を大切にし、それぞれが自分の役割を果たせるよう支援します。母の付き添い、父や弟の面会を促進し、家族全体で手術を乗り越える体験を共有できる環境を整えることが求められます。

医療者への信頼を維持するために、誠実なコミュニケーションを心がけ、不安や疑問に丁寧に対応します。そして、A氏が「たくさん走れるようになる」という期待を実現できるよう、術後のリハビリテーションや回復過程を家族と共に歩み、子どもの将来への希望を支える関わりを持つことが大切です。


ヘンダーソンのアセスメント

このニーズのポイント

正常に呼吸するというニーズでは、呼吸器系の機能だけでなく、心疾患が呼吸にどのような影響を与えているかを評価します。A氏の場合、心房中隔欠損症による血行動態の変化が、肺循環や酸素化にどのような影響を及ぼしているか、そして術前後でこのニーズがどのように変化するかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

正常に呼吸するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 疾患の簡単な説明
  • 呼吸数、SpO2、肺雑音、呼吸機能、胸部レントゲン
  • 呼吸苦、息切れ、咳、痰
  • 喫煙歴
  • 呼吸に関するアレルギー

心房中隔欠損症が呼吸に与える影響

A氏の疾患は完全型心房中隔欠損症(secundum型)で、欠損孔の大きさは約15mmです。心房中隔に孔が開いていることにより、左心房から右心房へ血液が短絡し、右心系と肺循環に過剰な血流が流れる状態となっています。この容量負荷が、A氏の呼吸機能に影響を与えている重要な病態生理といえるでしょう。

6歳時には軽度の肺高血圧症も認められており、肺血管への負担が増加していることが示唆されます。肺循環への過剰な血流と肺高血圧は、運動時の呼吸効率を低下させ、息切れや易疲労感として症状が現れていると考えられます。この点を理解すると、手術による心内修復が、呼吸機能の改善にどのようにつながるかが見えてくるでしょう。

バイタルサインからみる呼吸状態

現在のバイタルサインでは、呼吸数20回/分、SpO2 97%(room air)と、安静時の呼吸状態は良好に保たれていることがわかります。呼吸数は7歳の小児として正常範囲内にあり、酸素飽和度も十分な値を示しています。これは、安静時においては心房中隔欠損症による影響が顕在化していないことを示しています。

しかし、軽度の運動負荷では脈拍が88回/分から110回/分程度まで上昇し、SpO2は97%から94%まで低下するという情報があります。休息により速やかに回復するとはいえ、この変化は運動時に呼吸・循環系の予備能が低下していることを示す重要な所見です。SpO2の低下は、運動時の酸素需要に対して、肺循環の過剰な血流が効率的な酸素化を妨げている可能性を示唆しています。

呼吸困難症状と日常生活への影響

入院時の主訴は運動時の息切れと易疲労感であり、母の「体育の授業の後はぐったりしている」という発言は、運動負荷時に呼吸困難が生じていることを示しています。階段昇降は可能であるが数階分上ると息切れを訴えるという情報も、運動耐容能の低下が呼吸症状として現れていることを表しています。

安静時には呼吸苦や咳、痰といった症状は認められていませんが、活動時の息切れは、A氏の日常生活や学校生活における活動性を制限する要因となっています。7歳という年齢で、友達と同じように走ったり遊んだりできないことは、単に身体的な問題だけでなく、心理社会的な影響も考慮する必要があるでしょう。

喫煙歴とアレルギー

喫煙と飲酒の経験はないという情報があり、これは7歳の小児として当然のことですが、受動喫煙の有無についても確認しておく視点が重要です。事例には記載がありませんが、家族内に喫煙者がいる場合、受動喫煙が呼吸器系に影響を与える可能性があります。

アレルギーについては、卵白に軽度のアレルギーがあるという情報がありますが、これは食物アレルギーであり、呼吸器系のアレルギー(喘息やアレルギー性鼻炎など)の記載はありません。呼吸機能に影響を与えるアレルギー疾患がないことは、術後の呼吸管理を考える上でポジティブな要素といえます。

術後の呼吸管理と変化

開心術後は人工呼吸器管理が行われ、術後1〜2日で人工呼吸器から離脱する予定です。全身麻酔と人工呼吸器管理により、一時的に呼吸の自立性は失われますが、もともと安静時の呼吸機能が良好であることや、呼吸器系の合併症がないことは、人工呼吸器からの円滑な離脱を予測させる重要な情報です。

手術による心内修復が成功すれば、左右短絡が解消され、肺循環への過剰な血流が改善します。これにより、運動時の呼吸効率が向上し、息切れや易疲労感の軽減が期待できます。「たくさん走れるようになる?」というA氏の期待は、まさにこの呼吸機能の改善によって実現される可能性が高いといえるでしょう。

ニーズの充足状況

A氏の「正常に呼吸する」というニーズは、安静時においては概ね充足されている状態にあります。呼吸数、SpO2ともに正常範囲内にあり、呼吸困難症状も認められません。しかし、運動時には息切れが生じ、SpO2の低下が見られることから、活動時のニーズ充足には制限があるといえます。

この制限は、心房中隔欠損症による肺循環への容量負荷と軽度の肺高血圧が原因であり、A氏の意欲や知識の問題ではなく、病態生理的な要因によるものです。手術により心内修復が行われることで、この阻害要因が解消され、運動時を含めたニーズの充足が期待できます。

術前は現在の良好な呼吸状態を維持することが目標となり、術後は人工呼吸器管理から自発呼吸への移行、そして運動時の呼吸効率の改善という段階的な目標を持つことが重要です。

ケアの方向性

術前は、安静時の良好な呼吸状態を維持するとともに、過度な運動負荷を避け、息切れが生じた際には適切に休息を取るよう支援します。絶飲食期間中は、口渇感による不快感が呼吸に影響を与えないよう、口腔ケアを行い快適性を保つことも大切です。

術後は、人工呼吸器管理下での呼吸状態を観察し、SpO2、呼吸数、呼吸パターン、胸郭の動きなどを評価します。人工呼吸器離脱後は、深呼吸や咳嗽の促進、体位ドレナージなどを通じて、無気肺や肺合併症の予防に努めます。

一般病棟転棟後は、段階的に活動を拡大しながら、運動時の呼吸状態を観察し、循環動態の改善に伴う呼吸効率の向上を評価していきます。A氏が「たくさん走れるようになる」という期待を実現できるよう、呼吸機能の回復を支援し、正常な呼吸を通じて活動性の向上を促していく視点が求められます。

このニーズのポイント

適切に飲食するというニーズでは、栄養と水分の摂取が適切に行われているか、そして疾患や治療がこのニーズにどのような影響を与えているかを評価します。小児の場合、成長発達に必要な栄養が確保されているか、そして手術前後でこのニーズがどのように変化するかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

適切に飲食するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 食事と水分の摂取量と摂取方法
  • 食事に関するアレルギー
  • 身長、体重、BMI、必要栄養量、身体活動レベル
  • 食欲、嚥下機能、口腔内の状態
  • 嘔吐、吐気
  • 血液データ(TP、Alb、Hb、TGなど)

食事摂取状況と栄養状態

入院前のA氏は普通食を摂取しており、食事摂取量は良好で偏食はほとんどないという情報があります。これはバランスの取れた食習慣が確立されていることを示しており、家庭での食事管理が適切に行われてきたことが窺えます。1日3回規則正しく食事を摂取し、間食も適度に取っているという情報からも、食生活のリズムが整っていることがわかります。

身長119cm、体重21kgという体格から、7歳女児としての成長曲線上の位置を確認することが重要です。TP 7.0 g/dL、Alb 4.2 g/dLという血液データは、栄養状態が良好に保たれていることを示しており、これまでの栄養摂取が適切であったことを裏付けています。

入院後の食事摂取の変化

入院後は小児食(卵除去食)を提供され、摂取量は8割程度となっています。母の「病院のご飯は少し苦手みたい」という発言や、好きなおかずは完食するが苦手なものは残すという行動は、入院環境や不安が食欲に影響を与えている可能性を示しています。

8割という摂取量は極端に低いわけではありませんが、手術を控えた時期に十分な栄養を確保する必要性を考えると、摂取量を向上させる工夫が必要かもしれません。7歳という年齢では、食事の好みが明確になっており、環境の変化に敏感な時期でもあります。この点を考慮した食事提供や環境調整が、ニーズの充足を高めるために重要となるでしょう。

卵白アレルギーへの対応

卵白に軽度のアレルギーがあり、食事制限をしているという情報は、安全な食事提供において最も注意すべき点です。アレルギー管理が適切に行われていることは評価できますが、入院中および術後の食事においても、このアレルギー情報を正確に引き継ぎ、誤って卵を含む食品が提供されないよう徹底する必要があります。

卵白アレルギーがあっても、他の食品から十分なタンパク質を摂取できており、栄養状態に問題がないことは、これまでの食事管理が適切であったことを示しています。術後の栄養管理においても、アレルギーに配慮しながら必要な栄養を確保していく視点が求められます。

嚥下機能と水分摂取

嚥下機能は正常で、誤嚥のリスクはないという情報は、術後の経口摂取再開を考える上で非常に重要です。全身麻酔と人工呼吸器管理の後、嚥下機能の回復を慎重に評価する必要がありますが、もともとの機能が良好であることは、経口摂取への移行がスムーズに進むことを予測させます。

手術前日21時以降の絶飲食という指示が出されていますが、7歳の小児にとって長時間の絶飲食は、空腹感や口渇感による不快感を引き起こす可能性があります。なぜ食べられないのか、いつから食べられるようになるのかという説明を、A氏が理解できる言葉で伝えることが大切です。

成長期における栄養の重要性

7歳という成長期にあるA氏にとって、適切な栄養摂取は身体的発達と健康の維持に不可欠です。心房中隔欠損症による易疲労感は、エネルギー消費と摂取のバランスを考える上で重要な情報となります。循環動態の変化により、通常よりも多くのエネルギーを消費している可能性があり、そのために疲れやすさが生じているとも考えられます。

Hb 13.0 g/dL、RBC 4.48×10⁶/μL、Ht 39.2%という値は、いずれも基準値内にあり、貧血は認められません。これは、鉄を含む栄養素が適切に摂取されていることを示しており、成長に必要な栄養が確保されていることを裏付けています。

術後の栄養管理の展望

術後は、侵襲による代謝の亢進や異化作用の促進により、栄養必要量が一時的に増加することが予想されます。絶飲食から水分摂取、流動食、軟食、普通食へと段階的に食事形態を変更していく過程で、A氏の嗜好や消化機能の回復状態を観察しながら進めることが重要です。

開心術による心内修復が成功すれば、循環動態が改善し、易疲労感が軽減されることで、食欲も向上する可能性があります。また、活動性が高まることで、エネルギー消費も増加し、それに見合った栄養摂取が必要になります。成長期の子どもとして、術後の回復と今後の成長を支える栄養管理という視点を持つことが大切でしょう。

ニーズの充足状況

A氏の「適切に飲食する」というニーズは、入院前は良好に充足されていた状態にあります。バランスの取れた食事を規則正しく摂取し、栄養状態も良好に保たれていました。しかし、入院後は環境の変化や不安により、摂取量が8割程度に低下しており、完全には充足されていない状況といえます。

この阻害要因は、病院食への不慣れさ、環境変化によるストレス、手術への不安などが考えられます。A氏自身に食べる意欲はあり、嚥下機能も正常であることから、環境調整や精神的支援により、ニーズの充足度を高めることが可能でしょう。

術後は、絶飲食期間を経て段階的に経口摂取が再開されますが、この過程でニーズは一時的に制限されます。しかし、循環動態の改善により、長期的には食欲の向上と栄養状態の改善が期待できます。

ケアの方向性

術前は、絶飲食までの時間に、A氏が好む食事を提供し、十分な栄養摂取を促すことが大切です。摂取量が低下している場合は、好みの食品を確認し、家族からの差し入れ(アレルギーに配慮した上で)なども検討します。絶飲食の必要性については、A氏が理解できる言葉で説明し、不安を軽減します。

術後は、医師の指示に従い、段階的に経口摂取を再開します。初回の水分摂取時には、嚥下機能を慎重に評価し、誤嚥のリスクがないことを確認します。食事形態の変更は、A氏の消化機能の回復状態や食欲を観察しながら進め、卵白アレルギーに配慮した安全な食事を提供します。

また、母や家族と協力しながら、A氏が好む食品や食べやすい工夫を取り入れ、術後の回復を栄養面から支援していく視点が求められます。成長期の子どもとして、十分な栄養摂取を確保し、健康な発達を促していくことが重要です。

このニーズのポイント

あらゆる排泄経路から排泄するというニーズでは、排尿・排便だけでなく、発汗や呼気など、すべての排泄経路を通じて老廃物が適切に排出されているかを評価します。腎機能や消化機能の状態、そして手術による影響を考慮し、このニーズがどのように変化するかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

あらゆる排泄経路から排泄するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 排便回数と量と性状、排尿回数と量と性状、発汗
  • In-outバランス
  • 排泄に関連した食事、水分摂取状況
  • 麻痺の有無
  • 腹部膨満、腸蠕動音
  • 血液データ(BUN、Cr、GFRなど)

排尿パターンと腎機能

入院前のA氏は、排尿が日中5〜6回、夜間0〜1回という規則的なパターンを示しています。この回数は7歳の小児として正常範囲内にあり、夜間の排尿がほとんどないことは、夜間の睡眠が中断されることなく確保できていることを示しています。入院後も排泄パターンに大きな変化がなく、トイレでの排泄が自立しているという点は、入院環境への適応が比較的良好であることを表しています。

血液データでは、BUN 13 mg/dL、Cr 0.40 mg/dLと、いずれも基準値内に保たれています。これは腎機能が良好に維持されていることを示しており、心房中隔欠損症による循環動態の変化が、現時点では腎血流に大きな影響を与えていないことが読み取れます。腎機能が保たれていることは、術後の水分・電解質管理や利尿剤の使用を考える上で重要な情報となります。

排便パターンと消化機能

排便は1日1回、普通便であり、便秘や下痢の傾向はないという情報があります。この規則的な排便習慣は、消化機能が良好であり、食事摂取や活動量が適切に保たれていることを示しています。下剤の使用がないことも、自然な腸蠕動が維持されていることを裏付けています。

排便パターンが規則的に確立されている背景には、食事摂取量が良好で偏食がほとんどないこと、適度な活動量が保たれていることなどが関連していると考えられます。この良好な排便習慣は、術後の腸蠕動の回復を予測する上でも参考になる情報といえるでしょう。

カテーテル検査後の対応能力

カテーテル検査後は一時的に安静が必要であったため、尿器を使用して排泄することができたという情報があります。これは、A氏が環境や方法の変化に柔軟に適応できる能力を持っていることを示しています。自立した排泄から尿器の使用へという変化に対応できたことは、術後に尿道カテーテルが挿入される可能性がある場合の準備としても参考になります。

7歳という年齢で、自分で排泄できないことや、排泄の様子を見られることへの羞恥心が芽生え始める時期です。尿器の使用を受け入れられたことは、A氏が状況を理解し、必要な処置として受け止められる認知能力を持っていることを示しているでしょう。

水分摂取と排泄のバランス

現在の電解質バランスは、Na 139 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 103 mEq/Lと良好に保たれています。これは、水分摂取と排泄のバランスが適切であることを示しており、脱水や浮腫などの問題がないことを裏付けています。

手術前日21時以降の絶飲食という指示が出されていますが、この期間中の水分バランスをどのように管理するかが重要です。点滴ルートは手術室で確保する予定とのことですが、術前の脱水予防という観点から、絶飲食開始前に十分な水分摂取を促すことも考慮する必要があるでしょう。

発汗と不感蒸泄

発汗に関する具体的な記載はありませんが、体温が36.5℃と正常範囲内にあり、発熱がないことから、過度な発汗による水分喪失はないと考えられます。SpO2が97%と良好に保たれていることから、呼気による不感蒸泄も正常範囲内と推測できます。

ただし、入院後の睡眠時に23時頃まで起きていることがあり、環境温度や寝具の調整が不十分であれば、夜間の発汗が増加する可能性もあります。快適な睡眠環境を整えることは、睡眠の質だけでなく、水分バランスの維持にも関連する視点といえます。

術後の排泄管理の変化

開心術後は、循環動態の管理のため尿道カテーテルが挿入され、尿量の厳密なモニタリングが行われることが予想されます。自立していた排泄が一時的に制限されることは、7歳の小児にとって身体的・心理的な負担となる可能性があります。

術後は麻酔の影響や安静による活動量の低下、食事摂取の中断などにより、排泄パターンが一時的に変化することが予想されます。特に排便に関しては、腸蠕動の回復を確認しながら、便秘の予防や早期発見に努める必要があります。現在は下剤を使用していませんが、術後の状況に応じて緩下剤の使用や腹部マッサージなどの介入が必要になる可能性を考慮しておくとよいでしょう。

ニーズの充足状況

A氏の「あらゆる排泄経路から排泄する」というニーズは、現在良好に充足されている状態にあります。排尿・排便ともに規則的なパターンが確立されており、自立して排泄が行えています。腎機能も良好に保たれ、水分・電解質バランスも適切です。

麻痺はなく、腹部膨満などの消化器症状も認められないことから、ニーズを阻害する要因は現時点では見当たりません。カテーテル検査後に尿器を使用できたことは、A氏が状況の変化に適応できる能力を持っていることを示しています。

しかし、開心術後は尿道カテーテルの挿入により排尿の自立性が一時的に失われ、また麻酔や安静の影響により排便パターンも変化します。この変化を予測し、適切に対応することで、術後も可能な限りニーズを充足させることが重要です。

ケアの方向性

術前は、現在の良好な排泄パターンを維持するとともに、絶飲食開始前に十分な水分摂取を促します。また、術後の排泄管理の変化について、A氏の理解度に応じた説明を行い、尿道カテーテルの必要性や使用期間について丁寧に伝えることが大切です。

術後は、尿道カテーテルによる尿量・性状の観察を通じて、腎機能と循環動態を評価します。In-outバランスを正確に記録し、水分・電解質管理に活用します。カテーテル抜去後は、速やかに自立した排泄が再開できるよう支援し、A氏のプライバシーや羞恥心に配慮した環境を整えます。

排便については、腸蠕動音の聴取や腹部の観察を行い、腸蠕動の回復を確認します。経口摂取が再開された後も排便状況を観察し、必要に応じて緩下剤の使用や水分摂取の促進、腹部マッサージなどを行い、術前の規則的な排便パターンへの回復を支援していくことが求められます。

このニーズのポイント

身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持するというニーズでは、日常生活動作の自立度と運動機能を評価します。A氏の場合、ADLは自立しているものの、心疾患による運動耐容能の低下があり、このニーズが部分的に制限されている状態を理解することが重要です。

どんなことを書けばよいか

身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • ADL、麻痺、骨折の有無
  • ドレーン、点滴の有無
  • 生活習慣、認知機能
  • ADLに関連した呼吸機能
  • 転倒転落のリスク

ADLの自立性と基本的な運動機能

A氏は歩行、移乗、排泄、入浴、衣類の着脱がすべて自立しており、ADLは年齢相応に確立されていることがわかります。これは7歳の小児として正常な発達を遂げており、日常生活において介助を必要としない状態です。麻痺はなく、骨折の既往もないという情報から、基本的な運動機能は良好に保たれているといえます。

転倒歴がなく、バランス感覚や運動機能に問題がないという点も重要です。階段昇降が可能であることは、下肢の筋力やバランス能力が年齢相応に発達していることを示しています。これらの情報は、術後のリハビリテーションや活動の再開を考える上で、ポジティブな基盤となるでしょう。

運動耐容能の低下とその影響

一方で、運動耐容能にはやや低下が認められます。体育の授業や長時間の歩行で疲労感が強く出現し、階段を数階分上ると息切れを訴えるという情報は、心房中隔欠損症による血行動態の変化が、活動性に制限を与えていることを示しています。

母の「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という発言からは、同年齢の友達と同じレベルの運動ができない状況が読み取れます。これは、ADLが自立しているという事実とは別の側面で、このニーズが完全には充足されていないことを示しています。

呼吸循環機能と活動性の関連

軽度の運動負荷でSpO2が97%から94%まで低下し、脈拍が88回/分から110回/分程度まで上昇するという情報は、運動時の心肺予備能の低下を示しています。休息により速やかに回復するとはいえ、この変化は、運動を継続する能力が制限されていることを意味します。

心房中隔欠損症による左右短絡と肺循環への容量負荷が、運動時の効率的な酸素供給を妨げており、その結果として易疲労感や息切れが生じています。この病態生理を理解すると、手術による心内修復が、運動耐容能の改善にどのようにつながるかが見えてくるでしょう。

入院環境での活動状況

現在は点滴ルートが確保されておらず、ドレーン類もないことから、病棟内での移動や活動に制限はない状態です。カテーテル検査後は一時的に安静が必要でしたが、同日夕方には歩行も可能となったという情報は、A氏の回復力の良さを示しています。

入院後も排泄パターンに変化がなく、トイレでの排泄が自立していることや、食事時に座位を保持できていることなども、このニーズが基本的には充足されていることを裏付けています。ただし、手術への不安から活動意欲が低下している可能性も考慮し、過度な安静による廃用症候群を予防する視点も必要でしょう。

術後の活動制限と段階的な拡大

開心術後は、胸部正中切開により創部ができ、ドレーン類や点滴ルート、モニター類が装着されることで、身体の位置を動かすことが一時的に大きく制限されることになります。PICU入室中は人工呼吸器管理下でベッド上安静となり、自力での体位変換も制限されます。

しかし、もともとADLが自立しており、基本的な運動機能が良好であることは、術後の早期離床や活動の段階的な拡大において重要な強みとなります。人工呼吸器離脱後は、座位保持、立位、歩行へと段階的に活動を拡大していくことになりますが、A氏の理解力と協力が、この過程をスムーズに進める鍵となるでしょう。

転倒転落のリスク評価

現在、転倒歴はなく、認知機能も年齢相応であることから、転倒転落のリスクは低いと考えられます。しかし、術後は創部痛や点滴ルート、ドレーン類の存在により、普段通りの動作ができなくなる可能性があります。

また、安静による筋力低下や起立性低血圧なども考慮する必要があります。A氏が7歳という年齢で、術後の制限を完全に理解し、安全に行動できるかという点は、慎重に評価する必要があるでしょう。活動意欲が高まった際に、制限を超えて動こうとする可能性も考慮し、適切な説明と環境整備が重要となります。

ニーズの充足状況

A氏の「身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する」というニーズは、基本的なADLは自立しているものの、運動耐容能の低下により完全には充足されていない状態にあります。日常生活動作は問題なく行えますが、体育の授業や友達との遊びなど、より高い活動レベルでは制限が生じています。

この阻害要因は、心房中隔欠損症による病態生理的な問題であり、A氏の意欲や知識、体力の問題ではありません。むしろ、「たくさん走れるようになる?」という発言からは、より活発に動きたいという意欲があることが窺えます。

手術により心内修復が完了すれば、循環動態が改善し、運動耐容能の向上が期待できます。術後は一時的に活動が大きく制限されますが、段階的なリハビリテーションを経て、術前よりも高い活動レベルを目指すことができるでしょう。

ケアの方向性

術前は、現在の活動レベルを維持しながら、過度な運動負荷を避けるよう指導します。入院中の活動意欲を保つため、病棟内での適度な活動を促しますが、息切れや疲労感が生じた際には休息を取るよう支援します。

術後は、PICUでの体位変換や早期離床を計画的に実施し、創部痛に配慮しながら段階的に活動を拡大していきます。点滴ルートやドレーン類の管理に注意しながら、安全に座位、立位、歩行へと進めていくことが重要です。

一般病棟転棟後は、心臓リハビリテーションプログラムに沿って、歩行距離の延長や階段昇降の練習を行い、運動耐容能の回復を促します。転倒転落のリスクを評価しながら、A氏の理解力と協力を引き出し、安全に活動を拡大していく支援が求められます。退院後の学校生活や体育活動の再開についても、段階的な計画を本人や家族と共有することが大切です。

このニーズのポイント

睡眠と休息をとるというニーズでは、睡眠の量と質、そして十分な休息が取れているかを評価します。入院や手術を控えた小児の場合、環境変化や不安が睡眠に与える影響を考慮し、十分な休息が心身の回復や術前準備の基盤となることを理解することが重要です。

どんなことを書けばよいか

睡眠と休息をとるというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 睡眠時間、パターン
  • 疼痛、掻痒感の有無、安静度
  • 入眠剤の有無
  • 疲労の状態
  • 療養環境への適応状況、ストレス状況

入院前の睡眠パターンと休息

入院前のA氏は、21時から6時半頃までの約9時間半の睡眠を取っており、睡眠の質も良好で、中途覚醒や早朝覚醒はほとんどなかったという情報があります。これは7歳の小児として十分な睡眠時間が確保されており、規則的な生活リズムが確立されていることを示しています。

学童期の子どもにとって、9時間半という睡眠時間は適切であり、成長ホルモンの分泌や心身の発達、日中の活動性や学習能力を支える重要な基盤となっています。入院前に良好な睡眠習慣が確立されていたことは、これまでの家庭での生活管理が適切であったことを示す重要な情報といえるでしょう。

入院後の睡眠の変化と阻害要因

入院後は環境の変化や手術への不安から、入眠に時間がかかることがあり、「眠れない」と訴える日もあったという情報があります。23時頃まで起きていることもあり、夜間の睡眠時間は約7〜8時間でやや不足気味という状態です。入院前と比較すると、睡眠時間が1〜2時間程度短縮していることがわかります。

この変化の背景には、慣れない病院環境、周囲の音や光、同室患者の存在といった環境要因と、「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」という発言からも読み取れる手術への不安や恐怖という心理的要因が複合的に影響していると考えられます。手術前日を迎えた現在、この不安はさらに高まっている可能性があり、睡眠への影響も大きくなっていることが予想されます。

疼痛や身体的不快感の有無

現在、疼痛や掻痒感といった身体的な不快感は認められていません。これは、睡眠を妨げる身体的要因が少ないことを示しています。カテーテル検査後も特に痛みの訴えはなく、バイタルサインも安定していることから、身体的には睡眠に適した状態にあるといえます。

ただし、術後は創部痛や点滴ルート、ドレーン類による不快感が生じることが予想されます。疼痛管理が適切に行われなければ、睡眠の質は大きく低下します。現在、痛みがないことを基準として、術後の疼痛評価を行い、A氏が安心して休息できる状態を維持することが重要になるでしょう。

母の付き添いと安心感

母が付き添い入院をしており、これによって安心感は得られているという情報は、このニーズを支える重要な要素です。7歳の小児にとって、特に不安が高い状況下では、母の存在が最も大きな安心材料となります。母がそばにいることで、完全に睡眠が取れなくなっているわけではなく、一定の睡眠時間は確保できています。

プレパレーション時に手術室や集中治療室の見学を「怖い」と拒否し、母と一緒に写真を見ながら説明を受けることを選択したという行動からも、A氏にとって母との関係性の中で安全を確保することが、ストレス対処の中心的な方法となっていることがわかります。この点は、睡眠と休息を促す上でも活用すべき重要な資源といえるでしょう。

入眠剤の使用と非薬物的アプローチ

現在、眠剤等の使用はないという情報があります。小児に対する睡眠導入剤の使用は慎重に判断する必要がありますが、手術前日に十分な睡眠が取れない場合、医師と相談の上、必要に応じて薬剤の使用を検討することも選択肢となります。

ただし、薬剤に頼る前に、環境調整や精神的支援、リラクゼーション技法など、非薬物的なアプローチを優先することが望ましいでしょう。照明や音の調整、室温管理、母による読み聞かせや背中のマッサージなど、A氏が安心できる方法を取り入れることで、睡眠の質を改善できる可能性があります。

疲労の蓄積と術前準備

睡眠時間が1〜2時間短縮している状態が数日続いていることは、疲労が蓄積している可能性を示唆しています。手術を控えた時期に十分な休息が取れないことは、術前の身体的・精神的準備に影響を与えるだけでなく、術後の回復過程にも影響する可能性があります。

睡眠不足は免疫機能の低下や心理的ストレスの増大につながり、感染のリスクや術後せん妄のリスクを高める可能性もあります。この点を考慮すると、手術前日の夜に十分な睡眠を確保することは、看護の重要な役割といえるでしょう。

ニーズの充足状況

A氏の「睡眠と休息をとる」というニーズは、入院前は良好に充足されていたものの、入院後は環境変化と手術への不安により、十分には充足されていない状態にあります。睡眠時間が1〜2時間短縮し、入眠困難が生じており、「眠れない」という訴えからも、ニーズが阻害されていることが明らかです。

阻害要因は、慣れない病院環境という外的要因と、手術への不安という内的要因が複合的に作用しています。母の付き添いにより一定の安心感は得られていますが、それだけでは十分な睡眠を確保できていない状況です。

術後はPICUでの管理となり、人工呼吸器や各種モニター、頻回な観察などにより、睡眠が断片的になることが予想されます。術前に十分な休息を取ることは、この術後の睡眠不足を補う意味でも重要です。また、循環動態が改善し、易疲労感が軽減されることで、長期的には睡眠の質も向上する可能性があります。

ケアの方向性

術前は、A氏の不安に寄り添い、感情を表現することを促すとともに、手術について前向きなイメージを共有することで、不安を軽減します。プレパレーションで使用した絵本やパンフレットを見直したり、母と一緒に過ごす時間を大切にしたりすることで、安心感を高めることができます。

環境面では、照明や音の調整、室温の管理など、できる限り快適な睡眠環境を整えます。就寝前のリラクゼーションとして、母による読み聞かせや背中のマッサージなど、A氏が安心できる方法を取り入れることも効果的です。これらの非薬物的アプローチで十分な睡眠が得られない場合は、医師と相談の上、睡眠導入剤の使用も検討します。

術後は、PICUでの環境下でも可能な限り睡眠と休息を確保できるよう、処置やケアのタイミングを調整し、昼夜のリズムを意識した環境調整を行います。疼痛管理を適切に行い、身体的な不快感を最小限にすることで、睡眠の質を高めることが求められます。一般病棟転棟後は、規則的な生活リズムの再確立を支援し、術前の良好な睡眠パターンへの回復を促していくことが重要です。

このニーズのポイント

適切な衣類を選び、着脱するというニーズでは、衣類の着脱が自立しているか、そして環境や状況に応じた適切な衣類を選択できているかを評価します。小児の場合、発達段階に応じた自立度と、術前後で衣類の着脱がどのように変化するかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

適切な衣類を選び、着脱するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • ADL、運動機能、認知機能、麻痺の有無、活動意欲
  • 点滴、ルート類の有無
  • 発熱、吐気、倦怠感

衣類の着脱の自立性

A氏は衣類の着脱がすべて自立しており、年齢相応に自分で服を選び、着替えることができる状態にあります。7歳という年齢では、ボタンやファスナーの操作、衣類の前後や裏表の判断など、複雑な動作も習得しており、日常生活において介助を必要としません。

麻痺や運動機能の障害もなく、認知機能も年齢相応であることから、衣類の着脱に関する身体的・認知的な能力は十分に備わっているといえます。この自立性は、入院中も基本的には維持されており、病院での生活においても自分で着替えを行うことができています。

入院環境での衣類の状況

入院中は病衣を着用していると考えられますが、事例には具体的な記載がありません。一般的に、小児病棟では自分の好きなパジャマを着用することが許可されている場合もあり、慣れ親しんだ衣類を身につけることが、環境適応や安心感の向上につながることがあります。

現在は点滴ルートが確保されておらず、ドレーン類もないことから、衣類の着脱に物理的な制限はない状態です。カテーテル検査後も、一時的な安静は必要でしたが、衣類の着脱に支障をきたすような状況ではなかったと推測できます。

発熱や体調不良の有無

現在の体温は36.5℃と正常範囲内にあり、発熱は認められません。吐気や嘔吐の訴えもなく、倦怠感も特に記載されていないことから、体調不良により衣類の着脱が困難になる状況ではないといえます。

ただし、入院後の食事摂取量が8割程度に低下していることや、睡眠時間がやや短縮していることから、疲労が蓄積している可能性はあります。易疲労感は運動時に顕著に現れますが、着替えという日常動作においては、現時点で大きな支障をきたすほどではないと考えられます。

術前の清潔ケアと衣類

術前の指示として、10月15日夜に入浴または清拭を実施することになっており、これに伴い清潔な衣類への着替えが必要となります。7歳のA氏は自分で着替えができる年齢ですが、入浴や清拭の際には、母や看護師のサポートが適宜提供されることで、スムーズに実施できるでしょう。

手術当日朝の臍処置の際にも、衣類の着脱が必要になります。手術着への着替えについては、A氏の理解度に応じて説明を行い、なぜ普段の服ではなく手術着を着るのかを伝えることで、不安を軽減することができます。

術後の衣類の着脱の変化

開心術後は、胸部正中切開により創部ができ、点滴ルート、ドレーン類、モニター類が装着されることで、衣類の着脱が大きく制限されることになります。PICU入室中は病衣の着用となり、自分で着替えることは困難です。看護師による全介助が必要となり、このニーズは一時的に完全に阻害される状態となります。

一般病棟への転棟後も、創部の状態や点滴ルートの有無により、着替えには一定の制限や配慮が必要です。創部痛により腕を上げる動作が困難な場合、前開きの衣類を選択したり、看護師が部分的に介助したりすることが必要になるでしょう。もともと自立していた動作が制限されることは、7歳の小児にとってフラストレーションとなる可能性もあります。

活動意欲と自立への支援

A氏は性格が明るく、活発に活動していることから、自分でできることは自分でしたいという意欲があると推測できます。術後、創部痛や点滴ルートにより着替えが困難になった際も、できる範囲で自分で行いたいという気持ちを持つ可能性があります。

この意欲を尊重しながら、安全に着替えができるよう支援することが重要です。無理をして創部に負担をかけたり、点滴ルートを引っ張ってしまったりすることがないよう、適切な方法を一緒に考え、できる部分は自分で行い、困難な部分は介助を受けるという段階的な自立を促すことが大切でしょう。

ニーズの充足状況

A氏の「適切な衣類を選び、着脱する」というニーズは、現在良好に充足されている状態にあります。衣類の着脱は自立しており、運動機能、認知機能ともに年齢相応に発達しています。点滴ルートやドレーン類もなく、発熱や体調不良もないことから、このニーズを阻害する要因は現時点では認められません。

しかし、開心術後は創部の存在、点滴ルートやドレーン類の装着により、このニーズは大きく制限されることになります。PICU入室中は全介助が必要となり、自立性は一時的に失われます。一般病棟転棟後も、創部痛や活動制限により、完全な自立には時間がかかる可能性があります。

術後の回復過程で、段階的に自立度を高めていくことが重要であり、A氏の意欲を引き出しながら、安全に着替えができるよう支援する必要があります。

ケアの方向性

術前は、現在の自立性を維持し、術前の入浴や清拭の際に清潔な衣類への着替えを支援します。手術当日の手術着への着替えについては、A氏が理解できるよう丁寧に説明し、不安を軽減します。

術後は、PICU入室中は看護師が全介助で衣類の着脱や清拭を行います。創部やドレーン類に配慮しながら、できる限り快適な衣類の状態を保ちます。一般病棟転棟後は、創部の状態や疼痛の程度を評価しながら、段階的に自分でできる部分を増やしていきます。

前開きの衣類を使用したり、着脱の順序を工夫したりすることで、A氏が安全に自分で着替えられるよう支援します。できる部分は自分で行い、困難な部分は介助を受けるという方法を一緒に考え、A氏の自立への意欲を尊重しながら、術前の自立性を回復できるよう段階的に支援していくことが求められます。

このニーズのポイント

体温を生理的範囲内に維持するというニーズでは、体温調節機能が適切に働いているか、そして環境や疾患が体温にどのような影響を与えているかを評価します。術前後の体温管理は感染症の早期発見や全身状態の評価において重要であり、このニーズの充足状況を丁寧に観察することが求められます。

どんなことを書けばよいか

体温を生理的範囲内に維持するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • バイタルサイン
  • 療養環境の温度、湿度、空調
  • 発熱の有無、感染症の有無
  • ADL
  • 血液データ(WBC、CRPなど)

バイタルサインからみる体温の状態

来院時の体温は36.8℃、現在(10月15日17時)の体温は36.5℃と、いずれも正常範囲内に保たれていることがわかります。小児の正常体温は成人よりもやや高めですが、A氏の体温は安定しており、発熱や低体温の徴候は認められません。

体温が安定していることは、感染症がなく、全身状態が良好であることを示す重要な指標です。入院後数日が経過していますが、体温の大きな変動がないことは、入院環境への適応が身体的には良好であることを裏付けているといえるでしょう。

感染症の有無と血液データ

WBC 7200 /μL、CRP 0.06 mg/dLという血液データからも、感染症や炎症反応は認められないことが確認できます。WBCは基準値内にあり、CRPも0.3 mg/dL未満と低値を示しており、体温の安定性を裏付けています。

感染症の既往がないという情報も重要です。術前に感染症がないことは、手術を安全に実施する上で必須の条件であり、術後の感染リスクを低減する要因ともなります。現在の良好な状態を手術まで維持することが、術前管理の重要な目標となるでしょう。

療養環境の温度と湿度

事例には療養環境の温度や湿度に関する具体的な記載はありませんが、10月中旬という時期を考えると、冷暖房の調整が必要な季節といえます。入院後の睡眠状況に「23時頃まで起きていることもある」という記載があり、環境温度が適切でない場合、睡眠の質に影響を与えている可能性も考慮する必要があります。

小児は成人に比べて体温調節機能が未熟であり、環境温度の影響を受けやすい特徴があります。ただし、7歳という年齢では体温調節機能はある程度発達しており、現在の体温が安定していることから、環境温度は概ね適切に保たれていると考えられます。

ADLと活動による体温への影響

A氏のADLは自立しており、病棟内での移動や活動も可能です。カテーテル検査後も同日夕方には歩行が可能となったという情報から、適度な活動が維持されていることが窺えます。活動により体温が上昇することは正常な生理的反応ですが、過度な運動負荷により発熱をきたすような状況は認められていません。

易疲労感があることから、活動量は同年齢の子どもと比較して少ない可能性がありますが、この程度の活動制限は体温調節に大きな影響を与えていないと考えられます。むしろ、過度な運動による体温上昇のリスクが低いという点では、ポジティブな要素ともいえるでしょう。

術前の体温管理の重要性

手術を翌日に控えた現在、体温が正常範囲内にあることは、手術実施の可否を判断する上で重要な条件です。発熱がある場合、感染症の存在や炎症の可能性を示唆し、手術の延期が検討されることもあります。現在、体温が安定していることは、予定通り手術を実施できる状態にあることを示しています。

術前の清潔ケアとして、入浴または清拭が予定されていますが、これらのケアの際にも体温の変動を観察することが重要です。入浴後の体温上昇や、清拭後の体温低下がないかを確認し、快適な状態を保つことが求められます。

術後の体温管理と感染予防

開心術後は、侵襲による炎症反応や感染のリスクにより、体温管理がより重要となります。術後の発熱は、生体反応としての炎症性発熱と、感染症による発熱を鑑別する必要があり、体温の経時的な観察と他のバイタルサインや血液データとの総合的な評価が求められます。

PICU入室中は、環境温度の管理も厳密に行われますが、人工呼吸器管理や鎮静により、A氏自身の体温調節機能が一時的に低下する可能性があります。保温や冷却などの環境調整を適切に行い、体温を生理的範囲内に維持することが重要です。

ニーズの充足状況

A氏の「体温を生理的範囲内に維持する」というニーズは、現在良好に充足されている状態にあります。体温は正常範囲内に安定しており、発熱や低体温の徴候は認められません。感染症もなく、WBCやCRPといった炎症指標も正常範囲内にあります。

7歳という年齢で体温調節機能は概ね発達しており、ADLが自立していることも、このニーズの充足を支えています。療養環境も概ね適切と考えられ、このニーズを阻害する要因は現時点では認められません。

しかし、開心術という大きな侵襲により、術後は体温が変動する可能性があります。炎症反応による発熱、感染症のリスク、環境温度の影響などにより、このニーズは一時的に脅かされる可能性があります。術前の良好な状態を基準として、術後の体温の変化を注意深く観察し、適切に対応することが重要です。

ケアの方向性

術前は、現在の良好な体温状態を維持するため、感染予防対策を継続します。手洗いの励行、清潔な環境の維持、術前の入浴または清拭による皮膚の清潔保持などを通じて、感染のリスクを最小限にします。また、療養環境の温度や湿度を適切に調整し、A氏が快適に過ごせる環境を整えます。

術後は、定期的な体温測定を行い、発熱の有無を観察します。発熱が認められた場合は、他のバイタルサインや血液データ、創部の状態などを総合的に評価し、炎症性発熱か感染症による発熱かを鑑別します。必要に応じて解熱剤の投与や冷罨法を実施し、体温を適切な範囲に保ちます。

PICU入室中は、環境温度の管理を厳密に行い、保温や冷却を適切に実施します。一般病棟転棟後も、創部の感染徴候がないか観察を継続し、手洗いや清潔操作を徹底することで、感染予防に努めます。A氏の体温が安定し、感染のリスクなく回復できるよう、継続的な観察と適切な環境調整を行っていくことが求められます。

このニーズのポイント

身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護するというニーズでは、清潔保持の自立度と皮膚の状態を評価します。手術を控えた時期における清潔ケアは、感染予防の観点から特に重要であり、術前後でこのニーズがどのように変化するかを考えることが求められます。

どんなことを書けばよいか

身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 自宅/療養環境での入浴回数、方法、ADL、麻痺の有無
  • 鼻腔、口腔の保清、爪
  • 尿失禁の有無、便失禁の有無
  • 皮膚の状態、褥瘡の有無

入浴と清潔保持の自立性

A氏は入浴がすべて自立しており、年齢相応に自分で身体を洗い、清潔を保つことができる状態にあります。7歳という年齢では、シャンプーや身体を洗う動作、洗い流すといった一連の行為を一人で行うことができ、日常生活において介助を必要としません。

入院前の入浴回数や習慣についての具体的な記載はありませんが、一般的に7歳の小児は毎日または1日おきに入浴することが多く、家庭での清潔習慣が確立されていると考えられます。麻痺や運動機能の障害もないことから、入浴動作に支障をきたす要因はありません。

術前の清潔ケアと感染予防

術前の指示として、10月15日夜に入浴または清拭を実施することになっています。これは術前の重要な感染予防対策の一つであり、皮膚の細菌数を減少させることで、術後の創部感染のリスクを低減する目的があります。手術当日朝には臍処置とうがいを行うという指示も出されており、清潔保持が徹底されています。

A氏は自分で入浴できる能力がありますが、術前の入浴では、特に手術部位である胸部を含めた全身の清潔保持が重要です。母や看護師のサポートを受けながら、丁寧に身体を洗うことで、感染予防の効果を高めることができるでしょう。

口腔内の清潔と絶飲食期間

嚥下機能は正常で、誤嚥のリスクはないという情報から、口腔内の清潔保持も自立して行えると考えられます。7歳という年齢では、歯磨きやうがいといった口腔ケアを自分で行うことができ、これらの習慣も確立されているでしょう。

手術前日21時以降の絶飲食という指示が出されていますが、この期間中は口渇感が生じ、口腔内の不快感が増す可能性があります。絶飲食中でも口腔ケアは実施可能であり、うがいや口腔内の清拭を行うことで、快適性を保つことができます。手術当日朝のうがいの指示も、この清潔保持と快適性の維持に関連しています。

皮膚の状態と褥瘡のリスク

事例には皮膚の状態に関する具体的な記載はありませんが、ADLが自立しており、活動性が保たれていること、栄養状態が良好であること(Alb 4.2 g/dL、TP 7.0 g/dL)から、皮膚の状態は良好であると推測できます。褥瘡の有無についての記載もなく、転倒歴もないことから、皮膚損傷のリスクは低いと考えられます。

尿失禁や便失禁もなく、排泄は自立していることから、尿や便による皮膚の汚染や刺激のリスクもありません。これらの情報から、現時点では皮膚を保護する必要性は低く、このニーズは良好に充足されている状態といえるでしょう。

爪の状態と感染予防

爪の状態についての具体的な記載はありませんが、術前の清潔ケアにおいては、爪の長さや清潔度も確認する必要があります。長い爪や汚れた爪の下には細菌が繁殖しやすく、手術前には短く清潔に整えることが推奨されます。

7歳の小児では、自分で爪を切ることは難しい場合もあるため、母や看護師が爪の状態を確認し、必要に応じて爪切りを行うことが大切です。術前の入浴時に合わせて、爪のケアも実施するとよいでしょう。

術後の清潔保持の変化

開心術後は、胸部正中切開により創部ができ、点滴ルート、ドレーン類が装着されることで、入浴が制限されることになります。PICU入室中は全身清拭が中心となり、看護師の全介助で清潔保持が行われます。自分で身体を洗うことができていたA氏にとって、この変化は自立性の喪失を意味し、ストレスとなる可能性があります。

創部の感染予防のため、清潔操作を徹底することが重要です。また、安静により発汗が減少する一方で、術後の代謝亢進や発熱により発汗が増加する可能性もあります。清拭の頻度や方法を、A氏の状態に応じて調整し、快適な清潔状態を保つことが求められます。

一般病棟転棟後も、創部の状態によっては入浴が制限され、シャワー浴や清拭での対応となる場合があります。段階的に自分でできる部分を増やしていき、創部に負担をかけない方法で清潔保持ができるよう支援することが重要です。

ニーズの充足状況

A氏の「身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する」というニーズは、現在良好に充足されている状態にあります。入浴は自立しており、口腔ケアも自分で行えます。皮膚の状態も良好で、褥瘡や皮膚損傷のリスクは低く、尿失禁や便失禁もありません。

術前の清潔ケアとして、入浴または清拭、臍処置、うがいが予定されており、手術に向けた感染予防対策が適切に計画されています。A氏の協力と理解が得られれば、これらのケアはスムーズに実施できるでしょう。

しかし、開心術後は創部の存在、点滴ルートやドレーン類の装着により、このニーズは大きく制限されることになります。自立していた清潔保持が全介助となり、入浴も制限されます。術後の感染リスクを考慮すると、清潔保持はより重要性を増しますが、同時に自立性が失われることへの配慮も必要です。

ケアの方向性

術前は、10月15日夜の入浴または清拭を丁寧に実施し、特に胸部を含めた全身の清潔を保ちます。母や看護師がサポートしながら、A氏が安心して清潔ケアを受けられるよう配慮します。爪の状態も確認し、必要に応じて爪切りを行います。手術当日朝の臍処置とうがいも確実に実施し、感染予防を徹底します。

術後は、PICU入室中は看護師が全介助で全身清拭を行います。創部の観察と清潔保持を最優先としながら、A氏の快適性にも配慮します。清拭の際には、プライバシーや羞恥心に配慮し、できる限り短時間で効率的に実施します。

一般病棟転棟後は、創部の状態を評価しながら、段階的に清拭からシャワー浴、入浴へと移行していきます。自分でできる部分は自分で行い、困難な部分は介助を受けるという方法を一緒に考え、A氏の自立への意欲を尊重しながら、安全に清潔保持ができるよう支援していくことが求められます。口腔ケアも継続的に実施し、全身の清潔と快適性を保つことが重要です。

このニーズのポイント

環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにするというニーズでは、患者自身の安全確保と感染予防、そして周囲への影響を評価します。小児の場合、発達段階に応じた危険認識能力と、術前後の安全管理がどのように変化するかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにするというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 危険箇所(段差、ルート類)の理解、認知機能
  • 術後せん妄の有無
  • 皮膚損傷の有無
  • 感染予防対策(手洗い、面会制限)
  • 血液データ(WBC、CRPなど)

認知機能と危険認識能力

A氏の認知力は年齢相応で、会話によるコミュニケーションは良好であるという情報があります。7歳という年齢では、基本的な危険を認識し、回避する能力がある程度発達しています。転倒歴がなく、バランス感覚や運動機能に問題がないという点も、環境の危険を適切に認識し、行動できていることを示しています。

ただし、7歳という発達段階では、まだ抽象的な危険や将来的なリスクを完全に理解することは難しい面もあります。術後の点滴ルートやドレーン類の重要性、安静度の制限などについては、具体的でわかりやすい説明が必要となるでしょう。

転倒転落のリスク評価

現在、転倒歴はなく、ADLも自立していることから、転倒転落のリスクは低いと考えられます。病棟内での移動も問題なく行えており、カテーテル検査後も同日夕方には歩行が可能となったという情報から、環境の変化にも適応できる能力があることがわかります。

しかし、入院環境は自宅とは異なり、慣れない場所での移動や、他の患者の物品、医療機器などの存在が転倒のリスクとなる可能性があります。また、睡眠不足や不安により注意力が低下している場合、普段では回避できる危険を見落とす可能性も考慮する必要があります。

感染予防と感染症のリスク

WBC 7200 /μL、CRP 0.06 mg/dLという血液データからは、現時点で感染症や炎症反応は認められないことが確認できます。感染症の既往もなく、術前の状態は良好です。これは、手術を安全に実施する上で重要な条件であり、A氏自身の感染リスクが低いことを示しています。

アレルギーは卵白に軽度のアレルギーがあるという情報がありますが、呼吸器系のアレルギーや重篤なアレルギー反応の既往はなく、安全管理上の大きなリスクとはなっていません。ただし、食事提供時には常にアレルギー情報を確認し、誤って卵を含む食品が提供されないよう徹底する必要があります。

家族の面会と感染対策

父と弟が面会時間に訪れており、母は付き添い入院をしているという情報があります。家族の面会は、A氏の精神的安定にとって重要ですが、同時に感染のリスクも考慮する必要があります。特に術後は免疫力が低下するため、面会者の健康状態の確認や、手洗いなどの感染予防対策を徹底することが重要です。

事例には手洗いや面会制限に関する具体的な記載はありませんが、術前後の感染予防対策として、家族を含めた手洗いの励行、マスクの着用、風邪症状がある場合の面会制限などが必要となります。家族にこれらの重要性を理解してもらい、協力を得ることが求められるでしょう。

皮膚損傷と医療機器関連の危険

現時点では皮膚損傷の記載はなく、褥瘡のリスクも低いと考えられます。ADLが自立しており、活動性も保たれていることから、同一体位での長時間の臥床による皮膚損傷のリスクは低い状態です。

しかし、術後は創部の存在、点滴ルート、ドレーン類、モニター類の装着により、皮膚損傷のリスクが高まります。点滴ルートによる血管外漏出や、ドレーン類の圧迫による皮膚損傷、テープによる皮膚剥離などのリスクを考慮し、適切な固定方法と定期的な観察が必要となります。

術後せん妄のリスク

7歳という年齢では、術後せん妄のリスクは成人と比較して低いとされていますが、全身麻酔や環境の変化、睡眠不足などがリスク因子となる可能性があります。入院後の睡眠時間がやや短縮していることや、手術への不安が強いことは、術後せん妄のリスクを高める可能性があります。

術後せん妄が生じた場合、A氏自身が点滴ルートやドレーン類を抜去してしまったり、転倒したりする危険があります。予防的な視点として、術前の睡眠を確保し、術後は母の存在を活用して見当識を保つ支援を行うことが重要です。

ニーズの充足状況

A氏の「環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする」というニーズは、現在概ね充足されている状態にあります。認知機能は年齢相応で、転倒のリスクも低く、感染症もありません。A氏自身が他人を傷害するリスクも認められず、安全な状態が保たれています。

ただし、入院環境への完全な適応には至っておらず、睡眠不足や不安により注意力が低下している可能性があります。また、手術という大きなイベントを控え、不安が高まっている時期であることを考慮すると、潜在的なリスクは存在するといえます。

術後は、創部の感染リスク、点滴ルートやドレーン類による皮膚損傷のリスク、転倒転落のリスク、術後せん妄のリスクなど、複数の危険因子が増加します。これらのリスクを予測し、適切に予防・管理することが、このニーズの充足を維持する上で重要となります。

ケアの方向性

術前は、現在の良好な状態を維持するため、転倒転落の予防と感染予防を継続します。病棟内の環境整備を行い、動線上の危険を除去します。A氏に対しては、危険な場所や行動について、理解できる言葉で説明し、自分で危険を回避できるよう支援します。

家族に対しては、手洗いの重要性を説明し、面会時の感染予防対策への協力を求めます。術前の入浴や清拭による皮膚の清潔保持も、感染予防の重要な対策として確実に実施します。

術後は、PICU入室中は厳重な観察とモニタリングを行い、点滴ルートやドレーン類の管理を徹底します。皮膚の観察を定期的に行い、圧迫や血管外漏出などの早期発見に努めます。転倒転落のリスクを評価し、ベッド柵の使用や、離床時の付き添いなどを適切に実施します。

術後せん妄の予防として、見当識を保つ支援や、母の面会を促進し、安心できる環境を整えます。一般病棟転棟後も、創部の感染徴候がないか継続的に観察し、手洗いや清潔操作を徹底することで、A氏の安全を守り、他者への感染リスクも最小限にしていくことが求められます。

このニーズのポイント

自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つというニーズでは、患者が自分の気持ちや状態を適切に表現できているか、そして周囲との関係性が良好に保たれているかを評価します。特に手術を控えた小児の場合、不安や恐怖を表出し、支援を得られることが重要です。

どんなことを書けばよいか

自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 表情、言動、性格
  • 家族や医療者との関係性
  • 言語障害、視力、聴力、メガネ、補聴器
  • 認知機能
  • 面会者の来訪の有無

コミュニケーション能力と表現力

A氏の認知力は年齢相応で、会話によるコミュニケーションは良好であるという情報があります。自分の気持ちや症状を言葉で表現することができるという点は、このニーズが基本的に充足されていることを示す重要な情報です。

「手術は痛いの?」「いつおうちに帰れるの?」「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」といった発言からは、A氏が疑問や期待、不安を言葉で適切に表現できていることがわかります。また、「痛いのは嫌だ」「早くおうちに帰りたい」という訴えは、率直に自分の感情を表現できていることを示しています。

視力・聴力と感覚機能

視力は両眼ともに1.0で矯正は不要、聴力も正常で日常会話に支障はないという情報があります。これらの感覚機能が良好であることは、他者からの情報を適切に受け取り、自分の思いを伝えることができる基盤となっています。

メガネや補聴器の使用もなく、言語障害もないことから、コミュニケーションを妨げる身体的な要因はありません。プレパレーションで絵本やパンフレット、写真を見ながら説明を受けることができたのも、これらの感覚機能が良好であることによるものです。

性格と対人関係のパターン

性格は人懐っこく明るいが、やや内気な面もあり、初対面の人には緊張する傾向があるという情報があります。母や担当看護師とは良好な関係を築いており、笑顔で話すことができるという点は、信頼関係が構築されれば良好なコミュニケーションが可能であることを示しています。

一方で、初対面の医療者には緊張して口数が少なくなることがあるという点は、新しい関係性の構築に時間が必要であることを意味します。この特性は、7歳という年齢では自然なことであり、むしろ慎重に相手を見極める力があるとも捉えられます。術後は多くの新しいスタッフと関わることになりますが、担当看護師や母を介して関係性を築いていくことが効果的でしょう。

表情と非言語的コミュニケーション

プレパレーション時に「頑張る」と言っているものの、表情は硬く緊張しているという情報は、言葉と表情にギャップがあることを示しています。このギャップは、A氏が本当の気持ちを完全には言葉にできていない、あるいは周囲の期待に応えようとして「頑張る」と言っている可能性を示唆しています。

看護師は、A氏の言葉だけでなく、表情や態度、行動といった非言語的なメッセージにも注意を払う必要があります。硬い表情、緊張した態度は、言葉では表現されていない不安や恐怖を示しているかもしれません。これらのサインを読み取り、A氏が本当の気持ちを表現しやすい環境を整えることが重要です。

家族との関係性とサポート

母がキーパーソンであり、付き添い入院をしていることは、A氏にとって最も重要なコミュニケーションの相手が常にそばにいることを意味します。母と一緒に過ごす時間の中で、A氏は不安や疑問を表現し、安心感を得ることができています。

父と弟の面会も定期的にあり、「弟に会いたい」というA氏の発言からは、家族との絆が強く、家族とのコミュニケーションが精神的な支えとなっていることがわかります。弟が絵を描いてプレゼントするという行動も、言葉を超えたコミュニケーションの形であり、A氏を励ます力となっているでしょう。

医療者との関係性の構築

担当看護師とは良好な関係を築いており、笑顔で話すことができるという情報は、継続的な関わりの中で信頼関係が形成されていることを示しています。この関係性は、A氏が不安や疑問を表現し、適切な支援を受ける上で非常に重要です。

手術室や集中治療室の見学を「怖い」と拒否したことは、A氏が自分の感情を適切に表現し、自分にとって受け入れられる方法を選択できていることを示しています。看護師がこの選択を尊重し、母と一緒に写真を見ながら説明を受けるという代替案を提供したことで、A氏は安心して情報を受け取ることができました。このように、A氏の表現を受け止め、尊重する関わりが、コミュニケーションを促進しているといえます。

ニーズの充足状況

A氏の「自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つ」というニーズは、概ね充足されている状態にあります。言語能力、認知機能、感覚機能はいずれも良好で、自分の気持ちを言葉で表現することができています。

母や担当看護師との良好な関係性の中で、不安や疑問を表現し、支援を得ることができています。家族とのコミュニケーションも活発であり、精神的な支えとなっています。

ただし、表情と言葉にギャップがあることや、初対面の人には緊張するという特性から、すべての感情を完全に表現できているわけではない可能性があります。特に「頑張る」という言葉の背後にある本当の気持ちを理解し、不安や恐怖を表現することも許容される環境を整えることが重要です。

術後は、人工呼吸器管理により一時的に言語的コミュニケーションが制限されますが、抜管後は再び言葉での表現が可能となります。この一時的な制限についても、術前に説明し、代替的なコミュニケーション方法を準備しておく必要があるでしょう。

ケアの方向性

術前は、A氏の不安や恐怖を受け止め、「怖いと思うのは当たり前だよ」と伝えることで、感情を表現しやすい環境を作ります。「頑張る」という言葉の背後にある本当の気持ちを理解しようと努め、無理に頑張らせるのではなく、A氏のペースで準備を進められるよう支援します。

担当看護師が継続的に関わり、信頼関係を維持することで、A氏が安心して気持ちを表現できる相手を確保します。家族との面会時間を大切にし、母や弟とのコミュニケーションの機会を保障します。

術後は、人工呼吸器管理中は言語的コミュニケーションが制限されるため、表情やジェスチャー、筆談などの代替的な方法を活用します。抜管後は、創部痛や疲労により会話が困難な場合もありますが、A氏の表現を丁寧に聞き取り、適切に対応します。

一般病棟転棟後は、新しいスタッフとの関係性を構築する際に、担当看護師や母を介して紹介し、A氏が安心してコミュニケーションを取れるよう配慮します。回復とともに活動性が向上し、「たくさん走れるようになった」という喜びを共有することで、A氏の自己表現がさらに豊かになることが期待できます。継続的に、A氏の言葉と非言語的なメッセージの両方に注意を払い、本当の気持ちを理解し、適切に支援していくことが求められます。

このニーズのポイント

自分の信仰に従って礼拝するというニーズでは、宗教的信仰の有無だけでなく、患者や家族が大切にしている価値観や信念を理解することが重要です。これらは医療や治療に関する意思決定、困難な状況を乗り越える精神的な支えとして機能します。

どんなことを書けばよいか

自分の信仰に従って礼拝するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 信仰の有無、価値観、信念
  • 信仰による食事、治療法の制限

宗教的信仰の有無

事例には「信仰は特にない」という情報があります。これは、特定の宗教に基づいた医療行為の制限や、宗教的な儀式の必要性がないことを示しています。治療方針の選択や医療行為において、宗教的な配慮を必要とする場面は少ないと考えられます。

輸血や手術などの医療行為に対する宗教的な制限もなく、食事に関しても宗教上の制限はありません。卵白アレルギーによる食事制限はありますが、これは宗教的理由ではなく医学的な理由によるものです。このように、宗教的な観点からの制約がないことは、医療提供においてはスムーズな対応が可能であることを意味します。

家族が大切にしている価値観

特定の宗教的信仰はありませんが、それは価値観や信念がないということではありません。母の「この子のためだとわかっていても、やっぱり不安で仕方ない」「小さい体にメスを入れるのは辛い」という発言や、「先生たちを信じて、娘も頑張るって言ってるから親も頑張らないと」という言葉からは、子どもの幸せと健康を最優先する価値観が読み取れます。

また、父の「妻と娘を支えたい」という発言や、弟が絵を描いてプレゼントするという行動からは、家族の絆を大切にし、互いに支え合うという価値観が窺えます。これらの価値観は、宗教という形式化された枠組みではありませんが、この家族が困難な状況を乗り越えるための重要な精神的支えとなっているといえるでしょう。

医療者への信頼という信念

母の「先生たちを信じて」という発言は、医療者への信頼が、手術という大きな決断を支える信念となっていることを示しています。6歳時に軽度の肺高血圧症が認められ、7歳での手術が推奨されたという経緯を受け入れ、家族が手術を決断した背景には、医療者の専門性への信頼があります。

この信頼関係は、一朝一夕に築かれるものではなく、1歳6か月の健診からの長い経過観察の中で、医師や医療チームとの関係性が形成されてきた結果といえます。定期的な受診を継続し、医師の助言を受け入れてきたことは、医療を信じる姿勢の表れでもあるでしょう。

困難を乗り越える精神的な支え

「家族全体で手術を乗り越えようとする姿勢が見られる」という記述からは、家族の結束力が最も重要な精神的支えとなっていることがわかります。母の付き添い、父の面会、弟の励ましなど、それぞれが自分なりの方法でA氏を支えようとしています。

A氏自身も「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」という発言の中に、困難を乗り越えた先に良い結果があることへの希望を持っていることが窺えます。この希望は、宗教的な信仰ではありませんが、手術という試練を乗り越える原動力となる重要な信念といえるでしょう。

意思決定の基準となる価値観

手術という大きな決断を家族が受け入れた背景には、子どもの将来を見据えた最善の選択をしようとする価値観があります。今手術を受けることが、A氏が将来、制限のない生活を送れるようにするための選択であるという理解は、合理的かつ子ども中心の価値観に基づいています。

「たくさん走れるようになる」という期待は、単に身体的な健康を取り戻すことだけでなく、普通の子ども時代を過ごさせたいという親の願いを含んでいます。友達と同じように遊べること、体育の授業で疲れ果てないこと、これらは子どもらしい生活を送る上で重要な要素であり、それを実現させたいという価値観が、手術という決断を支えているといえます。

ニーズの充足状況

A氏と家族の「自分の信仰に従って礼拝する」というニーズは、宗教的な意味での信仰はないものの、家族の絆、医療者への信頼、子どもの幸せを願う気持ちという形で、精神的な支えを持っている状態にあります。これらは、困難な状況を乗り越えるための重要な基盤となっており、このニーズは別の形で充足されているといえるでしょう。

宗教的な制限がないことで、医療提供においては柔軟な対応が可能です。また、家族が大切にしている価値観を理解し、それを尊重することで、看護師は家族の精神的支えを強化することができます。

手術という危機的状況においても、家族の結束、医療者への信頼、そして未来への希望が、A氏と家族を支える力となっています。これらの価値観や信念を看護師が理解し、共有することで、より深い信頼関係を築き、効果的な支援を提供することが可能となります。

ケアの方向性

看護においては、A氏と家族が大切にしている価値観を尊重し、それを支える関わりを持つことが重要です。子どもの幸せを最優先する家族の価値観に沿って、A氏の身体的・精神的な安全と安楽を保障するケアを提供します。

家族の絆を支えに困難を乗り越えようとする姿勢を尊重し、家族が一緒に過ごす時間を大切にし、それぞれが自分の役割を果たせるよう支援します。母の付き添い、父や弟の面会を促進し、家族全体で手術を乗り越える体験を共有できる環境を整えることが求められます。

医療者への信頼を維持するために、誠実なコミュニケーションを心がけ、不安や疑問に丁寧に対応します。家族の期待に応えられるよう、専門性を発揮しながら、A氏の安全と回復を最優先に考えた看護を提供します。

そして、A氏が「たくさん走れるようになる」という期待を実現できるよう、術後のリハビリテーションや回復過程を家族と共に歩み、子どもの将来への希望を支える関わりを持つことが大切です。宗教的な信仰はなくても、家族が大切にしている価値観や信念を理解し、それを看護に活かしていくことが求められます。

このニーズのポイント

達成感をもたらすような仕事をするというニーズでは、患者が社会的役割を果たすことで得られる満足感や達成感を評価します。小児の場合、「仕事」は成人のような職業ではなく、学校生活や家族内での役割として捉え、疾患や入院がこれらにどのような影響を与えているかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

達成感をもたらすような仕事をするというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 職業、社会的役割、入院
  • 疾患が仕事/役割に与える影響

学校生活という社会的役割

A氏は小学校2年生で、学校では活発に活動しているという情報があります。7歳の小児にとって、学校は最も重要な社会的活動の場であり、学習や友人関係を通じて達成感や自己効力感を育む場となっています。

学校での活発な活動は、A氏が学校生活において一定の役割を果たし、友達との関わりの中で自分の居場所を持っていることを示しています。授業に参加すること、友達と遊ぶこと、当番活動を行うことなど、これらの日常的な活動が、A氏にとっての「仕事」であり、達成感を得る源となっているでしょう。

家族内での役割

A氏は4人家族の長女であり、弟(4歳)がいます。この家族構成から、A氏は姉としての役割を担っていることがわかります。「弟に会いたい」というA氏の発言や、弟が「お姉ちゃん早く帰ってきて」と言いながら絵を描いてプレゼントするという行動からは、姉弟の関係が良好であることが窺えます。

7歳と4歳という年齢差は、A氏が弟の面倒を見たり、お手本になったりする立場にあることを示唆しています。弟と遊んだり、一緒に過ごしたりすることで、A氏は姉としての役割を果たし、達成感を得ている可能性があります。入院により、この姉としての役割が一時的に果たせなくなっていることは、A氏にとって寂しさや喪失感の原因となっているかもしれません。

疾患が活動に与えた影響

母の「体育の授業の後はぐったりしている」「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という発言は、心房中隔欠損症による易疲労感が、学校での活動や友達との遊びに制限を与えていることを示しています。

体育の授業は、7歳の子どもにとって重要な活動の一つであり、そこで友達と同じように活動できないことは、達成感を得る機会の減少につながります。また、友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩するという状況は、遊びの輪から外れたり、自分から遠慮したりする場面があることを示唆しており、社会的な活動への完全な参加が妨げられているといえるでしょう。

入院による役割の中断

入院により、A氏は学校生活という重要な社会的活動の場から一時的に離れています。10月13日に入院し、手術予定が10月16日であることを考えると、すでに数日間学校を欠席しており、術後の回復期間も含めれば、2週間以上学校を休むことになる可能性があります。

学校を休むことは、授業の遅れだけでなく、友達との関係性や学級での役割の継続にも影響を与える可能性があります。小学校2年生という時期は、友人関係が重要性を増す時期であり、長期の欠席は友達との関係性に影響を与える可能性も考慮する必要があるでしょう。

また、家族と離れて入院生活を送ることで、姉としての役割も一時的に果たせなくなっています。「弟に会いたい」という発言は、この役割の中断による寂しさの表れともいえます。

手術による役割回復への期待

「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」というA氏の発言には、手術によって友達と同じように活動できるようになることへの期待が込められています。これは、体育の授業で疲れることなく参加できること、友達と遊んでも休憩せずに済むこと、つまり学校生活における役割を十分に果たせるようになることへの願いといえます。

手術により循環動態が改善されれば、運動耐容能が向上し、友達と同じように走ったり遊んだりできるようになります。これは、A氏が学校生活や友人関係の中で、より積極的に役割を果たし、達成感を得られるようになることを意味しています。

ニーズの充足状況

A氏の「達成感をもたらすような仕事をする」というニーズは、入院前は学校生活や家族内での役割を通じて一定程度充足されていたと考えられます。しかし、心房中隔欠損症による易疲労感が、体育の授業や友達との遊びといった活動に制限を与えており、完全には充足されていなかった可能性があります。

入院により、学校生活という重要な社会的活動の場から離れ、姉としての役割も一時的に果たせなくなっています。これは、このニーズが現在は大きく制限されている状態を示しています。病棟での生活において、A氏が達成感を得られる活動や役割が限られていることも、ニーズの充足を妨げる要因となっているでしょう。

手術による心内修復が成功すれば、運動耐容能の改善により、学校生活や友達との遊びに十分に参加できるようになり、このニーズの充足度は大きく向上することが期待できます。術後の回復過程を通じて、段階的に役割を取り戻していくことが重要です。

ケアの方向性

入院中は、A氏が達成感を得られる活動や役割を見出せるよう支援します。たとえば、自分でできる身の回りのことを自分で行うこと、病棟での生活ルールを守ること、看護師のお手伝いをすることなど、小さな役割を提供し、「できた」という達成感を味わえる機会を作ります。

学校との連絡を支援し、クラスメイトからの手紙やメッセージを受け取れるようにすることで、学校とのつながりを維持します。また、弟との面会時間を大切にし、姉としての役割を少しでも果たせる機会を提供することも重要です。

術後の回復過程では、段階的に活動を拡大し、「昨日よりできることが増えた」という達成感を共有します。退院後の学校復帰に向けて、担任教師と連携し、スムーズに学校生活に戻れるよう計画を立てます。

長期的には、運動耐容能の改善により、体育の授業や友達との遊びに十分に参加できるようになることを支援し、A氏が学校生活や家族の中で役割を果たし、達成感を得られるよう見守っていくことが求められます。

このニーズのポイント

遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加するというニーズでは、患者が楽しみや気分転換を得られる活動に参加できているかを評価します。小児にとって遊びは単なる娯楽ではなく、成長発達に不可欠な活動であり、このニーズが充足されることが心身の健康に重要です。

どんなことを書けばよいか

遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 趣味、休日の過ごし方、余暇活動
  • 入院、療養中の気分転換方法
  • 運動機能障害
  • 認知機能、ADL

入院前の遊びと活動

事例には、A氏の趣味や休日の過ごし方について具体的な記載はありませんが、小学校2年生で学校では活発に活動しているという情報から、友達と遊んだり、様々な活動に参加したりすることが日常的であったと推測できます。7歳という年齢では、友達との外遊び、ゲーム、読書、絵を描くことなど、多様な遊びを楽しむ時期です。

母の「友達と遊んでいてもすぐに疲れて休憩する」という発言は、A氏が友達との遊びに参加しようとする意欲はあるものの、易疲労感により十分に楽しめていない状況を示しています。遊びの途中で休憩が必要になることは、遊びの連続性や楽しさを損なう可能性があり、このニーズが完全には充足されていなかったことを示唆しています。

疾患が遊びに与えた影響

心房中隔欠損症による運動耐容能の低下は、遊びの内容や程度に制限を与えてきたと考えられます。体育の授業で疲れやすいということは、鬼ごっこやボール遊びなど、運動量の多い遊びでは特に制限を感じていた可能性があります。

「たくさん走れるようになる?」というA氏の期待には、友達と同じように走り回って遊びたいという願いが込められています。これは、これまで十分に楽しめなかった遊びがあったこと、そしてそれを楽しみたいという強い意欲があることを示しています。

入院中の遊びと気分転換

入院中の遊びや気分転換方法について、事例には具体的な記載がありません。しかし、弟が絵を描いてプレゼントしたという情報から、A氏も絵を描くことが好きである可能性や、家族との交流が気分転換になっている可能性が推測できます。

入院環境では、自宅や学校と比べて遊びの選択肢が限られます。また、手術への不安や睡眠不足により、遊びに対する意欲が低下している可能性もあります。「早くおうちに帰りたい」という発言は、入院生活が楽しくない、早く自由に遊べる環境に戻りたいという気持ちの表れともいえるでしょう。

運動機能と認知機能の状態

ADLは自立しており、運動機能障害はなく、認知機能も年齢相応であることから、遊びに参加するための身体的・認知的能力は十分に備わっているといえます。麻痺や骨折もなく、視力・聴力も正常であることから、様々な種類の遊びに参加することが可能です。

ただし、運動耐容能の低下により、運動量の多い遊びでは疲労しやすいという制限があります。この制限は身体機能の障害ではなく、心疾患による循環動態の問題であり、手術により改善が期待できる点が重要です。

入院中の発達課題としての遊び

7歳という年齢は、遊びを通じて社会性や創造性、問題解決能力などを育む重要な時期です。入院により友達との遊びから離れることは、単に楽しみが減るだけでなく、発達課題の達成にも影響を与える可能性があります。

入院中も、年齢に応じた遊びの機会を提供することは、ストレス軽減だけでなく、正常な発達を支える上でも重要です。プレイルームでの活動、ベッドサイドでできる遊び、母や看護師との関わりの中での遊びなど、様々な形で遊びの機会を確保することが求められます。

術後の遊びの回復と拡大

術後は、創部痛や活動制限により、一時的に遊びが大きく制限されます。PICU入室中は、遊びどころではない状態が続くでしょう。しかし、一般病棟への転棟後は、徐々に遊びの機会を増やしていくことが重要です。

ベッド上でできる遊び(絵を描く、本を読む、パズルなど)から始め、座位でできる遊び、歩行ができるようになればプレイルームでの活動へと、段階的に遊びの範囲を拡大していきます。遊びを通じてリハビリテーションを進めることも効果的です。

長期的には、循環動態の改善により運動耐容能が向上することで、これまで十分に楽しめなかった運動性の高い遊びにも参加できるようになることが期待できます。「たくさん走れるようになる」という期待が実現し、友達と制限なく遊べるようになることは、A氏の生活の質を大きく向上させるでしょう。

ニーズの充足状況

A氏の「遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する」というニーズは、入院前は部分的に充足されていた状態といえます。友達と遊ぶ意欲はあり、様々な活動に参加していましたが、易疲労感により十分に楽しめない場面がありました。

入院により、このニーズはさらに制限されている状態です。友達との遊びから離れ、入院環境での遊びの選択肢は限られています。手術への不安も、遊びへの意欲を低下させている可能性があります。

術後は一時的にさらに制限されますが、回復過程で段階的に遊びの機会を増やし、最終的には循環動態の改善により、入院前よりも充実した遊びの体験が可能になることが期待できます。このニーズの充足は、A氏の心身の回復と健全な発達を支える重要な要素となります。

ケアの方向性

入院中は、A氏の年齢や興味に応じた遊びの機会を提供します。絵を描く、塗り絵をする、本を読む、簡単なゲームをするなど、ベッドサイドでできる活動を用意し、気分転換を図ります。母や看護師が一緒に遊ぶ時間を持つことで、不安を軽減し、楽しい時間を過ごせるよう支援します。

可能であれば、プレイルームでの活動や、同年齢の患児との交流の機会を提供することも検討します。ただし、手術前日は十分な休息を取ることを優先し、過度な活動は避けます。

術後は、PICU退室後、段階的に遊びの機会を増やしていきます。創部に負担をかけない範囲で、座位でできる遊びから始め、回復に応じて活動範囲を拡大します。遊びを楽しむことが、リハビリテーションへの意欲を高め、回復を促進する効果も期待できます。

退院後は、医師の指示に従い、段階的に運動性の高い遊びにも参加できるよう支援します。「たくさん走れるようになった」という喜びを家族と共有し、友達との遊びを十分に楽しめるようになることを見守っていくことが大切です。

このニーズのポイント

“正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させるというニーズでは、患者が年齢に応じた発達課題を達成し、学習の機会を得られているかを評価します。疾患や治療についての理解も含め、学習意欲や好奇心が健全に育まれているかを考えることが重要です。

どんなことを書けばよいか

“正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させるというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 発達段階
  • 疾患と治療方法の理解
  • 学習意欲、認知機能、学習機会への家族の参加度合い

発達段階と学習状況

A氏は7歳の小学校2年生で、学童期前期の発達段階にあります。この時期は、学校での学習を通じて読み書きや計算などの基礎的な学力を身につけ、論理的思考や問題解決能力を発達させる重要な時期です。認知力は年齢相応であり、会話によるコミュニケーションは良好という情報から、知的発達は順調に進んでいると考えられます。

学校では活発に活動しているという情報は、授業への参加や学習活動が適切に行われていることを示唆しています。ただし、体育の授業で疲れやすいという身体的な制限が、学校生活全体や学習意欲にどのような影響を与えているかは、さらに詳しく評価する必要があるでしょう。

疾患と治療方法の理解

プレパレーションとして絵本やパンフレットを用いた手術の説明が行われ、A氏は「頑張る」と言っているという情報があります。これは、A氏が手術について一定の理解を示していることを表しています。「手術したら元気になるんだよね」「たくさん走れるようになる?」という発言も、手術の目的や期待される効果について理解していることを示しています。

ただし、7歳という年齢では、心房中隔欠損症の病態生理や手術の詳細を完全に理解することは難しいでしょう。絵本やパンフレット、写真といった具体的で視覚的な教材を用いることで、抽象的な概念をある程度理解できるようになります。手術室や集中治療室の見学を「怖い」と拒否したことは、実物を見ることで恐怖が増すという反応であり、これも発達段階として自然なことです。

好奇心と質問する力

「手術は痛いの?」「いつおうちに帰れるの?」という質問からは、A氏が自分の疑問を言葉で表現し、知りたいことを聞く能力を持っていることがわかります。これは、学童期の重要な発達課題である「好奇心を持ち、質問を通じて知識を得る」という能力が育っていることを示しています。

これらの質問は、手術や入院という未知の体験に対する不安の表れでもありますが、同時に学習意欲や知的好奇心の表れでもあります。看護師がこれらの質問に丁寧に答えることは、A氏の不安を軽減するだけでなく、学習意欲を支え、健全な発達を促進することにもつながります。

家族の参加と学習の支援

プレパレーション時に、母と一緒に写真を見ながら説明を受けることを選択したという情報は、母がA氏の学習過程に積極的に参加していることを示しています。母が付き添い入院をしていることも、A氏が疑問を持ったときにいつでも質問でき、説明を受けられる環境があることを意味します。

父や弟の面会も定期的にあり、家族全体がA氏の経験を共有しようとしています。このような家族の関わりは、A氏が入院や手術という経験から学び、成長する機会を得る上で重要な支援となっています。

入院中の学習機会

入院により学校を欠席していることは、通常の学習機会が中断されていることを意味します。しかし、入院や手術という経験そのものが、新しい学習の機会ともなり得ます。病院という環境、医療者との関わり、自分の身体についての理解、困難を乗り越える経験など、これらは学校では得られない貴重な学びです。

病棟によっては、院内学級や学習支援のプログラムがある場合もあります。また、母や看護師との会話、絵本や本を読むこと、絵を描くことなども、認知的な刺激や学習の機会となります。入院中も、年齢に応じた知的活動の機会を提供することが、このニーズの充足を支えることになるでしょう。

術後の学習と発達の継続

術後は、創部痛や疲労により、学習活動への意欲が一時的に低下する可能性があります。しかし、回復とともに、徐々に本を読んだり、絵を描いたりといった活動を再開することが重要です。

また、リハビリテーションの過程で、「昨日よりできることが増えた」という経験を積むことは、自己効力感を高め、学習意欲を促進する効果があります。看護師が「頑張ったね」「できるようになったね」と肯定的なフィードバックを与えることで、A氏の自信と学習意欲を支えることができます。

退院後の学校復帰に向けて、欠席中の学習内容を補うための支援や、担任教師との連携も必要です。循環動態の改善により易疲労感が軽減されることで、授業への集中力や学習意欲も向上する可能性があります。

ニーズの充足状況

A氏の「”正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる」というニーズは、発達段階として概ね順調に進んでいる状態といえます。認知機能は年齢相応で、好奇心を持ち、質問する力も育っています。手術についても、発達段階に応じた理解を示しています。

入院により学校での学習機会は中断されていますが、入院や手術という経験そのものが新しい学びの機会となっています。家族、特に母が学習過程に積極的に参加し、A氏の理解を支えていることも、このニーズの充足を促進しています。

ただし、手術への不安や睡眠不足により、学習意欲や好奇心が一時的に低下している可能性もあります。術後は一時的にさらに制限されますが、回復過程で段階的に学習活動を再開し、最終的には健康状態の改善により、より充実した学習環境を得られることが期待できます。

ケアの方向性

術前は、A氏の質問に丁寧に答え、発達段階に応じた説明を提供します。絵本やパンフレット、写真などの視覚的教材を活用し、理解を深められるよう支援します。「頑張ったらたくさん走れるようになる」という前向きなイメージを共有し、手術が自分の健康につながることを理解できるよう促します。

入院中も、年齢に応じた知的刺激を提供します。本を読むこと、絵を描くこと、母や看護師との会話など、様々な形で学習の機会を確保します。可能であれば、院内学級や学習支援のプログラムを活用することも検討します。

術後は、回復に応じて学習活動を再開します。リハビリテーションの過程で得られる達成感を共有し、自己効力感を高めます。退院後の学校復帰に向けて、担任教師と連携し、スムーズに学習活動に戻れるよう支援します。

長期的には、循環動態の改善により、授業への集中力が向上し、体育の授業にも十分に参加できるようになることで、学校生活全体がより充実したものとなります。A氏が健全に発達し、学習を通じて成長していけるよう、継続的に見守り支援していくことが求められます。


看護計画

看護計画作成のポイント

看護計画を立案する際には、アセスメントで明らかになった患者の問題や強みを統合し、優先順位を考慮しながら具体的な目標と計画を立てることが重要です。A氏の場合、7歳という発達段階、心房中隔欠損症という疾患の特性、開心術という大きな侵襲を伴う治療、そして手術を控えた不安という心理的側面を総合的に考慮する必要があります。

特に小児の看護計画では、本人だけでなく家族を含めた支援という視点が不可欠です。母がキーパーソンとして付き添い入院をしており、家族全体で手術を乗り越えようとしている状況を踏まえると、家族への教育や精神的支援も計画に組み込むことが重要になるでしょう。

また、術前・術中・術後という時期による問題の変化を予測し、段階的な目標設定と計画立案を行うことが求められます。現在の状態だけでなく、手術による影響、回復過程での変化を見据えた計画を立てることで、継続的で効果的な看護を提供することができます。

ゴードンの11項目やヘンダーソンの14項目で整理したアセスメント情報を活用し、それぞれの視点から問題を捉えることで、多角的で包括的な看護計画を立案できます。どちらのフレームワークを使用しても、患者の全体像を把握し、個別性のある計画を立てることが可能です。

看護診断・看護問題の立案

看護診断や看護問題を立案する際には、アセスメントで収集した情報から患者の健康問題を明確に特定することが必要です。A氏の事例では、身体的な問題(呼吸機能、循環動態、活動耐容能など)、心理的な問題(不安、恐怖など)、発達段階に関連した問題(遊びや学習の制限など)といった複数の側面から問題を捉えることができます。

これらの問題を洗い出した上で、緊急性と重要性という2つの軸から優先順位を考えることが大切です。緊急性とは、生命に直結する問題や、放置すると重大な結果を招く問題を指します。重要性とは、患者や家族にとって重要な問題、QOLに大きく影響する問題を意味します。

術前の現時点では不安が前面に出ていますが、術後は呼吸・循環管理が最優先となるように、時期によって優先順位が変化することも考慮する必要があります。この点を踏まえて、現在最も重要な問題は何か、術後に予測される問題は何かを整理しながら診断・問題を立案するとよいでしょう。

看護診断を用いる場合は、NANDA-Iの診断名を正確に使用し、関連因子や診断指標を明確にすることが重要です。看護問題形式で記述する場合は、「〜できない」「〜のおそれがある」という形で、患者の状態を具体的に表現します。どちらの形式を用いても、アセスメント情報との整合性を保ち、根拠を明確にすることが求められます。

A氏の場合、例えば不安という問題を立案する際には、「手術は痛いの?」「早くおうちに帰りたい」という発言、表情の硬さ、入眠困難といった具体的な根拠を挙げることで、診断・問題の妥当性を示すことができます。

看護目標の設定

看護目標は、看護診断・問題が解決された状態、あるいは改善された状態を表現したものです。目標設定の際には、SMARTの原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性がある、Time-bound:期限がある)を意識することが重要です。

長期目標は、最終的に達成したい状態を示します。A氏の場合であれば、退院時や術後2週間など、ある程度の期間を設定し、その時点で達成していたい状態を具体的に記述します。「運動耐容能が改善する」といった抽象的な表現ではなく、「階段を3階分昇降しても息切れを訴えない」といった測定可能な表現を用いることで、目標達成の評価がしやすくなります。

短期目標は、長期目標達成のための段階的な目標です。「術後〇日までに」「PICU退室時までに」といった具体的な期限を設定し、その時点で達成すべき状態を明確にします。例えば、不安に関する目標であれば「術前に、手術の流れについて自分の言葉で説明できる」といった形で、達成度を評価できる表現にすることが大切です。

小児の場合、発達段階に応じた目標設定が重要です。7歳のA氏であれば、自分で表現できること、理解できることを前提とした目標を立てることができますが、無理な要求にならないよう注意が必要です。また、家族への目標を含めることも検討するとよいでしょう。母が術後の経過を理解し、A氏を適切に支援できるといった目標は、家族を含めた看護を展開する上で重要です。

目標は看護診断・問題と対応していること、そして後述する看護計画(O-P、T-P、E-P)がその目標達成に向けて一貫性を持っていることを確認しながら設定することが求められます。

看護計画の立案

O-P(観察計画)

観察計画では、看護診断・問題の状態を把握するため、また目標達成度を評価するために何を観察するかを明確にします。単に項目を列挙するのではなく、なぜその観察が必要なのか、その観察から何がわかるのかを理解した上で計画を立てることが重要です。

A氏の場合、バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸数、SpO2)は基本的な観察項目となります。それぞれの値が何を意味するかを理解しておく必要があり、例えば術前の呼吸数やSpO2は心疾患の状態を反映しており、術後は循環動態の安定性や呼吸機能の回復を示す指標となります。軽度の運動負荷でSpO2が94%まで低下するという情報があることから、活動時の観察が特に重要になることがわかります。

心理的な問題に関しては、表情、言動、行動といった非言語的な観察も重要です。A氏が「頑張る」と言いながら表情が硬いという情報からもわかるように、言葉と表情にギャップがある場合もあります。不安の程度、睡眠状況、食事摂取量なども、心理状態を反映する重要な観察項目となるでしょう。

術後は、創部の状態、ドレーン排液の性状と量、疼痛の程度、In-outバランスなど、より専門的な観察が必要になります。これらの観察項目は、術後合併症の早期発見や、回復過程の評価に不可欠です。観察の頻度も計画に含めることが重要であり、患者の状態に応じた適切な観察間隔を設定する必要があります。

T-P(ケア計画)

ケア計画では、看護診断・問題を解決するため、また目標を達成するために看護師が実施する具体的な援助を計画します。ケアの根拠を理解し、病態生理や看護理論に基づいた計画を立てることが重要です。

A氏の不安に対するケアとしては、傾聴や共感的な関わり、プレパレーションの継続、母との時間の確保などが考えられます。これらのケアは、単に「話を聞く」だけでなく、A氏の発達段階に応じた説明方法を用いることが効果的です。7歳という年齢を考慮すると、絵本、写真、具体的な言葉などを活用し、理解しやすい方法で情報を提供することが求められます。

術前の清潔ケア(入浴、清拭、臍処置)は、感染予防という明確な目的があります。術後は、早期離床の促進、疼痛管理、呼吸訓練など、合併症予防と回復促進のための具体的なケアが必要になります。それぞれのケアについて、なぜ必要なのか、どのような効果が期待できるのかを理解した上で計画を立てるとよいでしょう。

ケアの実施時には、A氏の協力を得ることが重要です。7歳という年齢では、なぜそのケアが必要なのかを理解できれば、自分から協力することができます。また、できることは自分で行うという自立性を尊重しながら、必要な部分は適切に援助するという姿勢が大切です。

家族へのケアも計画に含めることを検討します。母の不安を軽減するための情報提供や、母がA氏を支援できるようサポートすることも、重要なケアの一部となります。

E-P(教育計画)

教育計画では、患者や家族が自分で問題に対処できるようになるための指導内容を計画します。単なる情報提供ではなく、理解度を確認しながら、実際に行動できるようになることを目指します。

A氏への教育では、発達段階を考慮した説明が重要です。7歳であれば、絵や写真を使った説明、実物を見せながらの説明が効果的です。術後の深呼吸や咳嗽の方法、痛いときの伝え方、点滴ルートやドレーンに触れてはいけないことなど、具体的で理解しやすい指導を行う必要があります。

母への教育では、術後の経過、起こりうる合併症とその徴候、退院後の生活上の注意点などを計画的に指導します。母が不安を抱えている状況を踏まえ、情報過多にならないよう配慮しながら、必要な情報を適切なタイミングで提供することが大切です。一度に多くの情報を提供するのではなく、母の理解度や心理状態を確認しながら段階的に指導することが効果的でしょう。

教育内容は、パンフレットや資料を用いて視覚的に示すとともに、実際に一緒にやってみる(デモンストレーションとリターンデモンストレーション)ことで、理解を深め、実践できるようにします。例えば、深呼吸の方法であれば、看護師が実際に見せた後、A氏に実際にやってもらい、正しくできているか確認することが重要です。

退院指導では、活動制限の段階的な解除、学校復帰のタイミング、定期受診の重要性などを含めます。A氏が「たくさん走れるようになる」という期待を持っていることを踏まえ、どのように活動を拡大していくかという具体的な指導も必要です。医師の指示に基づき、段階的な活動拡大の計画を家族と共有することで、安全に回復を進めることができるでしょう。

免責事項

  • 本記事は教育・学習目的の情報提供です。
  • 本事例は完全なフィクションです
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