本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。
実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。
この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。
それでは、見ていきましょう。
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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。
基本情報
A氏、100歳、女性、身長142cm、体重32kg。家族構成は長男夫婦と孫2人の4人家族で、キーパーソンは長男である。元教師で、温厚で物静かな性格であったと家族は語る。感染症はなく、アレルギーもない。認知機能は著しく低下しており、HDS-Rは3点で見当識や記憶は保たれていない。
病名
老衰
既往歴と治療状況
85歳時に高血圧症と診断され降圧薬による治療を受けていたが、95歳以降は血圧が安定し内服は中止された。90歳時に右大腿骨頸部骨折で手術を受け、その後は車椅子生活となった。97歳時に誤嚥性肺炎で入院したが軽快退院した。現在は特別な治療は行われておらず、対症的な管理のみである。
入院から現在までの情報
A氏は3年前から特別養護老人ホームに入所していた。入所当初は車椅子での移動が可能で食事も自力摂取できていたが、この1年で急速に全身状態が悪化した。2ヶ月前から食事摂取量が著明に減少し、1ヶ月前からは傾眠傾向が強くなり、ほとんど覚醒しない状態となった。9月15日、家族の希望により看取りを目的として老人病院へ入院した。入院時からDNAR(Do Not Attempt Resuscitation)の方針が確認され、延命治療は行わず苦痛緩和を中心とした看護が提供されている。入院後は家族が毎日面会に訪れ、ベッドサイドで手を握ったり声をかけたりして過ごしている。
バイタルサイン
入院時のバイタルサインは、体温36.2℃、血圧92/58mmHg、脈拍68回/分で不整なし、呼吸数18回/分、SpO2 94%(室内気)であった。現在は体温35.8℃、血圧78/48mmHg、脈拍52回/分でやや不整あり、呼吸数14回/分で浅く静かな呼吸、SpO2 90%(室内気)となっている。四肢末梢のチアノーゼと冷感が認められる。
食事と嚥下状態
入院前は施設でミキサー食を提供されていたが、摂取量は1割程度まで低下していた。現在は経口摂取は困難で、嚥下反射もほとんど消失している。家族の希望により点滴や経管栄養などの人工的な栄養投与は行わず、口腔ケアと保湿を中心に実施している。時折、スポンジブラシに水を含ませて口唇を湿らせる程度である。喫煙歴と飲酒歴はない。
排泄
入院前は施設でおむつを使用しており、排便は3日に1回程度で下剤を使用していた。現在は尿量が著明に減少しており、1日200ml程度の濃縮尿が少量ずつ出ている。排便は入院後1回のみで、少量の硬便であった。おむつ交換時には皮膚の観察と清潔保持を行い、褥瘡予防のために2時間ごとの体位変換を実施している。
睡眠
入院前から昼夜逆転はなかったが、ほとんどの時間を傾眠状態で過ごしていた。現在はほぼ終日傾眠状態で、刺激に対する反応はわずかである。時折目を開けることがあるが、焦点は合わず視線は定まらない。睡眠薬などは使用していない。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は白内障が進行しており、ほとんど見えていないと推測される。聴力も著しく低下している。痛み刺激には顔をしかめる程度の反応があるが、明確な疼痛表現はできない。発語はなく、コミュニケーションは困難である。家族によると仏教を信仰しており、枕元には小さな仏像が置かれている。
動作状況
歩行は不可能で、移乗も全介助が必要である。排泄はおむつ使用で全介助、入浴は実施せず清拭のみ、衣類の着脱も全介助である。全身の筋力低下が著明で、自力での体位変換もできない。転倒のリスクは現状ではないが、過去に施設で車椅子からのずり落ちが1回あった。
内服中の薬
現在は内服薬はなし。必要時に頓用で鎮痛薬(アセトアミノフェン坐薬)の使用が可能となっている。
検査データ
| 検査項目 | 入院時(9月15日) | 最新(9月17日) | 基準値 |
|---|---|---|---|
| 白血球数 | 5,800/μL | 6,200/μL | 3,500-9,000/μL |
| 赤血球数 | 3.2×10⁶/μL | 3.1×10⁶/μL | 3.8-5.0×10⁶/μL |
| ヘモグロビン | 9.2g/dL | 8.9g/dL | 11.5-15.0g/dL |
| 血小板数 | 18万/μL | 17万/μL | 15-35万/μL |
| 総蛋白 | 5.8g/dL | 5.6g/dL | 6.5-8.0g/dL |
| アルブミン | 2.4g/dL | 2.2g/dL | 3.8-5.2g/dL |
| BUN | 32mg/dL | 45mg/dL | 8-20mg/dL |
| クレアチニン | 1.2mg/dL | 1.5mg/dL | 0.5-1.0mg/dL |
| CRP | 0.8mg/dL | 1.2mg/dL | 0.0-0.3mg/dL |
薬剤の管理は現在必要なし。
今後の治療方針と医師の指示
医師からは積極的な治療は行わず、苦痛緩和を最優先とする方針が示されている。呼吸困難や疼痛などの苦痛症状が出現した場合は、速やかに対症療法を実施する。家族の希望を尊重し、できる限り穏やかに最期の時を過ごせるよう環境を整える。バイタルサインの測定は1日2回とし、過度な医療介入は避ける。家族が希望すれば、いつでも面会できる体制を整える。
本人と家族の想いと言動
A氏は意識レベルが低下しているため、明確な意思表示はできない。家族は「母は十分に生きてくれました。もう苦しまないで、穏やかに旅立ってほしいです」と話している。長男は「母がまだ生きていてくれることに感謝しています。最期まで側にいたいです」と述べ、毎日長時間面会に訪れている。孫たちも週末には訪れ、「おばあちゃん、ありがとう」と声をかけている。家族は延命治療を希望せず、自然な形で看取りたいという強い意向を持っている。
ゴードン11項目アセスメント解説
1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント
このパターンでは、看取り期における本人と家族の疾患理解、DNARの意思決定プロセス、そして延命治療に対する価値観を評価することが重要です。100歳という高齢で老衰という診断を受け、家族がどのように治療方針を決定し、受け止めているかに着目する必要があります。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
老衰という診断と家族の理解
A氏は老衰という診断を受けていますが、本人は認知機能が著しく低下しており(HDS-R 3点)、意識レベルも低下しているため、自身の健康状態を認識することはできない状況です。この点を踏まえて、家族がA氏の状態をどのように理解し受け止めているかを記述するとよいでしょう。家族は「母は十分に生きてくれました。もう苦しまないで、穏やかに旅立ってほしいです」と述べており、100年という長い人生を全うしたという認識と、これ以上の苦痛を望まない気持ちが表れています。
DNAR方針の確認と延命治療に対する意思
入院時からDNARの方針が確認され、延命治療は行わず苦痛緩和を中心とした看護が提供されています。この方針決定は家族の希望によるものであり、「自然な形で看取りたい」という強い意向が示されています。長男は「母がまだ生きていてくれることに感謝しています。最期まで側にいたいです」と話しており、延命よりも穏やかな看取りを優先する家族の価値観を読み取ることができます。このような家族の意思決定プロセスや、その背景にある価値観を含めて記述するとよいでしょう。
既往歴と健康管理の経過
A氏は85歳時に高血圧症と診断され降圧薬による治療を受けていましたが、95歳以降は血圧が安定し内服は中止されています。また、90歳時の右大腿骨頸部骨折後は車椅子生活となり、97歳時には誤嚥性肺炎で入院しましたが軽快退院しています。これらの既往歴から、A氏がこれまで適切な医療管理を受けながら生活してきたことがわかります。特に95歳で降圧薬が中止できたことは、高齢者における過剰な薬物療法を避け、QOLを重視した医療が提供されていたことを示しており、その点を踏まえて健康管理の経過を記載するとよいでしょう。
健康リスク因子の評価
A氏には感染症やアレルギーはなく、喫煙歴・飲酒歴もありません。これは看取り期のケアを考える上で重要な情報となります。特にアレルギーがないことは、必要時の鎮痛薬使用において制限が少ないことを意味しています。
アセスメントの視点
老衰という診断を受け看取り期にある患者において、本人の意思表示が困難な場合、家族の疾患理解と治療方針に対する受け止め方が極めて重要となります。A氏の事例では、家族が100年という長い人生を肯定的に捉え、延命よりも苦痛緩和を優先するという明確な意思を持っていることが読み取れます。このような家族の価値観や意思決定の背景を丁寧に記述することで、今後の看護の方向性が見えてくるでしょう。
ケアの方向性
家族の希望を尊重し、延命治療は行わず苦痛緩和を最優先とする方針を継続することが重要です。また、家族が毎日面会に訪れていることから、家族がA氏との時間を大切にできるよう環境を整え、グリーフケアの視点も含めた家族支援を行うことが求められます。
2. 栄養-代謝パターンのポイント
このパターンでは、看取り期における栄養摂取の著明な低下、嚥下機能の喪失、そして人工的栄養投与を行わないという家族の意思決定を踏まえた評価が必要です。栄養状態の悪化が生命維持に直結する状況において、どのような視点でアセスメントを行うかが重要となります。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
経口摂取の推移と嚥下機能の喪失
A氏はこの1年で急速に全身状態が悪化し、2ヶ月前から食事摂取量が著明に減少していきました。入院前は施設でミキサー食を提供されていましたが、摂取量は1割程度まで低下し、現在は経口摂取が困難で嚥下反射もほとんど消失しています。この急速な摂食機能の低下過程を時系列で記述し、老衰の進行に伴う生理的な変化として捉えることが重要です。
身体計測値と栄養状態の評価
A氏の身長は142cm、体重は32kgで、BMIを計算すると約15.9となり、著しい低体重の状態です。100歳という超高齢者において、この体格は長期にわたる栄養摂取不足と筋肉量の減少を反映していると考えられます。検査データでは総蛋白5.6g/dL(基準値6.5-8.0)、アルブミン2.2g/dL(基準値3.8-5.2)と低値を示しており、入院後もさらに低下傾向(TP 5.8→5.6、Alb 2.4→2.2)にあります。これらのデータが示す栄養状態の悪化を、生命予後との関連で考察するとよいでしょう。
貧血の進行
赤血球数3.1×10⁶/μL、ヘモグロビン8.9g/dL(基準値11.5-15.0)と貧血が認められ、入院後も悪化傾向(Hb 9.2→8.9)にあります。この貧血は栄養摂取不足による造血機能の低下を反映しており、全身の酸素運搬能力の低下につながっていることを意識して記述するとよいでしょう。
人工的栄養投与を行わないという選択
家族の希望により、点滴や経管栄養などの人工的な栄養投与は行わず、口腔ケアと保湿を中心に実施しています。時折、スポンジブラシに水を含ませて口唇を湿らせる程度のケアが提供されています。この方針は延命治療を行わないというDNARの方針と一貫しており、家族が「自然な形で看取りたい」という意向を具体化したものです。看取り期における栄養管理の考え方として、QOLと倫理的側面を含めて記述することが重要です。
皮膚の状態と褥瘡予防
現在の栄養状態の悪化は、皮膚の脆弱性を高め褥瘡発生のリスクを増大させています。おむつ交換時には皮膚の観察と清潔保持を行い、2時間ごとの体位変換を実施していることから、褥瘡予防のケアが継続されています。低栄養と褥瘡リスクの関連性を意識した記述が求められます。
アセスメントの視点
看取り期における栄養管理は、延命を目的とするのではなく、苦痛緩和とQOLの維持を目的とします。A氏の事例では、家族が人工的栄養投与を希望せず、自然な形での看取りを選択しています。この選択を尊重しながら、口腔ケアによる快適性の維持、褥瘡予防など、できる限りの苦痛緩和ケアを提供することが看護の役割となります。栄養データの悪化を単に問題として捉えるのではなく、老衰という自然な経過の中で生じている変化として理解することが重要です。
ケアの方向性
人工的栄養投与は行わず、口腔ケアと保湿による快適性の維持を継続します。スポンジブラシでの口腔ケアは、口渇感の緩和だけでなく、家族がケアに参加する機会ともなり得ます。また、低栄養に伴う皮膚の脆弱性を考慮し、褥瘡予防のための体位変換やスキンケアを丁寧に実施することが求められます。
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