【ヘンダーソン】胃癌 術後7日目(0001)

ヘンダーソン

事例の要約

55歳女性の胃癌(stageⅡA)症例。

職場健診を契機に発見され、7月8日に胃全摘術およびルーY法を施行。
既往に高血圧、脂質異常症あり。

術後経過は良好で、術後5日目より氷片摂取開始、7日目から流動食を開始している。点滴は減量中で、疼痛コントロール良好、ADLも病棟内歩行が自立している。

退院は術後14日目を予定。早期の職場復帰を希望する患者に対し、食事への不安があり、夫は協力的で食事管理に関心が高い。今後は合併症予防に努めながら、段階的な食事進行と活動範囲の拡大を図り、補助化学療法の必要性を検討する方針である。

この事例で勉強できること

胃全摘およびルーY法の術後・ダンピング症候群のアセスメント

今回の情報

介入日

術後7日目 7月15日

基本情報

A氏、55歳の女性。身長158cm、体重52kg(入院前58kg)。夫(60歳)との2人暮らしで、長男・長女は別居している。キーパーソンは夫。会社員として経理課の主任を務めているが、現在は休職中である。

病名

胃癌 stageⅡA(T2N1M0)

既往歴と治療状況

・高血圧(5年前~):アムロジピン5mg内服中
・脂質異常症(3年前~):アトルバスタチン10mg内服中

入院から現在までの情報

患者は定期健康診断で胃の精密検査を勧められ、上部消化管内視鏡検査の結果、胃癌(stageⅡA:T2N1M0) と診断された。手術適応と判断され、7月8日に胃全摘術およびルーY法 を施行。全身麻酔下にて、開腹術を行った。

術後日数経過・処置内容
術後1日目全身状態安定。点滴管理のもと、絶食継続。創部痛があるため鎮痛薬使用。離床指導を開始し、ベッドサイドでの座位を促す。
術後2日目病棟内歩行訓練開始。腹部症状なし。疼痛コントロール良好。点滴管理継続。
術後3日目胃管抜去。腸蠕動音確認できるが、排ガスなし。引き続き歩行を促し、腸蠕動の回復を図る。
術後4日目排ガスあり。腹部膨満なし。創部の炎症徴候なし。点滴管理継続。
術後5日目氷片摂取開始。摂取後も腹部症状なく経過良好。腸蠕動音回復。センノシド(下剤)処方開始。
術後6日目軟便の排便あり。創部ガーゼ交換実施。ドレーン抜去。
術後7日目(現在)流動食(1食150ml)開始。摂取状況良好で、嘔気・腹部症状なし。歩行はふらつきなく自立。

点滴内容は、術後1日目はソルアセトF 1000ml/日と抗生剤CEZ 1g×2回/日を投与。術後2-7日目はソルアセトF 1000ml/日を継続。術後8日目より食事開始に備えて500ml/日に減量し、現在も継続中。食事量の増加に応じて漸減・終了予定。

患者は術後順調に回復しており、食事量の増加に対する不安を口にするものの、離床・歩行は問題なく実施できている。今後は食事内容を段階的に進め、早期離床と体力回復を促す方針。

バイタルサイン
項目来院時現在
体温36.8℃36.5℃
脈拍76回/分(整)82回/分(整)
血圧138/82mmHg126/78mmHg
呼吸数16回/分18回/分
SpO298%(room air)97%(room air)
食事と嚥下状態
項目入院前現在(術後7日目)
食事形態普通食流動食(1食150ml)
摂取量1食約8割開始したばかり
回数1日3食1日3食
自立度自立摂取自立摂取可能
嚥下機能問題なし問題なし
症状なし嘔気・腹部症状なし
特記事項なし・術後5日目より氷片開始
・上体挙上30度以上指導済み
・食事量増加に不安あり
排泄
項目入院前現在(術後7日目)
排便回数1日1-2回術後5日目に初回排便
性状普通便軟便
自立度自立自立
腸蠕動音正常やや低下
下剤使用なしセンノシド2T 眠前
(術後6日目より開始)
睡眠
項目入院前現在(術後7日目)
睡眠時間午後11時~午前6時断続的
睡眠の質良眠創部痛により中途覚醒あり
眠剤使用なしゾルピデム10mg 眠前(頓用)
感染症とアレルギー

なし

喫煙と飲酒

・喫煙:20本/日×45年(入院を機に禁煙)
・飲酒:ビール350ml/日(現在は中止)

性格

温厚で協調的。几帳面な性格

信仰

特になし

視力・聴力・知覚

・視力:矯正視力 両眼1.0(眼鏡使用)
・聴力:正常
・知覚:異常なし

コミュニケーション

良好。医療者の説明を理解し、質問も適切

動作状況
項目入院前現在(術後7日目)
歩行自立術後5日目より病棟内歩行開始。ふらつきなし
移乗自立自立
排泄自立トイレまで歩行可能
入浴自立シャワー浴許可待ち
衣類の着脱自立自立
転倒歴なしなし
内服中の薬

・アムロジピン5mg 1T 朝食後
・アトルバスタチン10mg 1T 夕食後
・センノシド2T 眠前
・ゾルピデム10mg 眠前(頓用)

服薬状況

内服薬は看護師管理

認知力

問題なし

検査データ
項目入院時術後7日目(現在)
Hb13.2 g/dL11.8 g/dL
Ht39.2%35.4%
WBC6,800/μL8,200/μL
PLT22.5万/μL19.8万/μL
TP7.0 g/dL6.5 g/dL
Alb4.0 g/dL3.5 g/dL
CRP0.3 mg/dL2.1 mg/dL
入院までの経緯

X年5月の職場健診で上部消化管造影検査にて胃体中部に陰影欠損を指摘された。その後、近医を受診し上部消化管内視鏡検査を実施。胃体中部後壁に2.5cm大の2型進行胃癌を認めた。

生検の結果、中分化型管状腺癌と診断。術前検査(CT、MRI)にて遠隔転移や重要臓器への浸潤は認めず、cStageⅡA(T2N1M0)と診断された。

手術適応と判断され、X年7月1日に当院外科を紹介受診。術前の血液検査や心機能検査で手術への支障となる所見はなく、7月8日に胃全摘術を予定し、7月6日に入院となった。

なお、入院前は食欲低下や体重減少などの自覚症状はなかったが、後から振り返ってみると軽度の心窩部不快感を自覚していたとのことである。

今後の治療方針

今後の治療方針は、合併症予防と早期発見を最優先に経過観察を継続する。術後10日目に血液検査による全身評価を実施し、活動範囲の拡大とシャワー浴開始を検討する。食事は確実な経口摂取の確立を目指し、消化器症状に留意しながら段階的に量を増やしていく予定

退院は術後14日目を予定しており、退院までに基本的ADLの自立を目標とする。退院1週間後の外来診察で術後補助化学療法の必要性を検討し、その後は定期的な画像・血液検査による経過観察と段階的な職場復帰計画を進めていく予定

医師の指示
項目現在の指示今後の予定注意事項
安静度病棟内歩行可8日目~:院内歩行
退院時:制限なし
・初回は付き添い必要
・ふらつき時は報告
食事流動食 150ml×3回10日目:三分粥
12日目:五分粥
退院時:全粥
・30分以上かけて摂取
・症状出現時は報告
創部処置1日1回ガーゼ交換継続・感染徴候時は報告
ドレーン抜去済み抜去部観察継続
疼痛管理ロキソプロフェン60mg頓用状態により調整・1日3回まで
・4時間以上間隔
清潔ケア清拭可10日目~:シャワー浴創部は濡らさない
検査VS:1日3回10日目:採血
退院前:CT
異常値時は報告
本人と家族の想いと言動

本人の想い
術後の回復に前向きで、早期の社会復帰への意欲が高い。「できるだけ早く仕事に戻りたい。部下たちに心配をかけているから」と話す。一方で、胃全摘後の食事に関して「どのくらい食べられるようになるのか」「体重は戻るのか」と不安を表出している。リハビリには積極的で、「一日でも早く元の生活に戻れるよう頑張りたい」と意欲的である。

家族(夫)の想い
妻の回復を最優先に考えており、非常に協力的な姿勢。「妻の体調が一番大事。仕事のことは焦らなくていい」と本人をサポートする発言が多い。特に退院後の食事管理に関心が高く、「少量ずつ何回かに分けて食べさせた方がいいのか」「食材の選び方や調理法で気をつけることは」など、具体的な質問を積極的にしている。毎日の面会時には、妻の様子を細かく観察し、看護師に質問するなど、情報収集に熱心である。

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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