本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。
実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。
この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。
それでは、見ていきましょう。
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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。
今回の事例
基本情報
A氏は78歳の女性であり、身長152cm、体重48kgである。家族構成は夫と二人暮らしで、長女が近隣に居住しており、キーパーソンは長女である。職業は元小学校教諭で、定年退職後は地域のボランティア活動に参加していた。性格は几帳面で真面目、やや心配性な傾向があるが、前向きに物事に取り組む姿勢を持つ。感染症はなく、アレルギーは特記すべきものはない。認知機能は保たれており、MMSE 28点、HDS-R 27点と正常範囲である。
病名
病名は右大腿骨頭骨折であり、術式は人工骨頭置換術を施行した。
既往歴と治療状況
既往歴として高血圧症があり、10年前から降圧薬による治療を継続している。また5年前に脂質異常症を指摘され、スタチン系薬剤を内服している。骨粗鬆症の既往もあり、3年前から骨粗鬆症治療薬を服用していたが、コンプライアンスはやや不良であった。
入院から現在までの情報
入院から現在までの経過として、9月1日の早朝、自宅の階段を降りる際に足を滑らせて転倒し、右股関節部に激痛が出現して動けなくなった。救急搬送され、レントゲン検査とCT検査により右大腿骨頭骨折と診断された。同日緊急入院となり、術前検査と全身状態の評価が行われた。9月3日に全身麻酔下で人工骨頭置換術が施行された。術後経過は概ね良好で、術後2日目から離床を開始し、理学療法士による指導のもとリハビリテーションが開始された。術後1週間で部分荷重歩行が許可され、歩行器を使用しての歩行訓練を行っている。創部の治癒は良好で、9月12日に抜糸が完了した。現在は全荷重歩行を目指してリハビリテーションを継続中である。
バイタルサイン
来院時のバイタルサインは、血圧158/92mmHg、脈拍102回/分、呼吸数24回/分、体温36.8℃、SpO2 96%(室内気)であり、疼痛により血圧と脈拍の上昇が認められた。現在のバイタルサインは、血圧138/82mmHg、脈拍76回/分、呼吸数18回/分、体温36.5℃、SpO2 98%(室内気)であり、安定している。
食事と嚥下状態
入院前の食事は自宅で夫と共に3食規則正しく摂取しており、バランスの取れた食生活を送っていた。嚥下機能に問題はなく、むせや誤嚥の既往もない。現在は病院食を全量摂取しており、食欲は良好である。嚥下状態も問題なく、水分摂取も十分に行えている。喫煙歴はなく、飲酒は月に1、2回程度、社交的な場でのみ少量を嗜む程度であった。
排泄
入院前の排泄は、排尿は日中5から6回、夜間1回程度で、尿意は明確で失禁はなかった。排便は1日1回規則的にあり、便秘の自覚はなかった。現在は術後の安静と活動量低下の影響で、便秘傾向が出現している。排便は2から3日に1回となり、腹部膨満感を訴えることがある。下剤として酸化マグネシウム330mgを1日3回毎食後に内服しており、必要時にセンノシド12mgを就寝前に追加している。排尿は自立しており、ポータブルトイレを使用して自力で行えている。
睡眠
入院前の睡眠は、23時頃に就寝し6時頃に起床する習慣で、中途覚醒は夜間1回トイレに起きる程度であった。睡眠の質は良好で、日中の眠気や倦怠感はなかった。現在は入院環境への不慣れと術後の疼痛により、入眠困難と中途覚醒が増加している。睡眠薬としてゾルピデム5mgを就寝前に内服しており、入眠はできているが、夜間に2から3回覚醒することがある。疼痛時には鎮痛薬を使用している。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は老眼があり、日常生活では眼鏡を使用している。遠方の視力は良好である。聴力は軽度の加齢性難聴があるが、日常会話には支障がなく、補聴器は使用していない。知覚は正常で、四肢末梢の感覚も保たれている。コミュニケーションは良好で、質問に対して適切に応答でき、自分の状態や気持ちを明確に表現できる。信仰は特になし。
動作状況
歩行は術前まで自立していたが、現在は歩行器を使用して部分荷重歩行が可能である。理学療法士の監視下では20から30メートル程度の歩行ができるが、疼痛と筋力低下により長距離歩行は困難である。移乗はベッドから車椅子、車椅子からポータブルトイレへの移乗が見守りレベルで可能である。排尿と排便はポータブルトイレを使用して自立している。入浴は現在清拭で対応しており、シャワー浴は創部の治癒を確認後に開始予定である。衣類の着脱は上半身は自立しているが、下半身は股関節の可動域制限があり一部介助が必要である。転倒歴は今回の骨折の原因となった転倒が初回であり、それ以前には転倒の既往はなかった。
内服中の薬
- アムロジピン5mg 1回1錠 1日1回 朝食後
- アトルバスタチン10mg 1回1錠 1日1回 夕食後
- エルデカルシトール0.75μg 1回1カプセル 1日1回 朝食後
- 酸化マグネシウム330mg 1回1錠 1日3回 毎食後
- センノシド12mg 1回1錠 1日1回 就寝前(便秘時)
- ゾルピデム5mg 1回1錠 1日1回 就寝前
- ロキソプロフェン60mg 1回1錠 1日3回 毎食後(疼痛時)
- レバミピド100mg 1回1錠 1日3回 毎食後
服薬状況は、認知機能が保たれており理解力も良好であるため、自己管理を行っている。ただし看護師が毎日内服状況を確認し、飲み忘れがないかチェックしている。
検査データ
| 検査項目 | 入院時(9月1日) | 最近(9月14日) | 基準値 |
|---|---|---|---|
| WBC | 9,800 /μL | 6,200 /μL | 3,500-9,000 |
| RBC | 4.02 ×10⁶/μL | 3.58 ×10⁶/μL | 3.80-5.00 |
| Hb | 12.5 g/dL | 10.8 g/dL | 11.5-15.0 |
| Ht | 37.8 % | 33.2 % | 35.0-45.0 |
| Plt | 258 ×10³/μL | 245 ×10³/μL | 150-350 |
| TP | 7.2 g/dL | 6.8 g/dL | 6.5-8.0 |
| Alb | 4.1 g/dL | 3.4 g/dL | 3.8-5.2 |
| AST | 28 U/L | 22 U/L | 10-40 |
| ALT | 24 U/L | 18 U/L | 5-40 |
| BUN | 18 mg/dL | 15 mg/dL | 8-20 |
| Cr | 0.72 mg/dL | 0.68 mg/dL | 0.40-0.80 |
| Na | 140 mEq/L | 138 mEq/L | 135-145 |
| K | 4.2 mEq/L | 4.0 mEq/L | 3.5-5.0 |
| Cl | 103 mEq/L | 101 mEq/L | 98-108 |
| CRP | 2.8 mg/dL | 0.3 mg/dL | 0.0-0.3 |
今後の治療方針と医師の指示
今後の治療方針として、医師からは段階的な荷重量の増加とリハビリテーションの継続が指示されている。現在は全荷重歩行の獲得を目標に、理学療法を1日2回実施している。創部の状態は良好であり、感染徴候は認められない。貧血に対しては鉄剤の内服を検討中である。退院に向けて、自宅環境の評価と必要な住宅改修の検討を行う予定である。退院目標は入院後4から5週間を予定しており、ADLの向上と安全な歩行能力の獲得を目指している。疼痛管理を継続しながら、積極的なリハビリテーションを推進する方針である。
本人と家族の想いと言動
本人は「早く家に帰って夫の世話をしたい。迷惑をかけて申し訳ない」と話しており、退院への意欲は高いが、再転倒への不安も強く訴えている。リハビリテーションには積極的に取り組んでいるものの、疼痛が強い時は「痛くて動けない」と消極的になることがある。家族、特に長女は毎日面会に訪れており、「母の回復を信じています。できる限りのサポートをしたい」と協力的な姿勢を示している。夫は高齢で自身も膝の痛みがあるため、頻繁な面会は困難だが、週に2から3回訪れて励ましている。退院後の生活については、長女が「当面は私が毎日様子を見に行きます。必要なら介護サービスの利用も検討したい」と述べている。
ゴードン11項目のアセスメント解説
1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント
健康知覚-健康管理パターンでは、患者が自身の健康状態や疾患をどのように捉えているか、また健康管理をどのように実践してきたかを評価します。特に骨折という急性期の状況において、本人や家族の疾患理解、治療への受容、今後の健康管理への意識を把握することが重要です。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
既往歴と健康管理の実態
A氏には高血圧症、脂質異常症、骨粗鬆症という複数の既往歴があり、それぞれに対して長期的な薬物療法を継続していることを踏まえて記述するとよいでしょう。特に注目すべきは、骨粗鬆症治療薬の服薬コンプライアンスがやや不良であったという点です。これは今回の骨折リスクを高めた可能性があり、本人の健康管理行動における課題を示唆しています。一方で、高血圧と脂質異常症については継続的に治療を受けていることから、完全に健康管理を怠っていたわけではない点も考慮する必要があります。なぜ骨粗鬆症治療薬のみコンプライアンスが不良だったのか、その背景要因を探ることが重要です。
疾患と治療に対する認識
A氏は認知機能が保たれており(MMSE 28点、HDS-R 27点)、質問に対して適切に応答でき、自分の状態を明確に表現できることから、疾患や治療についての説明を理解する能力は十分にあると考えられます。しかし、理解力があることと、実際に疾患を受容し適切な健康管理行動を実践できることは別の問題です。本人の「早く家に帰って夫の世話をしたい。迷惑をかけて申し訳ない」という言葉には、退院への強い意欲が表れている一方で、再転倒への不安も強く訴えていることを踏まえて、疾患に対する心理的な受容状況をアセスメントするとよいでしょう。
健康リスク因子の評価
今回の転倒が初回であり、それ以前には転倒の既往がなかった点は重要な情報です。また、喫煙歴はなく、飲酒も社交的な場で少量を嗜む程度であることから、生活習慣上のリスク因子は比較的少ないと言えます。しかし、78歳という高齢であること、骨粗鬆症の既往があること、服薬コンプライアンスが不良であったことは、骨折のリスク因子として明確に存在していました。これらのリスク因子について、本人や家族がどの程度認識していたか、また今後の再発予防にどのように取り組んでいく必要があるかという視点でアセスメントすることが大切です。
アセスメントの視点
A氏の健康知覚-健康管理パターンを評価する際は、認知機能が保たれており理解力が良好である点と、骨粗鬆症治療薬のコンプライアンスが不良であった点という、一見矛盾する情報をどのように統合するかが重要です。また、本人の「迷惑をかけて申し訳ない」という発言や再転倒への不安は、今後の健康管理行動にどのような影響を与えるかを考える必要があります。几帳面で真面目、前向きに物事に取り組む性格という強みを活かしながら、どのような支援が効果的かを検討するとよいでしょう。
ケアの方向性
今回の骨折を契機として、骨粗鬆症治療の重要性を再認識してもらい、退院後の継続的な健康管理を確立していくことが求められます。本人と家族が疾患や治療、再発予防について正しく理解し、具体的な健康管理行動を実践できるよう、教育的支援を計画的に行っていく必要があります。また、再転倒への不安を軽減しながら、安全な生活環境の整備と適切な健康管理行動の習慣化を支援していくことが重要です。
2. 栄養-代謝パターンのポイント
栄養-代謝パターンでは、患者の栄養状態、食事摂取状況、代謝機能、皮膚の状態などを評価します。術後の回復過程において、適切な栄養摂取は創傷治癒やリハビリテーションの進行に直結するため、多角的な視点からアセスメントすることが求められます。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
栄養状態の評価
A氏の身長152cm、体重48kgからBMIを計算すると約20.8となり、65歳以上の高齢者の適正BMI(21.5-24.9)と比較するとやや低めであることを考慮する必要があります。入院前は夫と共に3食規則正しくバランスの取れた食生活を送っていたという情報は、基本的な食習慣が良好であったことを示しています。現在は病院食を全量摂取しており、食欲も良好である点は、術後の回復にとって非常に重要な強みとなります。
検査データからの栄養評価
血液データに注目すると、入院時のAlb 4.1 g/dLから最近では3.4 g/dLへと低下しており、基準値(3.8-5.2)を下回っています。同様にTP(総蛋白)も7.2から6.8へと低下しています。これらは手術侵襲や術後の異化亢進、相対的な栄養摂取不足を反映している可能性があり、創傷治癒やリハビリテーションの進行に影響を与える可能性を踏まえて記述するとよいでしょう。また、Hb(ヘモグロビン)が12.5から10.8 g/dLへ、Ht(ヘマトクリット)が37.8から33.2%へと低下している点も、術後貧血として栄養管理の観点から評価が必要です。
嚥下機能と食事摂取能力
A氏は嚥下機能に問題がなく、むせや誤嚥の既往もないことから、経口摂取において特別なリスクはないと考えられます。水分摂取も十分に行えており、この点は術後の水分出納管理やリハビリテーション中の脱水予防の観点から評価できます。認知機能も保たれているため、食事の自己摂取は可能であり、栄養摂取における自立度は高いと言えるでしょう。
創傷治癒と皮膚の状態
創部の治癒が良好で、9月12日に抜糸が完了していることは、現時点での創傷治癒が順調に進んでいることを示しています。しかし、Albの低下は今後の創傷治癒能力に影響を与える可能性があるため、継続的な観察が必要です。また、高齢であることや活動量の低下から、褥瘡発生のリスクも考慮する必要があります。皮膚の状態については事例に詳細な記載がないため、さらに情報を得る必要がある点を意識するとよいでしょう。
アセスメントの視点
A氏の栄養-代謝パターンを評価する際は、食欲が良好で全量摂取できているという強みと、Albの低下や貧血の進行という課題を総合的に捉える必要があります。術後のリハビリテーションを効果的に進めるためには、十分な栄養摂取が不可欠です。現在の食事摂取量で必要なエネルギーと蛋白質が充足されているか、また貧血に対する栄養学的アプローチ(鉄分、ビタミンB12、葉酸など)が必要かという視点で考えるとよいでしょう。
ケアの方向性
良好な食欲と全量摂取という強みを維持しながら、Albや貧血の改善に向けた栄養管理を行っていく必要があります。医師が鉄剤の内服を検討中であることを踏まえ、薬物療法と栄養療法を組み合わせたアプローチを計画することが重要です。また、退院後の食生活についても、夫との二人暮らしという環境を考慮し、必要に応じて長女の協力を得ながら、バランスの取れた食事が継続できるよう支援していくことが求められます。
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ゴードンの続きとヘンダーソン・関連図・看護計画について解説しています😊



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