【ゴードン】Ⅱ型糖尿病 教育入院(0002) | 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
本事例の要約
この事例は、不適切な食事習慣と運動不足により肥満(BMI 29.4)を呈し、血糖コントロール不良となった45歳男性のⅡ型糖尿病患者の教育入院における看護介入事例である。IT企業の中間管理職として働くA氏は、多忙な業務により不規則な生活を送っており、特に食事の量や時間が不規則で、運動習慣がない生活を続けていた。今回、定期健康診断での著しい血糖値の上昇を契機に、生活習慣の改善と糖尿病自己管理能力の獲得を目的として教育入院となった。入院3日目の時点での看護展開を行う。
この事例で勉強できること
Ⅱ型糖尿病・糖尿病教育入院・生活習慣病の管理のアセスメント
今回の情報
基本情報
A氏、45歳、男性。身長175cm、体重90kg(BMI:29.4)。IT企業の中間管理職として勤務しており、デスクワークが中心の仕事に従事している。既婚で妻(42歳)と高校生の長男(16歳)、中学生の長女(13歳)との4人暮らし。キーパーソンは妻。
性格は几帳面で仕事熱心。一方で、自身の健康管理については楽観的な傾向がある。多忙な業務を優先し、不規則な食生活や運動不足となっている。新型コロナウイルスのワクチン接種は3回完了。その他の感染症や特記すべきアレルギー歴はない。
日常生活動作は自立しており、認知機能に問題はない。コミュニケーションは良好で、医療者の説明は十分に理解できている。
病名
・2型糖尿病
・肥満症
・高血圧症
既往歴と治療状況
・急性虫垂炎(15歳時、虫垂切除術施行)
・高血圧症:20XX年12月より内服加療中、アムロジピン(5mg)1回1錠 1日1回 朝食後
・腰椎椎間板ヘルニア(42歳時):現在は症状なし、保存的治療により軽快
入院から現在までの情報
20XX年12月の定期健康診断で空腹時血糖235mg/dL、HbA1c 9.8%と高値を指摘され、精密検査目的で近医を受診。2型糖尿病と診断され、食事療法と運動療法の指導を受けるも、仕事の多忙を理由に生活習慣の改善が進まなかった。その後、外来でメトホルミン(500mg)の内服を開始したが、確実な服薬ができておらず、3ヶ月後の外来受診時にHbA1c 10.2%とさらなる上昇を認めた。主治医より糖尿病教育入院を勧められ、仕事の調整がついた時期に合わせて入院となった。
入院後は糖尿病教育プログラムに則り、1日目から食事療法(1600kcal/日)を開始。2日目より、血糖測定の手技指導と運動療法の導入を開始している。血糖値は入院時280mg/dLであったが、食事療法開始後は緩やかな改善傾向にある。運動療法については、腰椎椎間板ヘルニアの既往があることから、理学療法士による評価のもと、個別のプログラムを作成中である。
バイタルサイン
【来院時】 体温36.8℃、脈拍84回/分・整、血圧148/92mmHg、呼吸数16回/分、SpO2 98%(室内気)。
【現在(入院3日目)】体温36.6℃、脈拍78回/分・整、血圧138/88mmHg、呼吸数16回/分、SpO2 98%(室内気)。規則的な生活リズムと食事療法の開始により、血圧値は緩やかに改善傾向にある。
食事と嚥下状態
【入院前】 朝食は時間がないことを理由に欠食が多く、昼食は外食やコンビニ弁当が中心。夜は仕事の付き合いによる外食が週3-4回あり、それ以外の日は帰宅が遅く、妻が用意した夕食を一人で食べることが多かった。食事の量や時間は不規則で、特に夜間の過食傾向があった。また、仕事中のコーヒーには砂糖を多めに入れ、午後は菓子類を頻繁に摂取していた。嚥下機能に問題はない。
【現在】 入院後は病院食(糖尿病食1600kcal、塩分6g/日)を提供されている。規則的な時間での食事摂取ができており、食事量は8-10割程度。現在の食事に対しては「思ったより食べられる量がある」と話している。嚥下機能は良好で、食事摂取に問題はない。
喫煙歴なし。飲酒は機会飲酒で、仕事の付き合いによる飲酒が週3-4回(ビール500ml 1-2本程度/回)。甘い物を好み、特にチョコレートやケーキなどの洋菓子をよく摂取していた。コーヒーは1日4-5杯摂取し、砂糖を2個ずつ入れる習慣があった。
排泄
【入院前】 排尿:日中5-6回、夜間1-2回。頻尿の自覚はあるが、医療機関は未受診。排便:1日1回、普通便。不規則な食生活の影響で、時々便秘(2-3日排便なし)があった。下剤の使用経験はない。
【現在】 排尿:日中6-7回、夜間1回。混濁や排尿時痛なし。排便:規則的な食事と水分摂取により、毎朝1回の排便がある。便性状は普通便。下剤は使用していない。トイレまでの移動や排泄動作は自立している。
睡眠
【入院前】 平日は仕事の都合で23時以降の就寝が多く、睡眠時間は5-6時間程度。休日は疲労回復のため、午前中まで睡眠を取ることが多かった。入眠障害や中途覚醒の訴えはなく、睡眠薬の使用歴はない。
【現在】 病棟の消灯時間(21時)に合わせて就寝し、6時の起床まで良眠できている。日中の活動性が上がり、夜間の良好な睡眠が取れていると本人も実感している。睡眠薬は使用していない。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視覚機能については軽度の近視(-2.0D)があり終日メガネを使用しているが、白内障や糖尿病性網膜症の所見は認められていない。聴覚機能は正常で、会話に支障なく補聴器の使用も必要としていない。知覚については、四肢末梢の痺れや冷感の訴えはなく、足底の触覚・痛覚も正常に保たれている。
コミュニケーション面では、言語理解・表出ともに良好である。医療者との意思疎通は円滑で、自身の質問や要望も適切に表現できている。職場においても良好なコミュニケーションが保てているとのことである。信仰は特にない。
動作状況
日常生活動作は全般的に自立しており、介助を必要とする項目はない。歩行は安定しており、院内の移動もスムーズに行えている。階段の昇降も問題なく可能である。過去に転倒したエピソードはなく、現在も転倒リスクは低い。ただし、腰椎椎間板ヘルニアの既往があるため、長時間の歩行や急な動作時に軽度の腰部違和感を自覚することがある。
病室とトイレ、浴室間の移動や移乗動作は安定している。排泄動作は自立しており、トイレでの下衣の着脱もスムーズである。入浴は一般浴槽を使用し、洗体や洗髪も含めて自力で行えている。更衣に関しても、病衣や私服の着脱を問題なく行うことができる。靴下の着脱時にも、腰部への負担は少ない姿勢で実施できている。
肥満があるものの、これによるADLへの明らかな支障は認められていない。ただし、運動療法を開始するにあたり、腰部への負担を考慮した適切な運動方法の指導が必要な状態である。
内服中の薬
【内服薬】
- メトホルミン錠(500mg):1回1錠 1日2回 朝・夕食後
- アムロジピン錠(5mg):1回1錠 1日1回 朝食後
【持参薬】
- ロキソプロフェン錠(60mg):腰部痛時 頓用(腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛時)、入院前は月に2-3回程度使用
【服薬状況】
入院前は仕事の忙しさを理由に、特にメトホルミンの服薬を忘れることが多かった。アムロジピンは比較的規則的に服用できていた。入院後は全ての内服薬について自己管理が許可されており、服薬カレンダーを使用して管理している。現在は看護師の声かけのもと、確実に内服できている。看護師は毎日の内服確認と週1回の残薬確認を実施している。糖尿病教育プログラムの中で、服薬の重要性についても学習中である。入院後はロキソプロフェンの使用はない。
検査データ
【血液検査】
検査項目 | 基準値 | 入院時 | 現在(3日目) |
---|---|---|---|
空腹時血糖 | 70-109 mg/dL | 280 | 198 |
HbA1c | 4.6-6.2 % | 10.2 | 10.2 |
総コレステロール | 130-219 mg/dL | 242 | 238 |
中性脂肪 | 30-149 mg/dL | 195 | 182 |
HDL-C | 40-90 mg/dL | 38 | 39 |
LDL-C | 70-139 mg/dL | 165 | 162 |
AST | 10-40 U/L | 38 | 35 |
ALT | 5-45 U/L | 42 | 40 |
γ-GTP | 12-87 U/L | 86 | 82 |
BUN | 8-20 mg/dL | 18 | 17 |
Cr | 0.60-1.10 mg/dL | 0.82 | 0.80 |
eGFR | ≧60 mL/min/1.73m² | 75.4 | 76.2 |
【尿検査】
検査項目 | 基準値 | 入院時 | 現在(3日目) |
---|---|---|---|
尿糖 | (-) | (3+) | (2+) |
尿蛋白 | (-) | (±) | (±) |
尿ケトン体 | (-) | (-) | (-) |
【血圧】
検査項目 | 基準値 | 入院時 | 現在(3日目) |
---|---|---|---|
収縮期血圧 | ≦139 mmHg | 148 | 138 |
拡張期血圧 | ≦89 mmHg | 92 | 88 |
【身体計測】
項目 | 基準値 | 入院時 | 現在(3日目) |
---|---|---|---|
体重 | – | 90.0 kg | 89.2 kg |
BMI | 18.5-24.9 | 29.4 | 29.1 |
腹囲 | ≦85 cm | 98 cm | 97 cm |
今後の治療方針と医師の指示
現在の治療方針は、2週間の教育入院プログラムを通じて、適切な血糖コントロールと生活習慣の改善を図ることである。具体的には、食事療法(1600kcal/日)の継続と、運動療法の段階的な導入を行う。運動療法については、腰椎椎間板ヘルニアの既往を考慮し、理学療法士による個別プログラムを作成中である。
薬物療法に関しては、現在のメトホルミン500mg 1日2回の内服を継続し、血糖値の推移を見ながら用量調整を検討する。また、高血圧に対するアムロジピンの内服も継続する。血糖値が200mg/dL以上の場合は、速やかに主治医に報告する指示が出ている。
【教育プログラムスケジュール】
■第1週目
- 1-2日目:オリエンテーション、糖尿病の基礎知識
- 3-4日目:運動療法評価と指導(PT)、服薬指導、栄養指導
- 5-7日目:学習内容の実践、運動療法開始
■第2週目
- 8-10日目:フットケア指導、生活習慣の振り返り
- 11-12日目:外出訓練
- 13-14日目:最終評価、退院準備
※毎日実施:内服確認、食事・運動記録 ※水曜日:糖尿病教室(集団指導)
退院後は2週間毎の外来通院とし、3ヶ月後に眼科受診を予定。
本人と家族の想いと言動
本人は「仕事が忙しくて、食事の時間も不規則になってしまう。健康のために気をつけなければと思うが、仕事を優先してしまう」と話す。特に残業の多い日は、コンビニ弁当や菓子類で済ませることが多かったと振り返る。また、「このまま放っておくと重症化するのではないか」という不安を抱えているものの、具体的な生活改善の方法がわからず戸惑っている様子である。
妻は「主人の健康が心配。夕食は作っているのですが、帰りが遅くて冷めたものを食べることが多いんです」と話す。休日は家族で外食することが多く、食事内容や量の調整が難しい状況にある。「家族でできることは協力したい」という思いはあるが、具体的な支援方法についての知識が不足している。
長男(16歳)と長女(13歳)は父親の病気を心配しているが、学業が忙しく、平日は家族全員で食事をする機会が少ない状況である。
【ゴードン】Ⅱ型糖尿病 教育入院(0002) | 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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