事例の要約
突然の高熱と特徴的な皮膚・粘膜症状から川崎病と診断された2歳男児の事例。4月19日に入院となり、同日より介入を開始した。入院直後からガンマグロブリン大量療法とアスピリン内服を開始し、速やかに解熱した。心エコー検査では軽度の冠動脈拡張を認めたが、経過良好で4月30日に退院予定である。
基本情報
A氏は2歳の男児である。身長88cm、体重12kgであり、標準的な体格である。家族構成は父親(32歳、会社員)、母親(30歳、専業主婦)、A氏の3人家族で、キーパーソンは母親である。職業は保育園児である。性格は活発で人懐っこく、言葉の発達も年齢相応である。感染症の既往はなく、アレルギーもない。認知力は年齢相当であり、発達の問題は認められていない。
病名
川崎病(小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)
既往歴と治療状況
これまで大きな病気や入院歴はなく、乳児健診・1歳半健診では特に異常を指摘されていない。予防接種はスケジュール通りに受けており、BCG接種部位の発赤も今回認められた。治療中の疾患はなく、服薬もない。
入院から現在までの情報
4月15日に40.0℃の発熱、全身倦怠感を主訴に小児科外来を受診した。解熱剤で一時的に解熱するものの38.5℃以上の高熱が4日間持続した。4月18日には両眼の結膜充血、口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌、体幹部を中心とした発疹、手足の硬性浮腫が出現した。4月19日に再受診し、血液検査で白血球増加、CRP高値、血小板増加を認め、川崎病と診断され入院となった。入院当日から免疫グロブリン大量療法(2g/kg)の点滴静注とアスピリン(30mg/kg/日)の内服を開始した。治療開始後24時間で解熱し、全身状態は徐々に改善した。入院7日目の心エコー検査で冠動脈の軽度拡張を認めたため、アスピリンを抗血小板用量(5mg/kg/日)に減量し継続している。入院12日目の現在、皮膚症状は軽快し、手指の膜様落屑(皮むけ)が観察されている。
バイタルサイン
来院時
体温40.0℃、脈拍140回/分、呼吸数32回/分、血圧96/50mmHg、SpO2 98%(室内気)であった。
現在
体温36.8℃、脈拍100回/分、呼吸数24回/分、血圧88/46mmHg、SpO2 99%(室内気)と、バイタルサインは安定している。
食事と嚥下状態
入院前
離乳食は完了しており、普通食を3食摂取していた。食欲は良好で、偏食なく栄養バランスの取れた食事を摂取できていた。嚥下状態に問題はなかった。
現在
入院直後は発熱や口腔内の痛みにより食欲不振がみられたが、解熱後は徐々に食欲が回復し、現在は小児食を7〜8割摂取できている。水分摂取も良好で、嚥下状態に問題はない。喫煙・飲酒の習慣はない。
排泄
入院前
排尿・排便ともにおむつを使用していたが、排尿は1日6〜7回、排便は1日1回の普通便で規則的であった。
現在
おむつ使用中。排尿は1日5〜6回で尿量・性状に異常はない。排便は治療開始直後に一時的な軟便がみられたが、現在は1日1回の普通便に戻っている。下剤の使用はなし。
睡眠
入院前
夜間は21時〜7時まで熟睡していた。日中は昼寝を1〜2時間程度とっていた。
現在
入院当初は発熱や治療による不快感から夜間の睡眠が断続的であったが、症状改善後は夜間の睡眠状態は良好となった。日中も活動的になり、午後に1時間程度の昼寝をとっている。眠剤等の使用はなし。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力・聴力は年齢相応で問題なし。知覚に異常はなく、痛みの訴えは適切に表現できる。コミュニケーションは2歳児として適切に取れており、簡単な言葉で意思表示ができる。急性期には不機嫌で啼泣が多かったが、現在は笑顔も見られる。特定の宗教的背景はなし。
動作状況
歩行
入院前は安定した独歩が可能であったが、入院初期は発熱や全身倦怠感により活動性が低下していた。現在は病室内を自由に歩き回れるようになった。
移乗
自力で可能であり、介助は不要。
排尿・排泄
おむつ使用中のため介助が必要。
入浴
全介助が必要。入院初期は全身状態不良のため清拭のみだったが、現在は母親の介助でシャワー浴ができるようになった。
衣類の着脱
上着の脱衣は自分でできるが、着衣や下着の着脱には介助が必要。
転倒歴
これまでに転倒歴はない。
内服中の薬
- アスピリン 60mg(5mg/kg/日) 1日1回 朝食後
看護師管理で行っている。内服薬はシロップ剤に混ぜて服用しており、拒薬はなく確実に内服できている。
検査データ
検査項目 | 入院時(4月19日) | 最近(4月30日) | 基準値 |
---|---|---|---|
WBC | 18,500/μL | 9,800/μL | 4,000-9,000/μL |
RBC | 420万/μL | 410万/μL | 400-550万/μL |
Hb | 11.2g/dL | 11.0g/dL | 11.0-14.0g/dL |
Ht | 34.5% | 33.8% | 33.0-42.0% |
Plt | 45.0万/μL | 52.0万/μL | 15.0-35.0万/μL |
CRP | 8.5mg/dL | 0.5mg/dL | 0.0-0.3mg/dL |
ESR | 58mm/hr | 15mm/hr | 3-15mm/hr |
Na | 132mEq/L | 138mEq/L | 135-145mEq/L |
K | 4.0mEq/L | 4.2mEq/L | 3.5-5.0mEq/L |
Cl | 98mEq/L | 100mEq/L | 98-108mEq/L |
AST | 65U/L | 32U/L | 10-40U/L |
ALT | 58U/L | 30U/L | 5-40U/L |
Alb | 2.8g/dL | 3.6g/dL | 3.5-5.5g/dL |
尿蛋白 | (-) | (-) | (-) |
尿潜血 | (-) | (-) | (-) |
尿白血球 | 2+ | (-) | (-) |
今後の治療方針と医師の指示
現在の治療を継続し、冠動脈瘤の形成がないことを確認できれば退院を検討する。アスピリンの内服は冠動脈の拡張が消失するまで継続する方針である。今後は週に1回の心臓超音波検査を実施し、冠動脈の状態を評価していく。退院後も2週間に1回の外来通院で心臓超音波検査、血液検査によるフォローが必要である。発熱や冠動脈症状(胸痛、息切れ、顔色不良など)がある場合は速やかに受診するよう指示されている。3か月後に冠動脈の状態に問題がなければ、アスピリンの内服を中止する予定である。
本人と家族の想いと言動
A氏は治療により症状が軽快しているため、機嫌も改善しており、病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった。しかし、点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられることがある。母親は「初めて聞く病気で、心臓に影響があると聞いて不安です」と話しており、医療者からの説明を熱心に聞き、治療に協力的である。「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」と予後に関する質問を繰り返している。父親は仕事が忙しいが、休日には面会に来ており、「早く元気になってほしい」と心配している。両親は退院後の生活や予防接種の再開時期についても質問しており、A氏の今後の成長発達に対する不安を抱えているが、医療者の説明を前向きに受け止めようとする姿勢が見られる。
アセスメント
疾患の簡単な説明
川崎病(小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)は原因不明の全身性血管炎であり、主に5歳以下の小児に発症する疾患である。本疾患の特徴的症状として、5日以上持続する高熱、両側結膜充血、口腔粘膜の変化(口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌)、四肢末端の変化(手足の硬性浮腫、膜様落屑)、体幹部中心の多形性発疹、非化膿性頸部リンパ節腫脹が挙げられる。最も重大な合併症は冠動脈瘤の形成であり、適切な治療が行われなければ約20〜25%の患者に冠動脈病変が生じるとされている。免疫グロブリン大量療法とアスピリン投与が標準治療であり、早期治療により予後は良好となる。
健康状態
A氏は2歳の男児で、これまで大きな病気や入院歴はなく健康に成長していた。今回、4月15日に40.0℃の発熱と全身倦怠感を主訴に小児科外来を受診し、4日間の持続する高熱と川崎病の主要症状(両眼の結膜充血、口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌、体幹部中心の発疹、手足の硬性浮腫)が出現したため、4月19日に川崎病と診断され入院となった。入院後、速やかに免疫グロブリン大量療法とアスピリン内服による治療が開始され、治療開始後24時間で解熱し全身状態は改善している。しかし、入院7日目の心エコー検査で冠動脈の軽度拡張を認めており、心血管系の合併症が出現していることに注意が必要である。入院12日目の現在は皮膚症状が軽快し、手指の膜様落屑(皮むけ)が観察され、急性期から回復期へと移行している状態である。バイタルサインは安定しており、体温36.8℃、脈拍100回/分、呼吸数24回/分、血圧88/46mmHg、SpO2 99%(室内気)と正常範囲内にある。
受診行動、疾患や治療への理解、服薬状況
A氏の家族は発熱が4日間持続した時点で適切に受診行動をとっており、健康管理に対する意識は高いと考えられる。また、既往歴がなく、乳児健診・1歳半健診でも特に異常を指摘されていないことから、これまで適切な健康管理がなされていたことが推測される。予防接種もスケジュール通りに受けており、健康意識の高さがうかがえる。
疾患の理解に関しては、キーパーソンである母親は「初めて聞く病気で、心臓に影響があると聞いて不安です」と話しており、疾患に対する知識が不足している可能性がある。「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」と予後に関する質問を繰り返していることから、疾患の長期的な影響について特に不安を抱えていることが考えられる。両親は医療者からの説明を熱心に聞き、治療に協力的であり、情報を得ようとする姿勢は良好である。
服薬状況については、現在アスピリン60mg(5mg/kg/日)を1日1回朝食後に内服中である。内服薬はシロップ剤に混ぜて服用しており、拒薬はなく確実に内服できている。ただし、2歳という年齢を考慮すると、自己管理は困難であり、看護師管理で行われている。退院後は保護者による確実な服薬管理が必要となる。
身長、体重、BMI、運動習慣
A氏の身長は88cm、体重12kgであり、標準的な体格である。2歳児の平均的な身長・体重と比較しても正常範囲内にあり、これまでの発育は順調である。BMIは15.5kg/m²となるが、小児においてはBMIよりも年齢相応の発育曲線上の評価が重要である。運動習慣については明確な記載はないが、「活発」と記述されていることから、発達段階に応じた身体活動は十分行われていると考えられる。入院初期は発熱や全身倦怠感により活動性が低下していたが、症状改善後は病室内を自由に歩き回れるようになっており、回復に伴い活動性も戻りつつある。
呼吸に関するアレルギー、飲酒、喫煙の有無
A氏にはアレルギーの既往はなく、呼吸に関する問題も報告されていない。2歳児であるため、飲酒・喫煙の習慣はない。また、家族の喫煙状況についての情報はないため、退院後の生活環境を考慮し、両親の喫煙状況を確認する必要がある。特に心血管系に合併症を有する川崎病の患者であるため、受動喫煙を避けることが重要である。
既往歴
A氏はこれまで大きな病気や入院歴はなく、乳児健診・1歳半健診でも特に異常を指摘されていない。感染症の既往もなく、アレルギーも報告されていない。予防接種はスケジュール通りに受けている。BCG接種部位の発赤が今回認められているが、これは川崎病の症状の一つとして出現することがあり、疾患との関連が考えられる。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の健康管理上の主な課題は、冠動脈の軽度拡張が認められていることと、これに伴う長期的な心血管系合併症のリスクである。また、両親、特に母親が疾患と予後に関する不安を抱えていることも重要な課題である。
看護介入としては、まず冠動脈の状態を注意深く観察し、定期的な心エコー検査の実施と結果の評価を行う必要がある。また、アスピリンの内服を確実に継続し、抗血小板効果による冠動脈瘤の予防と治療を支援する。体温や脈拍などのバイタルサインを定期的に測定し、異常の早期発見に努める。
両親に対しては、川崎病とその経過、予後、治療の必要性について分かりやすく説明し、不安の軽減を図る。特に冠動脈病変の経過観察の重要性と退院後の生活上の注意点(発熱時の早期受診、定期的な外来通院の必要性など)について教育する。退院後の服薬管理についても具体的な指導を行い、確実なアスピリン内服の継続を支援する。
また、回復期に入ったA氏の活動性が増していることから、年齢に応じた遊びや活動を通して心身の回復を促進しながらも、過度な身体負荷を避けるバランスのとれた活動指導も必要である。
今後も観察を継続すべき点として、冠動脈の状態変化、発熱や胸痛などの症状出現の有無、アスピリン内服による副作用(出血傾向など)の有無が挙げられる。また、心理社会的側面では、入院や治療による心理的影響、両親の不安の変化についても継続的に評価していく必要がある。退院後の生活に関しては、保育園への復帰時期や予防接種の再開時期などについても、医師の指示に基づき適切な指導を行うことが重要である。
食事と水分の摂取量と摂取方法
A氏は2歳の男児で、入院前は離乳食が完了しており、普通食を3食摂取していた。食欲は良好であり、偏食なく栄養バランスの取れた食事を摂取できていた。川崎病の急性期である入院直後は発熱や口腔内の痛み(口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌など)により食欲不振がみられたが、免疫グロブリン大量療法とアスピリン内服による治療開始後24時間で解熱し、症状が改善したことに伴い、徐々に食欲が回復している。現在(入院12日目)は小児食を7〜8割摂取できている状態である。水分摂取も良好であり、急性期の発熱時に懸念される脱水状態は認められない。入院初期から現在に至るまで嚥下状態に問題はなく、経口摂取による栄養・水分補給が可能である。
摂取方法に関して、年齢的に完全な自立摂取は難しいと考えられるが、食事介助の状況に関する具体的な情報はないため、自力摂取の程度と介助必要度について追加情報を収集する必要がある。
好きな食べ物/食事に関するアレルギー
A氏の好きな食べ物に関する具体的な情報はないが、「偏食なく栄養バランスの取れた食事を摂取できていた」と記載されていることから、特定の食品に対する極端な好き嫌いはないと推測される。食事に関するアレルギーについては、「アレルギーもない」との記載から、食物アレルギーはないと判断できる。ただし、2歳という年齢を考慮すると、新たな食物アレルギーが顕在化する可能性もあるため、新規食品の導入時には注意深い観察が必要である。
身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
A氏の身長は88cm、体重12kgであり、標準的な体格である。2歳男児の平均的な身長・体重と比較しても正常範囲内にあり、体格指数(BMI)は15.5kg/m²となるが、小児においてはBMIよりも年齢相応の成長曲線上の評価が重要である。
必要栄養量に関しては、基礎代謝量(BMR)と身体活動レベル(PAL)から算出できるが、具体的な計算値は示されていない。2歳児のエネルギー必要量は一般的に約1,000〜1,100kcal/日程度であり、タンパク質摂取量は体重1kgあたり約1.1g(約13g/日)が目安となる。A氏は「活発」と記述されていることから、身体活動レベルは中〜高程度と推測され、エネルギー必要量も若干増加する可能性がある。
入院中の身体活動レベルは、入院初期には発熱や全身倦怠感により低下していたが、症状改善後は病室内を自由に歩き回れるようになっており、回復に伴い活動性も戻りつつある。ただし、入院環境による活動制限があるため、通常より活動量が低下している可能性があり、エネルギー必要量も調整が必要かもしれない。
食欲・嚥下機能・口腔内の状態
A氏の食欲は入院前は良好であったが、入院直後は川崎病の症状である発熱や口腔内の痛みにより食欲不振がみられた。治療により症状が改善した現在は、徐々に食欲が回復し、小児食を7〜8割摂取できている。嚥下機能については入院前から現在まで問題はなく、誤嚥のリスクは低いと考えられる。
口腔内の状態については、川崎病の主要症状として口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌が出現していた。これらの口腔粘膜の変化は食欲低下や摂食時の痛みを引き起こす要因となるが、治療による症状改善に伴い、現在の口腔内状態は改善傾向にあると推測される。ただし、現時点での口腔内状態の詳細な評価(口内炎の有無、口腔乾燥の程度など)についての情報は不足しているため、追加の観察と評価が必要である。
嘔吐・吐気
A氏の嘔吐や吐気に関する明確な記載はないが、食欲が回復し食事摂取量が増加していることから、現時点で顕著な嘔吐や吐気の症状はないと推測される。ただし、川崎病の急性期には消化器症状として嘔吐を伴うことがあるため、入院初期には症状があった可能性も考慮される。また、アスピリン内服による消化器症状(胃部不快感、吐気など)が出現する可能性があるため、継続的な観察が必要である。
皮膚の状態、褥創の有無
A氏は川崎病の主要症状として、体幹部を中心とした発疹、手足の硬性浮腫が出現していた。入院12日目の現在、皮膚症状は軽快し、手指の膜様落屑(皮むけ)が観察されている状態である。膜様落屑は川崎病の回復期に特徴的にみられる所見であり、病態の経過としては順調と考えられる。
褥創に関する記載はないが、「活発」という性格特性と入院後も病室内を自由に歩き回れるようになっていることから、長時間同一体位を保持する状態は少なく、褥創のリスクは低いと考えられる。また、発熱や皮膚症状があった急性期においても適切なケアが行われていたと推測され、皮膚統合性の問題は報告されていない。
血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na.K、TG、TC、HbA1C、BS)
A氏の血液データについては、入院時(4月19日)および最近(4月30日)の値が一部報告されている。赤血球関連データでは、RBC 420万/μL→410万/μL(基準値400-550万/μL)、Hb 11.2g/dL→11.0g/dL(基準値11.0-14.0g/dL)、Ht 34.5%→33.8%(基準値33.0-42.0%)と、いずれも基準値内もしくは下限付近であるが、わずかな低下傾向を示している。これは川崎病の急性炎症反応や入院に伴う食事摂取量減少の影響と考えられるが、貧血の状態ではない。
電解質では、入院時にNa 132mEq/L(基準値135-145mEq/L)と軽度の低ナトリウム血症を認めたが、最近の検査では138mEq/Lと改善している。入院時の低ナトリウム血症は発熱に伴う水分摂取不足や発汗増加、炎症による影響と考えられる。K値は4.0mEq/L→4.2mEq/L(基準値3.5-5.0mEq/L)、Cl値は98mEq/L→100mEq/L(基準値98-108mEq/L)と基準値内で推移しており、電解質バランスは現在良好である。
栄養状態の指標となるAlb値は入院時2.8g/dL(基準値3.5-5.5g/dL)と低アルブミン血症を示していたが、最近の検査では3.6g/dLと基準値内まで回復している。入院時の低アルブミン血症は急性炎症反応による血管透過性亢進や、発熱による代謝亢進、食欲低下による摂取不足などが複合的に影響していると考えられる。治療による炎症の改善と食事摂取の回復に伴い、アルブミン値も改善している。
肝機能に関しては、AST 65U/L→32U/L(基準値10-40U/L)、ALT 58U/L→30U/L(基準値5-40U/L)と、入院時には軽度上昇していたが、現在はほぼ基準値内に改善している。入院時の肝機能異常は川崎病に伴う全身性炎症の影響と考えられる。
炎症マーカーに関しては、CRP 8.5mg/dL→0.5mg/dL(基準値0.0-0.3mg/dL)、ESR 58mm/hr→15mm/hr(基準値3-15mm/hr)、WBC 18,500/μL→9,800/μL(基準値4,000-9,000/μL)と、入院時には著明な炎症反応を認めていたが、治療により著明に改善している。特にCRPはほぼ正常化しており、炎症の改善が確認できる。
血小板数は入院時45.0万/μL→最近52.0万/μL(基準値15.0-35.0万/μL)と、基準値より増加した状態が持続している。血小板増加は川崎病の回復期に特徴的にみられる所見であり、一般的には発症後2〜3週間でピークに達し、その後徐々に正常化するとされている。現時点では想定内の経過と考えられるが、継続的な観察が必要である。
なお、TP、TG、TC、HbA1C、BSについてのデータは報告されていないため、必要に応じて追加検査を検討する必要がある。特に、アスピリン長期内服に伴う代謝への影響を評価するためには、脂質プロファイルや血糖値の評価も有用かもしれない。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の栄養-代謝に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 川崎病の回復期における適切な栄養摂取と水分バランスの維持
- 口腔内症状の残存に伴う食事摂取への影響
- 血小板増加状態の持続に伴う血栓リスク
- アスピリン内服に伴う消化器症状の発症リスク
これらの課題に対する看護介入としては、まず食事摂取状況の継続的な観察と評価を行い、2歳児に適した食形態と食事環境を提供する。現在の小児食7〜8割の摂取を維持・向上させるため、A氏の嗜好を考慮した食事内容の工夫や、食事時の関わり方の指導を行う。口腔内症状が残存している場合は、痛みの少ない食事内容や温度に配慮する。
水分バランスについては、適切な水分摂取を促進し、尿量・尿比重、皮膚ツルゴール、口腔粘膜湿潤度などの観察を通じて脱水の兆候を早期に発見する。現在バイタルサインは安定し、電解質バランスも改善しているが、小児は成人に比べて体液量の変動が大きいため、特に注意深い観察が必要である。
血小板増加状態については、アスピリンによる抗血小板作用を適切に維持するため、確実な内服管理を行う。また、出血傾向(紫斑、血便など)や血栓症状(四肢の冷感、チアノーゼなど)の早期発見に努める。
アスピリン内服に伴う消化器症状については、食後の服用を徹底し、腹部症状(腹痛、吐気、嘔吐など)の有無を観察する。症状出現時は速やかに医師に報告し、対応策を検討する。
両親に対しては、川崎病の経過と栄養管理の重要性について説明し、退院後の食事摂取や内服管理について具体的な指導を行う。特に成長発達期にある小児であるため、バランスの良い食事摂取の継続により栄養状態を維持・向上させることの重要性を伝える。
今後も観察を継続すべき点としては、口腔内状態の変化、体重の推移、食事摂取量の変動、水分バランス、血液データ(特に血小板数、炎症マーカー、アルブミン値)の経過が挙げられる。特に血小板数は経時的な変化を観察し、著明な上昇や高値の持続がある場合は、血栓リスクの観点から医師との協議が必要である。また、回復期から亜急性期にかけて再燃のリスクもあるため、発熱や炎症所見の再燃がないか注意深く観察を続ける必要がある。
排便と排尿の回数と量と性状
A氏は2歳の男児であり、現在おむつを使用中である。入院前の排尿状況は1日6〜7回であり、2歳児として適切な回数である。排尿量や性状に関する具体的な記載はないが、脱水や尿路感染を示唆する異常は報告されていない。現在(入院12日目)の排尿は1日5〜6回であり、入院前と比較してやや減少しているものの、尿量・性状に異常はないとされている。2歳という年齢を考慮すると、おむつ内への排尿であり、正確な尿量測定は困難であるが、おむつの濡れ具合や交換頻度から尿量の概算が可能である。
排便に関しては、入院前は1日1回の普通便で規則的であった。入院後、治療開始直後に一時的な軟便がみられたが、現在は1日1回の普通便に戻っている。治療開始直後の軟便は、免疫グロブリン大量療法やアスピリン内服の影響、あるいは発熱や食事内容の変化による一過性の変化と考えられる。現在は排便回数・性状ともに安定しており、消化管機能は正常に回復していると判断できる。
下剤使用の有無
A氏は下剤を使用していない。入院前から規則的な排便があり、入院中も一時的な軟便の後は通常の排便パターンに戻っているため、下剤使用の必要性はないと考えられる。川崎病自体は消化管機能に直接的な影響を及ぼすものではないが、発熱や食欲低下、活動量の減少、環境変化などにより便秘傾向となることがある。しかしA氏の場合、そのような問題は現時点では生じておらず、自然な排便が維持できている。
in-outバランス
A氏のin-outバランスに関する具体的な数値は記載されていない。入院時には40.0℃の発熱があり、発汗増加や呼吸数増加(32回/分)による不感蒸泄の増加、さらに食欲不振による摂取量減少が重なり、水分バランスの負の状態が懸念された。入院時の血液検査ではNa 132mEq/L(基準値135-145mEq/L)と軽度の低ナトリウム血症を認めており、水分バランスの乱れを反映していると考えられる。
しかし現在は体温36.8℃、呼吸数24回/分と安定しており、発熱に伴う不感蒸泄の増加は改善している。食欲も回復し、小児食を7〜8割摂取できており、水分摂取も良好である。排尿回数は1日5〜6回で尿量・性状に異常はなく、最近の血液検査ではNa 138mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 100mEq/Lと電解質バランスも改善している。これらのことから、現在のin-outバランスは概ね良好と推測されるが、精密な評価のためには摂取量と排泄量の定量的な計測が必要である。
排泄に関連した食事・水分摂取状況
A氏は入院前、離乳食が完了しており、普通食を3食摂取していた。食欲は良好で、偏食なく栄養バランスの取れた食事を摂取できていた。入院直後は発熱や口腔内の痛みにより食欲不振がみられたが、解熱後は徐々に食欲が回復し、現在は小児食を7〜8割摂取できている。水分摂取も良好である。
食物繊維の摂取状況や具体的な水分摂取量に関する情報はないが、規則的な排便が維持されていることから、排泄を促進するための十分な栄養素と水分が摂取できていると考えられる。2歳児の水分必要量は体重1kgあたり約100-120mL/日であり、A氏の体重12kgを考慮すると、1日あたり約1,200-1,440mLの水分が必要である。発熱や発汗、嘔吐、下痢などがある場合はさらに追加の水分補給が必要となるが、現在のA氏はこれらの症状がなく、通常の必要量を目安とした水分摂取が適切である。
安静度・バルーンカテーテルの有無
A氏の安静度は、入院初期は発熱や全身倦怠感により活動性が低下していたが、症状改善後は病室内を自由に歩き回れるようになっており、特に活動制限は設けられていない。バルーンカテーテルの使用に関する記載はないが、自然排尿が可能でおむつ内への排尿が行われていることから、バルーンカテーテルは挿入されていないと判断できる。
活動性の回復は腸蠕動の促進や自然排便の維持にも寄与すると考えられ、排泄機能の観点からも望ましい状態である。ただし、川崎病では回復期においても冠動脈瘤などの合併症リスクがあるため、過度な運動は避け、適度な活動と休息のバランスを取ることが重要である。
腹部膨満・腸蠕動音
A氏の腹部膨満や腸蠕動音に関する具体的な情報は記載されていない。しかし、排便が規則的であり、現在は1日1回の普通便が出ていることから、顕著な腹部膨満や腸蠕動音の異常はないと推測される。川崎病自体は直接的に消化管機能に影響するものではないが、発熱や全身状態の変化、治療薬(特にアスピリン)の影響により、一時的な腸管機能の変化が生じる可能性はある。現時点で排便状況が安定していることから、腸管機能は正常に維持されていると考えられるが、今後のアセスメントのためには腹部の視診(膨満の有無)、触診(軟らかさ、圧痛の有無)、聴診(腸蠕動音の頻度と性状)を定期的に実施することが望ましい。
血液データ(BUN、Cr、GFR)
A氏のBUN、Cr、GFRに関するデータは提供されていない。腎機能の評価のためには、これらの値を確認することが重要である。川崎病自体は直接的に腎機能障害を引き起こすものではないが、発熱に伴う脱水、循環動態の変化、免疫グロブリン大量療法による一時的な腎前性腎機能低下、アスピリンの長期服用による腎への影響などが考慮される。特にアスピリンは抗血小板用量(5mg/kg/日)であっても、長期投与による腎機能への影響が報告されているため、定期的な腎機能評価が必要である。
入院時の検査では尿蛋白(-)、尿潜血(-)、尿白血球2+であったが、最近の検査では尿白血球も(-)となっており、尿所見の改善が確認されている。入院時の尿白血球陽性は、川崎病に伴う全身性炎症反応の一部として、あるいは採尿方法(おむつからの採取など)による混入の可能性も考えられる。現在の尿所見が正常化していることから、明らかな腎・尿路系の炎症は消退していると判断できる。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の排泄に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 排尿・排便状況の継続的なモニタリングの必要性
- 水分バランスの維持
- アスピリン長期服用に伴う腎機能への影響の評価
- 2歳児としての排泄の自立に向けた発達支援
これらの課題に対する看護介入としては、まず排尿・排便の回数、量、性状の観察を継続し、異常の早期発見に努める。特にアスピリン内服に伴う消化管刺激による血便や、血小板増加に伴う血栓形成による排尿障害などの可能性に注意する。
水分バランスの維持については、適切な水分摂取を促進し、尿量・尿性状、皮膚ツルゴール、口腔粘膜湿潤度、バイタルサインなどから脱水の兆候を早期に発見する。特に小児は成人に比べて体液量の変動が大きいため、注意深い観察が必要である。退院後も十分な水分摂取の継続について保護者に指導する。
アスピリン長期服用に対しては、定期的な腎機能評価(BUN、Cr、GFR)と尿検査を実施し、腎機能低下の兆候がないか監視する。腎機能に影響を及ぼす可能性のある薬剤(解熱鎮痛剤など)の併用には注意が必要であり、保護者に対しても自己判断での薬剤使用を避けるよう指導する。
2歳児としての発達支援については、現在はおむつを使用中であるが、今後のトイレトレーニングに向けた準備や支援についても考慮する。入院による生活環境の変化や疾病によるストレスは、排泄の自立に向けた発達に影響を及ぼす可能性があるため、回復期から退院後にかけて、年齢に応じた排泄の自立に向けた支援を保護者と協力して行うことが重要である。
今後も観察を継続すべき点としては、排尿・排便パターンの変化、尿量・性状の異常、腹部症状(膨満、疼痛など)の出現、水分バランスの変動が挙げられる。また、定期的な尿検査や腎機能評価を行い、アスピリン長期服用による影響を監視する必要がある。退院後の外来通院時にも、これらの評価を継続し、成長発達に応じた排泄機能の発達を支援することが重要である。
ADLの状況、運動機能、運動歴、安静度、移動/移乗方法
A氏は2歳の男児であり、入院前は年齢相応の発達を示し、安定した独歩が可能であった。性格は活発で人懐っこく、運動機能を含め認知力は年齢相当であり、発達の問題は認められていない。具体的な運動歴に関する詳細な情報はないが、2歳児として典型的な粗大運動(走る、跳ねる、ボールを蹴るなど)や微細運動(積み木を積む、簡単な描画など)の獲得が推測される。
川崎病と診断され入院となった急性期には、40.0℃の発熱や全身倦怠感により活動性が著しく低下していた。免疫グロブリン大量療法とアスピリン内服による治療開始後24時間で解熱し、全身状態は徐々に改善した。現在(入院12日目)は病室内を自由に歩き回れるようになっており、活動性の回復が確認できる。安静度に関しては特に制限は設けられておらず、年齢に応じた活動が許可されている状態である。しかし川崎病の合併症として心血管系への影響、特に冠動脈瘤形成のリスクがあるため、過度な運動は避けるべきである。入院7日目の心エコー検査で冠動脈の軽度拡張が認められたことから、活動強度に対する医学的評価と指導が継続的に必要である。
ADLに関しては、入院前の状況の詳細は記載されていないが、2歳児として典型的な日常生活動作の獲得段階にあると考えられる。具体的なADL評価としては、歩行は入院前は安定した独歩が可能で、現在も病室内を自由に歩き回れるようになっている。移乗については自力で可能であり、介助は不要である。排泄はおむつを使用中のため、排泄動作自体には介助が必要である。入浴は全介助が必要で、入院初期は全身状態不良のため清拭のみだったが、現在は母親の介助でシャワー浴ができるようになっている。衣類の着脱については上着の脱衣は自分でできるが、着衣や下着の着脱には介助が必要である。食事は自力摂取の程度に関する具体的な記載はないが、2歳児であることを考慮すると、スプーンやフォークを使った自己摂取ができるものの、こぼしや食事の準備には介助が必要と推測される。
バイタルサイン、呼吸機能、職業、住居環境
A氏のバイタルサインは、来院時(4月15日)には体温40.0℃、脈拍140回/分、呼吸数32回/分、血圧96/50mmHg、SpO2 98%(室内気)であり、発熱と頻脈、頻呼吸を認めていた。しかし現在(入院12日目)は体温36.8℃、脈拍100回/分、呼吸数24回/分、血圧88/46mmHg、SpO2 99%(室内気)と、2歳児として正常範囲内に安定している。特に発熱の消失と呼吸数の正常化は、全身状態の改善を示している。
呼吸機能に関しては、川崎病自体は直接的に呼吸器系に影響を及ぼすものではないが、発熱や全身状態不良時には呼吸数増加や酸素需要増大が生じる。現在のSpO2 99%(室内気)という値から、酸素化は良好であり、呼吸機能に問題はないと考えられる。ただし、冠動脈の軽度拡張が認められていることから、心機能の変化に伴う二次的な呼吸機能への影響の可能性も念頭に置く必要がある。呼吸音や呼吸パターン、呼吸困難感の有無などの詳細な評価については情報が不足しているため、継続的な観察と評価が必要である。
A氏の職業は保育園児であり、日中は保育園で過ごしている。住居環境に関する詳細な情報はないが、父親(32歳、会社員)、母親(30歳、専業主婦)、A氏の3人家族であることが記載されている。住居の具体的な状況(住宅の種類、階段の有無、バリアフリー化の程度など)については情報が不足しているため、退院後の生活環境を考慮した支援のためには追加の情報収集が必要である。特に2歳児の活動・運動面での安全確保と、川崎病後の回復過程における適切な環境整備のためには、住居環境の評価が重要となる。
血液データ(RBC、Hb、Ht、CRP)
A氏の血液データについては、入院時(4月19日)および最近(4月30日)の値が報告されている。赤血球関連データでは、RBC 420万/μL→410万/μL(基準値400-550万/μL)、Hb 11.2g/dL→11.0g/dL(基準値11.0-14.0g/dL)、Ht 34.5%→33.8%(基準値33.0-42.0%)と、いずれも基準値内もしくは下限付近で推移しているが、わずかな低下傾向を示している。これは川崎病の急性炎症反応や入院に伴う食事摂取量減少、採血による影響などが考えられるが、臨床的に問題となる貧血の状態ではない。
炎症マーカーであるCRPは入院時8.5mg/dL→最近0.5mg/dL(基準値0.0-0.3mg/dL)と、入院時には著明な炎症反応を認めていたが、治療により著明に改善している。現在のCRP値はほぼ正常化しており、活動・運動の観点からも全身の炎症状態が改善していることを示している。
他の炎症マーカーとしては、ESR 58mm/hr→15mm/hr(基準値3-15mm/hr)、WBC 18,500/μL→9,800/μL(基準値4,000-9,000/μL)と、いずれも改善傾向である。また血小板数は入院時45.0万/μL→最近52.0万/μL(基準値15.0-35.0万/μL)と、基準値より増加した状態が持続しているが、これは川崎病の回復期に特徴的にみられる所見であり、経過としては想定内である。ただし血小板増加が過度となる場合は血栓リスクも考慮する必要があり、運動量や活動強度の調整においても留意すべき点である。
転倒転落のリスク
A氏の転倒転落リスクについては、これまでに転倒歴はないとの記載がある。2歳という年齢を考慮すると、発達段階として歩行や走行、階段の昇降などの粗大運動スキルを獲得する過程にあり、バランス能力や危険認知能力が未熟であるため、一般的に転倒リスクは高いと考えられる。特に入院環境は自宅と異なり、慣れない環境やベッドからの転落リスクもある。
現在の身体状態としては、川崎病の急性期症状は改善し、解熱して全身状態も回復傾向にあるが、入院という環境的要因や治療に伴う一時的な体力低下、また2歳児特有の活発さや好奇心の強さを考慮すると、転倒転落リスクは継続して存在すると評価される。特に病室内を自由に歩き回れるようになり活動性が増していることから、安全面での配慮が必要である。ただし冠動脈の軽度拡張が認められていることから、過度な活動制限は避けつつも、安全な活動環境の整備が重要となる。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の活動-運動に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 川崎病の回復過程における適切な活動・運動レベルの設定と維持
- 冠動脈軽度拡張に伴う心血管系への負担を考慮した活動管理
- 入院環境における2歳児の転倒転落予防
- 発達段階に応じたADLの自立支援と入院による発達への影響の最小化
これらの課題に対する看護介入としては、まず医師と連携し、冠動脈の状態を考慮した適切な活動・運動レベルを設定する。心エコー検査の結果を踏まえた活動指導を継続的に行い、過度な運動による心血管系への負担を避けつつも、年齢に応じた発達促進のための適切な活動を提供する。
バイタルサインの継続的なモニタリングを行い、特に活動前後の脈拍や呼吸数、SpO2の変化に注意する。活動による過度な心拍数増加や呼吸状態の変化がみられる場合は、活動強度の調整が必要である。
転倒転落予防としては、病室環境の整備(不要な物品の除去、足元の確保、ベッド柵の使用など)を行うとともに、両親への安全教育を実施する。特に2歳児の発達特性(好奇心旺盛、危険認知能力の未熟さ)を考慮した見守りの重要性を伝える。
ADLの自立支援としては、入院前のADL状況を詳細に把握し、現在可能なADLレベルを評価した上で、適切な援助と自立促進のバランスを取る。特に衣類の着脱や食事など、部分的に自立している動作については、できる部分は自分で行えるよう支援し、発達の継続を促す。入院による日常生活の変化が発達に与える影響を最小限にするため、年齢に応じた遊びや活動を取り入れた看護計画を立案する。
両親に対しては、退院後の生活における活動・運動の注意点や、冠動脈病変に関連する症状(胸痛、息切れ、顔色不良など)が出現した場合の対応について具体的に指導する。特に保育園復帰に向けた活動レベルの調整や、段階的な日常生活への復帰について説明し、不安の軽減を図る。
今後も観察を継続すべき点としては、活動量・活動強度に伴うバイタルサインの変化、疲労感や息切れなどの自覚症状の有無、冠動脈の状態変化、血液データ(特に炎症マーカーや血小板数)の推移が挙げられる。また、成長発達の視点からADLの自立度や運動機能の発達を継続的に評価し、年齢相応の発達を支援することが重要である。退院後も定期的な外来通院時に、活動・運動状況の評価と指導を継続することで、川崎病後の適切な回復と健全な発達を促進することが必要である。
睡眠時間、熟眠感、睡眠導入剤使用の有無
A氏は2歳の男児であり、入院前の睡眠状況は夜間21時〜7時まで熟睡していたとの記録がある。合計約10時間の夜間睡眠は2歳児として適切な睡眠時間である。一般的に2歳児の睡眠必要量は11〜14時間/日とされており、A氏は夜間睡眠に加え、日中は昼寝を1〜2時間程度とっていたため、合計で11〜12時間の睡眠が確保できていたと推測される。入院前の睡眠の質についても「熟睡していた」との記載があり、睡眠の質に問題はなかったと考えられる。
川崎病と診断され入院となった急性期(入院当初)は、発熱や治療による不快感から夜間の睡眠が断続的であったと報告されている。40.0℃の高熱、全身倦怠感、口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌、体幹部を中心とした発疹、手足の硬性浮腫などの症状は、身体的不快感を引き起こし、睡眠の質と量に悪影響を与えていたと考えられる。また、入院環境という慣れない場所での就寝や、点滴などの医療処置も睡眠を妨げる要因となっていた可能性がある。
しかし、免疫グロブリン大量療法とアスピリン内服による治療開始後24時間で解熱し、症状が改善したことに伴い、睡眠状態も改善している。現在(入院12日目)は症状改善後、夜間の睡眠状態は良好となったと報告されている。また日中も活動的になり、午後に1時間程度の昼寝をとっているとの記載がある。これは2歳児の典型的な昼寝パターンであり、年齢に応じた休息が取れていると判断できる。
A氏の睡眠において、眠剤等の使用はないとの記載がある。2歳という年齢を考慮すると、睡眠導入剤の使用は一般的でなく、自然な睡眠・覚醒リズムの形成が望ましい。入院当初の睡眠障害に対しても薬物療法ではなく、基礎疾患の治療と症状緩和によって睡眠改善が図られたことは適切な対応である。
睡眠の質に関する詳細な評価(入眠潜時、中途覚醒の頻度、睡眠時の体動やいびきの有無など)については情報が不足しているため、これらの観点からの継続的な観察と評価が必要である。特に川崎病に伴う冠動脈の軽度拡張が認められていることから、睡眠中の循環動態の安定性や呼吸状態についても注意深い観察が望ましい。
日中/休日の過ごし方
A氏の入院前の日中の過ごし方については、保育園児であるとの記載から、平日は保育園で過ごしていたと推測される。保育園での具体的な活動内容や休日の過ごし方に関する詳細な情報はないが、「活発で人懐っこく」との性格描写から、他児との交流や様々な遊びを通して活動的に過ごしていたと考えられる。日中の活動量や内容は睡眠の質と量に直接影響するため、入院前は適度な活動と休息のバランスが取れていたと推測される。
入院中の日中の過ごし方に関しては、急性期には発熱や全身倦怠感により活動性が低下していたが、症状改善後は病室内を自由に歩き回れるようになり、「病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった」との記載がある。また、現在は「日中も活動的になり、午後に1時間程度の昼寝をとっている」と報告されている。
これらの情報から、A氏は症状の改善に伴い、日中の活動性も回復し、2歳児として適切な活動と休息のパターンを取り戻しつつあると判断できる。ただし、入院環境という制約があるため、保育園や自宅での日常生活と比較すると活動の種類や範囲は限定されている可能性がある。特に同年代の子どもとの交流や、戸外での活動などが制限されていることは、発達段階にある2歳児にとって考慮すべき点である。
入院中の日中の活動内容(遊びの種類、玩具の使用状況、家族や医療者との関わりなど)や、活動と休息のバランス(活動時間と休息時間の配分、疲労感の有無など)については詳細な情報が不足しているため、これらの点についての観察と評価を継続する必要がある。また、点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられることがあるとの記載があり、医療処置による心理的ストレスが日中の過ごし方や睡眠にも影響を与える可能性がある。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の睡眠-休息に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 入院環境における良質な睡眠の確保と睡眠-覚醒リズムの維持
- 川崎病の回復過程に応じた適切な活動と休息のバランスの調整
- 医療処置による心理的ストレスへの対応と睡眠への影響の軽減
- 退院後の生活リズムへの円滑な移行支援
これらの課題に対する看護介入としては、まず入院環境における良質な睡眠を促進するため、夜間の環境調整(適切な室温、照明、騒音レベルの管理)を行う。特に2歳児は環境変化の影響を受けやすいため、入眠前の静かな環境づくりや、可能であれば自宅から持参したお気に入りのぬいぐるみや毛布などを使用し、安心感を提供する。また、夜間の医療処置やバイタルサイン測定などは、可能な限り睡眠を妨げないよう時間帯を調整する。
日中の活動については、A氏の体力や体調に合わせた遊びや活動を提供し、過度な疲労を避けつつも、年齢に応じた発達促進と適度な身体活動を確保する。特に冠動脈の軽度拡張が認められていることから、活動強度と持続時間のバランスに配慮し、疲労感や循環動態の変化に注意しながら活動を調整する。午後の昼寝の時間と長さを一定に保ち、夜間の睡眠への影響が最小限となるよう配慮する。
医療処置に対する恐怖感については、処置前の十分な説明と精神的準備、ディストラクション技法の活用などにより、ストレスと不安を軽減する。特に就寝前の処置は可能な限り避け、安心して入眠できる環境を整える。
両親に対しては、入院中の睡眠パターンや日中の過ごし方について情報共有を行い、協力して一貫したアプローチを取ることで、A氏の安心感と生活リズムの安定を図る。また、退院後の生活リズムへの円滑な移行に向けて、入院中から規則正しい睡眠-覚醒リズムの維持を意識した関わりを行い、退院後の生活リズムについても具体的な指導を行う。
今後も観察を継続すべき点としては、睡眠の質と量(入眠状況、中途覚醒の有無、熟眠感など)、日中の活動状況と疲労度、体調変化と睡眠パターンの関連、成長発達に応じた睡眠-覚醒リズムの変化などが挙げられる。特に川崎病の治療経過や冠動脈の状態変化に伴う活動制限の調整と、それに伴う睡眠への影響についても注意深く観察する必要がある。
退院後の生活においては、保育園への復帰時期や活動レベルの調整、規則正しい生活リズムの再確立についても、両親と協力して計画的に進めることが重要である。特に2歳という発達段階は、自律性の発達や自己調整能力の獲得が進む重要な時期であるため、入院による生活リズムの変化がこれらの発達に与える影響を最小限にするよう配慮することが必要である。
意識レベル、認知機能
A氏は2歳の男児であり、川崎病の診断で入院している。入院時(4月19日)は40.0℃の発熱と全身倦怠感を認めていたが、意識レベルに関する明確な記載はない。高熱時には一般的に意識レベルの軽度低下や傾眠傾向を示す可能性があるが、川崎病診断時の主要症状として意識障害は典型的ではなく、記録上も意識障害を示唆する記載はない。治療開始後は24時間で解熱し、全身状態は徐々に改善しており、現在(入院12日目)のバイタルサインは安定している。これらの経過から、現在の意識レベルは清明であると推測される。
認知機能に関しては、「認知力は年齢相当であり、発達の問題は認められていない」との記載があり、2歳児として標準的な認知発達を示していると考えられる。2歳頃の認知発達としては、言語理解や表出言語の発達、象徴的思考の出現、模倣遊びの増加、簡単な問題解決能力の獲得などが挙げられるが、これらの具体的な評価については詳細な情報がない。ただし、「言葉の発達も年齢相応である」との記載から、言語面での発達は順調であると判断できる。
入院による環境変化や疾病体験が認知機能に与える影響については情報が少ないが、「現在は笑顔も見られる」との記載から、心理的安定が得られつつあり、周囲への関心や反応も回復していると考えられる。ただし、「点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられることがある」との記載もあり、医療処置に対する認知的理解と情緒的反応については継続的な評価と支援が必要である。
聴力、視力
A氏の聴力と視力については、「視力・聴力は年齢相応で問題なし」と明確に記載されている。2歳児の標準的な視覚発達としては、両眼視機能の発達、遠近感の認識、視覚的集中力の向上などが進み、聴覚発達としては、言語音の弁別能力の向上、聴覚的理解力の発達、音源定位能力の確立などが進む時期である。A氏はこれらの視聴覚発達が年齢に応じて進んでいると考えられる。
聴力・視力に直接的な影響を与える川崎病の症状や合併症は一般的に少ないが、高熱や全身状態の変化により一時的な認知・知覚機能への影響はありうる。特に高熱時には視聴覚情報の処理能力が低下することがあるが、解熱した現在では回復していると推測される。ただし、川崎病の治療に使用される免疫グロブリンやアスピリンによる聴覚・視覚系への副作用の可能性も念頭に置き、継続的な観察が必要である。
また、入院環境は自宅と比較して視聴覚刺激が制限される可能性があり、発達段階にある2歳児の視聴覚発達を考慮した環境調整や刺激提供も重要である。特に言語発達が活発な時期であるため、コミュニケーションの機会や適切な視聴覚教材の提供などを通じて、入院中も発達を促進することが望ましい。
認知機能
A氏の認知機能については前述の通り「認知力は年齢相当であり、発達の問題は認められていない」との記載があるが、認知機能の具体的な側面(注意力、記憶、言語理解、問題解決能力、社会的認知など)に関する詳細な評価は記録されていない。2歳という年齢を考慮すると、言語を通じた認知機能評価には限界があり、行動観察や遊びを通じた機能評価が主となる。
A氏の性格は「活発で人懐っこく」と記載されており、社会的認知や対人関係の発達が良好であることが推測される。また、「病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった」との記載から、環境への適応能力や探索行動も回復していると考えられる。これらは認知機能の発達が順調であることを間接的に示唆している。
川崎病の急性期症状である高熱や全身倦怠感は、一時的に認知機能に影響を与える可能性があるが、症状改善後は認知機能も回復すると考えられる。特に冠動脈の軽度拡張が認められているため、循環動態の変化に伴う脳血流への影響も理論上は考慮すべきだが、現時点で認知機能障害を示唆する所見はない。
不安の有無、表情
A氏の心理状態については、川崎病の急性期には「不機嫌で啼泣が多かった」との記載があり、身体的不快感や環境変化による心理的ストレスを経験していたことがうかがえる。しかし、症状改善後の現在は「笑顔も見られる」と報告されており、心理的安定が得られつつあると判断できる。ただし、「点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられることがある」との記載もあり、医療処置に対する特異的な不安や恐怖は継続している。
表情に関しては、不機嫌時の啼泣から笑顔への変化が確認されており、情緒表現の回復がみられる。2歳児は言語表現能力が限られるため、表情やしぐさ、行動などの非言語的コミュニケーションを通じて心理状態を評価することが重要である。A氏の場合、笑顔の出現は心理的安定の指標として重要であり、啼泣は不安や苦痛の表現として捉えることができる。
A氏の両親、特に母親は「初めて聞く病気で、心臓に影響があると聞いて不安です」「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」と予後に関する質問を繰り返しており、疾患に対する不安を抱えていることが明らかである。幼児期の子どもは親の情緒状態に敏感に反応するため、両親の不安がA氏の心理状態に影響を与える可能性も考慮する必要がある。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の認知-知覚に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 入院環境における発達段階に応じた認知・知覚刺激の提供
- 医療処置に対する恐怖感への対応
- 両親の不安がA氏に与える心理的影響の軽減
- 退院後の成長発達モニタリングと支援
これらの課題に対する看護介入としては、まず発達段階に応じた認知・知覚刺激を提供するため、年齢に適した玩具や絵本、活動を取り入れた関わりを行う。特に言語発達が活発な時期であるため、会話や歌、読み聞かせなどを通じて言語刺激を豊かに提供する。また、視覚・聴覚・触覚など多感覚を刺激する遊びを取り入れ、認知発達を促進する。
医療処置に対する恐怖感への対応としては、年齢に応じた説明とプレパレーション(処置の前準備)を行い、見通しを持てるようにする。処置中はディストラクション技法(気をそらす方法)を用いて不安や痛みの軽減を図る。処置後は頑張りを認め、肯定的な体験として記憶できるよう支援する。可能であれば処置の回数や時間を最小限にし、心理的負担を軽減する工夫も必要である。
両親の不安に対しては、川崎病と治療に関する適切な情報提供を行い、疑問に丁寧に答えることで不安軽減を図る。特に予後や合併症に関する正確な情報と、現在のA氏の回復状況を具体的に伝えることで、両親が現実的な見通しを持てるよう支援する。両親自身が情緒的に安定することで、間接的にA氏の心理的安定にも寄与する。
退院後の成長発達モニタリングと支援については、退院時に発達段階の評価を行い、両親に対して年齢に応じた発達促進の方法や観察ポイントを指導する。特に川崎病の治療に伴う活動制限が発達に与える影響を最小限にするための具体的な助言を行う。また、定期的な外来受診時に発達状況の評価を継続し、必要に応じて支援を提供することも重要である。
今後も観察を継続すべき点としては、認知・言語発達の進捗、医療処置に対する反応の変化、表情や感情表現の多様性、親子関係の質、環境への適応状態などが挙げられる。特に医療処置への恐怖感が長期的な医療トラウマに発展しないよう、細心の注意と適切な介入が必要である。また、冠動脈病変の経過観察のために定期的な検査が必要となるため、検査への適応を促進する支援も継続的に行うことが重要である。
性格
A氏は2歳の男児であり、「活発で人懐っこく」と記述されている。この性格特性は、2歳児として健全な発達を示す重要な指標である。活発さは身体的・社会的探索行動の原動力となり、人懐っこさは対人関係の形成と社会性の発達を促進する要素である。これらの特性は、エリクソンの発達理論における「自律性対恥・疑惑」の段階にある2歳児にとって、自己主張や自己調整の発達に関わる重要な性格要素である。
言葉の発達も年齢相応であるとの記載から、自己表現の手段としての言語獲得も順調に進んでいると考えられる。この時期の言語発達は自己と他者の境界認識や自己意識の形成にも影響を与えるため、自己概念の発達においても重要な要素である。
入院という環境変化や疾病体験がA氏の性格表出に与えた影響としては、急性期には「不機嫌で啼泣が多かった」との記載があり、身体的不快感や不安による一時的な行動変化が認められたが、症状改善後は「笑顔も見られる」ようになり、本来の性格特性が回復しつつあると考えられる。ただし、「点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられることがある」との記載から、医療処置に対する特異的な恐怖反応は継続しており、これは2歳児の認知発達段階を考慮すると自然な反応である。
川崎病の治療経過と症状改善に伴い、A氏の本来の活発で人懐っこい性格が徐々に表出するようになっており、「病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった」との記載からも、環境への適応と自己表現の回復が確認できる。
ボディイメージ
A氏のボディイメージに関する直接的な記載はないが、2歳という発達段階を考慮すると、身体の基本的な認識と身体部位の名称理解が発達する時期である。自分の身体を認識し、身体を通じた環境操作や自己表現を行う能力が発達する重要な時期にあたる。
川崎病の症状として両眼の結膜充血、口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌、体幹部を中心とした発疹、手足の硬性浮腫といった身体的変化を経験し、現在は手指の膜様落屑(皮むけ)が観察されている状態である。これらの身体的変化がA氏のボディイメージにどのような影響を与えているかについては明確な記載はないが、2歳児は身体の変化に対する認知的理解は限定的であるものの、身体感覚の変化や外見の変化による不快感は感じ取ることができる。
特に手指の膜様落屑などの目に見える変化は、自己身体に対する関心や疑問を喚起する可能性がある。しかし、記録上は皮膚症状に対するA氏の反応や認識についての具体的な記載がないため、これらの身体的変化がA氏のボディイメージにどのように影響しているかについては、追加の観察と評価が必要である。
また、点滴や検査などの医療処置も身体への侵襲を伴うものであり、これらの経験が身体の境界認識や安全感に影響を与える可能性もある。「処置の際には啼泣がみられる」との記載は、こうした身体への侵襲に対する不安や抵抗を示しているとも解釈できる。
疾患に対する認識
A氏は2歳であり、川崎病という疾患の医学的概念や長期的影響について認知的に理解する能力は発達段階から考えて限られている。疾患に対する認識は主に身体感覚の変化(発熱、倦怠感、痛みなど)や、治療に伴う体験(点滴、検査、服薬など)を通じて形成されると考えられる。
記録上、A氏自身の疾患に対する言語的表現や認識についての具体的な記載はないが、「点滴や検査に対する恐怖感」から処置時に啼泣が見られることが報告されており、医療処置を通じた疾患体験に対する情緒的反応は認められる。この反応は疾患そのものというよりも、処置に伴う不快感や不安に対するものであるが、幼児期の疾患認識においては、こうした具体的な体験を通じた理解が中心となる。
一方、両親、特に母親は「初めて聞く病気で、心臓に影響があると聞いて不安です」「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」と予後に関する質問を繰り返しており、疾患に対する不安と理解の必要性を示している。両親の疾患理解と対応は、間接的にA氏の疾患体験にも影響を与える可能性があるため、両親の疾患認識も重要な観察ポイントである。
自尊感情
A氏の自尊感情に関する直接的な評価や記載はないが、2歳という発達段階では、自尊感情の基盤となる自己効力感(自分でできるという感覚)や自律性(自分で選択・決定する能力)が発達する重要な時期にある。入院環境では日常的な自己決定の機会が制限されたり、医療処置により自分の身体への統制感が脅かされたりする体験が生じうる。
A氏の場合、入院初期の急性症状時には活動性が低下し、ADLにおいても多くの援助が必要な状態であったと推測されるが、症状改善後は「病室内を自由に歩き回れるようになった」「病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった」との記載があり、自発的な活動と環境への働きかけが回復している。これらの自発的行動は自己効力感の回復を示唆するものと考えられる。
ADLに関しては、「上着の脱衣は自分でできる」との記載があり、部分的に自立した行動が可能であることが確認できる。このような「できること」の経験は、自尊感情の発達において重要な要素である。一方で、「着衣や下着の着脱には介助が必要」であり、また入院環境下では日常的に様々な制約や援助を受ける状況にあるため、自律性の発達や自己効力感の形成に影響を与える可能性がある。
医療処置場面での反応として「処置の際には啼泣がみられる」との記載があるが、これは2歳児として自然な反応であり、不快な状況に対する自己防衛や感情表現の適切な発達とも解釈できる。ただし、処置に対する過度の恐怖や抵抗が長期化することで、無力感や自己統制感の低下につながる可能性もあるため、発達段階に応じた説明やプレパレーション、処置中のコーピング支援が重要である。
育った文化や周囲の期待
A氏の育った文化的背景や周囲の期待に関する具体的な情報は限られているが、いくつかの基本的情報から推測される要素がある。家族構成は父親(32歳、会社員)、母親(30歳、専業主婦)、A氏の3人家族であり、キーパーソンは母親である。特定の宗教的背景はないとの記載がある。
両親の年齢や職業構成、核家族という形態は現代日本の標準的な家族形態に合致しており、母親が主な養育者として家庭内でのケアを担い、父親が経済的基盤を支える役割分担が推測される。「父親は仕事が忙しいが、休日には面会に来ており」との記載からも、この役割分担が確認できる。
両親の期待や養育態度に関しては、「早く元気になってほしい」という父親の言葉や、母親が治療に協力的であり医療者からの説明を熱心に聞いている様子から、A氏の健康と回復を最優先していることがうかがえる。また、「A氏の今後の成長発達に対する不安を抱えているが、医療者の説明を前向きに受け止めようとする姿勢」が見られるとの記載から、両親は子どもの健全な発達を願いつつ、医療的助言を受け入れる柔軟性を持っていると考えられる。
職業は保育園児であるとの記載から、A氏は保育園に通園しており、同年代の子どもたちとの集団生活を経験していると推測される。保育園環境では、基本的な生活習慣の獲得や社会性の発達、集団での活動などが期待されることが一般的であり、こうした環境での経験はA氏の社会的自己概念の形成にも影響を与えていると考えられる。
ただし、両親の養育スタイルや家庭内のルール、保育園での具体的な経験や期待などについての詳細な情報はないため、A氏の自己概念形成に影響を与えるこれらの環境要因については、追加の情報収集が必要である。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の自己知覚-自己概念に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 入院環境と疾病体験がA氏の自律性発達と自己効力感に与える影響
- 医療処置に対する恐怖感への対応と肯定的な医療体験の促進
- 身体的変化(症状や治療に伴う変化)がボディイメージに与える影響の評価
- 両親の疾患理解と不安がA氏に与える影響の軽減
- 2歳という発達段階における自己概念の健全な発達支援
これらの課題に対する看護介入としては、まず発達段階に応じた自律性の支援を行うため、A氏が選択したり決定したりする機会を日常的なケアの中に意図的に組み込む。例えば、食事の選択、着替える衣服の選択、遊びの内容や時間の選択など、年齢に応じた範囲で自己決定の体験を提供する。また、「上着の脱衣は自分でできる」など、現在できることを肯定的に強化し、できることの範囲を徐々に広げていく支援を行う。
医療処置に対する恐怖感への対応としては、発達段階に適したプレパレーション(処置の説明と心理的準備)を行い、処置中はディストラクション技法(気をそらす方法)を用いて不安や痛みの軽減を図る。処置後は頑張りを具体的に言語化して認め、達成感を持てるよう支援する。医療処置が必要な理由を年齢に応じた言葉で説明し、処置を「悪いことをしたから」という誤った認識にならないよう配慮する。
身体的変化に関しては、A氏が自分の身体の変化に気づいたり質問したりした際には、発達段階に応じた簡潔で具体的な説明を提供する。特に手指の膜様落屑など目に見える変化については、「良くなっているしるし」といった肯定的な枠組みで理解できるよう支援する。また、年齢に応じた身体像の認識を促すために、人形や絵本などを用いた遊びを取り入れることも有効である。
両親に対しては、川崎病と治療に関する適切な情報提供を継続し、疑問や不安に丁寧に対応することで、両親自身の不安軽減と適切な疾患理解を促進する。特に「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」という予後に関する質問には、現時点で判明している事実と、治療による改善の見込みを具体的に説明する。両親が落ち着いた態度でA氏に接することができれば、間接的にA氏の安心感と自己価値感の安定にも寄与する。
発達段階に応じた自己概念の発達支援としては、年齢に適した遊びや活動を通じて、自己表現や自己効力感を育む機会を提供する。特に成功体験や自己達成感を味わえる活動を取り入れ、「自分でできた」という経験を積み重ねることを支援する。また、言語発達が活発な時期であるため、感情や身体感覚を表現する言葉を教え、自己認識と自己表現の発達を促進する。
今後も観察を継続すべき点としては、A氏の情緒表現の変化(笑顔や啼泣の頻度と状況)、自発的活動の内容と範囲、医療処置への反応の変化、身体的変化への気づきや反応、言語による自己表現の発達、両親とのかかわりの質などが挙げられる。特に退院が近づくにつれて、保育園への復帰や家庭生活への移行に伴う自己概念の変化にも注目し、継続的な評価と支援を行うことが重要である。
また、退院後のフォローアップにおいても、川崎病の経過観察のための定期的な通院や、アスピリン内服の継続など治療に伴う体験がA氏の自己概念形成に与える長期的影響を考慮し、発達段階に応じた説明と支援を継続することが必要である。
職業、社会役割
A氏は2歳の男児であり、職業は保育園児である。発達段階的には幼児期早期にあたり、この時期の主な社会的役割は家庭における「子ども」としての役割と、保育園における「園児」としての役割である。2歳児の社会的発達としては、並行遊びから協同遊びへの移行が始まり、他者との関わりの中で基本的な社会的スキルを獲得していく時期である。また、言語発達が進み、「言葉の発達も年齢相応である」との記載から、コミュニケーション能力も発達しつつあると考えられる。
保育園での具体的な活動内容や対人関係については詳細な情報がないが、「活発で人懐っこく」という性格描写から、保育園環境にも適応し、他児や保育者との関わりを持っていると推測される。保育園という集団生活の場では、基本的な生活習慣の獲得や社会的ルールの理解、他者との協調性などが育まれる環境にあると考えられる。
川崎病による入院は、これらの通常の社会的役割の遂行を一時的に中断させる出来事である。入院期間が12日以上に及んでいることから、保育園での活動や同年代の子どもたちとの交流が制限されている状態が続いており、社会的発達への影響も考慮する必要がある。特に2歳という言語発達や社会性の発達が著しい時期であるため、入院環境における発達支援と、退院後の保育園復帰に向けた準備が重要となる。
入院環境における社会的役割としては、「患者」という新たな役割を経験している。2歳児の認知発達段階では「患者」という抽象的な役割の理解は難しいが、治療や処置を受ける体験、医療者との関わり、入院生活のルーティンなどを通じて、新たな環境における役割を学習していると考えられる。「点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられる」との記載は、この新たな役割への適応過程における心理的反応とも解釈できる。
入院12日目の現在は、「病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった」との記載から、入院環境にも徐々に適応し、活動範囲を広げていることが確認できる。これは、入院という新たな環境においても、発達段階に応じた社会的活動を再開しつつあることを示している。
家族の面会状況、キーパーソン
A氏の家族構成は父親(32歳、会社員)、母親(30歳、専業主婦)、A氏の3人家族であり、キーパーソンは母親である。両親の面会状況については、「母親は医療者からの説明を熱心に聞き、治療に協力的である」との記載から、母親は頻繁に面会に来ていると推測される。一方、父親については「仕事が忙しいが、休日には面会に来ており」との記載があり、職業上の制約はあるものの可能な範囲で面会していることが確認できる。
キーパーソンである母親は、専業主婦という立場を活かしてA氏の入院生活を支えており、医療者との連携役も担っている。「初めて聞く病気で、心臓に影響があると聞いて不安です」「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」と予後に関する質問を繰り返していることから、A氏の疾患と将来に対する強い関心と不安を抱えていることがわかる。また、「退院後の生活や予防接種の再開時期についても質問しており」との記載から、退院後の生活における母親としての役割遂行に関する具体的な情報を求めていることが理解できる。
父親は仕事という社会的役割を担いつつも、可能な範囲で家族としての役割も果たそうとしている。「早く元気になってほしい」という言葉からは、父親としての思いや関心が表現されている。ただし、平日は仕事により面会が制限されているため、入院中のA氏の日常的なケアや意思決定には母親が中心的な役割を担っている状況と考えられる。
A氏と両親の関係性については、詳細な情報は限られているが、両親が「A氏の今後の成長発達に対する不安を抱えているが、医療者の説明を前向きに受け止めようとする姿勢」が見られるとの記載から、子どもの健康と発達を第一に考える保護的・支持的な関係性が形成されていると推測される。2歳という発達段階は、親子の愛着関係が確立しつつも、自律性や独立心が芽生える時期であり、入院という状況下でもこの発達課題を支援する親子関係が維持されることが重要である。
祖父母や親戚など、拡大家族との関係性については情報がなく、家族の社会的サポートネットワークについても情報収集が必要である。特に退院後の生活や、アスピリン内服の継続、定期的な通院などの療養生活をサポートするための家族資源を評価することが重要である。
経済状況
A氏の家族の経済状況については直接的な情報は記載されていない。家族構成は父親(32歳、会社員)、母親(30歳、専業主婦)、A氏の3人家族であり、収入源は父親の給与収入であると推測される。父親の具体的な職種や収入レベル、家庭の経済的基盤の安定性などについての詳細は不明であり、追加の情報収集が必要である。
川崎病の治療には入院費用、免疫グロブリン大量療法(高額な治療法である)、アスピリン内服、各種検査費用など、相当の医療費が発生する。また、入院期間が12日以上に及んでおり、今後も定期的な外来通院や検査が必要となることから、継続的な医療費負担が予想される。小児の場合、医療費助成制度などの社会保障制度が適用される可能性があるが、家族が適切な経済的支援を受けているかどうかについての情報はない。
父親が「仕事が忙しい」との記載があることから、職業上の責任や立場がある可能性がうかがえるが、入院に伴う休業や面会のための休暇取得なども経済的影響を与える可能性がある。また、母親は専業主婦であり、A氏のケアに集中できる反面、家計への経済的貢献は限られると考えられる。
住居環境や生活水準、保育園の種類(公立か私立か)などの情報も経済状況を把握する上で重要であるが、これらについての詳細も不明である。
医療費や経済状況に関する不安や質問についての記載はないため、現時点では経済的問題が表面化していない可能性もあるが、長期的な治療と管理が必要となる川崎病の特性を考慮すると、経済状況の評価と必要に応じた支援は重要な視点である。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の役割-関係に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 入院による保育園児としての社会的役割の中断と発達への影響
- 両親、特に母親の疾患理解と不安への対応
- 家族の役割調整と退院後の生活への準備
- 経済状況の評価と必要に応じた社会資源の活用支援
これらの課題に対する看護介入としては、まず入院中の発達支援として、年齢に応じた遊びや活動を提供し、社会性の発達を促進する環境を整える。可能であれば同年代の子どもとの交流機会を作り、社会的スキルの維持・発達を支援する。また、入院環境における新たな「患者」としての役割への適応を促すため、発達段階に応じた説明とプレパレーションを行い、医療処置や検査への理解と協力を促進する。
退院後の保育園復帰に向けては、徐々に日常生活リズムを取り戻すための具体的な計画を立案し、両親と共有する。特に川崎病の後遺症として冠動脈瘤のリスクがあることを考慮し、保育園での活動レベルや注意点について両親に具体的な指導を行う。また、保育園側への情報提供の内容や方法についても両親と相談し、スムーズな社会復帰を支援する。
両親への支援としては、特に母親の疾患に対する不安や質問に丁寧に対応し、正確で理解しやすい情報提供を継続する。「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」といった予後に関する質問には、現時点での医学的知見に基づいた説明を行い、不確実性を伴う場合はその旨も伝える。また、退院後の生活や予防接種の再開時期などの具体的な質問に対しても、明確なガイドラインを提供し、親としての役割遂行を支援する。
父親に対しては、限られた面会時間でも効果的に関わることができるよう支援し、A氏の入院状況や治療経過について適切な情報提供を行う。また、家族内の役割分担と調整を促し、母親への精神的・実質的なサポートの重要性についても伝える。
経済状況については、まず詳細な評価を行い、必要に応じて医療費助成制度や社会福祉制度の情報提供と申請支援を行う。特に川崎病の治療と経過観察に関わる医療費負担の軽減策や、利用可能な社会資源についての情報を提供することが重要である。また、両親の就労状況や経済的基盤について理解し、必要に応じて医療ソーシャルワーカーなどの専門職と連携した支援を検討する。
今後も観察を継続すべき点としては、A氏の社会的活動の範囲と内容(遊びの種類、他者との関わり方など)、両親の面会パターンとA氏への関わり方、両親の疾患理解の進展と不安の変化、家族の役割調整の状況などが挙げられる。特に退院が近づくにつれて、家族の準備状況や不安の変化、社会復帰に向けた具体的な計画などを詳細に評価し、必要な支援を提供することが重要である。
また、退院後のフォローアップにおいても、保育園での適応状況や、定期的な外来通院のための家族の調整、アスピリン内服の継続など治療管理における家族の役割遂行を評価し、継続的な支援を提供することが必要である。特に冠動脈病変の経過観察が3か月程度必要となることから、この期間の家族の役割調整と、A氏の社会的発達支援についても継続的に関わることが重要である。
年齢、家族構成、更年期症状の有無
A氏は2歳の男児であり、家族構成は父親(32歳、会社員)、母親(30歳、専業主婦)、A氏の3人家族である。2歳という年齢は乳幼児期にあたり、この発達段階における性的発達としては、自己の身体への関心や性別の認識が芽生え始める時期である。フロイトの心理性的発達理論では2歳前後は肛門期にあたり、排泄のコントロールを通じて自律性を獲得していく段階とされている。エリクソンの心理社会的発達理論においては「自律性対恥・疑惑」の段階であり、自己制御と独立心の発達が中心的な課題となる。
2歳児の性的発達の特徴としては、自分の体に対する好奇心や関心が高まり、自他の身体の違いへの気づきが生じ始める時期である。また、性別による社会的役割の違いや、ジェンダーに関連する社会的メッセージに対する感受性も高まる時期である。ただし、A氏の性別認識や性役割の発達に関する具体的な情報は記録されていない。
A氏の家族構成は核家族であり、父親と母親という両親と同居している。両親は30代前半であり、生殖年齢にある。父親は会社員として就労しており、母親は専業主婦として家庭を担っているという、伝統的な性役割分担がみられる家族形態である。この家族環境はA氏の性役割認識の発達に影響を与える可能性があるが、両親の具体的な養育態度や性役割観についての情報は記録されていない。
A氏の両親の年齢を考慮すると、更年期症状はまだ発現していない年代である。父親は32歳、母親は30歳であり、一般的な更年期(女性では45-55歳頃、男性では40-60歳頃)には達していない。したがって、更年期症状の有無についての評価は現時点では該当しない。
A氏は川崎病と診断され入院加療中であるが、川崎病自体は性・生殖機能に直接的な影響を及ぼす疾患ではない。ただし、長期的な視点では、成長過程における疾病体験や治療経験が、自己イメージや身体イメージの形成に間接的な影響を与える可能性がある。特に2歳という自己意識が形成される重要な時期に入院という体験をすることで、身体に対する認識や医療処置への反応などが、後の性的発達にも微妙な影響を与える可能性は理論的には考えられる。
A氏の身体発達状況としては、身長88cm、体重12kgであり、2歳児として標準的な体格である。第二次性徴はまだ発現していない年齢であり、生殖器の発達も幼児期の段階にある。現時点での性成熟に関する医学的評価の必要性は低いが、健全な身体発達の一部として、発達段階に応じた身体イメージの形成を支援することは重要である。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の性-生殖に関する主な健康管理上の課題としては、以下の点が挙げられる。
- 発達段階に応じた身体認識と自己イメージの形成支援
- 入院環境における適切なプライバシーの確保
- 両親への子どもの性発達に関する教育的支援
これらの課題に対する看護介入としては、まず発達段階に応じた身体認識を支援するために、入浴やおむつ交換など日常的なケアの場面を通じて、身体部位の適切な名称を用いた関わりを行う。2歳児は自分の身体への関心が高まる時期であり、入院中の処置や検査などでも、年齢に応じた説明と対応を行い、身体への侵襲的処置が否定的な身体イメージにつながらないよう配慮する。
入院環境におけるプライバシーの確保としては、処置や清潔ケアの際にはカーテンを閉めるなどの配慮を徹底し、発達段階に応じたプライバシー意識の芽生えを尊重する。また、他患児との共有スペースでの活動時にも、適切な衣服の着用や、必要に応じたプライバシーの確保に配慮する。
両親への支援としては、子どもの性発達に関する基本的な知識や、年齢に応じた対応について情報提供を行う。特に2歳頃から性別認識や身体への関心が高まることや、この時期の好奇心や質問に対する適切な応答の仕方などについてガイダンスを提供することが有益である。また、入院という特殊な環境での子どものプライバシー確保について、両親と医療者が共通理解を持つことも重要である。
川崎病の治療においては、アスピリンの長期内服が必要となる可能性があるが、小児期のアスピリン投与が将来の生殖機能に及ぼす影響についての具体的なエビデンスは限られている。ただし、川崎病の予後や治療に関する説明の中で、両親から子どもの将来的な健康や発達に関する質問があれば、発達段階に応じた情報提供を行うことが望ましい。
今後も観察を継続すべき点としては、A氏の自己身体への関心や認識の発達、プライバシーに関する反応、両親の関わり方などが挙げられる。また、成長に伴う発達段階の変化に応じて、性・生殖に関する健康教育のニーズも変化していくため、年齢に適した継続的な評価と支援が必要である。
さらに、A氏と両親の関係性や家族の価値観も、性・生殖に関する発達に影響を与える重要な要素であるため、継続的な関わりの中でこれらの側面にも注意を払うことが重要である。特に父親と母親の性役割観や養育態度が、A氏の性別アイデンティティの形成に与える影響についても、長期的な視点で評価していくことが有益である。
2歳という年齢を考慮すると、現時点での性・生殖に関する課題は限定的であるが、健全な発達の基盤となる身体イメージの形成や自己認識の発達を支援することは、将来の性的健康の観点からも重要である。入院という体験がネガティブな身体イメージにつながらないよう配慮しつつ、年齢に応じた適切なケアと教育的支援を提供することが、現段階での主要な看護的アプローチとなる。
入院環境
A氏は2歳の男児であり、川崎病の診断により入院加療中である。入院環境に関する具体的な情報(病室の種類、同室者の有無、設備状況など)は記録上明確ではないが、入院12日目を迎えていることから、比較的長期の入院環境への適応が求められる状況にある。この状況は2歳児にとって大きな環境変化であり、ストレス要因となりうる。
入院初期には40.0℃の発熱や両眼の結膜充血、口唇の紅潮・亀裂、イチゴ舌、発疹、手足の硬性浮腫といった川崎病の症状により身体的不快感を強く感じていたと推測される。この時期は「不機嫌で啼泣が多かった」との記載があり、身体的苦痛と環境変化による心理的ストレスの両方を経験していたと考えられる。免疫グロブリン大量療法とアスピリン内服による治療開始後24時間で解熱し、全身状態は徐々に改善した結果、現在は「笑顔も見られる」ようになり、「病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった」と報告されている。
しかし、「点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられる」との記載があり、医療処置に対する特異的なストレス反応は継続している。入院中の医療処置は2歳児にとって理解が難しく、身体への侵襲を伴うものであるため、強いストレス要因となることは発達心理学的にも理解できる反応である。
入院環境への適応を支援する要素としては、母親(キーパーソン)が頻繁に面会に来ていること、父親も休日には面会に来ていることが挙げられる。家族の存在は2歳児にとって安心感の源泉であり、ストレスコーピングを助ける重要な環境要因である。また、「午後に1時間程度の昼寝をとっている」との記載から、ある程度の生活リズムも確立されつつあると考えられ、これも環境適応を促進する要素となる。
入院環境における遊びや活動の機会、他の子どもとの交流の有無、病室の物理的環境(音、光、温度、プライバシーなど)についての詳細な情報は記録されていないが、これらの要素も2歳児の環境適応とストレスコーピングに大きく影響するため、追加の評価が望ましい。
仕事や生活でのストレス状況、ストレス発散方法
A氏は2歳の男児であり、「仕事」に相当するのは保育園児としての活動である。入院前の保育園での具体的な活動内容やストレス状況に関する詳細な情報は記録されていないが、「活発で人懐っこく」との性格描写から、保育園環境への適応は比較的良好であったと推測される。
入院による保育園生活の中断は、日常的な活動や社会的交流の制限をもたらし、発達段階に応じた刺激や体験の機会が限られることになる。これは2歳児にとって潜在的なストレス要因となりうるが、A氏の場合、症状改善後は「病棟内で遊ぶ姿も見られるようになった」との記載があり、新たな環境でも活動を再開できていることは肯定的な適応の兆候である。
2歳児のストレス発散方法は主に遊びや身体活動、感情表現、愛着対象との交流などを通じて行われる。A氏の場合、具体的なストレス発散方法についての記載は限られているが、「病棟内で遊ぶ姿」が見られることから、遊びを通じたストレス発散の機会が確保されていると考えられる。また、両親との面会時間も情緒的安定を促進するストレス発散の機会となっていると推測される。
一方で、「点滴や検査に対する恐怖感」から生じるストレスへの対処は現在も課題であり、2歳児の認知発達段階を考慮したストレスコーピング支援が必要である。年齢相応のディストラクション技法(気を紛らわす方法)や、予測可能性を高めるプレパレーション(心理的準備)などが有効である可能性がある。
川崎病の症状自体もストレス要因となるが、治療による症状改善が進んでいる現在は、身体的不快感によるストレスは軽減していると考えられる。ただし、入院12日目の現在も手指の膜様落屑(皮むけ)が観察されており、これによる不快感や違和感がストレス源となる可能性も考慮する必要がある。
家族のサポート状況、生活の支えとなるもの
A氏の家族構成は父親(32歳、会社員)、母親(30歳、専業主婦)、A氏の3人家族であり、キーパーソンは母親である。家族のサポート状況としては、母親は「医療者からの説明を熱心に聞き、治療に協力的である」と記載されており、積極的に医療者と連携してA氏の治療とケアに関わっていることが確認できる。また、父親は「仕事が忙しいが、休日には面会に来ており」、可能な範囲で家族としてのサポートを提供している。
両親は「退院後の生活や予防接種の再開時期についても質問しており」、A氏の今後の健康管理に対する関心と責任感を示しており、退院後のサポート体制も見据えていることがうかがえる。また、「医療者の説明を前向きに受け止めようとする姿勢が見られる」との記載から、情報を適切に取り入れ、状況に適応しようとする姿勢も確認できる。
一方で、両親、特に母親は「初めて聞く病気で、心臓に影響があると聞いて不安です」「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」と予後に関する質問を繰り返しており、A氏の疾患と将来に関する強い不安を抱えていることも明らかである。両親自身のストレスとコーピング状況も、A氏へのサポート提供能力に影響するため、両親の心理的支援も重要な視点である。
家族以外のサポート源(祖父母、親戚、友人、地域社会など)についての情報は記録されておらず、退院後の社会的サポートネットワークの評価のためには追加情報が必要である。特に長期的な治療管理が必要となる川崎病の特性を考慮すると、家族を支える広範なサポートシステムの評価と活用は重要である。
A氏にとっての「生活の支えとなるもの」については具体的な記載はないが、2歳という発達段階を考慮すると、両親との愛着関係、日常的な遊びや活動、好みの玩具や絵本、規則的な生活リズムなどが考えられる。入院環境においても、これらの「支え」を可能な限り維持することがストレス耐性を高める上で重要である。特に母親がキーパーソンであることを考慮すると、母親との安定した関わりがA氏の情緒的安定の中心的な要素と推測される。
健康管理上の課題と看護介入
A氏のコーピング-ストレス耐性に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 2歳児の発達段階を考慮した入院環境への適応支援
- 医療処置に対する恐怖感への対応と適切なコーピング方法の確立
- 両親、特に母親の不安への対応とサポート能力の強化
- 退院後の生活適応とストレス管理の準備
これらの課題に対する看護介入としては、まず発達段階に応じた入院環境の調整を行い、年齢に適した遊びや活動の機会を意図的に提供する。入院環境を可能な限り予測可能で安全なものとし、日常的なルーティンや儀式(就寝前の絵本読み聞かせなど)を取り入れることで、環境変化によるストレスを軽減する。両親との面会時間を有効に活用し、情緒的な安定感を提供する機会を確保する。
医療処置に対する恐怖感への対応としては、年齢に応じたプレパレーション(処置の説明と心理的準備)を行い、見通しを持てるようにする。絵本やぬいぐるみなどを用いたモデリングや、処置中のディストラクション技法(気をそらす方法)を積極的に活用し、恐怖体験の緩和を図る。また、処置後には頑張りを具体的に認め、肯定的な体験として記憶できるよう支援する。2歳児は言語理解が限られるため、視覚的な手がかりや身体的な安心感を提供する方法が特に有効である。
両親への支援としては、川崎病と治療に関する正確でわかりやすい情報提供を継続し、疑問や不安に丁寧に対応する。特に予後や合併症に関する質問には、現時点での医学的知見に基づいた説明を行い、不確実性を伴う場合はその旨も誠実に伝える。両親自身のストレスコーピング能力を評価し、必要に応じて情緒的サポートや具体的な対処法の提案を行う。また、両親がA氏のストレス反応を理解し、適切に対応するための教育的支援も提供する。
退院後の生活適応の準備としては、徐々に日常生活リズムを取り戻すための具体的な計画を立案し、両親と共有する。退院後のフォローアップ体制(外来通院、電話相談など)を明確にし、必要時のサポート源を確保する。アスピリン内服の継続や定期的な検査などの治療管理に伴うストレスを最小限にするための工夫について具体的に指導し、家庭生活の中でのストレス発散方法についても両親と話し合う。
今後も観察を継続すべき点としては、A氏の情緒表現の変化、遊びの内容と質、医療処置への反応の変化、両親との関わりの様子などが挙げられる。特に退院が近づくにつれて、環境移行に伴うストレス反応や適応過程を注意深く観察し、必要な支援を提供することが重要である。
また、退院後のフォローアップにおいても、保育園への再適応状況、家庭生活でのストレス反応、定期的な通院に伴う反応などを評価し、継続的な支援を提供することが必要である。特に3か月程度のアスピリン内服継続と定期的な心エコー検査が必要となることから、この期間の家族のストレス管理と対処能力の強化が重要である。
信仰、意思決定を決める価値観/信念、目標
A氏は2歳の男児であり、川崎病の診断で入院加療中である。信仰に関しては、「特定の宗教的背景はなし」と明確に記載されている。宗教的な実践や儀式、信仰に基づく健康観や治療に対する制限などは認められず、現在の医療的介入に対する宗教的な障壁はないと考えられる。
2歳という発達段階においては、価値観や信念の形成は初期段階にあり、主に養育者である両親の価値観や生活様式を通じて間接的に影響を受ける時期である。エリクソンの心理社会的発達理論によれば、2歳頃は「自律性対恥・疑惑」の段階であり、自分の行動を自己制御する能力と、周囲からの期待や制約のバランスを学ぶ重要な時期である。この時期の発達課題の達成は、後の信念体系の基盤となる自己効力感や自己価値感の形成に影響を与える。
A氏自身の価値観や信念を直接的に評価することは発達段階から考えて難しいが、日常生活における選好や行動パターン、情緒的反応などを通じて、個性的な傾向を観察することは可能である。「活発で人懐っこく」という性格描写からは、外向的で社会的な交流を好む傾向が推測される。また、「点滴や検査に対する恐怖感から、処置の際には啼泣がみられる」との記載は、身体的な安全や快適さを重視する傾向を示唆しているかもしれない。しかし、これらは2歳児としての自然な反応であり、確立された価値観というよりは、発達段階に応じた自己表現と解釈するのが適切である。
A氏の家族環境に着目すると、両親の価値観や養育姿勢がA氏の初期的な価値・信念形成に大きな影響を与えると考えられる。記録からは、両親が子どもの健康と将来の発達を重視する価値観を持っていることがうかがえる。「初めて聞く病気で、心臓に影響があると聞いて不安です」「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」という母親の質問からは、子どもの長期的な健康に対する関心と価値付けが読み取れる。また、「退院後の生活や予防接種の再開時期についても質問しており」という記載からは、予防的健康行動を重視する姿勢もうかがえる。
父親の「早く元気になってほしい」という言葉からは、子どもの健康回復への強い願いが表現されている。また、「仕事が忙しいが、休日には面会に来ており」という記述からは、仕事の責任と家族への責任のバランスを取ろうとする価値観が推測される。両親は「医療者の説明を前向きに受け止めようとする姿勢が見られる」と記載されており、医療的助言を尊重し、子どもの健康のために積極的に行動する姿勢を持っていることがわかる。
目標に関しては、A氏自身の明示的な目標設定は2歳という年齢から考えて困難であるが、発達段階に応じた達成課題(自立的な移動、言語発達、社会的相互作用の向上など)が暗黙の目標となる。入院という状況下では、健康の回復と平常な発達過程への復帰が当面の目標となる。家族の目標としては、「早く元気になってほしい」という父親の言葉に表現されているように、A氏の健康回復と通常の成長発達の継続が挙げられる。また、「退院後の生活や予防接種の再開時期についても質問しており」という記載からは、退院後の健康管理と正常な生活リズムの再確立も目標として認識されていることがうかがえる。
意思決定に関しては、2歳児のA氏自身の意思決定能力は限られており、医療的意思決定は両親、特にキーパーソンである母親が担っている。両親は医療者の説明を熱心に聞き、治療に協力的であることから、医療者との情報共有と協働を重視する意思決定パターンが推測される。また、両親が医療者からの説明を求め、疑問点を質問する姿勢は、情報に基づいた意思決定を志向していることを示唆している。
A氏の治療については、「免疫グロブリン大量療法(2g/kg)の点滴静注とアスピリン(30mg/kg/日)の内服を開始した」と記載されており、標準的な川崎病治療が実施されている。この治療方針に対する両親の同意や治療選択に関する価値観についての詳細な記述はないが、「治療に協力的」という記載から、医学的権威や専門知識を尊重する姿勢がうかがえる。
健康管理上の課題と看護介入
A氏の価値-信念に関する主な健康管理上の課題として、以下の点が挙げられる。
- 2歳という発達段階における自律性の発達支援と入院環境による制約のバランス
- 両親の価値観や健康信念の理解と尊重
- 発達段階に応じた意思表明の機会の確保
- 家族の文化的・個人的価値観に基づく退院後の健康管理計画の立案
これらの課題に対する看護介入としては、まず2歳児の発達段階を考慮した自律性支援を行うために、日常的なケアや活動の中で選択の機会を意図的に設ける。例えば、食事内容や遊びの選択、着替える衣服の選択など、年齢に応じた範囲で自己決定の体験を提供する。これにより、入院環境による制約がある中でも、発達課題である自律性の獲得を支援することができる。
両親の価値観や健康信念については、より詳細な理解を深めるために、オープンな対話を通じて家族の価値体系や健康に関する考え方を探索する。特に「この病気は完全に治るのですか?」「後遺症が残ることはありますか?」という質問の背景にある懸念や価値観を丁寧に聞き取り、両親の視点から治療や健康管理を捉え直すことが重要である。これにより、両親の価値観に沿った説明や支援を提供することができる。
A氏の意思表明の機会については、言語発達がまだ限られている2歳児の非言語的コミュニケーション(表情、態度、行動など)に注意深く観察し、A氏の選好や意思を読み取る努力を行う。特に医療処置の際の「啼泣」という反応を単なる恐怖反応と捉えるだけでなく、自己の境界や安全に関する意思表明として尊重し、可能な範囲で対応を調整する。例えば、処置の時間帯や方法、環境設定などに関して、A氏の反応に基づいた微調整を行うことで、自己効力感や自己価値感の発達を支援する。
退院後の健康管理計画については、両親の価値観や生活様式を尊重した実践可能な計画を協働で立案する。「退院後の生活や予防接種の再開時期についても質問しており」という記載から、両親が予防的健康行動に価値を置いていることがうかがえるため、この点を強化した健康教育を提供する。また、家族の日常生活リズムや習慣を理解し、アスピリン内服の継続や定期的な通院などの医療的要件をどのように組み込むかについて、具体的な方策を両親と共に検討する。
今後も観察を継続すべき点としては、A氏の自己表現の発達と意思表明の方法の変化、両親の疾患理解と健康信念の進展、家族の意思決定パターンの特徴などが挙げられる。特に退院が近づくにつれて、両親の治療継続や健康管理に関する考え方や優先順位の変化にも注目し、必要に応じて追加の支援を提供することが重要である。
また、長期的な視点では、A氏が成長するにつれて自身の価値観や健康信念を形成していく過程にも注意を払い、発達段階に応じた健康教育と自己管理能力の育成を支援することが必要である。特に川崎病という疾患体験が将来的な健康観や医療に対する態度にどのような影響を与えるかについても、長期的なフォローアップの中で評価していくことが望ましい。
看護計画
看護問題
冠動脈の軽度拡張に関連した心血管系合併症のリスク
長期目標
退院後3か月までに冠動脈の軽度拡張が改善し、心血管系合併症が発症しない
短期目標
1週間以内に冠動脈の状態に変化がなく、活動耐性に合わせた日常生活が送れる
≪O-P≫観察計画
バイタルサインの変動(特に脈拍、血圧)を1日4回測定する
活動前後の心拍数と呼吸数の変化を観察する
顔色、唇色、爪床色などのチアノーゼの有無を確認する
呼吸状態(呼吸数、呼吸パターン、呼吸音)を観察する
疲労感や息切れなどの自覚症状の有無を観察する
食欲や活動性の変化を観察する
胸部痛や不快感を示す表情や行動の有無を観察する
浮腫の出現や増悪の有無を観察する
心エコー検査の結果と冠動脈の状態変化を確認する
アスピリン内服後の副作用(出血傾向、消化器症状など)の有無を観察する
血液データ(特に炎症マーカー、血小板数)の推移を確認する
発熱や炎症所見の再燃がないか観察する
≪T-P≫援助計画
年齢と状態に合わせた適切な活動と休息のバランスを確保する
過度な身体的負担を避け、段階的に活動を拡大する
アスピリンを確実に服用できるよう、シロップ剤に混ぜて提供する
定期的な心エコー検査を円滑に受けられるよう準備と介助を行う
検査前にはプレパレーションを行い、恐怖感を軽減する
適切な水分摂取を促し、循環血液量を維持する
日常的なバイタルサイン測定が円滑に行えるよう環境を整える
疲労時には速やかに休息がとれるよう環境を整える
年齢に応じた遊びを通して、適度な活動を確保する
室温や湿度を適切に保ち、環境ストレスを最小限にする
感染予防のための環境整備と手指衛生を徹底する
清潔ケアを通じて皮膚の観察と循環状態を確認する
≪E-P≫教育・指導計画
冠動脈病変の経過観察の重要性と今後の見通しについて説明する
アスピリン内服の目的と正確な投与方法について指導する
アスピリン内服中の注意点(出血傾向など)について説明する
退院後に注意すべき心臓症状(胸痛、息切れ、顔色不良など)とその対応について説明する
退院後の適切な活動レベルと段階的な活動拡大の方法について指導する
定期的な外来受診の必要性と頻度について説明する
感染予防の重要性と具体的な方法について指導する
発熱時の対応と速やかな受診の必要性について説明する
看護問題
医療処置に対する恐怖感に関連した心理的ストレス
長期目標
退院までに医療処置に対する過度の恐怖感が軽減し、心理的ストレスが最小限になる
短期目標
1週間以内に医療処置時の啼泣が減少し、ディストラクション技法が効果的に活用できる
≪O-P≫観察計画
医療処置前、処置中、処置後の表情や行動の変化を観察する
啼泣の頻度、強さ、持続時間を観察する
医療処置に対する恐怖反応の変化(増強または軽減)を観察する
処置に対する抵抗の程度や対処行動の変化を観察する
ディストラクション技法の効果を観察する
両親の存在が処置時の反応に与える影響を観察する
睡眠パターンの変化や夜間覚醒の有無を観察する
食欲や遊びへの関心など日常生活への影響を観察する
処置後の気分の回復スピードを観察する
特定の医療者や処置に対する特異的な反応の有無を観察する
年齢に応じたコミュニケーションの理解度や反応を観察する
プレパレーションへの反応や効果を観察する
≪T-P≫援助計画
処置前に年齢に適したプレパレーションを実施する
処置中はディストラクション技法(歌、おもちゃ、絵本など)を活用する
処置は可能な限りまとめて行い、侵襲的処置の回数を最小限にする
処置は同じ医療者が担当し、信頼関係を構築する
処置の時間帯は機嫌の良い時間を選択する
処置中は両親の付き添いを可能な限り確保する
処置時は温かく落ち着いた環境を整える
処置後は頑張りを具体的に褒め、肯定的な体験として記憶できるよう支援する
処置後は好きな遊びや活動を提供し、気分転換を図る
点滴固定部位の工夫や装飾で不快感や恐怖感を軽減する
医療器具に親しみを持てるよう、遊びの中に取り入れる
処置時の抱っこやタッチングなど、身体的な安心感を提供する
年齢に応じた自己選択や自己決定の機会を提供する
≪E-P≫教育・指導計画
両親に2歳児の発達段階と恐怖反応の関連について説明する
医療処置の目的と必要性を両親に説明し、子どもへの説明方法を指導する
処置前のプレパレーションの重要性と方法を両親に指導する
効果的なディストラクション技法とその活用方法を両親に指導する
処置時の両親の関わり方(言葉かけ、タッチング等)について指導する
処置後の肯定的なフィードバックの重要性と方法を指導する
退院後の通院や処置に向けた心理的準備の方法を指導する
医療処置に対する恐怖感が長期化した場合の対応方法について説明する
看護問題
疾患に対する両親の不安に関連した家族の対処能力の低下
長期目標
退院時に両親が川崎病に関する適切な知識を持ち、自信を持って退院後の健康管理を行える
短期目標
1週間以内に両親が川崎病の治療と経過について基本的な理解を示し、医療者と協働して入院中のケアに参加できる
≪O-P≫観察計画
両親の不安の表出内容と頻度を観察する
予後に関する質問の具体的内容と理解度を確認する
両親の表情や態度から不安レベルの変化を観察する
医療者からの説明に対する反応や理解度を観察する
両親のA氏への関わり方や面会態度の変化を観察する
面会時間の長さや頻度を観察する
両親間のコミュニケーションや役割分担の状況を観察する
退院後の生活や通院に関する質問内容を観察する
両親のケアへの参加度や積極性の変化を観察する
アスピリン内服管理への理解度と実践状況を観察する
冠動脈病変に関する説明への反応と理解度を観察する
家族のサポート体制や社会的資源の活用状況を観察する
≪T-P≫援助計画
定期的な面談の機会を設け、両親の不安や疑問に対応する
面会時間を柔軟に調整し、両親がA氏と十分に関わる時間を確保する
面会時には両親が安心して過ごせる環境を整える
医師や他職種を含めたカンファレンスを開催し、情報共有と方針の統一を図る
両親が理解しやすい言葉で川崎病と治療に関する情報提供を行う
退院後の生活イメージが具体的に持てるよう、退院計画を早期から話し合う
両親のケアへの参加を促し、成功体験を通じて自信を高める
アスピリン内服の管理方法を実際に練習する機会を提供する
同様の経験をした他の家族の体験談や情報を提供する(プライバシーに配慮)
退院後の相談先や緊急時の連絡方法を明確に伝える
両親の心理的負担が軽減できるよう、傾聴と共感的対応を心がける
退院前に外泊を計画し、自宅での生活の練習機会を提供する
≪E-P≫教育・指導計画
川崎病の病態、治療、予後について正確でわかりやすい説明を行う
冠動脈病変の経過と定期的な観察の重要性について説明する
アスピリン内服の目的、方法、期間、注意点について具体的に指導する
退院後の生活上の注意点(活動レベル、感染予防など)について説明する
外来通院のスケジュールと内容について説明する
発熱や冠動脈症状出現時の対応と受診の目安について指導する
保育園復帰の時期と注意点について説明する
予防接種の再開時期と計画について説明する
成長発達に応じた観察ポイントと支援方法について指導する
地域の医療・福祉サービスや患者会などの社会資源について情報提供する
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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