- 事例の要約
- 疾患の解説
- ゴードンのアセスメント
- ヘンダーソンのアセスメント
- 正常に呼吸するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 適切に飲食するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- あらゆる排泄経路から排泄するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 睡眠と休息をとるというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 適切な衣類を選び、着脱するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 体温を生理的範囲内に維持するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにするというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 自分の信仰に従って礼拝するというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 達成感をもたらすような仕事をするというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加するのニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- “正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させるというニーズのポイント
- どんなことを書けばよいか
- 看護計画
- 免責事項
事例の要約
9月15日に婦人科病棟に入院し、9月17日に腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術を受けた50歳女性の事例を作成した。現在は術後5日目(9月22日)で、疼痛管理と早期離床を進めながら退院に向けた準備を行っている段階である。
基本情報
A氏、50歳、女性、身長158cm、体重56kg。家族構成は夫(52歳)と長女(22歳・社会人)、次女(19歳・大学生)の4人家族で、キーパーソンは夫である。職業は事務職で、性格は几帳面で真面目、やや心配性な傾向がある。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、梅毒陰性で感染症はなく、アレルギーも特にない。認知力は正常で、見当識も保たれている。
病名
右卵巣粘液性嚢胞腺腫。9月17日に腹腔鏡下右卵巣腫瘍摘出術を施行した。
既往歴と治療状況
35歳時に帝王切開による次女の出産歴がある。40歳時に子宮筋腫を指摘されたが経過観察中で、現在も月経時の過多月経があるものの特に治療は行っていない。45歳頃から高血圧を指摘され、降圧薬を内服中である。その他に特記すべき既往歴はない。
入院から現在までの情報
8月下旬から下腹部の違和感と膨満感を自覚し、9月初旬に近医を受診したところ、超音波検査で右卵巣に約8cmの腫瘤性病変を指摘された。精査目的で当院婦人科を紹介受診し、造影CTとMRI検査の結果、右卵巣粘液性嚢胞腺腫と診断された。悪性の可能性は低いものの、腫瘍径が大きく茎捻転のリスクもあるため、手術適応と判断され9月15日に入院となった。入院時は特に自覚症状は強くなく、バイタルサインも安定していた。
9月16日に術前検査と麻酔科診察を実施し、9月17日に全身麻酔下で腹腔鏡下右卵巣腫瘍摘出術を施行した。手術時間は2時間45分、出血量は少量で、術中所見では腫瘍は右卵巣から発生しており、周囲臓器への浸潤や腹水貯留は認めなかった。右卵巣のみを摘出し、左卵巣と子宮は温存された。術後は帰室後より経過観察を行い、術後1日目(9月18日)から離床を開始した。疼痛は術後から継続しているが、鎮痛薬でコントロール可能な範囲である。術後2日目(9月19日)から食事を開始し、排ガスも確認された。術後3日目(9月20日)にドレーンを抜去し、創部の状態も良好である。
現在は術後5日目(9月22日)で、疼痛は軽減傾向にあり、歩行も自立している。創部の発赤や腫脹はなく、感染徴候も認めていない。退院に向けて日常生活動作の確認と退院指導を進めている段階である。
バイタルサイン
来院時のバイタルサインは、体温36.4℃、血圧128/78mmHg、脈拍72回/分で整、呼吸数16回/分、SpO2 98%(室内気)であった。現在(術後5日目、9月22日)のバイタルサインは、体温36.8℃、血圧120/74mmHg、脈拍68回/分で整、呼吸数18回/分、SpO2 97%(室内気)であり、すべて正常範囲内で安定している。
食事と嚥下状態
入院前は自宅で普通食を摂取しており、1日3食規則正しく食べていた。食欲は良好で、嚥下障害もなかった。喫煙歴はなく、飲酒は月に1〜2回程度ビールをグラス1杯程度飲む程度であった。
現在は術後食(常食)を提供されており、食事摂取量は8割程度である。術後の疼痛や緊張から食欲がやや低下しているが、少しずつ改善傾向にある。嚥下状態は良好で、水分摂取も問題なく行えている。
排泄
入院前は自宅のトイレで自立して排泄しており、排便は1日1回、普通便であった。下剤等の使用はなく、排尿も日中5〜6回程度で特に問題はなかった。
術後は尿道カテーテルを留置していたが、術後1日目(9月18日)に抜去された。抜去後は自力排尿が可能となり、残尿感や排尿痛はない。排尿回数は日中6〜7回程度で、夜間は1回程度である。排便は術後3日目(9月20日)に初回排便があり、やや硬めの便であったが、その後は1日1回のペースで普通便が出ている。下剤の使用はしていない。
睡眠
入院前は自宅で23時頃に就寝し、6時頃に起床する生活パターンで、睡眠時間は約7時間であった。寝つきは良好で、中途覚醒もなく、熟睡感もあり、眠剤等の使用はなかった。
入院後は病院の環境に慣れないことと術後の疼痛から、やや入眠困難と中途覚醒が見られた。術後2日目(9月19日)と3日目(9月20日)は眠剤(ゾルピデム5mg)を使用したが、術後4日目(9月21日)からは眠剤なしでも入眠できるようになり、現在は睡眠時間約6時間確保できている。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は両眼とも1.0で、眼鏡やコンタクトレンズは使用していない。聴力も正常で、補聴器等の使用はない。知覚については、四肢の感覚障害はなく、痛覚・触覚・温度覚ともに正常である。コミュニケーション能力は良好で、日本語での会話に問題はなく、意思疎通もスムーズに行える。特定の信仰は持っていない。
動作状況
入院前は日常生活動作すべてにおいて自立しており、歩行、移乗、排泄、入浴、衣類の着脱はすべて介助なく行えていた。転倒歴もなかった。
術後は手術当日から術後1日目午前中までベッド上安静であったが、術後1日目(9月18日)午後から離床を開始し、看護師付き添いのもとで歩行を開始した。術後2日目(9月19日)からは病棟内を自立歩行しており、トイレへの移動も自立している。移乗や排泄、衣類の着脱も自立して行えている。入浴はまだ許可されていないが、清拭は自分で行えている。転倒のリスクは低く、術後の回復は順調である。
内服中の薬
- アムロジピン錠5mg 1錠 1日1回朝食後(降圧薬)
- ロキソプロフェンナトリウム錠60mg 1錠 1日3回毎食後(鎮痛薬、術後疼痛管理のため追加)
- レバミピド錠100mg 1錠 1日3回毎食後(胃粘膜保護薬、ロキソプロフェンの副作用予防)
検査データ
| 項目 | 入院時(9/15) | 術後3日目(9/20) | 基準値 |
|---|---|---|---|
| WBC(白血球) | 6,800 /μL | 9,200 /μL | 3,300-8,600 /μL |
| RBC(赤血球) | 4.25 ×10⁶/μL | 3.98 ×10⁶/μL | 3.86-4.92 ×10⁶/μL |
| Hb(ヘモグロビン) | 13.2 g/dL | 11.8 g/dL | 11.6-14.8 g/dL |
| Ht(ヘマトクリット) | 39.5 % | 36.2 % | 35.1-44.4 % |
| Plt(血小板) | 268 ×10³/μL | 312 ×10³/μL | 158-348 ×10³/μL |
| CRP(C反応性蛋白) | 0.08 mg/dL | 1.52 mg/dL | 0.00-0.14 mg/dL |
| TP(総蛋白) | 7.2 g/dL | 6.8 g/dL | 6.6-8.1 g/dL |
| Alb(アルブミン) | 4.3 g/dL | 3.9 g/dL | 4.1-5.1 g/dL |
| AST | 22 U/L | 28 U/L | 13-30 U/L |
| ALT | 18 U/L | 24 U/L | 7-23 U/L |
| BUN(尿素窒素) | 14.2 mg/dL | 16.8 mg/dL | 8-20 mg/dL |
| Cr(クレアチニン) | 0.68 mg/dL | 0.72 mg/dL | 0.46-0.79 mg/dL |
| Na(ナトリウム) | 140 mEq/L | 138 mEq/L | 138-145 mEq/L |
| K(カリウム) | 4.1 mEq/L | 4.3 mEq/L | 3.6-4.8 mEq/L |
| Cl(クロール) | 103 mEq/L | 102 mEq/L | 101-108 mEq/L |
服薬は看護師管理で行っており、毎食後に看護師が配薬し、内服確認を行っている。
今後の治療方針と医師の指示
病理検査の結果は良性の粘液性嚢胞腺腫であり、悪性所見は認められなかった。術後経過は順調で、創部の治癒状態も良好であるため、9月24日(術後7日目)の退院を予定している。退院後は外来でフォローアップを行い、術後2週間後に抜糸を予定している。その後は3ヶ月後、6ヶ月後、1年後に定期受診し、超音波検査で左卵巣の状態と術後の経過観察を行う方針である。日常生活については、退院後1週間は重いものを持つことや激しい運動は避け、徐々に活動量を増やしていくよう指導されている。職場復帰は術後3週間後を目安としている。
本人と家族の想いと言動
A氏は「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでしたが、良性だとわかって本当に安心しました」と話している。また、「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです。早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と退院を楽しみにしている様子が見られる。一方で、「左の卵巣にも何か起きないか心配です。定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」と今後の健康管理に対する意識も高い。
夫は「妻が手術を受けると聞いて心配でしたが、無事に終わって本当に良かったです」と安堵の表情を見せている。また、「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします。娘たちにも協力してもらうつもりです」と退院後のサポート体制についても前向きに考えている。長女と次女も面会に訪れ、「お母さん、無理しないでね。家のことは私たちも手伝うから」と声をかけており、家族全体でA氏の回復を支えようとする姿勢が見られる。
疾患の解説
疾患名
卵巣粘液性嚢胞腺腫(Ovarian Mucinous Cystadenoma)
疾患の概要
卵巣粘液性嚢胞腺腫は、卵巣に発生する良性の腫瘍です。卵巣表層上皮由来の腫瘍で、内部に粘液を含む嚢胞(液体の入った袋状の構造)が形成されます。卵巣腫瘍の中では比較的頻度が高く、30〜50歳代の女性に多く見られます。
病態生理
卵巣の表層上皮が増殖し、粘液を産生する細胞で構成された嚢胞性の腫瘍が形成されます。嚢胞内には粘稠なゼリー状の粘液が貯留し、腫瘍は徐々に増大します。通常は単房性または多房性の嚢胞として発育し、腫瘍径が大きくなると周囲組織を圧迫したり、茎捻転(腫瘍の付け根がねじれる)のリスクが高まります。A氏の場合、約8cmの大きさまで増大しており、茎捻転のリスクが手術適応の判断理由の一つとなっています。
主な症状
- 無症状:小さい腫瘍では自覚症状がないことが多い
- 下腹部の違和感や膨満感:腫瘍が増大すると周囲組織を圧迫(A氏も8月下旬から自覚)
- 腹部腫瘤の触知:大きくなると自分で触れることもある
- 圧迫症状:頻尿、便秘などが生じることがある
- 急性腹症:茎捻転が起こると激しい腹痛、嘔気、嘔吐が出現
診断方法
- 超音波検査(エコー):嚢胞性病変の有無、大きさ、内部構造を評価(A氏も近医で発見)
- CT検査:腫瘍の詳細な形態、周囲組織との関係を評価
- MRI検査:良性・悪性の鑑別、粘液性の特徴的な画像所見を確認
- 腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど):粘液性腫瘍で上昇することがある
- 病理組織検査:手術後に確定診断を行う(A氏も術後に良性と確定)
治療方法
基本的には外科的切除が治療の中心です。
腹腔鏡下手術
- A氏が受けた手術方法で、現在の標準的アプローチ
- 下腹部に数カ所の小さな穴を開け、カメラと器具を挿入して腫瘍を摘出
- 開腹手術に比べて、創が小さく、術後の回復が早い、疼痛が少ないなどの利点がある
- 腫瘍のみ、または腫瘍のある卵巣のみを摘出(A氏は右卵巣のみ摘出、左卵巣と子宮は温存)
開腹手術
- 腫瘍が非常に大きい場合や、悪性が疑われる場合に選択されることがある
経過観察
- 小さな腫瘍で症状がない場合、定期的な画像検査で経過を見ることもある
- ただし、増大傾向や茎捻転のリスクがある場合は手術が推奨される
予後
良性腫瘍であるため、予後は良好です。手術で完全に摘出されれば、再発のリスクは低くなります。ただし、片側の卵巣のみを摘出した場合(A氏のケース)、残存する卵巣に将来的に腫瘍が発生する可能性があるため、定期的な経過観察が重要です。A氏は術後2週間後の抜糸、その後3ヶ月、6ヶ月、1年後と定期受診し、超音波検査で左卵巣の状態を確認する予定です。
術後の回復については、腹腔鏡下手術の場合、多くの患者が1〜2週間で日常生活に復帰でき、3〜4週間で職場復帰が可能となります。
看護のポイント
術前のケア
- 患者の不安を傾聴し、手術や予後について正確な情報提供を行うとよいでしょう
- 腫瘍が良性であっても、「腫瘍」という言葉から悪性を連想し不安を抱く患者が多いため、丁寧な説明と心理的サポートが重要です
術後の観察
- バイタルサインの変化:出血や感染の徴候を早期に発見するため、特に術後24〜48時間は注意深く観察するとよいでしょう
- 創部の状態:腹腔鏡の創部は小さいですが、発赤、腫脹、浸出液、疼痛の増強などの感染徴候を観察するとよいでしょう
- 疼痛の程度:術後疼痛は創部痛だけでなく、気腹(腹腔鏡手術でガスを注入)による肩の痛みが出現することもあるため、疼痛の部位と程度を確認し、適切な鎮痛薬の使用を検討するとよいでしょう
- 排尿・排便状況:尿道カテーテル抜去後の自力排尿の状況、排便の有無を観察し、腸蠕動の回復を確認するとよいでしょう
早期離床の促進
- 術後合併症(肺炎、深部静脈血栓症など)の予防のため、術後早期からの離床を促すとよいでしょう
- 疼痛コントロールを適切に行い、患者が安心して離床できるよう支援することが大切です
退院指導
- 日常生活の注意点:重いものを持つ、激しい運動を避けるなど、術後1〜2週間の生活制限について具体的に説明するとよいでしょう
- 創部のケア:シャワー浴の可否、創部の観察方法、異常時の対応について指導するとよいでしょう
- 定期受診の重要性:残存卵巣の経過観察の必要性を説明し、定期受診の継続を促すとよいでしょう。A氏のように健康管理意識が高い患者には、その姿勢を支持し、不安を軽減する関わりが効果的です
- 家族のサポート体制:退院後の家事負担の軽減など、家族の協力体制を確認し、必要に応じて調整するとよいでしょう
心理的サポート
- 卵巣摘出による身体イメージの変化や、将来的な健康不安に対する心理的支援を行うとよいでしょう
- 片側卵巣が残存している場合、ホルモン機能は維持されることを説明し、不安の軽減を図るとよいでしょう
ゴードンのアセスメント
健康知覚-健康管理パターンのポイント
健康知覚-健康管理パターンでは、患者と家族が自身の健康状態をどのように認識し、どのような健康管理行動をとってきたかを評価します。疾患の理解度、治療への受け止め方、これまでの健康管理習慣、そして健康リスク因子などを総合的にアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
疾患に対する理解と受容
A氏は「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでしたが、良性だとわかって本当に安心しました」と語っています。この発言を踏まえて、A氏が当初は悪性腫瘍を心配していたこと、そして良性という診断結果を正しく理解し受け入れていることを記載するとよいでしょう。一般的に「腫瘍」という言葉は悪性を連想させやすいため、A氏のような不安は自然な反応であることを考慮し、診断時の心理状態がその後の受容にどう影響したかという視点でアセスメントすることが重要です。
病理検査の結果が良性の粘液性嚢胞腺腫であったことを理解し、「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」と述べていることに着目して、腹腔鏡下手術の特徴や予後についても適切な説明を受け、理解していることを含めて記述するとよいでしょう。このような疾患と治療に対する正確な理解は、術後の回復過程や退院後の生活管理に良い影響を与えると考えられるため、その点を踏まえて患者の理解力と受容の程度を評価することが大切です。
健康管理に対する意識
A氏は「左の卵巣にも何か起きないか心配です。定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」と述べています。この発言を踏まえて、A氏が残存卵巣のリスクを認識し、定期的なフォローアップの重要性を理解していることを記載するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格という情報とも一致している点に着目して、今後の外来受診や健康管理行動の継続が期待できる要素として捉え、アセスメントすることが重要です。
既往歴として45歳頃から高血圧を指摘され降圧薬を内服していること、40歳時に子宮筋腫を指摘され経過観察を続けていることを踏まえて、A氏が継続的な医療管理を受け入れる姿勢を持っていることを記述するとよいでしょう。これまでの受診行動や服薬管理の状況を考慮し、退院後の健康管理能力をアセスメントする視点を持つことが大切です。
健康リスク因子と生活習慣
A氏には喫煙歴がなく、飲酒も月に1〜2回程度ビールをグラス1杯程度と控えめであることに着目して、生活習慣における健康リスクが低いことを記載するとよいでしょう。このような生活習慣は術後の回復や今後の健康維持にとって有利な要因と言えるため、その点を踏まえて健康管理能力を評価することが重要です。
既往歴として35歳時の帝王切開、40歳時の子宮筋腫、45歳頃からの高血圧があり、現在50歳という年齢を考慮すると、女性ホルモンの変動期にあることを意識してアセスメントする必要があります。右卵巣を摘出しましたが左卵巣は温存されているため、ホルモン機能は維持されると考えられますが、今後の更年期症状の出現可能性なども含めて健康管理を考える視点を持つことが重要です。
HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、梅毒陰性で感染症リスクはなく、アレルギーも特にないという情報を踏まえて、今後の医療介入における安全性を考える上で重要な情報として記載するとよいでしょう。
症状の認識と対処行動
A氏は8月下旬から下腹部の違和感と膨満感を自覚し、9月初旬には自ら近医を受診しています。この行動に着目して、A氏が自身の身体の変化に気づき、適切なタイミングで医療機関を受診する能力があることを記述するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格が、このような早期受診行動につながったと考えられるため、性格特性と健康行動の関連性を意識してアセスメントすることが大切です。
現在は術後5日目で、「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べていることを踏まえて、A氏が術後の回復状況を前向きに捉え、退院後の生活に意欲を持っていることを記載するとよいでしょう。このような前向きな姿勢は回復を促進する要因として重要であるという視点でアセスメントすることが求められます。
家族の理解とサポート体制
夫は「妻が手術を受けると聞いて心配でしたが、無事に終わって本当に良かったです」と安堵の表情を見せ、「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします」と具体的なサポート計画を述べています。長女と次女も「お母さん、無理しないでね。家のことは私たちも手伝うから」と声をかけている点に着目して、家族全体がA氏の健康状態を理解し、協力的な姿勢を示していることを記載するとよいでしょう。
このような家族の理解と具体的なサポート体制は、A氏の退院後の健康管理において重要な資源となるため、家族がA氏の術後の制限や注意点を理解しているか、どの程度のサポートが実際に可能かなどを確認しながら、退院指導の内容を考える視点を持つことが重要です。
アセスメントの視点
A氏は疾患と治療について正確に理解し、前向きに受け止めていることを踏まえて記述するとよいでしょう。健康管理意識が高く、これまでも継続的な医療管理を受け入れてきた実績があり、今後の定期的なフォローアップも期待できることを含めて記載することが大切です。健康的な生活習慣を維持しており、身体の変化に気づいて早期に受診する能力も持っている点を考慮し、総合的に健康知覚と健康管理能力を評価するとよいでしょう。家族の理解とサポート体制も良好であることを踏まえて、退院後の健康管理における強みとして捉えることが重要です。
一方で、几帳面で真面目、やや心配性という性格特性を考慮すると、左卵巣への不安を抱えていることも事実であるため、この不安が過度なストレスにならないよう、適切な情報提供と心理的サポートを行いながら、健康管理行動を維持できるよう支援する必要性を意識してアセスメントすることが求められます。
ケアの方向性
A氏の高い健康管理意識と理解力を活かし、退院後の生活指導や定期受診の重要性について具体的に説明することが効果的であるという視点を持つとよいでしょう。左卵巣への不安に対しては、定期的な検査で早期発見が可能であることを伝え、過度な心配を軽減する関わりを意識することが重要です。
家族のサポート体制を活用し、退院後の生活における具体的な役割分担や注意点について、A氏と家族を含めて話し合う機会を設けることを考慮するとよいでしょう。A氏の几帳面な性格を踏まえて、退院後の生活スケジュールや注意事項を文書で提供することも有効と考えられるため、そのような支援方法を検討することが望ましいです。
栄養-代謝パターンのポイント
栄養-代謝パターンでは、患者の栄養摂取状況、代謝機能、そして皮膚や粘膜の状態を総合的に評価します。術後の患者では、手術侵襲による代謝亢進や食欲低下を考慮し、適切な栄養管理と創傷治癒の促進という視点が特に重要になります。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
術前の栄養状態
A氏の身長は158cm、体重は56kgで、BMIを計算すると約22.4となることを踏まえて、標準的な体格を維持していることを記載するとよいでしょう(BMI 18.5〜25が正常範囲)。入院前は自宅で普通食を1日3食規則正しく摂取しており、食欲も良好でした。このような規則正しい食習慣と標準的な体格から、術前の栄養状態が良好であったことを評価し、それが術後の回復にどのように影響するかという視点を持つことが重要です。
入院時の血液データでは、TP(総蛋白)7.2 g/dL、Alb(アルブミン)4.3 g/dLといずれも正常範囲内である点に着目して記述するとよいでしょう。これらのデータは栄養状態の指標として問題ないことを示しているため、手術に耐えうる栄養状態が整っていたことを踏まえて、術後の回復にとって有利な条件であることを評価することが大切です。
術後の食事摂取状況
現在(術後5日目)は術後食(常食)を提供されており、食事摂取量は8割程度であることを踏まえて記載するとよいでしょう。術後2日目(9月19日)から食事を開始し、排ガスも確認されていることに着目して、消化管機能は順調に回復していることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
食事摂取量が8割にとどまっている要因として、「術後の疼痛や緊張から食欲がやや低下している」という記載があることを踏まえて記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術後は、気腹による腹部膨満感や創部痛が食欲に影響することがあるため、A氏の場合もこれらの要因が考えられることを意識してアセスメントすることが大切です。しかし、「少しずつ改善傾向にある」という記載から、徐々に回復に向かっている状態と捉え、今後の摂取量増加の可能性を考慮して評価するとよいでしょう。
嚥下状態は良好で、水分摂取も問題なく行えているという情報を踏まえて、誤嚥のリスクがなく、経口摂取が安全に行えることを記載するとよいでしょう。食事に関するアレルギーもないため、食事内容の制限は不要であることを含めて記述することが重要です。
栄養・代謝状態を示す血液データの変化
術後3日目(9月20日)の血液データを入院時と比較すると、いくつかの変化が見られることに着目して記述するとよいでしょう。TP(総蛋白)は7.2 g/dLから6.8 g/dLへ、Alb(アルブミン)は4.3 g/dLから3.9 g/dLへと若干低下していることを踏まえて、これは手術侵襲による影響や、術後の食事摂取量の低下によるものと考えられることを記載することが大切です。しかし、いずれも正常範囲の下限に近い値であり、著しい栄養状態の悪化を示すものではないことを評価し、その点を踏まえてアセスメントすることが重要です。
RBC(赤血球)は4.25×10⁶/μLから3.98×10⁶/μLへ、Hb(ヘモグロビン)は13.2 g/dLから11.8 g/dLへ、Ht(ヘマトクリット)は39.5%から36.2%へと低下していることを踏まえて記述するとよいでしょう。これらは術中の出血や手術侵襲による一時的な変化と考えられるため、出血量は少量であったことを考慮し、貧血は軽度であり、正常範囲内であることを評価することが大切です。
電解質(Na、K、Cl)は正常範囲内で安定しており、腎機能を示すBUN、Crも正常範囲内である点に着目して、代謝機能は維持されていることを記載し、その点を踏まえて全身の代謝状態を評価するとよいでしょう。
創傷治癒と皮膚の状態
術後5日目の現在、創部の発赤や腫脹はなく、感染徴候も認めていないという情報を踏まえて、創傷治癒が順調に進んでいることを記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術では複数の小さな創部がありますが、これらの創部の状態が良好であることに着目して、栄養状態が創傷治癒を支えていることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
術後3日目(9月20日)にドレーンが抜去されており、ドレーンからの排液量や性状も問題なかったと推測できることを踏まえて記述するとよいでしょう。CRP(C反応性蛋白)は入院時の0.08 mg/dLから術後3日目に1.52 mg/dLへと上昇していますが、これは手術侵襲に対する生体反応として正常な範囲内の上昇であることを評価することが大切です。感染を示唆するような著しい上昇ではなく、創部の状態と合わせて考えると、炎症反応は適切にコントロールされていることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。
褥瘡の発生リスクについては、A氏は術後1日目から離床を開始し、現在は自立歩行しているため、リスクは低いことを考慮して記載することが重要です。
水分バランス
嚥下状態が良好で水分摂取も問題なく行えていること、バイタルサインが安定していること、電解質バランスが正常範囲内であることを踏まえて、水分代謝は適切に保たれていることを記述するとよいでしょう。
術後は侵襲による不感蒸泄の増加や、食事摂取量の低下による水分摂取量の減少が懸念されますが、A氏の場合、尿量や排尿回数(日中6〜7回、夜間1回程度)が適切であることに着目して、水分バランスは保たれていることを評価し、その点を意識してアセスメントすることが大切です。
アセスメントの視点
A氏は術前の栄養状態が良好で、標準的な体格を維持していたことを踏まえて記述するとよいでしょう。術後は食欲がやや低下し、食事摂取量は8割程度ですが、徐々に改善傾向にあることを考慮して評価することが重要です。血液データ上、TP、Alb、RBC、Hbなどがやや低下していますが、著しい栄養状態の悪化を示すものではなく、手術侵襲による一時的な変化と考えられることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。創傷治癒は順調で、感染徴候もないことを含めて、総合的に栄養・代謝状態を評価することが大切です。
今後、食事摂取量がさらに改善し、栄養状態が回復していくことが期待されるため、術後7日目の退院予定までに、より摂取量を増やし、退院後の生活に必要な栄養状態を整えることが重要であるという視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
食欲の回復を促進するために、疼痛コントロールを適切に行い、食事環境を整えることを意識するとよいでしょう。食事時間に合わせた鎮痛薬の使用や、好みの食事内容を確認して提供することも効果的であることを考慮して、ケアの方向性を考えることが大切です。
食事摂取量や水分摂取量を継続的にモニタリングし、必要に応じて栄養指導を行うことを検討するとよいでしょう。退院後の食事についても、バランスの良い食事を継続的に摂取することの重要性を説明し、創傷治癒や体力回復のために必要な栄養素について指導することを意識することが重要です。
創部の観察を継続し、感染徴候の早期発見に努めることも大切であるという視点を持つとよいでしょう。退院後の創部ケアについても、具体的な方法を指導する必要性を踏まえて、ケアの方向性を考えることが求められます。
排泄パターンのポイント
排泄パターンでは、排便と排尿の状態を評価し、消化管機能や腎機能の回復状況を把握します。術後患者では、麻酔や手術侵襲による腸蠕動の低下、安静による活動量の減少などが排泄に影響するため、これらの要因を考慮したアセスメントが重要です。
どんなことを書けばよいか
排泄パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 排便と排尿の回数・量・性状
- 下剤やカテーテル使用の有無
- In-outバランス
- 排泄に関連した食事・水分摂取状況
- 安静度、活動量
- 腹部の状態(腹部膨満、腸蠕動音など)
- 腎機能を示す血液データ(BUN、Cr、GFRなど)
術前の排泄状況
入院前、A氏は自宅のトイレで自立して排泄しており、排便は1日1回、普通便でした。下剤等の使用はなく、自然な排便習慣が確立されていたことを踏まえて記述するとよいでしょう。排尿も日中5〜6回程度で特に問題はなく、排尿パターンも正常範囲内であったことに着目して記載することが重要です。
このような規則正しい排泄習慣から、A氏の消化管機能や腎機能が良好であったことを評価し、その点を踏まえて術後の回復を予測する上で重要な情報として捉えることが大切です。
術後の排尿状況
術後は尿道カテーテルを留置していましたが、術後1日目(9月18日)に抜去されたことを踏まえて記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術後の比較的早期にカテーテルを抜去できたことに着目して、順調な回復を示していることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
カテーテル抜去後は自力排尿が可能となり、残尿感や排尿痛はないことを踏まえて記載するとよいでしょう。排尿回数は日中6〜7回程度、夜間は1回程度であり、術前の5〜6回と比較してやや増加していますが、これは術後の水分摂取や点滴による影響と考えられ、正常な範囲内であることを意識してアセスメントすることが大切です。
残尿感や排尿痛がないという情報を踏まえて、尿路感染のリスクが低く、膀胱機能も正常に回復していることを記述するとよいでしょう。骨盤内の手術であったため、膀胱や尿管への影響が懸念されますが、現時点では問題は見られないことを考慮して評価することが重要です。
術後の排便状況
排便は術後3日目(9月20日)に初回排便があったことを踏まえて記述するとよいでしょう。術後2日目(9月19日)に食事を開始し、排ガスも確認されていることに着目して、消化管機能は徐々に回復していたことを評価し、初回排便までの日数は腹腔鏡下手術後としては適切な範囲内であることを意識してアセスメントすることが大切です。
初回排便は「やや硬めの便」でしたが、その後は1日1回のペースで普通便が出ており、下剤の使用もしていないことを踏まえて記載するとよいでしょう。初回排便が硬めであった要因としては、術後の食事摂取量の低下、活動量の減少、麻酔や鎮痛薬の影響などが考えられることを考慮して記述することが重要です。しかし、その後は普通便に改善し、術前と同様の排便パターンに戻っていることに着目して、消化管機能は順調に回復していることを評価し、その点を踏まえてアセスメントするとよいでしょう。
腸蠕動と腹部の状態
術後2日目(9月19日)から食事を開始し、排ガスが確認されたという情報を踏まえて、腸蠕動が再開していることを記述するとよいでしょう。これは消化管機能回復の重要なサインであることを意識し、腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して腸蠕動の回復が早い傾向があることを考慮して、A氏の場合も順調に回復していることを評価することが大切です。
現在(術後5日目)、創部の状態も良好で、感染徴候も認めていないことから、腹部の状態は安定していることを踏まえて記載するとよいでしょう。腹部膨満感や腸蠕動音の異常については事例に記載がありませんが、排便が規則的に見られていることに着目して、大きな問題はないことを評価し、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
活動量と排泄への影響
A氏は術後1日目(9月18日)午後から離床を開始し、術後2日目(9月19日)からは病棟内を自立歩行していることを踏まえて記述するとよいでしょう。トイレへの移動も自立しており、早期離床による活動量の確保が排泄機能の回復に良い影響を与えていることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
活動量の増加は腸蠕動を促進し、便秘の予防にもつながることを意識して記載するとよいでしょう。A氏の場合、早期から歩行を開始したことで、術後の消化管機能の回復が促進され、下剤を使用せずに自然な排便が可能になったことを踏まえて評価することが重要です。
食事・水分摂取と排泄の関連
現在、食事摂取量は8割程度で、少しずつ改善傾向にあることを踏まえて記述するとよいでしょう。水分摂取も問題なく行えており、これらが適切な排尿・排便パターンの維持に貢献していることに着目して記載することが大切です。
食事摂取量がさらに増加することで、排便量も増加し、より規則的な排便パターンが確立されることが期待されることを考慮してアセスメントするとよいでしょう。水分摂取が十分に行えていることは、便の硬さを適度に保ち、排便を容易にする要因となることを意識して評価することが重要です。
腎機能の評価
術後3日目(9月20日)の血液データでは、BUN(尿素窒素)16.8 mg/dL、Cr(クレアチニン)0.72 mg/dLといずれも正常範囲内であることを踏まえて記述するとよいでしょう。入院時と比較して、BUNは14.2 mg/dLから16.8 mg/dLへとわずかに上昇していますが、正常範囲内であり、腎機能は維持されていることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
電解質(Na、K、Cl)も正常範囲内で安定しており、水分・電解質バランスが適切に保たれていることに着目して記載するとよいでしょう。これらのデータから、腎機能には問題がなく、排尿機能も正常に保たれていることを評価し、その点を踏まえて排泄パターン全体をアセスメントすることが重要です。
アセスメントの視点
A氏は術後、尿道カテーテルを早期に抜去でき、自力排尿が問題なく行えていることを踏まえて記述するとよいでしょう。排尿回数や性状も正常範囲内で、尿路感染の徴候はないことを評価することが大切です。排便は術後3日目に初回排便があり、その後は1日1回のペースで普通便が出ており、下剤を使用せずに自然な排便が可能となっていることに着目してアセスメントすることが重要です。
早期離床による活動量の確保、適切な食事・水分摂取、そして順調な腸蠕動の回復が、良好な排泄パターンの維持に貢献していることを考慮して記載するとよいでしょう。腎機能も正常に保たれており、水分・電解質バランスも安定していることを踏まえて、総合的に排泄機能を評価することが求められます。
ケアの方向性
引き続き、食事摂取量と水分摂取量を適切に維持し、活動量を確保することで、規則的な排泄パターンを継続できるよう支援することを意識するとよいでしょう。
退院に向けて、A氏が自宅での排泄習慣を再確立できるよう、術前の生活パターンに近づけていくことを考慮してケアを計画することが大切です。退院後は活動量が増加するため、排便パターンも変化する可能性があることを踏まえて、便秘や下痢などの異常が見られた場合の対処方法について、退院指導の中で説明することが重要です。
排尿に関しても、残尿感や頻尿、排尿痛などの異常が見られた場合は早期に医療機関を受診するよう指導し、尿路感染の予防と早期発見に努めることを意識してケアの方向性を考えるとよいでしょう。
活動-運動パターンのポイント
活動-運動パターンでは、患者の日常生活動作の自立度、運動機能、活動耐性を評価します。術後患者では、手術侵襲からの回復過程や早期離床の状況、そして退院後の生活に必要な活動レベルの到達度を確認することが重要です。
どんなことを書けばよいか
活動-運動パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- ADLの状況、運動機能
- 安静度、移動/移乗方法
- バイタルサイン、呼吸機能
- 運動歴、職業、住居環境
- 活動耐性に関連する血液データ(RBC、Hb、Ht、CRPなど)
- 転倒転落のリスク
術前の活動状況
入院前、A氏は日常生活動作すべてにおいて自立しており、歩行、移乗、排泄、入浴、衣類の着脱はすべて介助なく行えていました。転倒歴もなく、完全に自立した生活を送っていたことを踏まえて記述するとよいでしょう。
職業は事務職であり、座位での作業が中心と考えられますが、通勤や日常生活における歩行能力は十分に保たれていたことに着目して記載することが重要です。50歳という年齢で、特に運動機能の低下を示す情報はなく、年齢相応の活動レベルを維持していたことを評価し、その点を踏まえて術後の回復目標を設定する視点を持つことが大切です。
術後の離床と活動の進行
手術当日から術後1日目午前中まではベッド上安静でしたが、術後1日目(9月18日)午後から離床を開始し、看護師付き添いのもとで歩行を開始していることを踏まえて記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術後の早期離床のプロトコールに沿った進行であることに着目して、術後合併症の予防という観点から適切なタイミングであることを評価し、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
術後2日目(9月19日)からは病棟内を自立歩行しており、トイレへの移動も自立していることを踏まえて記載するとよいでしょう。移乗や排泄、衣類の着脱も自立して行えており、わずか2日間で術前のADL自立レベルに近い状態まで回復していることに着目して記述することが大切です。この回復の早さは、腹腔鏡下手術の低侵襲性、A氏の術前の良好な身体機能、そして早期離床への積極的な取り組みの結果と考えられることを評価し、その点を踏まえてアセスメントするとよいでしょう。
現在(術後5日目)は歩行も自立しており、転倒のリスクは低いと判断されていることを踏まえて、A氏の運動機能と活動耐性は十分に回復していることを記述し、その点を考慮して今後の活動拡大を考えることが重要です。
バイタルサインと呼吸機能
来院時のバイタルサインは、体温36.4℃、血圧128/78mmHg、脈拍72回/分で整、呼吸数16回/分、SpO2 98%(室内気)であり、すべて正常範囲内であったことを踏まえて記述するとよいでしょう。
現在(術後5日目)のバイタルサインは、体温36.8℃、血圧120/74mmHg、脈拍68回/分で整、呼吸数18回/分、SpO2 97%(室内気)であり、すべて正常範囲内で安定していることに着目して記載することが重要です。血圧はやや低下していますが、正常範囲内であり、脈拍も安静時として適切な範囲であることを評価することが大切です。呼吸数はわずかに増加していますが、これは活動量の増加による影響と考えられ、SpO2が97%と良好であることから、呼吸機能に問題はないことを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。
バイタルサインが安定していることは、A氏が歩行などの活動を安全に行える状態にあることを示しており、活動範囲を拡大していく上で重要な指標となることを意識して評価することが求められます。
活動耐性を示す血液データ
術後3日目(9月20日)の血液データでは、RBC(赤血球)3.98×10⁶/μL、Hb(ヘモグロビン)11.8 g/dL、Ht(ヘマトクリット)36.2%といずれも正常範囲内ですが、入院時と比較してやや低下していることを踏まえて記述するとよいでしょう。これは術中の出血や手術侵襲による影響と考えられますが、活動に支障をきたすような貧血ではないことに着目して評価することが大切です。
CRP(C反応性蛋白)は1.52 mg/dLと軽度上昇していますが、これは手術侵襲に対する生体反応として正常な範囲内の上昇であることを踏まえて記載するとよいでしょう。感染を示唆するような著しい上昇ではなく、炎症反応は適切にコントロールされていることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
これらのデータから、A氏の活動耐性は十分に保たれており、退院後の日常生活に必要な活動レベルは達成できることを踏まえて、今後の活動計画を考える視点を持つことが大切です。
疼痛と活動への影響
疼痛は術後から継続していますが、鎮痛薬でコントロール可能な範囲であり、現在(術後5日目)は軽減傾向にあることを踏まえて記述するとよいでしょう。疼痛が適切にコントロールされていることは、A氏が活動を継続できる重要な要因であることに着目して評価することが大切です。
内服中の薬としてロキソプロフェンナトリウム錠60mgを1日3回毎食後に服用しており、疼痛管理が適切に行われていることを踏まえて記載するとよいでしょう。疼痛の軽減傾向は、創傷治癒の進行と活動量の増加による身体機能の回復を反映していることを考慮し、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
転倒・転落リスクの評価
A氏は術前から転倒歴がなく、現在も転倒のリスクは低いと判断されていることを踏まえて記述するとよいでしょう。視力は両眼とも1.0で、眼鏡やコンタクトレンズは使用していません。聴力も正常で、補聴器等の使用はありません。知覚については、四肢の感覚障害はなく、痛覚・触覚・温度覚ともに正常であることに着目して記載することが重要です。
これらの情報から、転倒につながるような感覚障害や視覚・聴覚障害はないことを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。認知力も正常で、見当識も保たれているため、環境認識や危険予測能力にも問題はないことを踏まえて、安全に活動できることを記述するとよいでしょう。
ただし、術後の疼痛や腹部の違和感が活動に影響する可能性があるため、活動時の注意は必要であることを意識することが重要です。また、病院環境に慣れてきた現在でも、退院後の自宅環境への適応については考慮が必要であることを踏まえて評価するとよいでしょう。
退院後の活動に向けて
医師からは、退院後1週間は重いものを持つことや激しい運動は避け、徐々に活動量を増やしていくよう指導されていることを踏まえて記述するとよいでしょう。職場復帰は術後3週間後を目安としていることに着目して、段階的な活動再開の計画が立てられていることを評価することが大切です。
A氏自身も「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と退院を楽しみにしており、活動への意欲が高いことを踏まえて記載するとよいでしょう。家族も退院後のサポート体制を整えており、A氏が無理なく活動量を増やしていける環境が整っていることを考慮してアセスメントすることが重要です。
事務職という職業を考えると、座位での作業が中心であるため、職場復帰後の身体的負担は比較的少ないことを意識して評価するとよいでしょう。しかし、通勤や勤務時間中の活動については、術後の回復状況を見ながら段階的に調整していく必要があることを踏まえて、ケアの方向性を考えることが大切です。
アセスメントの視点
A氏は術前のADLが完全に自立しており、術後も早期から離床を開始し、順調に活動レベルを回復させていることを踏まえて記述するとよいでしょう。バイタルサインは安定しており、活動耐性を示す血液データも問題ないことを評価することが大切です。疼痛は適切にコントロールされており、転倒・転落のリスクも低い状態であることに着目してアセスメントすることが重要です。
術後5日目の現在、歩行は自立しており、退院後の日常生活に必要な基本的な活動レベルは達成できていることを踏まえて記載するとよいでしょう。家族のサポート体制も整っており、退院後の活動再開に向けた準備は良好であることを考慮して、総合的に活動-運動パターンを評価することが求められます。
ケアの方向性
退院に向けて、A氏が安全に活動量を増やしていけるよう、退院後の生活における具体的な注意点を指導することを意識するとよいでしょう。重いものを持つことや激しい運動を避ける期間、徐々に活動量を増やす方法、創部痛が増強した場合の対処方法などを具体的に説明することを考慮してケアを計画することが大切です。
職場復帰に向けては、通勤方法や勤務時間、業務内容などを確認し、段階的に復帰できるよう支援することを踏まえて、ケアの方向性を考えることが重要です。几帳面で真面目な性格であることを考慮すると、活動制限の期間や方法を文書で提供することも効果的であることを意識するとよいでしょう。
疼痛管理については、退院後の鎮痛薬の使用方法や、疼痛が増強した場合の受診のタイミングについて説明し、A氏が安心して活動できるよう支援することが大切であるという視点を持つことが求められます。
睡眠-休息パターンのポイント
睡眠-休息パターンでは、患者の睡眠の質と量、そして休息が十分に取れているかを評価します。術後患者では、疼痛や環境の変化、不安などが睡眠に影響を与えるため、これらの要因を考慮し、十分な休息が得られているかをアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
睡眠-休息パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 睡眠時間、熟眠感
- 睡眠導入剤使用の有無
- 日中/休日の過ごし方
- 睡眠を妨げる要因(痛み、不安、環境など)
術前の睡眠パターン
入院前、A氏は自宅で23時頃に就寝し、6時頃に起床する生活パターンで、睡眠時間は約7時間でした。寝つきは良好で、中途覚醒もなく、熟睡感もあり、眠剤等の使用はありませんでした。この情報を踏まえて、A氏は入院前には良好な睡眠習慣を確立していたことを記述するとよいでしょう。
7時間という睡眠時間は成人として適切な長さであり、寝つきの良さや熟睡感があることは、睡眠の質が高かったことを示していることに着目して記載することが重要です。この術前の良好な睡眠パターンを踏まえて、術後の睡眠状況と回復の目標を設定する視点を持つことが大切です。
術後の睡眠状況の変化
入院後は病院の環境に慣れないことと術後の疼痛から、やや入眠困難と中途覚醒が見られたことを踏まえて記述するとよいでしょう。病院という慣れない環境での睡眠は、多くの患者にとって困難を伴うため、A氏の場合、環境要因と疼痛という二つの要因が睡眠を妨げていたことを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
病院環境での睡眠を妨げる要因としては、周囲の物音や光、他患者の存在、ベッドや枕の違い、室温や湿度の違いなどが考えられることに着目して記載するとよいでしょう。A氏は几帳面で真面目、やや心配性という性格特性を持っているため、このような環境の変化に敏感に反応し、睡眠に影響が出たと推測できることを踏まえて評価することが大切です。
術後の疼痛については、鎮痛薬でコントロール可能な範囲であるものの、入眠時や中途覚醒時に疼痛が気になり、再入眠が困難になる可能性があることを考慮して記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術後の疼痛は、創部痛だけでなく、気腹による肩の痛みや腹部の違和感なども含まれるため、これらが睡眠に影響を与えていたと考えられることを意識してアセスメントすることが重要です。
睡眠導入剤の使用と変化
術後2日目(9月19日)と3日目(9月20日)は眠剤(ゾルピデム5mg)を使用しましたが、術後4日目(9月21日)からは眠剤なしでも入眠できるようになっていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この変化に着目して、睡眠状況が徐々に改善していることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
眠剤の使用が必要だったのはわずか2日間であり、その後は自然に入眠できるようになったことは、A氏の適応力の高さを示していることを踏まえて記載するとよいでしょう。疼痛の軽減、病院環境への慣れ、そして術後の不安の軽減などが、睡眠の改善に貢献したと考えられることを意識して評価することが重要です。
現在の睡眠状況
現在(術後5日目)は睡眠時間約6時間確保できていることを踏まえて記述するとよいでしょう。術前の7時間と比較するとやや短いものの、術後の回復過程としては十分な睡眠時間が確保できていることに着目して評価することが大切です。
熟眠感や入眠困難、中途覚醒の有無については現在の状況として明記されていませんが、眠剤なしで入眠できており、睡眠時間も確保できていることから、睡眠の質も改善していると推測できることを踏まえて記載するとよいでしょう。疼痛が軽減傾向にあることも、睡眠の質の向上に貢献していると考えられることを意識してアセスメントすることが重要です。
睡眠に影響を与える要因の変化
術後5日目の現在、疼痛は軽減傾向にあり、鎮痛薬でコントロール可能な範囲であることを踏まえて記述するとよいでしょう。この疼痛の改善は、睡眠を妨げる主要な要因の一つが軽減していることを意味するため、その点に着目して評価することが大切です。
病院環境については、入院から1週間が経過し、徐々に慣れてきたと考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。日中の活動量も増加しており、歩行も自立していることから、適度な身体的疲労が睡眠の質を向上させている可能性もあることを考慮してアセスメントすることが重要です。
A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、退院への前向きな気持ちを持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。このような前向きな心理状態は、不安の軽減につながり、睡眠にも良い影響を与えると考えられることを意識して評価することが大切です。
休息と回復のバランス
術後は身体が回復するために十分な休息が必要ですが、一方で早期離床による活動も重要であることを踏まえて記述するとよいでしょう。A氏は術後1日目から離床を開始し、現在は自立歩行していますが、これは適切な活動と休息のバランスが取れていることを示していることに着目して評価することが大切です。
日中の活動量が適切であることは、夜間の睡眠の質を向上させる要因となることを考慮して記載するとよいでしょう。過度の安静は逆に睡眠の質を低下させることがあるため、A氏のように適度な活動を行っていることは、睡眠-休息パターンにとって好ましい状況と言えることを意識してアセスメントすることが重要です。
アセスメントの視点
A氏は術前には良好な睡眠習慣を確立していましたが、入院後は環境の変化と術後の疼痛により、入眠困難と中途覚醒が見られたことを踏まえて記述するとよいでしょう。術後2〜3日目には睡眠導入剤を使用しましたが、術後4日目からは眠剤なしでも入眠できるようになり、睡眠状況は徐々に改善していることに着目して評価することが大切です。
現在は睡眠時間約6時間を確保でき、疼痛も軽減傾向にあることから、睡眠の質も向上していると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。適度な活動量の確保と疼痛コントロール、環境への適応、そして退院への前向きな気持ちが、睡眠の改善に貢献していることを考慮して、総合的に睡眠-休息パターンをアセスメントすることが重要です。
ケアの方向性
引き続き、疼痛コントロールを適切に行い、睡眠を妨げる要因を最小限にすることを意識するとよいでしょう。就寝前の鎮痛薬の使用タイミングを調整することも、睡眠の質の向上に有効であることを踏まえて、ケアの方向性を考えることが大切です。
退院に向けて、自宅での睡眠環境の確認と、睡眠習慣を術前のパターンに戻すための支援が必要であることを考慮するとよいでしょう。退院後の生活リズムの整え方や、疼痛が睡眠に影響する場合の対処方法について指導することを意識してケアを計画することが重要です。
A氏の几帳面で真面目な性格を考慮すると、規則正しい生活リズムを保つことの重要性を説明し、退院後も十分な睡眠時間を確保するよう促すことが効果的であることを踏まえて記述するとよいでしょう。術後3週間の職場復帰までは、十分な休息を取りながら徐々に活動量を増やしていくことの大切さを伝えることも重要であるという視点を持つことが求められます。
認知-知覚パターンのポイント
認知-知覚パターンでは、患者の認知機能、感覚機能、そして疼痛や不快感の有無を評価します。これらは患者の安全管理や、情報の理解能力、コミュニケーションの有効性に直接影響するため、看護ケアを計画する上で重要な情報となります。
どんなことを書けばよいか
認知-知覚パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 意識レベル、認知機能
- 聴力、視力
- 痛みや不快感の有無と程度
- 不安の有無、表情
- コミュニケーション能力
認知機能と見当識
A氏の認知力は正常で、見当識も保たれていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この情報は、A氏が時間、場所、人物を正確に認識できることを示しており、意識レベルも清明であることに着目して評価することが重要です。
50歳という年齢で認知機能に問題がないことは、疾患や治療についての説明を理解し、退院指導を受け、自己管理を行う能力が十分にあることを意味するため、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。術後の経過や注意事項、服薬管理などについて、A氏自身が適切に判断し、実行できると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。
視覚と聴覚の機能
視力は両眼とも1.0で、眼鏡やコンタクトレンズは使用していません。聴力も正常で、補聴器等の使用はないことを踏まえて記述するとよいでしょう。これらの情報から、A氏は感覚器官の機能が良好であり、環境からの情報を正確に受け取ることができることに着目して評価することが重要です。
視力と聴覚が正常であることは、転倒・転落リスクの評価においても重要であることを考慮して記載するとよいでしょう。環境を正確に認識し、危険を察知する能力が保たれているため、安全な活動が可能であることを踏まえてアセスメントすることが大切です。また、医療者とのコミュニケーションにおいても、視覚的な資料(パンフレットや説明書など)や口頭での説明を問題なく受け取ることができることを意識して評価することが求められます。
知覚機能
知覚については、四肢の感覚障害はなく、痛覚・触覚・温度覚ともに正常であることを踏まえて記述するとよいでしょう。この情報は、A氏が身体の異常や危険を適切に感じ取ることができることを示していることに着目して評価することが重要です。
術後の創部の痛みや異常を自分で感じ取り、医療者に伝えることができる能力があることは、合併症の早期発見という観点から重要であることを考慮して記載するとよいでしょう。また、熱さや冷たさを感じる能力が保たれているため、入浴時の熱傷リスクなども低いと考えられることを踏まえてアセスメントすることが大切です。
疼痛の状況
疼痛は術後から継続していますが、鎮痛薬でコントロール可能な範囲であり、現在(術後5日目)は軽減傾向にあることを踏まえて記述するとよいでしょう。この情報から、A氏の疼痛は適切に管理されていることに着目して評価することが重要です。
内服中の薬として、ロキソプロフェンナトリウム錠60mgを1日3回毎食後に服用していることから、定期的な鎮痛薬の使用により疼痛がコントロールされていると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。疼痛が軽減傾向にあることは、創傷治癒が進んでいることを示すポジティブなサインでもあることを考慮してアセスメントすることが大切です。
腹腔鏡下手術後の疼痛は、創部痛だけでなく、気腹による肩の痛みや腹部の違和感を含むことがあることに着目して記述するとよいでしょう。A氏がこれらの疼痛を適切に訴え、鎮痛薬による管理が行われていることは、A氏の疼痛認知と表現能力が適切であることを示していることを意識して評価することが重要です。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は良好で、日本語での会話に問題はなく、意思疎通もスムーズに行えることを踏まえて記述するとよいでしょう。この能力は、A氏が自分の状態や症状、不安や疑問を適切に表現できることを意味することに着目して評価することが大切です。
A氏の発言として、「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでしたが、良性だとわかって本当に安心しました」「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」「左の卵巣にも何か起きないか心配です」など、自分の気持ちや考えを具体的に言語化できていることを踏まえて記載するとよいでしょう。
このような表現力の高さは、医療者がA氏の心理状態やニーズを把握する上で非常に役立つことを考慮して記述することが重要です。A氏が自分の不安や疑問を適切に表現できることは、看護ケアの質を向上させる重要な要素となることを意識してアセスメントすることが大切です。
不安と心理状態
A氏の発言から、当初は悪性腫瘍への不安があったこと、現在は良性と判明して安心していること、そして左卵巣への将来的な不安を持っていることが読み取れることを踏まえて記述するとよいでしょう。これらの感情を適切に言語化し、表現できていることは、A氏の心理的な処理能力が健全であることを示していることに着目して評価することが重要です。
几帳面で真面目、やや心配性という性格特性を考慮すると、A氏は細かいことに気を配り、将来のリスクについても考える傾向があると推測できることを踏まえて記載するとよいでしょう。この性格特性は、健康管理においてはプラスに働く面もありますが、過度な不安につながる可能性もあるため、適切な情報提供と心理的サポートが重要であることを意識してアセスメントすることが大切です。
情報の理解と処理能力
A氏は疾患の診断結果、手術の内容、予後について適切に理解していることを踏まえて記述するとよいでしょう。また、「定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という発言から、医療者からの説明を理解し、それを自分の行動計画に結びつける能力があることに着目して評価することが重要です。
几帳面で真面目な性格は、説明を注意深く聞き、重要な情報を整理して理解する能力につながっていると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。このような情報処理能力の高さは、退院指導や自己管理指導において非常に有利な要素であることを考慮してアセスメントすることが大切です。
アセスメントの視点
A氏は認知機能が正常で、見当識も保たれており、視覚・聴覚・知覚機能もすべて良好であることを踏まえて記述するとよいでしょう。疼痛は術後から継続していますが、鎮痛薬で適切にコントロールされており、軽減傾向にあることに着目して評価することが重要です。コミュニケーション能力が高く、自分の気持ちや身体の状態を適切に表現できる能力を持っていることを考慮して、総合的に認知-知覚パターンをアセスメントすることが大切です。
情報を正確に理解し、処理する能力も高く、医療者からの説明や指導を効果的に受け取ることができることを踏まえて記載するとよいでしょう。不安を適切に表現できる能力は、心理的サポートを提供する上で重要な要素であることを意識することが求められます。几帳面で真面目な性格は、自己管理能力の高さにつながる一方で、過度な不安につながる可能性もあるため、バランスの取れた支援が必要であることを考慮してアセスメントすることが重要です。
ケアの方向性
A氏の高い理解力とコミュニケーション能力を活かし、退院指導では具体的で詳細な情報を提供することが効果的であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。文書や図表を用いた説明も、A氏の几帳面な性格に合った方法と考えられることを意識することが大切です。
疼痛管理については、現在の鎮痛薬の使用方法を継続し、退院後の疼痛コントロールについても具体的に指導することを考慮するとよいでしょう。疼痛が増強した場合の対処方法や受診のタイミングについて、明確な基準を示すことで、A氏が安心して自己管理できるよう支援することを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
左卵巣への不安については、定期的な検査の重要性を説明しつつ、過度な心配を軽減するための心理的サポートも必要であることを踏まえて記述するとよいでしょう。A氏が自分の感情や不安を適切に表現できることを活かし、気になることがあればいつでも相談できる体制を整えることが望ましいことを考慮してケアを計画することが大切です。
自己知覚-自己概念パターンのポイント
自己知覚-自己概念パターンでは、患者が自分自身をどのように認識し、どのような価値観を持っているかを評価します。疾患や治療が患者の自己イメージに与える影響、そして患者の性格特性が治療や回復にどのように影響するかを理解することが重要です。
どんなことを書けばよいか
自己知覚-自己概念パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 性格、価値観
- ボディイメージ
- 疾患に対する認識、受け止め方
- 自尊感情
- 育った文化や周囲の期待
性格特性と行動パターン
A氏は几帳面で真面目、やや心配性な性格であると記載されていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この性格特性は、A氏の健康管理行動や治療への取り組み方に大きく影響していると考えられることに着目して評価することが重要です。
几帳面で真面目という特性は、医療者からの指示を正確に守り、服薬管理や生活管理を適切に行う能力につながっていることを踏まえて記載するとよいでしょう。実際、45歳頃から高血圧で降圧薬を内服しており、40歳時の子宮筋腫も経過観察を続けているという情報から、継続的な医療管理を真面目に行ってきたことを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
やや心配性という特性は、「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでした」「左の卵巣にも何か起きないか心配です」という発言に表れていることに着目して記述するとよいでしょう。この心配性は、健康への関心の高さや早期受診行動につながる一方で、過度な不安やストレスの原因にもなり得ることを踏まえて、A氏の心理的サポートのあり方を考える視点を持つことが重要です。
疾患に対する認識と受け止め方
A氏は「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでしたが、良性だとわかって本当に安心しました」と述べていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この発言から、A氏が悪性腫瘍を強く恐れていたこと、そして良性という診断に大きな安堵を感じていることが読み取れることに着目して評価することが大切です。
「腫瘍」という言葉に対する恐怖は、一般的に多くの人が持つ自然な反応ですが、A氏の心配性という性格特性が、この不安をより強いものにしていた可能性があることを考慮して記載するとよいでしょう。しかし、良性という診断結果を正しく理解し、前向きに受け止めることができていることは、A氏の適応能力の高さを示していることを意識してアセスメントすることが重要です。
「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」という発言からは、手術に対する不安が軽減し、治療の成果を肯定的に捉えていることが読み取れることを踏まえて記述するとよいでしょう。このような前向きな認識は、術後の回復にも良い影響を与えると考えられることを考慮してアセスメントすることが大切です。
ボディイメージへの影響
A氏は右卵巣を摘出しましたが、左卵巣と子宮は温存されていることを踏まえて、この事実がA氏のボディイメージにどのような影響を与えているかを考慮する必要性を記述するとよいでしょう。
50歳という年齢を考えると、A氏は更年期前後の時期にあり、女性としての身体の変化を意識する時期と言えることに着目して記載することが重要です。卵巣の一部を失うことは、生殖機能やホルモン機能への影響という点で、女性の自己イメージに影響を与える可能性があることを考慮してアセスメントすることが大切です。
事例には、A氏がボディイメージの変化について直接言及した発言は記載されていないことを踏まえて記述するとよいでしょう。しかし、「左の卵巣にも何か起きないか心配です」という発言には、残存卵巣への不安だけでなく、さらなる身体の喪失への恐れが含まれている可能性があることを意識して評価することが重要です。片側の卵巣を失ったことが、A氏の自己イメージにどのような影響を与えているか、さらに情報を得る必要があるかもしれないという視点を持つことが大切です。
自尊感情と自己効力感
A氏は事務職として働いており、社会的な役割を持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。また、家族の中でも妻・母親としての役割を担っていることに着目して記載することが重要です。「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という発言からは、これらの役割を果たしたいという意欲が読み取れることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
術後の回復が順調であることを認識し、退院を楽しみにしている様子は、A氏が自分の回復能力に対して肯定的な認識を持っていることを示していることを踏まえて記述するとよいでしょう。このような自己効力感の高さは、退院後の生活管理や職場復帰に向けた行動を促進する要因となることを意識して評価することが重要です。
几帳面で真面目という性格から、A氏は自分に課せられた役割や責任を真剣に受け止め、それを達成しようとする傾向があると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。このような特性は自尊感情を支える要素となっている一方で、「完璧にやらなければ」というプレッシャーになる可能性もあることを考慮してアセスメントすることが大切です。
将来への不安と健康への意識
「左の卵巣にも何か起きないか心配です。定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という発言には、A氏の将来の健康に対する不安と、それに対処しようとする積極的な姿勢の両方が表れていることを踏まえて記述するとよいでしょう。
この発言は、A氏が自分の健康を自分で管理する責任を感じており、予防的な行動を取ろうとしていることを示していることに着目して評価することが重要です。几帳面で真面目な性格が、このような責任感の強さにつながっていると考えられることを考慮してアセスメントすることが大切です。
一方で、心配性という特性から、この不安が過度になり、日常生活に影響を与える可能性もあることを踏まえて記述するとよいでしょう。不安を適切に表現し、医療者とコミュニケーションを取れることは、A氏の強みですが、その不安をどのように軽減し、バランスの取れた健康管理につなげていくかが重要な視点となることを意識してアセスメントすることが求められます。
自己価値観と優先事項
A氏の発言や行動から、家族との生活や仕事といった日常生活の役割を重視していることが読み取れることを踏まえて記述するとよいでしょう。「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という言葉には、入院生活からの解放への願いだけでなく、家族や仕事という自分の居場所に戻りたいという気持ちが込められていると考えられることに着目して評価することが大切です。
50歳という年齢で、長女は社会人、次女は大学生となっており、母親としての直接的な育児の役割は軽減している時期であることを考慮して記載するとよいでしょう。しかし、家族の一員として、また働く女性として、自分の役割を果たすことがA氏にとって重要な価値を持っていると推測できることを意識してアセスメントすることが重要です。
アセスメントの視点
A氏は几帳面で真面目、やや心配性という性格特性を持ち、この特性が健康管理行動や治療への取り組みに影響を与えていることを踏まえて記述するとよいでしょう。疾患を良性と理解し、前向きに受け止めることができていますが、将来の健康への不安も抱えていることに着目して評価することが大切です。
右卵巣を摘出したことによるボディイメージへの影響については、直接的な言及がなく、さらに情報を得る必要がある可能性があることを考慮して記載するとよいでしょう。自尊感情は保たれており、早く日常生活に戻りたいという意欲を持っていることを踏まえてアセスメントすることが重要です。家族や仕事という役割を重視しており、自分の責任を果たそうとする姿勢が見られることを意識して、総合的に自己知覚-自己概念パターンを評価することが大切です。
ケアの方向性
A氏の几帳面で真面目な性格を活かし、退院指導では具体的で明確な情報を提供することが効果的であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。一方で、完璧主義になりすぎないよう、段階的な回復の重要性を伝えることも大切であることを意識することが重要です。
将来の健康への不安については、定期的な検査の重要性を説明しつつ、過度な心配を軽減するための心理的サポートが必要であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の不安を受け止めながら、適切な情報提供を行い、不安と上手く付き合う方法を一緒に考えることを意識してケアの方向性を考えることが大切です。
ボディイメージへの影響については、A氏が自分から話題にしない場合でも、左卵巣が温存されていることでホルモン機能は維持されることなど、肯定的な情報を提供することが有効であることを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏の自己イメージが維持され、自尊感情が保たれるよう、支持的な関わりを継続することが重要であるという視点を持つことが求められます。
役割-関係パターンのポイント
役割-関係パターンでは、患者が社会や家庭の中で担っている役割、そして周囲との人間関係を評価します。入院や手術が患者の役割遂行に与える影響、そして退院後の生活を支えるサポート体制を把握することが、看護ケアを計画する上で重要です。
どんなことを書けばよいか
役割-関係パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 職業、社会的役割
- 家族構成、キーパーソン
- 家族の面会状況、サポート体制
- 経済状況
- 人間関係、コミュニケーションパターン
家族構成とキーパーソン
A氏の家族構成は、夫(52歳)と長女(22歳・社会人)、次女(19歳・大学生)の4人家族で、キーパーソンは夫であることを踏まえて記述するとよいでしょう。この家族構成から、A氏は中年期の家族段階にあり、子どもたちは成人または成人に近い年齢に達していることに着目して評価することが重要です。
キーパーソンである夫は52歳で、A氏と近い年齢であり、配偶者として最も身近な存在であることを踏まえて記載するとよいでしょう。夫がキーパーソンとして設定されていることは、医療上の意思決定や退院後のサポートにおいて、夫が中心的な役割を担うことを意味するため、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
家族の理解とサポート体制
夫は「妻が手術を受けると聞いて心配でしたが、無事に終わって本当に良かったです」と安堵の表情を見せ、「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします。娘たちにも協力してもらうつもりです」と具体的なサポート計画を述べていることを踏まえて記述するとよいでしょう。
この発言から、夫はA氏の手術と術後の状態を理解し、退院後の生活において具体的なサポートを提供する意思を持っていることに着目して評価することが重要です。家事の手伝いという具体的な支援内容を挙げていることは、実際的で現実的なサポート計画が立てられていることを示しているため、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
長女と次女も面会に訪れ、「お母さん、無理しないでね。家のことは私たちも手伝うから」と声をかけていることを踏まえて記載するとよいでしょう。成人または成人に近い年齢の娘たちが、母親の回復を支えようとする姿勢を示していることは、家族全体でA氏を支える体制が整っていることを意味するため、その点を意識して評価することが重要です。
家族関係の質
家族が面会に訪れ、A氏に対して温かい言葉をかけている様子からは、家族関係が良好であることが読み取れることを踏まえて記述するとよいでしょう。夫が「娘たちにも協力してもらうつもりです」と述べていることから、家族内でのコミュニケーションが円滑で、協力体制を築くことができる関係性があると考えられることに着目して評価することが大切です。
A氏自身も「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、家族との生活を楽しみにしている様子が伺えることを踏まえて記載するとよいでしょう。この発言には、家族との関係が安定しており、家庭がA氏にとって安心できる居場所となっていることが示されているため、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
職業と社会的役割
A氏の職業は事務職であることを踏まえて記述するとよいでしょう。事務職は一般的に座位での作業が中心であり、身体的な負担は比較的少ないと考えられることに着目して評価することが大切です。医師から職場復帰は術後3週間後を目安とすると指示されていることから、段階的に仕事に復帰できる見通しが立っていることを考慮してアセスメントすることが重要です。
50歳という年齢で働き続けていることは、A氏が社会的な役割を持ち、経済的にも家族に貢献していることを示していることを踏まえて記載するとよいでしょう。「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という発言には、家庭生活だけでなく、職場での役割にも戻りたいという気持ちが含まれている可能性があることを意識して評価することが大切です。
几帳面で真面目な性格は、職場でも責任感を持って業務に取り組む姿勢につながっていると推測できることを踏まえて記述するとよいでしょう。このような性格特性を持つA氏にとって、職場での役割を果たすことは自己価値感にも関連している可能性があることを考慮してアセスメントすることが重要です。
母親としての役割の変化
長女は22歳で社会人、次女は19歳で大学生となっており、A氏の母親としての直接的な育児の役割は大きく変化している時期であることを踏まえて記述するとよいでしょう。子どもたちが自立に向かっている段階で、母親としての役割は日常的な世話から、精神的なサポートや見守りへとシフトしていることに着目して評価することが大切です。
娘たちが「家のことは私たちも手伝うから」と述べていることは、役割の逆転とも言える状況であることを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏がこのような娘たちの申し出をどのように受け止めているかは、事例には明記されていませんが、几帳面で真面目な性格を考えると、家事を娘たちに任せることに対して葛藤を感じる可能性もあることを考慮してアセスメントすることが重要です。
妻としての役割
夫が家事を手伝うと述べていることから、通常はA氏が家事の多くを担っている可能性が推測できることを踏まえて記述するとよいでしょう。術後の回復期に夫が家事を手伝うという計画は、A氏の負担を軽減し、回復に専念できる環境を整えるという意味で重要であることに着目して評価することが大切です。
夫婦関係が良好であり、夫がA氏の健康を気遣い、具体的なサポートを提供しようとしている様子は、夫婦間の相互支援関係が機能していることを示していることを踏まえて記載するとよいでしょう。このような関係性は、A氏の心理的安定や回復にとって重要な資源となることを考慮してアセスメントすることが重要です。
コミュニケーションパターン
A氏のコミュニケーション能力は良好で、自分の気持ちや不安を適切に言語化できていることを踏まえて記述するとよいでしょう。家族も面会に訪れ、温かい言葉をかけていることから、家族内でのコミュニケーションは開かれていると考えられることに着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目、やや心配性という性格は、コミュニケーションにおいては、細かいことを確認したり、不安を表現したりする傾向につながる可能性があることを踏まえて記載するとよいでしょう。このような特性は、医療者とのコミュニケーションにおいては、疑問や不安を適切に伝えることができるという利点となることを考慮してアセスメントすることが重要です。
アセスメントの視点
A氏は、妻・母親・働く女性という複数の役割を担っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。家族関係は良好で、夫と娘たちが退院後のサポート体制を具体的に計画しており、家族全体でA氏を支える準備が整っていることに着目して評価することが大切です。職場復帰の見通しも立っており、社会的役割も継続できる状況であることを考慮してアセスメントすることが重要です。
中年期にある家族として、子どもたちの自立に伴い、A氏の母親としての役割は変化の時期にあることを踏まえて記載するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格から、これまで担ってきた役割を家族に任せることに葛藤を感じる可能性もあるため、その点に配慮が必要であることを意識してアセスメントすることが大切です。
ケアの方向性
退院指導では、A氏だけでなく、夫や娘たちも含めて、具体的な役割分担や生活上の注意点を共有することが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。家族が具体的にどのようなサポートができるか、A氏がどのようなサポートを受け入れられるかを確認し、調整することを意識することが大切です。
A氏の几帳面で真面目な性格を考慮すると、家事を家族に任せることに抵抗を感じる可能性があることを踏まえて記述するとよいでしょう。術後の回復には休息が必要であること、家族のサポートを受け入れることが早期回復につながることを説明し、A氏が安心して家族に頼れるよう支援することを考慮してケアの方向性を考えることが重要です。
職場復帰に向けては、段階的な復帰の方法や、必要に応じて職場との調整について相談できる体制を整えることが望ましいことを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏が無理なく社会的役割を再開できるよう、具体的なアドバイスを提供することを意識してケアを計画することが大切です。
性-生殖パターンのポイント
性-生殖パターンでは、患者の年齢や生殖歴、そして疾患や治療が性機能・生殖機能に与える影響を評価します。婦人科系の手術を受けた患者では、身体的な機能の変化だけでなく、心理的な影響についても配慮が必要です。
どんなことを書けばよいか
性-生殖パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 年齢、家族構成
- 更年期症状の有無
- 性・生殖に関する健康問題
- 疾患や治療が性機能・生殖機能に与える影響
年齢と発達段階
A氏は50歳の女性であることを踏まえて記述するとよいでしょう。一般的に、日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後とされており、A氏は更年期またはその前後の時期にあると考えられることに着目して評価することが重要です。この時期は、女性ホルモンの変動により、身体的・心理的な変化が起こりやすい時期であることを考慮してアセスメントすることが大切です。
50歳という年齢は、生殖機能という観点では、すでに出産可能な時期を過ぎていると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。長女22歳、次女19歳という家族構成からも、A氏の生殖的役割は完了している段階と言えることを意識して評価することが重要です。
生殖歴と既往歴
A氏は35歳時に帝王切開による次女の出産歴があることを踏まえて記述するとよいでしょう。帝王切開での出産であったことは、今回の手術における腹腔内の癒着の可能性や、手術時のリスク評価において考慮すべき情報であることに着目して評価することが大切です。
40歳時に子宮筋腫を指摘され、現在も経過観察中であることを踏まえて記載するとよいでしょう。月経時の過多月経があるものの、特に治療は行っていないという情報から、A氏は長年にわたり婦人科系の健康問題と付き合ってきたことを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。子宮筋腫があるにもかかわらず、今回の手術では子宮は温存されていることから、子宮筋腫の大きさや位置は、現時点では手術適応となるレベルではないと判断されたと考えられることを意識して評価することが大切です。
今回の手術が生殖機能に与える影響
今回の手術では、右卵巣粘液性嚢胞腺腫に対して右卵巣のみを摘出し、左卵巣と子宮は温存されたことを踏まえて記述するとよいでしょう。片側の卵巣が残存していることは、ホルモン機能という観点から重要な意味を持つことに着目して評価することが大切です。
一般的に、片側の卵巣が残存している場合、そこから女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が分泌されるため、ホルモン機能は維持されると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。このことは、急激な更年期症状の出現を避けられる可能性が高いことを意味するため、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
ただし、A氏は50歳という年齢から、元々閉経前後の時期にあると考えられるため、残存卵巣の機能も今後徐々に低下していく可能性があることを踏まえて記述するとよいでしょう。手術による影響と、自然な加齢による影響を区別することは難しい時期と言えることを意識して評価することが大切です。
更年期症状の可能性
事例には、現時点での更年期症状の有無について明記されていないことを踏まえて記述するとよいでしょう。しかし、50歳という年齢と、右卵巣を摘出したという事実を考慮すると、今後、更年期症状が出現する可能性や、既に軽度の症状がある場合はそれが増強する可能性について、情報を得る必要があるかもしれないという視点を持つことが重要です。
一般的な更年期症状には、ほてり、発汗、イライラ、不眠、倦怠感、抑うつ気分などがあることを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏がこれらの症状をどの程度感じているか、そして今後の変化についてどのような懸念を持っているかを確認することを考慮してアセスメントすることが大切です。
性機能への影響
卵巣摘出が性機能に与える影響については、事例に直接的な記載はないことを踏まえて記述するとよいでしょう。一般的に、片側卵巣が残存している場合、ホルモンバランスは大きく変化しないため、性機能への直接的な影響は少ないと考えられることに着目して評価することが重要です。
しかし、手術による心理的な影響や、創部痛による活動制限、疲労感などが、一時的に性生活に影響を与える可能性があることを考慮して記載するとよいでしょう。また、A氏自身が卵巣を失ったことについてどのように感じているか、パートナーとの関係性にどのような影響があるかなども、必要に応じて配慮すべき点であることを意識してアセスメントすることが大切です。
患者の心理と不安
A氏は「左の卵巣にも何か起きないか心配です」と述べていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この発言には、残存卵巣への不安が表れていることに着目して評価することが重要です。右卵巣に腫瘍ができたという経験から、左卵巣にも同様の問題が起こる可能性を心配することは自然な反応であることを考慮してアセスメントすることが大切です。
この不安の背景には、単に健康への心配だけでなく、もし左卵巣も失うことになったら、完全に卵巣機能を失うことへの恐れがあるかもしれないことを踏まえて記載するとよいでしょう。50歳という年齢で、生殖機能自体は必要ない時期であっても、女性としての身体の変化や、ホルモン機能の喪失への不安は存在し得ることを意識して評価することが重要です。
子宮筋腫の経過観察
40歳時から子宮筋腫を指摘され、現在も過多月経がありながら経過観察を続けているという情報は、今後の婦人科的フォローアップにおいて重要であることを踏まえて記述するとよいでしょう。右卵巣摘出後も、子宮筋腫と左卵巣の両方について、継続的な観察が必要となることに着目して評価することが大切です。
過多月経が続いている場合、貧血のリスクもあることを考慮して記載するとよいでしょう。術後3日目のHbは11.8 g/dLとやや低値であり、これは手術の影響だけでなく、慢性的な過多月経による影響も考慮する必要があるかもしれないことを意識してアセスメントすることが重要です。
アセスメントの視点
A氏は50歳で更年期前後の時期にあり、右卵巣を摘出しましたが、左卵巣と子宮は温存されているため、ホルモン機能は維持されると考えられることを踏まえて記述するとよいでしょう。生殖的役割は完了しており、生殖機能の喪失による直接的な影響は少ないと考えられますが、左卵巣への不安を抱えていることに着目して評価することが大切です。
既往に子宮筋腫があり、現在も過多月経があることから、今後も婦人科的な継続的フォローアップが必要であることを考慮して記載するとよいでしょう。更年期症状の有無や、卵巣摘出による心理的影響については、さらに情報を得る必要がある可能性があることを意識してアセスメントすることが重要です。
ケアの方向性
退院指導では、左卵巣が残存していることでホルモン機能は維持されること、定期的な検査で左卵巣と子宮筋腫の経過を観察することの重要性を説明し、A氏の不安を軽減することが大切であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。
更年期症状や身体の変化について、気になることがあれば相談できる体制を整えることも重要であることを考慮して記述するとよいでしょう。特に、今後新たな症状が出現した場合、それが手術の影響なのか、自然な加齢による変化なのかを判断するために、医療者に相談するよう促すことを意識してケアの方向性を考えることが大切です。
A氏の心配性という性格を考慮し、定期的な検査スケジュールを明確に示すことで、安心感を提供することができることを踏まえて記載するとよいでしょう。また、何か異常を感じた場合の受診のタイミングについても、具体的な基準を示すことが効果的であることを意識してケアを計画することが重要です。
コーピング-ストレス耐性パターンのポイント
コーピング-ストレス耐性パターンでは、患者がストレスにどのように対処し、どのような資源を活用しているかを評価します。入院や手術という大きなストレス状況において、患者の適応能力やサポート体制を理解することが、効果的な看護ケアを提供する上で重要です。
どんなことを書けばよいか
コーピング-ストレス耐性パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 入院環境への適応
- 仕事や生活でのストレス状況
- ストレス発散方法、対処方法
- 家族のサポート状況
- 生活の支えとなるもの
入院・手術というストレス状況への対処
A氏は「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでした」と述べており、診断時には大きな不安を経験していたことを踏まえて記述するとよいでしょう。しかし、「良性だとわかって本当に安心しました」という発言から、正確な情報を得ることで不安を適切に処理できていることに着目して評価することが重要です。
この一連の反応は、A氏が不安という感情を自覚し、それを言語化して表現できること、そして情報を理解することで不安を軽減できることを示していることを踏まえて記載するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格が、医療者からの説明を注意深く聞き、正確に理解しようとする姿勢につながっており、これが不安への対処に役立っていると考えられることを意識してアセスメントすることが大切です。
入院環境への適応
入院後は病院の環境に慣れないことと術後の疼痛から、やや入眠困難と中途覚醒が見られましたが、術後4日目からは眠剤なしでも入眠できるようになっていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この変化は、徐々に入院環境に適応していることを示していることに着目して評価することが重要です。
わずか数日間で睡眠パターンが改善したことは、A氏の適応能力の高さを表していることを考慮して記載するとよいでしょう。環境の変化というストレスに対して、時間をかけて適応していく能力があることは、退院後の生活においても、段階的に日常生活に戻っていける可能性を示唆しているため、その点を踏まえてアセスメントすることが大切です。
言語化によるストレス対処
A氏は自分の気持ちや不安を言葉で表現する能力が高く、「左の卵巣にも何か起きないか心配です」「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」など、自分の感情や願望を明確に伝えていることを踏まえて記述するとよいでしょう。
このような感情の言語化は、ストレスへの対処において重要な能力であることに着目して評価することが大切です。自分の気持ちを表現することで、医療者からの適切なサポートを受けることができ、また自分自身でも感情を整理することができるため、A氏のコミュニケーション能力の高さは、ストレス対処における大きな強みと言えることを意識してアセスメントすることが重要です。
家族のサポートという資源
夫は「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします。娘たちにも協力してもらうつもりです」と具体的なサポート計画を述べていることを踏まえて記述するとよいでしょう。娘たちも「お母さん、無理しないでね。家のことは私たちも手伝うから」と声をかけていることに着目して記載することが重要です。
このような家族の具体的で実際的なサポートは、A氏にとって大きな心理的資源となることを考慮して評価するとよいでしょう。退院後の生活への不安を軽減し、回復に専念できる環境が整っているという安心感は、ストレス耐性を高める重要な要素であることを踏まえてアセスメントすることが大切です。
家族が面会に訪れ、温かい言葉をかけている様子からは、A氏が家族から情緒的なサポートも受けていることが読み取れることを踏まえて記述するとよいでしょう。物理的なサポートだけでなく、精神的な支えがあることは、ストレス状況において非常に重要であることを意識して評価することが重要です。
前向きな認知的対処
A氏は「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」と述べており、手術の結果を肯定的に捉えていることを踏まえて記載するとよいでしょう。これは、ポジティブな側面に注目するという認知的な対処方法と言えることに着目して評価することが大切です。
困難な状況の中でも、良い点を見つけて肯定的に捉える能力は、ストレス耐性を高める重要な要素であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏がこのような前向きな認知を持てることは、術後の回復過程においても、困難を乗り越える力となることを意識してアセスメントすることが重要です。
目標設定による対処
「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という発言は、明確な目標を持つことで、現在の困難な状況に意味を見出そうとする姿勢を示していることを踏まえて記述するとよいでしょう。退院という具体的な目標があることで、日々の辛さや不便さを乗り越える動機づけとなることに着目して評価することが大切です。
また、「定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という発言も、将来に対する不安に対して、具体的な行動計画を立てることで対処しようとする姿勢を表していることを踏まえて記載するとよいでしょう。これは問題焦点型のコーピングと言え、効果的なストレス対処方法の一つであることを考慮してアセスメントすることが重要です。
几帳面な性格とストレス
几帳面で真面目、やや心配性という性格は、ストレス対処において両面性を持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。几帳面で真面目な特性は、医療者の指示を正確に守り、健康管理を適切に行うという点ではプラスに働くことに着目して評価することが大切です。
一方で、心配性という特性は、「左の卵巣にも何か起きないか心配です」という発言に表れているように、将来への不安を生じやすい傾向につながることを考慮して記載するとよいでしょう。この性格特性が過度なストレスの原因とならないよう、適切な情報提供と心理的サポートが重要であることを意識してアセスメントすることが大切です。
職業的役割とストレス
A氏は事務職として働いており、職場復帰は術後3週間後を目安としていることを踏まえて記述するとよいでしょう。事例には職場でのストレス状況についての直接的な記載はありませんが、50歳という年齢で働き続けていること、そして早く普通の生活に戻りたいと述べていることから、仕事がA氏にとって重要な生活の一部であることが推測できることに着目して評価することが重要です。
几帳面で真面目な性格を考えると、職場での責任感も強く、「早く仕事に復帰しなければ」というプレッシャーを感じる可能性もあることを考慮して記載するとよいでしょう。この点については、無理なく段階的に復帰することの重要性を理解してもらう必要性があるかもしれないことを意識してアセスメントすることが大切です。
ストレス発散方法
事例には、A氏の具体的なストレス発散方法や趣味、リラクゼーション方法についての記載がないことを踏まえて記述するとよいでしょう。喫煙歴はなく、飲酒も月に1〜2回程度と控えめであることから、これらをストレス発散の手段としていないことはわかることに着目して評価することが重要です。
日常的にどのようなストレス発散方法を持っているか、リラックスするためにどのような活動をしているかについては、さらに情報を得ることが望ましいという視点を持つことが大切です。これらの情報は、退院後のストレス管理を支援する上で有用となることを考慮してアセスメントすることが重要です。
アセスメントの視点
A氏は、不安を適切に表現し、正確な情報を得ることで不安を軽減する能力を持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。入院環境への適応も比較的早く、家族からの具体的で温かいサポートを受けており、ストレス対処のための資源は十分にあると言えることに着目して評価することが大切です。
前向きな認知と目標設定によって困難な状況に対処する能力があり、問題焦点型のコーピングも活用していることを考慮して記載するとよいでしょう。几帳面で心配性という性格特性は、健康管理においてはプラスに働く一方で、過度な不安の原因にもなり得るため、バランスの取れた支援が必要であることを意識して、総合的にコーピング-ストレス耐性パターンをアセスメントすることが重要です。
ケアの方向性
A氏の高いコミュニケーション能力を活かし、気になることや不安なことがあれば、いつでも表現できる環境を整えることが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。不安を言語化することで、適切な情報提供や心理的サポートにつなげることができることを意識することが大切です。
家族のサポート体制を最大限に活用し、退院後の生活において、A氏が無理をせず、家族に頼ることができるよう支援することが大切であることを考慮して記述するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格から、完璧を求めすぎたり、家族に頼ることに抵抗を感じたりする可能性があるため、段階的な回復の重要性を説明し、家族のサポートを受け入れることを促すことを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
将来の健康への不安については、定期的な検査のスケジュールを明確に示し、具体的な行動計画を一緒に立てることで、不安への対処を支援することが効果的であることを踏まえて記載するとよいでしょう。また、日常生活でのストレス発散方法についても話し合い、退院後の生活の中で、リラックスする時間を持つことの重要性を伝えることを考慮してケアを計画することが大切です。
価値-信念パターンのポイント
価値-信念パターンでは、患者の人生観、価値観、信念を評価します。これらは患者の医療に対する態度や意思決定、そして困難な状況に対する意味づけに影響を与えるため、患者を全人的に理解する上で重要な視点となります。
どんなことを書けばよいか
価値-信念パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 信仰、宗教的背景
- 意思決定を決める価値観/信念
- 人生の目標、大切にしていること
- 医療や治療に対する価値観
宗教的背景
事例には、A氏は特定の信仰を持っていないという記載があることを踏まえて記述するとよいでしょう。このことは、医療やケアにおいて、特定の宗教的配慮(食事制限、祈りの時間、宗教的儀式など)が必要ないことを意味するため、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
ただし、信仰を持っていないことが、A氏に精神的な支えがないことを意味するわけではないことに着目して記載するとよいでしょう。宗教以外の何が、A氏にとって人生の支えや意味となっているかを理解することが重要であるという視点を持つことが大切です。
家族に対する価値観
A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、この発言には家族との生活を大切にしている価値観が表れていることを踏まえて記述するとよいでしょう。家族が面会に訪れ、温かい言葉をかけている様子、そしてA氏がそれを受け入れている様子から、家族との関係が人生において重要な位置を占めていることが読み取れるため、その点に着目して評価することが大切です。
長女と次女という二人の娘を育て上げ、現在も夫と共に生活している50歳のA氏にとって、家族は生活の中心であり、大きな価値を持つ存在と考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。家族との「普通の生活」に戻りたいという願いは、日常の営みの中に幸せや意味を見出す価値観を示しているため、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
健康に対する価値観
A氏は8月下旬に下腹部の違和感と膨満感を自覚し、9月初旬には自ら近医を受診していることを踏まえて記述するとよいでしょう。また、「左の卵巣にも何か起きないか心配です。定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」と述べており、健康維持と予防的な健康管理を重視する価値観を持っていることに着目して評価することが大切です。
45歳頃から高血圧で降圧薬を内服し、40歳時の子宮筋腫も継続的に経過観察しているという情報から、A氏は健康問題に対して責任を持って対処し、医療の指示を守ることに価値を置いていると考えられることを踏まえて記載するとよいでしょう。このような健康への高い意識は、A氏の価値観の重要な側面であり、今後の健康管理行動を予測する上でも重要な情報となるため、その点を意識してアセスメントすることが大切です。
責任感と真面目さという価値観
几帳面で真面目という性格特性は、A氏の価値観を反映していると考えられることを踏まえて記述するとよいでしょう。物事を丁寧に、正確に行うことに価値を置き、自分の責任を果たすことを重視する傾向があると推測できるため、その点に着目して評価することが大切です。
このような価値観は、妻・母親・働く女性という複数の役割において、それぞれの責任を真面目に果たそうとする姿勢につながっていることを考慮して記載するとよいでしょう。退院後、夫や娘たちが家事を手伝うという申し出に対して、A氏がどのように感じるかは、この責任感という価値観と関連している可能性があるため、その点を踏まえてアセスメントすることが重要です。
日常生活への価値づけ
「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という発言の中の「普通の生活」という表現に注目すると、A氏は日常の当たり前の生活に価値を見出していることを踏まえて記述するとよいでしょう。特別なことではなく、普段の生活の営みそのものが、A氏にとって大切なものであることが示されているため、その点に着目して評価することが大切です。
入院という非日常の経験を通して、日常生活の価値を再認識している可能性もあることを考慮して記載するとよいでしょう。家族との食事、家事、仕事といった日々の活動が、A氏にとって意味のあるものとして捉えられていると考えられるため、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
医療・治療に対する信頼と受容
A氏は医師の説明を理解し、手術という治療法を受け入れていることを踏まえて記述するとよいでしょう。「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」という発言からは、医療者の説明や判断を信頼し、治療の結果を肯定的に受け止めていることが読み取れるため、その点に着目して評価することが大切です。
また、「定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という発言は、医療を通じた健康管理の重要性を認識し、医療を活用することに価値を置いていることを示していることを考慮して記載するとよいでしょう。医療者との協働的な関係性を築くことができる価値観を持っていると言えるため、その点を踏まえてアセスメントすることが重要です。
将来への展望
A氏は50歳という中年期にあり、長女は社会人、次女は大学生となっていることを踏まえて記述するとよいでしょう。今後、子どもたちはさらに自立し、夫婦二人の生活が中心となっていく時期であることに着目して評価することが大切です。
事例には、A氏の将来の目標や人生の展望についての直接的な記載はありませんが、「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という発言から、現在の生活を継続していくことに価値を置いていることが推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。職場復帰を予定していることも、仕事を通じた社会参加や自己実現を大切にしている可能性を示唆しているため、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
意思決定における価値観
A氏は腫瘍の診断を受けた際、「癌かもしれないと思って不安でいっぱいでした」と述べていますが、医療者の説明を受け、手術という治療法を選択していることを踏まえて記述するとよいでしょう。キーパーソンである夫と相談しながら、医療者の提案を受け入れたと考えられるため、その点に着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目な性格から、慎重に情報を集め、専門家の意見を尊重しながら意思決定を行う傾向があると推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。家族との相談も重視し、独断ではなく、周囲の意見も取り入れながら決定する価値観を持っていると考えられるため、その点を踏まえてアセスメントすることが重要です。
自律性と依存のバランス
A氏は自分の健康管理に責任を持ち、積極的に医療機関を受診し、医療者の指示を守る姿勢を持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。一方で、家族のサポートを受け入れ、医療者の専門的判断を信頼することもできるため、その点に着目して評価することが大切です。
このような自律性と適切な依存のバランスは、健康的な価値観と言えることを考慮して記載するとよいでしょう。すべてを自分で抱え込むのではなく、必要に応じて周囲の支援を受け入れることができる柔軟性を持っていることは、退院後の生活においても重要な要素となるため、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
アセスメントの視点
A氏は特定の宗教的信仰を持っていませんが、家族との日常生活に価値を見出し、それが人生の中心となっていることを踏まえて記述するとよいでしょう。健康維持と予防的な健康管理を重視し、責任感を持って自分の健康に対処しようとする価値観を持っていることに着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目という性格特性は、責任を果たすことに価値を置く価値観を反映しており、医療・治療に対しても信頼と受容の姿勢を示していることを考慮して記載するとよいでしょう。日常の当たり前の生活に意味を見出し、家族や仕事という役割を大切にする価値観が、A氏の行動や意思決定の基盤となっていると考えられるため、その点を踏まえてアセスメントすることが重要です。
自律性と適切な依存のバランスを持ち、必要に応じて周囲の支援を受け入れることができる柔軟性も、A氏の価値観の特徴であることを意識して評価するとよいでしょう。慎重に情報を集め、専門家の意見を尊重しながら意思決定を行う姿勢は、几帳面で真面目という性格特性と一致しており、今後の健康管理においても重要な要素となることを考慮して、総合的に価値-信念パターンをアセスメントすることが大切です。
ケアの方向性
A氏の家族を大切にする価値観を尊重し、退院後、できるだけ早く家族との日常生活に戻れるよう支援することが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。同時に、几帳面で責任感が強いという特性から、家族に頼ることに抵抗を感じる可能性もあるため、適切に休息を取り、家族のサポートを受け入れることも健康管理の一部であることを伝えることを意識することが大切です。
健康管理への高い意識を活かし、定期的な検査の重要性や、日常生活での健康維持の方法について、具体的な情報を提供することが効果的であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の予防的な健康管理という価値観を支持し、それが過度な不安につながらないよう、バランスの取れた関わりを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏が日常生活に戻り、家族や仕事という役割を通じて人生の意味を見出すことができるよう、段階的な回復と、無理のない活動再開を支援することが大切であることを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏の価値観を理解し、それを尊重しながら、健康的な生活の再構築を共に考えていく姿勢を持つことが求められるため、その点を意識してケアを計画することが重要です。
ヘンダーソンのアセスメント
正常に呼吸するというニーズのポイント
このニーズでは、患者が十分な酸素を取り込み、二酸化炭素を排出できているかを評価します。呼吸機能は生命維持の最も基本的な要素であり、バイタルサインや自覚症状、そして疾患が呼吸に与える影響を総合的にアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
正常に呼吸するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患の簡単な説明
- 呼吸数、SpO2、肺雑音、呼吸機能、胸部レントゲン
- 呼吸苦、息切れ、咳、痰
- 喫煙歴
- 呼吸に関するアレルギー
疾患と呼吸への影響
A氏は右卵巣粘液性嚢胞腺腫に対して、9月17日に腹腔鏡下右卵巣腫瘍摘出術を受けたことを踏まえて記述するとよいでしょう。この疾患自体は呼吸器系に直接的な影響を与えるものではありませんが、腹腔鏡下手術では気腹(腹腔内にガスを注入すること)を行うため、横隔膜が挙上され、一時的に呼吸機能に影響を与える可能性があることに着目して評価することが重要です。
手術時間は2時間45分で、全身麻酔下での手術であったことから、術後の呼吸機能の回復状況を観察することが大切であることを考慮して記載するとよいでしょう。全身麻酔による呼吸抑制の影響や、術後の疼痛による深呼吸の制限などが、呼吸機能に影響を与える可能性を踏まえてアセスメントすることが重要です。
バイタルサインから見る呼吸状態
来院時の呼吸数は16回/分、SpO2は98%(室内気)であり、正常範囲内であったことを踏まえて記述するとよいでしょう。現在(術後5日目)の呼吸数は18回/分、SpO2は97%(室内気)であり、わずかに呼吸数が増加していますが、いずれも正常範囲内で推移していることに着目して評価することが大切です。
SpO2が97-98%と良好に保たれていることは、酸素化が適切に行われていることを示しているため、その点を考慮して記載するとよいでしょう。呼吸数の軽度増加については、術後の活動量増加や、軽度の疼痛による影響が考えられますが、SpO2が保たれていることから、呼吸機能に大きな問題はないと判断できることを踏まえてアセスメントすることが重要です。これらのバイタルサインの推移を意識して、呼吸状態の安定性を評価する視点を持つことが大切です。
自覚症状と呼吸の快適さ
事例には、呼吸苦、息切れ、咳、痰といった呼吸器症状の記載がないことを踏まえて記述するとよいでしょう。このことから、A氏は呼吸に関する不快な自覚症状を感じていないと考えられることに着目して評価することが重要です。
術後5日目で歩行も自立しており、病棟内を移動していることから、活動時の呼吸苦もないと推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。腹腔鏡下手術後の気腹による肩の痛みが生じることがありますが、それが呼吸に影響を与えている様子も見られないことを踏まえてアセスメントすることが大切です。呼吸の快適さが保たれていることは、このニーズが充足されていることを示す重要な指標となるため、その点を意識して評価することが重要です。
喫煙歴とリスク因子
A氏には喫煙歴がなく、呼吸器系の健康リスク因子は低い状態であることを踏まえて記述するとよいでしょう。喫煙歴がないことは、術後の呼吸器合併症(無気肺、肺炎など)のリスクが低いことを意味し、呼吸機能の回復にとって有利な条件と言えるため、その点に着目して評価することが大切です。
また、呼吸に関するアレルギーも特にないという情報から、アレルギー性の呼吸器症状を引き起こすリスクも低いと考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。これらの要因を総合すると、A氏の呼吸機能を維持する基盤は良好であると評価できるため、その点を踏まえてアセスメントすることが重要です。
術後の呼吸器合併症予防
術後1日目から離床を開始し、現在は自立歩行していることは、呼吸器合併症の予防という観点から非常に重要であることを踏まえて記述するとよいでしょう。早期離床により、肺の拡張が促され、分泌物の貯留を防ぐことができるため、その点に着目して評価することが大切です。
疼痛は鎮痛薬でコントロールされており、軽減傾向にあることから、疼痛による深呼吸の制限も最小限に抑えられていると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。適切な疼痛管理と早期離床により、術後の呼吸機能は順調に回復していると評価できるため、その点を踏まえてアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「正常に呼吸する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。バイタルサインは安定しており、SpO2も良好に保たれていることに着目して記載することが大切です。呼吸器症状の自覚もなく、活動時の呼吸苦も見られないことを考慮してアセスメントすることが重要です。喫煙歴がなく、早期離床により呼吸器合併症のリスクも低い状態であることを踏まえて評価するとよいでしょう。
術後の経過も順調で、呼吸機能の回復を妨げる要因は現時点では認められないことを意識して記述することが大切です。ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、このニーズは患者の意欲、知識、体力のいずれの観点からも問題なく、自立した状態と言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが重要です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
現在、呼吸状態は安定していますが、退院まで継続的なバイタルサインのモニタリングを行い、呼吸機能の安定性を確認することが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。特に活動量が増加する際の呼吸数やSpO2の変化に注意を払うことを意識することが大切です。
退院後も適度な活動を継続し、深呼吸を意識的に行うことで、呼吸機能を良好に保つことができることを考慮して記載するとよいでしょう。もし、呼吸苦や咳、痰などの症状が出現した場合は、早期に医療機関を受診するよう指導することが大切であることを踏まえてケアの方向性を考えることが重要です。
A氏の喫煙歴がないという健康的な生活習慣を維持することの重要性を支持し、今後も呼吸器の健康を保つための生活指導を行うことが望ましいことを意識して記述するとよいでしょう。A氏が自立して呼吸機能を維持できるよう、具体的な支援方法を検討することが求められることを考慮してケアを計画することが大切です。
適切に飲食するというニーズのポイント
このニーズでは、患者が必要な栄養と水分を適切に摂取できているかを評価します。術後患者では、手術侵襲による代謝変化や食欲低下を考慮し、栄養状態の維持と創傷治癒に必要な栄養摂取が行えているかをアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
適切に飲食するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食事に関するアレルギー
- 身長、体重、BMI、必要栄養量、身体活動レベル
- 食欲、嚥下機能、口腔内の状態
- 嘔吐、吐気
- 血液データ(TP、Alb、Hb、TGなど)
体格と栄養状態の基盤
A氏の身長は158cm、体重は56kgで、BMIは約22.4となることを踏まえて記述するとよいでしょう。これは標準的な体格を示しており、術前の栄養状態が良好であったことに着目して評価することが重要です。入院前は自宅で普通食を1日3食規則正しく摂取しており、食欲も良好であったことを考慮して記載することが大切です。
このような規則正しい食習慣は、術後の回復にとって有利な条件となることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。入院時の血液データでは、TP 7.2 g/dL、Alb 4.3 g/dLと正常範囲内であり、栄養状態の指標として問題ないことに着目して記述することが重要です。これらの情報を意識して、術前の良好な栄養状態が術後回復の基盤となっていることを評価する視点を持つことが大切です。
術後の食事摂取状況
術後2日目(9月19日)から食事を開始し、排ガスも確認されていることを踏まえて記述するとよいでしょう。これは消化管機能が順調に回復していることを示す重要なサインであることに着目して評価することが重要です。現在(術後5日目)は術後食(常食)を提供されており、食事摂取量は8割程度であることを考慮して記載することが大切です。
食事摂取量が8割にとどまっている要因として、「術後の疼痛や緊張から食欲がやや低下している」という記載があることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。腹腔鏡下手術後は、気腹による腹部膨満感や創部痛が食欲に影響することがあるため、A氏の場合もこれらの要因が考えられることを意識して評価することが重要です。しかし、「少しずつ改善傾向にある」という記載から、徐々に回復に向かっている状態と捉え、今後の摂取量増加の可能性を考慮して記述することが大切です。
嚥下状態は良好で、水分摂取も問題なく行えているという情報を踏まえて、誤嚥のリスクがなく、経口摂取が安全に行えることを記載するとよいでしょう。食事に関するアレルギーもないため、食事内容の制限は不要であることに着目して、このニーズの充足を支える要素として評価することが重要です。
栄養・代謝状態を示す血液データの変化
術後3日目(9月20日)の血液データを入院時と比較すると、いくつかの変化が見られることを踏まえて記述するとよいでしょう。TP(総蛋白)は7.2 g/dLから6.8 g/dLへ、Alb(アルブミン)は4.3 g/dLから3.9 g/dLへと若干低下していることに着目して評価することが大切です。これは手術侵襲による影響や、術後の食事摂取量の低下によるものと考えられますが、いずれも正常範囲の下限に近い値であり、著しい栄養状態の悪化を示すものではないことを意識して記載することが重要です。
RBC(赤血球)は4.25×10⁶/μLから3.98×10⁶/μLへ、Hb(ヘモグロビン)は13.2 g/dLから11.8 g/dLへ、Ht(ヘマトクリット)は39.5%から36.2%へと低下していることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。これらは術中の出血や手術侵襲による一時的な変化と考えられるため、出血量は少量であったことを考慮し、貧血は軽度であり、正常範囲内であることを評価することが大切です。
電解質(Na、K、Cl)は正常範囲内で安定しており、腎機能を示すBUN、Crも正常範囲内である点に着目して、代謝機能は維持されていることを記述し、その点を踏まえて全身の代謝状態を評価する視点を持つことが重要です。
創傷治癒と栄養状態の関連
術後5日目の現在、創部の発赤や腫脹はなく、感染徴候も認めていないという情報を踏まえて、創傷治癒が順調に進んでいることを記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術では複数の小さな創部がありますが、これらの創部の状態が良好であることに着目して、栄養状態が創傷治癒を支えていることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
術後3日目(9月20日)にドレーンが抜去されており、ドレーンからの排液量や性状も問題なかったと推測できることを踏まえて記載するとよいでしょう。CRP(C反応性蛋白)は入院時の0.08 mg/dLから術後3日目に1.52 mg/dLへと上昇していますが、これは手術侵襲に対する生体反応として正常な範囲内の上昇であることを意識して評価することが重要です。感染を示唆するような著しい上昇ではなく、創部の状態と合わせて考えると、炎症反応は適切にコントロールされていることを考慮してアセスメントすることが大切です。
水分バランス
嚥下状態が良好で水分摂取も問題なく行えていること、バイタルサインが安定していること、電解質バランスが正常範囲内であることを踏まえて、水分代謝は適切に保たれていることを記述するとよいでしょう。
術後は侵襲による不感蒸泄の増加や、食事摂取量の低下による水分摂取量の減少が懸念されますが、A氏の場合、尿量や排尿回数(日中6〜7回、夜間1回程度)が適切であることに着目して、水分バランスは保たれていることを評価し、その点を意識してアセスメントすることが重要です。適切な水分摂取は、このニーズの充足を支える重要な要素であることを考慮して記載することが大切です。
ニーズの充足状況
A氏の「適切に飲食する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。嚥下機能は良好で、安全に経口摂取ができており、水分摂取も十分であることに着目してアセスメントすることが重要です。しかし、食事摂取量が8割程度にとどまっており、食欲がやや低下している点が阻害要因となっていることを考慮して記載することが大切です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、「少しずつ改善傾向にある」ことから、食事に対する前向きな姿勢が見られるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、栄養摂取の重要性を理解していると考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。体力の面では、疼痛や緊張が食欲に影響を与えていますが、徐々に改善しているため、術後7日目の退院予定までに、さらに食事摂取量を増やすことが望まれることを意識してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
食欲の回復を促進するために、疼痛コントロールを適切に行い、食事環境を整えることを意識してケアを計画するとよいでしょう。食事時間に合わせた鎮痛薬の使用や、好みの食事内容を確認して提供することも効果的であることを考慮して記述することが重要です。
食事摂取量や水分摂取量を継続的にモニタリングし、必要に応じて栄養指導を行うことを検討するとよいでしょう。退院後の食事についても、バランスの良い食事を継続的に摂取することの重要性を説明し、創傷治癒や体力回復のために必要な栄養素について指導することを踏まえてケアの方向性を考えることが大切です。
A氏の几帳面な性格を活かし、具体的な栄養目標や食事内容について文書で提供することも効果的であることを意識して記載するとよいでしょう。「早く家に帰って普通の生活に戻りたい」という意欲を支持し、そのために十分な栄養摂取が必要であることを説明することで、食事摂取への動機づけを高めることができることを考慮してケアを計画することが重要です。患者が自立して適切な飲食ができるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを意識してケアの方向性を考えることが大切です。
あらゆる排泄経路から排泄するというニーズのポイント
このニーズでは、排便、排尿、発汗などあらゆる排泄経路から適切に老廃物が排出されているかを評価します。術後患者では、麻酔や手術侵襲による腸蠕動の低下、安静による影響などを考慮し、排泄機能の回復状況をアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
あらゆる排泄経路から排泄するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 排便回数と量と性状、排尿回数と量と性状、発汗
- In-outバランス
- 排泄に関連した食事、水分摂取状況
- 麻痺の有無
- 腹部膨満、腸蠕動音
- 血液データ(BUN、Cr、GFRなど)
術前の排泄パターン
入院前、A氏は自宅のトイレで自立して排泄しており、排便は1日1回、普通便でした。下剤等の使用はなく、自然な排便習慣が確立されていたことを踏まえて記述するとよいでしょう。排尿も日中5〜6回程度で特に問題はなく、排尿パターンも正常範囲内であったことに着目して評価することが重要です。
このような良好な排泄習慣は、消化管機能や腎機能が正常に保たれていたことを示しており、術後の排泄機能の回復を予測する上で重要な情報となることを考慮して記載するとよいでしょう。術前の自立した排泄能力を踏まえて、術後の回復目標を設定する視点を持つことが大切です。
術後の排尿機能の回復
術後は尿道カテーテルを留置していましたが、術後1日目(9月18日)に抜去されたことを踏まえて記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術後の比較的早期にカテーテルを抜去できたことに着目して、順調な回復を示していることを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
カテーテル抜去後は自力排尿が可能となり、残尿感や排尿痛はないことを踏まえて記載するとよいでしょう。排尿回数は日中6〜7回程度、夜間は1回程度であり、術前の5〜6回と比較してやや増加していますが、これは術後の水分摂取や点滴による影響と考えられ、正常な範囲内であることを意識してアセスメントすることが大切です。
残尿感や排尿痛がないという情報を踏まえて、尿路感染のリスクが低く、膀胱機能も正常に回復していると考えられるかどうかを記述するとよいでしょう。骨盤内の手術であったため、膀胱や尿管への影響が懸念されますが、現時点では問題は見られないことに着目して評価し、患者が自立して排尿できる状態にあるかを考慮してアセスメントすることが重要です。
術後の排便機能の回復
排便は術後3日目(9月20日)に初回排便があったことを踏まえて記述するとよいでしょう。術後2日目(9月19日)に食事を開始し、排ガスも確認されていることに着目して、消化管機能は徐々に回復していたと評価し、初回排便までの日数は腹腔鏡下手術後としては適切な範囲内であるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
初回排便は「やや硬めの便」でしたが、その後は1日1回のペースで普通便が出ており、下剤の使用もしていないことを踏まえて記載するとよいでしょう。初回排便が硬めであった要因としては、術後の食事摂取量の低下、活動量の減少、麻酔や鎮痛薬の影響などが考えられることを考慮して記述することが重要です。しかし、その後は普通便に改善し、術前と同様の排便パターンに戻っていることに着目して、消化管機能は順調に回復していると評価できるかどうかを踏まえてアセスメントすることが大切です。
腸蠕動と腹部の状態
術後2日目(9月19日)から食事を開始し、排ガスが確認されたという情報を踏まえて、腸蠕動が再開していることを記述するとよいでしょう。これは消化管機能回復の重要なサインであることを意識し、腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して腸蠕動の回復が早い傾向があることを考慮して、A氏の場合も順調に回復しているかどうかを評価することが大切です。
現在(術後5日目)、創部の状態も良好で、感染徴候も認めていないことから、腹部の状態は安定していると考えられるかどうかを踏まえて記載するとよいでしょう。腹部膨満感や腸蠕動音の異常については事例に記載がありませんが、排便が規則的に見られていることに着目して、大きな問題はないと評価できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
活動量と排泄への影響
A氏は術後1日目(9月18日)午後から離床を開始し、術後2日目(9月19日)からは病棟内を自立歩行していることを踏まえて記述するとよいでしょう。トイレへの移動も自立しており、早期離床による活動量の確保が排泄機能の回復に良い影響を与えていると考えられるかどうかに着目して評価し、その点を考慮してアセスメントすることが大切です。
活動量の増加は腸蠕動を促進し、便秘の予防にもつながることを意識して記載するとよいでしょう。A氏の場合、早期から歩行を開始したことで、術後の消化管機能の回復が促進され、下剤を使用せずに自然な排便が可能になったと評価できるかどうかを踏まえてアセスメントすることが重要です。A氏に麻痺はなく、トイレまで自力で移動できることは、排泄の自立を支える重要な要素であることを考慮して記述することが大切です。
腎機能と排泄機能
術後3日目(9月20日)の血液データでは、BUN(尿素窒素)16.8 mg/dL、Cr(クレアチニン)0.72 mg/dLといずれも正常範囲内であることを踏まえて記述するとよいでしょう。入院時と比較して、BUNは14.2 mg/dLから16.8 mg/dLへとわずかに上昇していますが、正常範囲内であり、腎機能は維持されていると評価できるかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。
電解質(Na、K、Cl)も正常範囲内で安定しており、水分・電解質バランスが適切に保たれていることを踏まえて記載するとよいでしょう。これらのデータから、腎機能には問題がなく、排尿機能も正常に保たれていると考えられるかどうかを評価し、その点を意識して排泄機能全体をアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「あらゆる排泄経路から排泄する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。排尿は自力で問題なく行え、排便も術前と同様の規則的なパターンに戻っているかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。下剤やカテーテルなどの補助的手段を必要とせず、自然な排泄が可能であるかを考慮して記載することが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、トイレまで自分で移動し、自立して排泄を行おうとする姿勢が見られるかどうかを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。知識の面では、適切な食事・水分摂取が排泄に重要であることを理解していると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、早期離床により活動量を確保し、排泄機能の回復を促進しているかどうかを意識して記述することが重要です。麻痺もなく、腎機能も正常であり、このニーズを阻害する要因は認められないかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
引き続き、食事摂取量と水分摂取量を適切に維持し、活動量を確保することで、規則的な排泄パターンを継続できるよう支援することを意識してケアを計画するとよいでしょう。
退院に向けて、A氏が自宅での排泄習慣を再確立できるよう、術前の生活パターンに近づけていくことを考慮してケアの方向性を考えることが大切です。退院後は活動量が増加するため、排便パターンも変化する可能性があることを踏まえて、便秘や下痢などの異常が見られた場合の対処方法について、退院指導の中で説明することが重要です。
排尿に関しても、残尿感や頻尿、排尿痛などの異常が見られた場合は早期に医療機関を受診するよう指導し、尿路感染の予防と早期発見に努めることを意識してケアを計画するとよいでしょう。A氏が自立して適切に排泄できるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを踏まえて、ケアの方向性を考えることが大切です。
身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持するというニーズのポイント
このニーズでは、患者が自由に体を動かし、適切な姿勢を保つことができるかを評価します。術後患者では、手術侵襲からの回復過程や早期離床の状況、そして日常生活に必要な動作の自立度を確認することが、このニーズの充足を判断する上で重要です。
どんなことを書けばよいか
身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- ADL、麻痺、骨折の有無
- ドレーン、点滴の有無
- 生活習慣、認知機能
- ADLに関連した呼吸機能
- 転倒転落のリスク
術前の活動能力
入院前、A氏は日常生活動作すべてにおいて自立しており、歩行、移乗、排泄、入浴、衣類の着脱はすべて介助なく行えていたことを踏まえて記述するとよいでしょう。転倒歴もなく、麻痺や骨折もないことから、完全に自立した活動能力を持っていたと考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
50歳という年齢で、特に運動機能の低下を示す情報はなく、年齢相応の活動レベルを維持していたことを考慮して記載するとよいでしょう。事務職として働いていることから、日常的に通勤や業務遂行に必要な活動量を確保していたと推測できることを踏まえて、この術前の自立した活動能力を意識し、術後の回復目標を設定する視点を持つことが大切です。
術後の早期離床と活動の進行
手術当日から術後1日目午前中まではベッド上安静でしたが、術後1日目(9月18日)午後から離床を開始し、看護師付き添いのもとで歩行を開始していることを踏まえて記述するとよいでしょう。これは腹腔鏡下手術後の早期離床プロトコールに沿った適切な進行であるかどうかに着目して、術後合併症の予防という観点から適切なタイミングであるかを評価し、その点を考慮してアセスメントすることが重要です。
術後2日目(9月19日)からは病棟内を自立歩行しており、トイレへの移動も自立していることを踏まえて記載するとよいでしょう。移乗や排泄、衣類の着脱も自立して行えており、わずか2日間で術前のADL自立レベルに近い状態まで回復しているかどうかに着目して記述することが大切です。この回復の早さは、腹腔鏡下手術の低侵襲性、A氏の術前の良好な身体機能、そして早期離床への積極的な取り組みの結果と考えられるかどうかを評価し、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
現在(術後5日目)は歩行が完全に自立しており、病棟内を自由に移動できていることを踏まえて、A氏の運動機能と活動耐性は十分に回復していると評価できるかどうかを記述し、その点を考慮して今後の活動拡大を考える視点を持つことが大切です。
医療器具と身体の動き
ドレーンは術後3日目(9月20日)に抜去されており、現在は点滴やルート類もない状態と考えられることを踏まえて記述するとよいでしょう。このため、身体の動きを制限する医療器具はなく、自由に体を動かすことができる状態であるかどうかに着目して評価することが重要です。
ドレーンや点滴がある期間は、これらの器具を考慮して体位変換や移動を行う必要がありましたが、現在はそのような制限もなくなっていることを考慮して記載するとよいでしょう。医療器具による制限がないことは、このニーズの充足を支える重要な要素であることを意識してアセスメントすることが大切です。
認知機能と安全な活動
A氏の認知機能は正常で、見当識も保たれていることを踏まえて記述するとよいでしょう。視力は両眼とも1.0、聴力も正常で、知覚にも異常がないことに着目して、これらの機能が良好であることは、環境を正確に認識し、安全に活動できることを意味するかどうかを評価し、考慮してアセスメントすることが重要です。
環境の危険を認識し、適切に行動する能力があるため、転倒・転落のリスクは低い状態であると考えられるかどうかを踏まえて記載するとよいでしょう。病院環境にも適応しており、病棟内を安全に移動することができているかを意識して評価することが大切です。
疼痛と活動への影響
疼痛は術後から継続していますが、鎮痛薬でコントロール可能な範囲であり、現在(術後5日目)は軽減傾向にあることを踏まえて記述するとよいでしょう。疼痛が適切にコントロールされていることは、A氏が活動を継続できる重要な要因であるかどうかに着目して評価することが大切です。
ロキソプロフェンナトリウム錠を1日3回毎食後に服用しており、疼痛管理が適切に行われていることを考慮して記載するとよいでしょう。疼痛の軽減傾向は、創傷治癒の進行と活動量の増加による身体機能の回復を反映していると考えられるかどうかを踏まえて、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
呼吸機能と活動耐性
バイタルサインは安定しており、SpO2は97%と良好に保たれていることを踏まえて記述するとよいでしょう。活動時の呼吸苦や息切れの記載もなく、活動に必要な呼吸機能は十分に保たれていると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
術後3日目のHbは11.8 g/dLとやや低値ですが、活動に支障をきたすような貧血ではないことを考慮して記載するとよいでしょう。A氏は病棟内を歩行しても呼吸困難を示さず、適切な活動耐性を維持しているかどうかを踏まえて、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
活動への意欲
A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、日常生活への復帰に対する強い意欲を持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この意欲は、積極的に活動しようとする動機づけとなっており、早期離床やADLの回復を促進する要因となっているかどうかに着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目な性格は、医療者の指示を守り、適切に活動しようとする姿勢につながっていることを考慮して記載するとよいでしょう。術後の活動制限や注意事項を理解し、それを守りながら段階的に活動を増やしていく能力があるかどうかを踏まえて、その点を意識してアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。ADLは完全に自立しており、麻痺や骨折もなく、医療器具による制限もないかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。疼痛は適切にコントロールされ、呼吸機能も良好であるかを考慮して記載することが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、日常生活への復帰を望み、積極的に活動しようとする姿勢が見られるかどうかを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。知識の面では、術後の活動の重要性や注意事項を理解しているかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、術前の良好な身体機能が保たれており、術後も順調に回復しているかどうかを意識して記述することが重要です。このニーズを阻害する要因は現時点では認められず、患者は自立した状態と言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
現在の自立した活動能力を維持しながら、退院に向けて徐々に活動範囲を拡大していくことが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。退院後の生活における具体的な注意点、特に重いものを持つことや激しい運動を避ける期間について、明確に説明する必要性を意識することが大切です。
職場復帰に向けては、通勤方法や勤務時間、業務内容などを確認し、段階的に復帰できるよう支援することが望ましいことを考慮して記述するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格を踏まえて、活動制限の期間や方法を文書で提供することも効果的であることを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
疼痛管理については、退院後の鎮痛薬の使用方法や、疼痛が増強した場合の受診のタイミングについて説明し、A氏が安心して活動できるよう支援することが大切であることを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏が自立して身体を動かし、適切な姿勢を保持できるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを考慮してケアを計画することが重要です。
睡眠と休息をとるというニーズのポイント
このニーズでは、患者が十分な睡眠と休息を取ることができているかを評価します。術後患者では、疼痛や環境の変化、不安などが睡眠に影響を与えるため、これらの要因を考慮し、十分な休息が得られているかをアセスメントすることが、身体の回復を支える上で重要です。
どんなことを書けばよいか
睡眠と休息をとるというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 睡眠時間、パターン
- 疼痛、掻痒感の有無、安静度
- 入眠剤の有無
- 疲労の状態
- 療養環境への適応状況、ストレス状況
術前の睡眠パターン
入院前、A氏は自宅で23時頃に就寝し、6時頃に起床する生活パターンで、睡眠時間は約7時間でした。寝つきは良好で、中途覚醒もなく、熟睡感もあり、眠剤等の使用はなかったことを踏まえて記述するとよいでしょう。この情報から、A氏は入院前には良好な睡眠習慣を確立していたと評価できるかどうかに着目することが重要です。
7時間という睡眠時間は成人として適切な長さであり、寝つきの良さや熟睡感があることは、睡眠の質が高かったことを示していることを考慮して記載するとよいでしょう。この術前の良好な睡眠パターンを踏まえて、術後の睡眠状況と回復の目標を設定する視点を持つことが大切です。
術後の睡眠状況の変化
入院後は病院の環境に慣れないことと術後の疼痛から、やや入眠困難と中途覚醒が見られたことを踏まえて記述するとよいでしょう。病院という慣れない環境での睡眠は、多くの患者にとって困難を伴うため、A氏の場合、環境要因と疼痛という二つの要因が睡眠を妨げていたと考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
術後2日目(9月19日)と3日目(9月20日)は眠剤(ゾルピデム5mg)を使用しましたが、術後4日目(9月21日)からは眠剤なしでも入眠できるようになっていることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。この変化は、睡眠状況が徐々に改善していることを示していると評価できるかどうかを考慮して記載することが大切です。
眠剤の使用が必要だったのはわずか2日間であり、その後は自然に入眠できるようになったことは、A氏の適応能力の高さを表していると考えられるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。疼痛の軽減、病院環境への慣れ、そして術後の不安の軽減などが、睡眠の改善に貢献したと推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
現在の睡眠確保状況
現在(術後5日目)は睡眠時間約6時間確保できていることを踏まえて記述するとよいでしょう。術前の7時間と比較するとやや短いものの、術後の回復過程としては十分な睡眠時間が確保できていると評価できるかどうかに着目することが大切です。
眠剤なしで入眠できており、睡眠時間も確保できていることから、睡眠の質も改善していると推測できるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。疼痛が軽減傾向にあることも、睡眠の質の向上に貢献していると考えられるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
睡眠を妨げる要因の変化
疼痛は術後から継続していますが、鎮痛薬でコントロール可能な範囲であり、術後5日目には疼痛は軽減傾向にあることを踏まえて記述するとよいでしょう。この疼痛の改善は、睡眠を妨げる主要な要因の一つが軽減していることを意味するため、その点に着目して評価することが大切です。
病院環境については、入院から1週間が経過し、徐々に慣れてきたと考えられることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。A氏の几帳面で真面目な性格から、環境の変化に敏感に反応していた可能性がありますが、時間をかけて適応していることが睡眠の改善につながっているかどうかを意識して評価することが重要です。
活動と休息のバランス
術後1日目から離床を開始し、現在は自立歩行していますが、これは適切な活動と休息のバランスが取れていることを示していると考えられるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。日中の活動量が適切であることは、夜間の睡眠の質を向上させる要因となるため、その点に着目して評価することが大切です。
過度の安静は逆に睡眠の質を低下させることがあるため、A氏のように適度な活動を行っていることは、睡眠-休息のニーズにとって好ましい状況と言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが重要です。
心理的要因と睡眠
A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、退院への前向きな気持ちを持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。このような前向きな心理状態は、不安の軽減につながり、睡眠にも良い影響を与えると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
一方で、「左の卵巣にも何か起きないか心配です」という不安も抱えていることを考慮して記載するとよいでしょう。几帳面で真面目、やや心配性という性格特性から、このような不安が睡眠に影響を与える可能性もありますが、現時点では睡眠時間が確保できており、大きな問題とはなっていないようであることを意識してアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「睡眠と休息をとる」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。術後早期には環境要因と疼痛により睡眠が妨げられ、眠剤が必要でしたが、現在は眠剤なしで約6時間の睡眠が確保できているかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、回復しようとする前向きな姿勢が見られ、適度な活動により夜間の睡眠が促進されているかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、休息の重要性を理解していると考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。体力の面では、疼痛の軽減や環境への適応により、睡眠を取る能力が回復しているかどうかを意識して記載することが大切です。術前の7時間と比較するとやや短いものの、術後の回復過程としては十分な睡眠が確保されており、退院までにさらに改善することが期待されるかどうかを考慮してアセスメントすることが重要です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
引き続き、疼痛コントロールを適切に行い、睡眠を妨げる要因を最小限にすることが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。就寝前の鎮痛薬の使用タイミングを調整することも、睡眠の質の向上に有効であることを意識することが大切です。
退院に向けて、自宅での睡眠環境の確認と、睡眠習慣を術前のパターンに戻すための支援が必要であることを考慮して記述するとよいでしょう。退院後の生活リズムの整え方や、疼痛が睡眠に影響する場合の対処方法について指導することを踏まえてケアの方向性を考えることが重要です。
A氏の几帳面で真面目な性格を考慮すると、規則正しい生活リズムを保つことの重要性を説明し、退院後も十分な睡眠時間を確保するよう促すことが効果的であることを意識して記載するとよいでしょう。術後3週間の職場復帰までは、十分な休息を取りながら徐々に活動量を増やしていくことの大切さを伝えることも重要であることを考慮してケアを計画することが大切です。A氏が自立して睡眠と休息を取ることができるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを踏まえて、ケアの方向性を考えることが求められます。
適切な衣類を選び、着脱するというニーズのポイント
このニーズでは、患者が自分で衣類を選び、着脱できるかを評価します。単なる身体機能だけでなく、認知機能や活動意欲、そして身体状況に応じた適切な衣類を選択する判断力も含めてアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
適切な衣類を選び、着脱するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- ADL、運動機能、認知機能、麻痺の有無、活動意欲
- 点滴、ルート類の有無
- 発熱、吐気、倦怠感
衣類の着脱に関する身体機能
入院前、A氏は衣類の着脱をすべて介助なく行えていたことを踏まえて記述するとよいでしょう。術後も、移乗や排泄と同様に、衣類の着脱も自立して行えていることに着目して、麻痺や骨折はなく、上肢・下肢ともに運動機能に問題はないと評価できるかどうかを考慮することが重要です。
術後5日目の現在も、着脱動作を自立して行えており、術前と同様のレベルを維持していることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。腹腔鏡下手術による創部は小さく、着脱時の動作による疼痛も、鎮痛薬でコントロール可能な範囲であるため、疼痛が着脱動作を妨げる要因とはなっていないと考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
医療器具と着脱動作
術後はドレーンが留置されていましたが、術後3日目(9月20日)に抜去されていることを踏まえて記述するとよいでしょう。現在は点滴やルート類もない状態と考えられ、医療器具による着脱動作の制限はないと評価できるかどうかに着目することが重要です。
ドレーンや点滴がある期間は、これらの器具を考慮して衣類を着脱する必要がありましたが、現在はそのような配慮も不要となっていることを考慮して記載するとよいでしょう。医療器具がないことで、自由に衣類を選び、着脱することが可能な状態であるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
認知機能と衣類選択の判断力
A氏の認知機能は正常で、見当識も保たれていることを踏まえて記述するとよいでしょう。このため、時間、場所、状況に応じた適切な衣類を選択する判断力があると考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
病院では入院着を着用していると思われますが、退院後は自宅で自分の衣類を選び、着用することになることを考慮して記載するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格から、身だしなみに気を配り、適切な衣類を選択する能力があると推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
身体状況と衣類の適切性
バイタルサインは安定しており、体温は36.8℃と正常範囲内であることを踏まえて記述するとよいでしょう。発熱はなく、体温調節に配慮した特別な衣類は必要ないと評価できるかどうかに着目することが重要です。吐気や倦怠感の記載もなく、これらが着脱動作や衣類選択に影響を与えている様子もないことを考慮して記載することが大切です。
術後の創部の状態も良好で、感染徴候もないため、創部を保護するための特別な衣類の配慮も現時点では不要であると考えられるかどうかを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。通常の衣類を着用することに問題はない状態と言えるかどうかを意識して評価することが重要です。
活動意欲と身だしなみへの関心
A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、日常生活への復帰に対する意欲が高い状態であることを踏まえて記述するとよいでしょう。この意欲は、身だしなみを整えることへの関心にもつながると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目な性格は、外見や身だしなみにも気を配る傾向につながる可能性があることを考慮して記載するとよいでしょう。入院中は入院着を着用していますが、退院後は自分らしい衣類を選び、身だしなみを整えることで、日常生活への復帰感を得ることができると推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
退院後の衣類選択
退院後は、創部の保護や活動制限を考慮した衣類選択が必要となることを踏まえて記述するとよいでしょう。医師からは、退院後1週間は重いものを持つことや激しい運動を避けるよう指導されており、創部に負担をかけない衣類を選ぶことが望ましいと考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
腹腔鏡下手術の創部は小さいですが、腹部を締め付けない、ゆとりのある衣類を選ぶことが推奨されることを考慮して記載するとよいでしょう。A氏の判断力と理解力を考えると、このような指導を理解し、適切な衣類を選択できると考えられるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「適切な衣類を選び、着脱する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。運動機能に問題はなく、衣類の着脱動作を自立して行えているかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。医療器具による制限もなく、認知機能も正常で、適切な衣類を選択する判断力があると考えられるかどうかを考慮して記載することが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、日常生活への復帰を望み、身だしなみを整えることへの関心もあると考えられるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、創部を保護するための衣類選択の必要性を理解できる能力があるかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、着脱動作を行うのに十分な運動機能が保たれているかどうかを意識して記載することが重要です。このニーズを阻害する要因は認められず、患者は自立した状態と言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
退院指導では、退院後の創部保護や活動制限を考慮した衣類選択について、具体的にアドバイスすることが望ましいことを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。腹部を締め付けない、ゆとりのある衣類を選ぶこと、創部に直接触れる下着は清潔なものを使用することなど、具体的な指導を行うことを意識することが大切です。
抜糸までの期間や、創部が完全に治癒するまでの期間については、衣類による刺激を最小限にすることの重要性を説明することが大切であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の几帳面な性格を踏まえて、具体的な注意事項を文書で提供することも効果的であることを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏の自立した着脱能力を維持し、退院後も問題なく適切な衣類を選び、着脱できるよう支援することが大切であることを踏まえて記載するとよいでしょう。身だしなみを整えることが、日常生活への復帰感や自己肯定感の向上につながることを認識し、そのための環境を整えることが望ましいことを考慮してケアを計画することが重要です。A氏が自立して適切な衣類を選び、着脱できるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを意識してケアの方向性を考えることが求められます。
体温を生理的範囲内に維持するというニーズのポイント
このニーズでは、患者が体温を正常範囲内に保つことができているかを評価します。体温は生命徴候の重要な指標であり、感染や炎症、代謝状態を反映するため、バイタルサインや血液データ、環境要因を総合的にアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
体温を生理的範囲内に維持するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- バイタルサイン
- 療養環境の温度、湿度、空調
- 発熱の有無、感染症の有無
- ADL
- 血液データ(WBC、CRPなど)
バイタルサインから見る体温の推移
来院時の体温は36.4℃、現在(術後5日目)の体温は36.8℃であり、いずれも正常範囲内であることを踏まえて記述するとよいでしょう。術後5日目でわずかに体温が上昇していますが、これは正常な生理的変動の範囲内であり、発熱とは言えない状態であると評価できるかどうかに着目することが重要です。
体温が安定して正常範囲内に保たれていることは、感染や炎症が適切にコントロールされており、体温調節機能が正常に働いていることを示していると考えられるかどうかを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。この体温の推移を意識して、体温維持機能の状態を評価する視点を持つことが大切です。
感染徴候と炎症反応の評価
術後3日目の血液データでは、WBC(白血球)は9,200 /μLとやや上昇していますが、正常範囲内であることを踏まえて記述するとよいでしょう。CRP(C反応性蛋白)は0.08 mg/dLから1.52 mg/dLへと上昇していますが、これは手術侵襲に対する生体反応として正常な範囲内の上昇であると評価できるかどうかに着目することが重要です。
創部の発赤や腫脹はなく、感染徴候も認めていないことを考慮して記載するとよいでしょう。これらの所見から、感染による発熱のリスクは低く、体温が正常範囲内に保たれている要因として、感染予防が適切に行われていると考えられるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
手術侵襲と体温への影響
腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して侵襲が少なく、術後の炎症反応も軽度であることが一般的であることを踏まえて記述するとよいでしょう。A氏の場合、手術時間は2時間45分、出血量は少量であり、侵襲は最小限に抑えられていることに着目して評価することが重要です。
術後の体温が正常範囲内に保たれ、明らかな発熱がないことは、手術侵襲が適度であり、身体の代謝や免疫機能が適切に機能していることを示していると考えられるかどうかを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。手術侵襲の程度を考慮して、体温維持の状況を評価する視点を持つことが大切です。
活動量と体温調節
A氏は術後1日目から離床を開始し、現在は自立歩行していることを踏まえて記述するとよいでしょう。適度な活動は血液循環を促進し、体温調節機能を良好に保つことにつながると考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
過度の安静は体温調節機能を低下させる可能性がありますが、A氏は適切な活動量を確保しており、このことが体温を正常範囲内に維持することに貢献していると推測できるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。活動時にも体温の異常上昇は見られず、運動による体温調節も適切に行われているかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
療養環境と体温維持
事例には療養環境の温度、湿度、空調についての具体的な記載はありませんが、病院環境は一般的に適切な温度管理が行われていることを踏まえて記述するとよいでしょう。A氏から環境に関する不快感の訴えもなく、環境要因が体温維持を妨げている様子は見られないと考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
入院環境への適応も進んでおり、睡眠も確保できていることから、環境的なストレスも軽減していると推測できるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。体温調節に影響を与えるような環境要因は、現時点では認められないかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
代謝状態と体温
食事摂取量は8割程度で、少しずつ改善傾向にあることを踏まえて記述するとよいでしょう。栄養摂取が適切に行われることは、代謝機能を維持し、体温を正常に保つことにつながると考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
バイタルサインの他の指標(血圧、脈拍、呼吸数)も安定しており、全身状態が良好であることが、体温の安定性にも反映されていると推測できるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。代謝が適切に行われ、エネルギー産生と体温調節が正常に機能していると評価できるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
衣類と体温調節
A氏は衣類の着脱を自立して行えており、自分で体温調節のための衣類の調整ができる能力があることを踏まえて記述するとよいでしょう。暑さや寒さを感じた場合、自分で衣類を調整したり、環境を調整するよう依頼したりすることができると考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
認知機能が正常であり、自分の身体感覚を適切に認識し、必要な対処を取ることができるため、能動的に体温調節に参加できる状態であるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。このことは、患者の自立という観点から重要であることを意識してアセスメントすることが大切です。
ニーズの充足状況
A氏の「体温を生理的範囲内に維持する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。体温は安定して正常範囲内に保たれており、発熱や感染徴候はないかどうかに着目してアセスメントすることが重要です。血液データ上も、感染や異常な炎症反応は認められず、体温調節機能は正常に働いていると考えられるかどうかを考慮して記載することが大切です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、適度な活動を行い、体温調節に必要な行動を取ることができているかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、体温の異常や身体の不快感を認識し、医療者に伝えることができる能力があるかどうかに着目して評価することが重要です。体力の面では、体温を調節するための生理的機能が正常に保たれているかどうかを意識して記載することが大切です。このニーズを阻害する要因は認められず、患者は自立した状態と言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが重要です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
引き続き、バイタルサインのモニタリングを継続し、体温の変化に注意を払うことが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。特に、発熱や悪寒などの感染徴候が出現した場合は、早期に発見し対処する必要があることを意識することが大切です。
退院指導では、退院後も体温の自己測定を行い、発熱や創部の異常(発赤、腫脹、熱感など)が見られた場合は、早期に医療機関を受診するよう説明することが大切であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の几帳面な性格を活かし、体温測定の記録方法や、受診のタイミングについて具体的な基準を示すことも効果的であることを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏が自立して体温を生理的範囲内に維持できるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを踏まえて、ケアを計画することが大切です。
身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護するというニーズのポイント
このニーズでは、患者が身体の清潔を保ち、身だしなみを整え、皮膚の健康を維持できているかを評価します。術後患者では、創部の状態や感染予防、そして患者の清潔行動の自立度をアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 自宅/療養環境での入浴回数、方法、ADL、麻痺の有無
- 鼻腔、口腔の保清、爪
- 尿失禁の有無、便失禁の有無
術前の清潔習慣
事例には術前の具体的な入浴回数や清潔習慣についての記載はありませんが、A氏は入院前、日常生活動作すべてにおいて自立して
いたことを踏まえて記述するとよいでしょう。入浴も介助なく行えていたと考えられ、自立した清潔行動が確立されていたと推測できるかどうかに着目して評価することが重要です。
術後の清潔保持
入浴はまだ許可されていませんが、清拭は自分で行えていることを踏まえて記述するとよいでしょう。このことから、A氏は自立して清潔を保つための行動を取ることができていると評価できるかどうかに着目することが大切です。
麻痺はなく、上肢・下肢ともに運動機能に問題はないため、清拭などの清潔行動を自力で行うことが可能な状態であることを考慮して記載するとよいでしょう。疼痛は鎮痛薬でコントロールされており、清潔行動を妨げる程度ではないと推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
創部の状態と皮膚の保護
術後5日目の現在、創部の発赤や腫脹はなく、感染徴候も認めていないことを踏まえて記述するとよいでしょう。腹腔鏡下手術では複数の小さな創部がありますが、これらの創部の状態が良好であることに着目して、適切な創部ケアが行われていることを評価し、皮膚の保護が適切になされていると考えられるかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。
術後3日目(9月20日)にドレーンが抜去されており、ドレーン刺入部の状態も問題なかったと推測できることを踏まえて記載するとよいでしょう。創部の治癒が順調に進んでいることは、皮膚の健康が維持されていることを示していると評価できるかどうかを意識することが重要です。
排泄と清潔
排尿は自力で問題なく行え、残尿感や排尿痛もないこと、排便も術前と同様の規則的なパターンに戻っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。尿失禁や便失禁はなく、排泄に伴う皮膚トラブルのリスクは低い状態であると評価できるかどうかに着目することが大切です。
トイレへの移動も自立しており、排泄後の清潔保持も自分で行えていると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。このことは、皮膚を清潔に保つという観点から重要であることを意識してアセスメントすることが重要です。
口腔内の清潔
食事摂取量は8割程度で、経口摂取が行えていることを踏まえて記述するとよいでしょう。嚥下状態は良好で、水分摂取も問題なく行えていることから、口腔内の保清も適切に行えていると推測できるかどうかに着目して評価することが大切です。
認知機能が正常であり、ADLが自立していることから、歯磨きや含嗽などの口腔ケアも自分で行えていると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。口腔内の清潔が保たれることは、感染予防や全身の健康維持にとって重要であることを意識してアセスメントすることが重要です。
身だしなみへの関心
A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、日常生活への復帰に対する意欲が高いことを踏まえて記述するとよいでしょう。この意欲は、身だしなみを整えることへの関心にもつながると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目な性格から、清潔や身だしなみにも気を配る傾向があると推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。入院中は入院着を着用し、入浴も制限されていますが、できる範囲で清潔を保ち、身だしなみを整えようとする姿勢が見られると評価できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
褥瘡のリスク
A氏は術後1日目から離床を開始し、現在は自立歩行していることを踏まえて記述するとよいでしょう。活動量が確保されており、長時間の同一体位による圧迫がないため、褥瘡発生のリスクは低い状態であると評価できるかどうかに着目することが大切です。
栄養状態も術前は良好であり、現在も食事摂取が行えていることから、皮膚の健康を維持するための栄養的基盤も整っていると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。皮膚の保護という観点から、褥瘡のリスクが低いことは重要な要素であることを意識してアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。清拭は自分で行えており、創部の状態も良好で、感染徴候はないかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。尿失禁や便失禁もなく、排泄に伴う皮膚トラブルのリスクは低い状態であるかを考慮して記載することが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、日常生活への復帰を望み、清潔や身だしなみを整えることへの関心があると考えられるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、清潔保持の重要性や、創部ケアの必要性を理解していると推測できるかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、清潔行動を自力で行うのに十分な運動機能が保たれているかどうかを意識して記載することが重要です。入浴はまだ許可されていないという制限はありますが、現時点でできる範囲での清潔保持は自立して行えており、退院後は完全に自立できると期待されるかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
退院指導では、創部の清潔保持と観察の方法について、具体的に説明することが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。シャワー浴の開始時期や方法、創部を濡らさないための注意点などを説明し、退院後の清潔行動を安全に行えるよう支援することを意識することが大切です。
創部の観察方法についても指導し、発赤、腫脹、熱感、浸出液などの異常が見られた場合は、早期に医療機関を受診するよう説明することが大切であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の几帳面な性格を活かし、具体的な観察ポイントを文書で提供することも効果的であることを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏が自立して身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護できるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを踏まえて、ケアを計画することが大切です。
環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにするというニーズのポイント
このニーズでは、患者が環境の危険を認識し、自分自身と他者の安全を守ることができるかを評価します。術後患者では、転倒・転落のリスク、感染予防、そして創部管理における安全性をアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにするというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 危険箇所(段差、ルート類)の理解、認知機能
- 術後せん妄の有無
- 皮膚損傷の有無
- 感染予防対策(手洗い、面会制限)
- 血液データ(WBC、CRPなど)
認知機能と危険認識能力
A氏の認知機能は正常で、見当識も保たれていることを踏まえて記述するとよいでしょう。このことは、環境の危険を認識し、適切に行動する能力があることを示しており、自分自身の安全を守ることができると評価できるかどうかに着目することが重要です。
術後せん妄の徴候もなく、時間、場所、人物を正確に認識できていることから、病院環境における危険箇所を理解し、避けることができると考えられるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。このような認知機能の保持は、このニーズの充足を支える基盤となることを意識してアセスメントすることが大切です。
転倒・転落リスクの評価
A氏は術前から転倒歴がなく、現在も転倒のリスクは低いと判断されていることを踏まえて記述するとよいでしょう。視力は両眼とも1.0、聴力も正常で、知覚にも異常がないことから、環境を正確に認識し、危険を察知する能力が保たれていると評価できるかどうかに着目することが大切です。
術後5日目の現在、歩行も自立しており、バランスや歩行の安定性に問題はないと考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。疼痛は軽減傾向にあり、活動を妨げる程度ではないため、疼痛による転倒リスクも低い状態であるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
医療器具と環境の安全性
ドレーンは術後3日目に抜去されており、現在は点滴やルート類もない状態と考えられることを踏まえて記述するとよいでしょう。このため、医療器具による転倒リスクや、ルート類が引っかかるなどの危険は解消されていると評価できるかどうかに着目することが重要です。
病院環境にも適応しており、病棟内の配置や動線を理解していると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。環境の危険因子を認識し、安全に行動できる状態であるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
創部の管理と皮膚損傷の予防
術後5日目の現在、創部の発赤や腫脹はなく、感染徴候も認めていないことを踏まえて記述するとよいでしょう。創部の状態が良好であることは、適切な創部管理が行われており、皮膚損傷や感染のリスクが低いことを示していると評価できるかどうかに着目することが重要です。
A氏は認知機能が正常で、創部の保護や観察の必要性を理解できる能力があると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。自分で創部の異常に気づき、医療者に伝えることができるため、早期発見・早期対処が可能な状態であるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
感染予防対策
血液データでは、WBC 9,200 /μL、CRP 1.52 mg/dLであり、術後の炎症反応は正常な範囲内であることを踏まえて記述するとよいでしょう。感染を示唆するような著しい上昇はなく、感染リスクは低い状態であると評価できるかどうかに着目することが重要です。
A氏は几帳面で真面目な性格であることから、手洗いなどの感染予防行動を適切に行うことができると推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。医療者からの指導を理解し、実践する能力があるため、自分自身と他者の安全を守るための行動が取れると考えられるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
家族の面会と感染予防
家族が面会に訪れていることを踏まえて記述するとよいでしょう。面会時の感染予防対策(手洗い、マスク着用など)が適切に行われていると考えられるかを評価し、家族も含めた感染予防体制が整っているかどうかに着目することが重要です。
A氏自身も、他者への配慮ができる性格であることから、自分が感染源とならないよう、また他者から感染しないよう、適切な行動を取ることができると推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。
退院後の安全管理
退院後は自宅環境に戻ることになるため、自宅における危険因子を評価し、対処する必要があることを踏まえて記述するとよいでしょう。A氏は認知機能が正常で、判断力もあることから、自宅の段差や障害物などの危険を認識し、転倒予防の対策を取ることができると考えられるかどうかに着目して評価することが重要です。
術後の活動制限(重いものを持たない、激しい運動を避けるなど)を理解し、守ることができる能力があることを考慮して記載するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格から、医療者の指示を正確に守り、安全に配慮した行動を取ることができると推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
ニーズの充足状況
A氏の「環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。認知機能は正常で、環境の危険を認識し、安全に行動できる能力があるかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。転倒・転落のリスクは低く、創部の管理も適切に行われており、感染徴候もないかを考慮して記載することが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、自分自身と他者の安全を守ろうとする姿勢が見られるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、危険因子を認識し、感染予防の重要性を理解していると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、安全に行動するための身体機能が保たれているかどうかを意識して記載することが重要です。このニーズを阻害する要因は認められず、患者は自立して安全を守ることができる状態と言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
退院指導では、自宅における転倒予防について、具体的にアドバイスすることが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。段差の確認、照明の確保、滑りやすい場所への注意などを説明し、安全な生活環境を整えるよう支援することを意識することが大切です。
創部の観察と感染予防については、退院後も継続して行う必要性を説明し、異常が見られた場合の対処方法や受診のタイミングについて、具体的な基準を示すことが効果的であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の几帳面な性格を活かし、チェックリストなどを文書で提供することも有用であることを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏が自立して環境の危険因子を避け、自分自身と他者の安全を守ることができるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを踏まえて、ケアを計画することが大切です。
自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つというニーズのポイント
このニーズでは、患者が自分の感情や欲求を適切に表現し、他者と効果的なコミュニケーションを取ることができるかを評価します。感情の表現とコミュニケーション能力は、適切な医療やケアを受けるために不可欠な要素です。
どんなことを書けばよいか
自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 表情、言動、性格
- 家族や医療者との関係性
- 言語障害、視力、聴力、メガネ、補聴器
- 認知機能
- 面会者の来訪の有無
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は良好で、日本語での会話に問題はなく、意思疎通もスムーズに行えることを踏まえて記述するとよいでしょう。この能力は、A氏が自分の状態や症状、不安や疑問を適切に表現できることを意味すると評価できるかどうかに着目することが重要です。
言語障害はなく、視力は両眼とも1.0、聴力も正常であることから、コミュニケーションを妨げる感覚器官の障害はないと考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。これらの機能が良好であることは、他者との効果的なコミュニケーションを支える基盤となることを意識してアセスメントすることが大切です。
感情の表現
A氏の発言として、「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでしたが、良性だとわかって本当に安心しました」「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」「左の卵巣にも何か起きないか心配です」など、自分の気持ちや考えを具体的に言語化できていることを踏まえて記述するとよいでしょう。
このような表現力の高さは、医療者がA氏の心理状態やニーズを把握する上で非常に役立つと評価できるかどうかに着目することが重要です。A氏が自分の不安や疑問、喜びや希望を適切に表現できることは、このニーズが充足されていることを示す重要な指標となることを考慮して記載するとよいでしょう。
性格とコミュニケーションパターン
几帳面で真面目、やや心配性という性格特性を持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この性格は、コミュニケーションにおいては、細かいことを確認したり、不安を表現したりする傾向につながる可能性があると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
このような特性は、医療者とのコミュニケーションにおいては、疑問や不安を適切に伝えることができるという利点となることを考慮して記載するとよいでしょう。几帳面に説明を聞き、理解しようとする姿勢は、双方向のコミュニケーションを促進する要素であると評価できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
家族とのコミュニケーション
家族が面会に訪れ、温かい言葉をかけている様子からは、家族とのコミュニケーションが良好であることが読み取れることを踏まえて記述するとよいでしょう。夫は「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします」と具体的なサポート計画を述べており、A氏の状態や希望を理解していると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
娘たちも「お母さん、無理しないでね。家のことは私たちも手伝うから」と声をかけており、家族内でのコミュニケーションは開かれていると推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。A氏が家族に自分の気持ちや状態を伝え、家族がそれを理解し、サポートを提供しようとする関係性が築かれていると評価できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
医療者とのコミュニケーション
A氏は医療者からの説明を理解し、疑問があれば質問し、不安があれば表現することができると考えられることを踏まえて記述するとよいでしょう。認知機能が正常であり、説明を注意深く聞き、重要な情報を整理して理解する能力があることから、医療者との効果的なコミュニケーションが可能であると評価できるかどうかに着目することが大切です。
疼痛や不快感があれば適切に訴えることができ、鎮痛薬による管理が行われていることは、A氏のコミュニケーション能力が適切に機能していることを示していると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。このような双方向のコミュニケーションは、適切な医療とケアを受けるために不可欠であることを意識してアセスメントすることが重要です。
不安の表現と対処
A氏は当初の悪性腫瘍への不安を適切に表現し、良性という診断を受けて安心したことを伝えています。また、現在は左卵巣への不安を抱えていることも表現できていることを踏まえて記述するとよいでしょう。このように不安を言語化し、表現できることは、心理的サポートを受ける機会につながると評価できるかどうかに着目することが重要です。
几帳面で真面目、やや心配性という性格から、細かいことを気にかけ、将来のリスクについても考える傾向がありますが、その不安を適切に表現し、医療者とコミュニケーションを取れることは、A氏の強みであると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。
欲求の表現
「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という発言は、A氏の欲求を明確に表現したものであることを踏まえて記述するとよいでしょう。このように自分の希望や目標を言語化できることは、医療者がA氏のニーズを理解し、それに沿った支援を提供するために重要であると評価できるかどうかに着目することが大切です。
また、「定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という発言は、自分の健康管理に対する欲求を表現したものであり、将来の計画についてもコミュニケーションを取ることができると考えられることを意識してアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つ」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。コミュニケーション能力は良好で、自分の気持ちや身体の状態を適切に表現できる能力を持っているかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。家族や医療者との良好な関係性があり、効果的なコミュニケーションが取れているかを考慮して記載することが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、自分の感情や欲求を表現しようとする姿勢が見られるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、コミュニケーションの重要性を理解し、適切に表現する方法を知っていると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、コミュニケーションを取るための身体機能(言語機能、感覚器官など)が保たれているかどうかを意識して記載することが重要です。このニーズを阻害する要因は認められず、患者は自立してコミュニケーションを取ることができる状態と言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
A氏の高いコミュニケーション能力を活かし、退院指導では具体的で詳細な情報を提供することが効果的であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。疑問や不安があればいつでも表現できる環境を整え、A氏が安心してコミュニケーションを取れるよう支援することを意識することが大切です。
左卵巣への不安については、定期的な検査の重要性を説明しつつ、過度な心配を軽減するための心理的サポートも必要であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏が自分の感情や不安を適切に表現できることを活かし、気になることがあればいつでも相談できる体制を整えることが望ましいことを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏が自立して自分の感情や欲求を表現し、他者と効果的なコミュニケーションを持つことができるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを踏まえて、ケアを計画することが大切です。
自分の信仰に従って礼拝するというニーズのポイント
このニーズでは、患者が自分の信仰や価値観に従って、精神的な活動を行うことができるかを評価します。信仰や価値観は患者の人生観や意思決定に影響を与えるため、これらを理解し尊重することが重要です。
どんなことを書けばよいか
自分の信仰に従って礼拝するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 信仰の有無、価値観、信念
- 信仰による食事、治療法の制限
宗教的背景
事例には、A氏は特定の信仰を持っていないという記載があることを踏まえて記述するとよいでしょう。このことは、医療やケアにおいて、特定の宗教的配慮(食事制限、祈りの時間、宗教的儀式など)が必要ないことを意味すると評価できるかどうかに着目することが重要です。
ただし、信仰を持っていないことが、A氏に精神的な支えがないことを意味するわけではないことを考慮して記載するとよいでしょう。宗教以外の何が、A氏にとって人生の支えや意味となっているかを理解することが重要であるという視点を持つことが大切です。
人生の支えとなる価値観
A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、この発言には家族との生活を大切にしている価値観が表れていることを踏まえて記述するとよいでしょう。家族が面会に訪れ、温かい言葉をかけている様子、そしてA氏がそれを受け入れている様子から、家族との関係が人生において重要な位置を占めていると評価できるかどうかに着目することが大切です。
長女と次女という二人の娘を育て上げ、現在も夫と共に生活している50歳のA氏にとって、家族は生活の中心であり、大きな価値を持つ存在と考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。家族との「普通の生活」に戻りたいという願いは、日常の営みの中に幸せや意味を見出す価値観を示していると推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
健康に対する信念
A氏は「左の卵巣にも何か起きないか心配です。定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」と述べており、健康維持と予防的な健康管理を重視する信念を持っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。
45歳頃から高血圧で降圧薬を内服し、40歳時の子宮筋腫も継続的に経過観察しているという情報から、A氏は健康問題に対して責任を持って対処し、医療の指示を守ることに価値を置いていると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。このような健康への信念は、A氏の人生における重要な側面であることを意識してアセスメントすることが重要です。
責任感と真面目さという信念
几帳面で真面目という性格特性は、A氏の信念や価値観を反映していると考えられることを踏まえて記述するとよいでしょう。物事を丁寧に、正確に行うことに価値を置き、自分の責任を果たすことを重視する傾向があると推測できるかどうかに着目して評価することが大切です。
このような信念は、妻・母親・働く女性という複数の役割において、それぞれの責任を真面目に果たそうとする姿勢につながっていると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。退院後、夫や娘たちが家事を手伝うという申し出に対して、A氏がどのように感じるかは、この責任感という信念と関連している可能性があることを意識してアセスメントすることが重要です。
医療・治療に対する信念
A氏は医師の説明を理解し、手術という治療法を受け入れていることを踏まえて記述するとよいでしょう。「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」という発言からは、医療者の説明や判断を信頼し、治療の結果を肯定的に受け止めていると評価できるかどうかに着目することが重要です。
また、「定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という発言は、医療を通じた健康管理の重要性を認識し、医療を活用することに価値を置いていることを示していると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。医療者との協働的な関係性を築くことができる信念を持っているかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
日常生活への価値づけ
「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」という発言の中の「普通の生活」という表現に注目すると、A氏は日常の当たり前の生活に価値を見出していることを踏まえて記述するとよいでしょう。特別なことではなく、普段の生活の営みそのものが、A氏にとって大切なものであることが示されていると評価できるかどうかに着目することが重要です。
入院という非日常の経験を通して、日常生活の価値を再認識している可能性もあることを考慮して記載するとよいでしょう。家族との食事、家事、仕事といった日々の活動が、A氏にとって意味のあるものとして捉えられていると推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
ニーズの充足状況
A氏の「自分の信仰に従って礼拝する」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。特定の宗教的信仰を持っていませんが、家族との日常生活に価値を見出し、それが人生の中心となっているかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。健康維持と予防的な健康管理を重視し、責任感を持って自分の健康に対処しようとする信念を持っているかを考慮して記載することが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、自分の価値観や信念に従って生活しようとする姿勢が見られるかどうかを踏まえて記述するとよいでしょう。知識の面では、自分にとって何が大切かを理解していると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、自分の価値観や信念に従って行動するための身体機能が保たれているかどうかを意識して記載することが重要です。宗教的な制限はなく、自分の信念や価値観に従って生活することができる状態であると言えるかどうかを考慮してアセスメントすることが大切です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
A氏の家族を大切にする価値観を尊重し、退院後、できるだけ早く家族との日常生活に戻れるよう支援することが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。同時に、几帳面で責任感が強いという特性から、家族に頼ることに抵抗を感じる可能性もあるため、適切に休息を取り、家族のサポートを受け入れることも健康管理の一部であることを伝えることを意識することが大切です。
健康管理への高い意識を活かし、定期的な検査の重要性や、日常生活での健康維持の方法について、具体的な情報を提供することが効果的であることを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の予防的な健康管理という信念を支持し、それが過度な不安につながらないよう、バランスの取れた関わりを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏が日常生活に戻り、家族や仕事という役割を通じて人生の意味を見出すことができるよう、段階的な回復と、無理のない活動再開を支援することが大切であることを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏の価値観や信念を理解し、それを尊重しながら、健康的な生活の再構築を共に考えていく姿勢を持つことが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを意識してケアを計画することが求められます。
達成感をもたらすような仕事をするというニーズのポイント
このニーズでは、患者が職業や社会的役割を通じて達成感を得ているか、そして疾患や入院がそれらにどのような影響を与えているかを評価します。人は仕事や役割を果たすことで自己価値感や生きがいを感じるため、これらの側面をアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
達成感をもたらすような仕事をするというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 職業、社会的役割、入院
- 疾患が仕事/役割に与える影響
職業と社会的役割
A氏の職業は事務職であることを踏まえて記述するとよいでしょう。事務職は一般的に座位での作業が中心であり、身体的な負担は比較的少ないと考えられることに着目して評価することが重要です。50歳という年齢で働き続けていることは、A氏が社会的な役割を持ち、経済的にも家族に貢献していることを示していると考えられるかどうかを考慮して記載することが大切です。
几帳面で真面目な性格は、職場でも責任感を持って業務に取り組む姿勢につながっていると推測できることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。このような性格特性を持つA氏にとって、職場での役割を果たすことは自己価値感にも関連している可能性があるかどうかを意識して評価することが重要です。
家庭における役割
A氏は妻・母親としての役割も担っていることを踏まえて記述するとよいでしょう。長女は22歳で社会人、次女は19歳で大学生となっており、A氏の母親としての直接的な育児の役割は大きく変化している時期であることに着目して評価することが大切です。しかし、家族の一員として、家事や家族のケアなど、家庭内での役割を果たしていることが、A氏にとって達成感をもたらす「仕事」となっている可能性があるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。
夫が「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします」と述べていることから、通常はA氏が家事の多くを担っていると推測できることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。これらの家庭内での役割も、A氏にとって重要な「仕事」であると考えられるかどうかを意識して評価することが重要です。
入院が役割遂行に与える影響
入院により、A氏は職場での仕事と家庭での役割の両方から一時的に離れることになったことを踏まえて記述するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格を考えると、これらの役割を果たせないことに対して、責任感や焦りを感じている可能性があるかどうかに着目して評価することが大切です。
しかし、A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、これらの役割に戻ることへの意欲を示していることを考慮して記載するとよいでしょう。この発言には、日常生活での役割を果たしたいという願いが込められていると推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
職場復帰の見通し
医師から職場復帰は術後3週間後を目安とすると指示されていることを踏まえて記述するとよいでしょう。段階的に仕事に復帰できる見通しが立っていることは、A氏にとって希望となり、回復への動機づけにもなっていると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
事務職という職業を考えると、座位での作業が中心であるため、職場復帰後の身体的負担は比較的少ないと推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。しかし、通勤や勤務時間中の活動については、術後の回復状況を見ながら段階的に調整していく必要があるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
回復過程での達成感
術後の回復過程において、A氏は早期から離床を開始し、ADLを順調に回復させてきたことを踏まえて記述するとよいでしょう。このような回復の達成は、A氏にとって小さな「仕事」を成し遂げたという達成感をもたらしている可能性があるかどうかに着目して評価することが大切です。
「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」という発言からは、自分の回復を肯定的に捉え、それを達成として認識していることが読み取れることを考慮して記載するとよいでしょう。このような前向きな認識は、さらなる回復への意欲につながると推測できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
家族からの期待とサポート
家族が「お母さん、無理しないでね。家のことは私たちも手伝うから」と声をかけていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この申し出は、A氏の負担を軽減する意図がある一方で、A氏が通常果たしている役割を家族が認識し、尊重していることの表れとも言えるかどうかに着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目な性格のA氏にとって、家族に家事を任せることに対して葛藤を感じる可能性もありますが、同時に家族が協力的であることは、A氏が安心して回復に専念できる環境を提供していると考えられるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。このバランスをどのように取るかが、退院後の役割再開において重要となることを意識してアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「達成感をもたらすような仕事をする」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。入院により、職場での仕事と家庭での役割から一時的に離れており、現在これらの「仕事」を果たすことはできていないことに着目してアセスメントすることが大切です。
しかし、術後の回復過程において、ADLを順調に回復させてきたことは、小さな達成感をもたらしている可能性があるかどうかを考慮して記載するとよいでしょう。また、職場復帰の見通しが立っており、家族も退院後のサポート体制を整えていることから、近い将来、これらの役割に戻れる見込みがあることを踏まえてアセスメントすることが重要です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、「早く家に帰って普通の生活に戻りたい」という発言から、役割に戻りたいという強い意欲が見られるかどうかを記述するとよいでしょう。知識の面では、段階的な回復と役割再開の必要性を理解できる能力があるかどうかに着目して評価することが大切です。体力の面では、順調に回復しており、退院後は徐々に役割を果たせる状態になると期待されるかどうかを意識して記載することが重要です。これらの情報を総合して、ニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
退院指導では、職場復帰に向けた段階的な計画について、具体的に説明することが重要であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。通勤方法、勤務時間、業務内容などを確認し、無理なく復帰できるよう支援することを意識することが大切です。
家庭での役割についても、退院後すぐにすべての家事を担う必要はなく、家族のサポートを受けながら徐々に活動を増やしていくことの重要性を説明することを考慮して記述するとよいでしょう。几帳面で真面目な性格から、完璧を求めすぎる可能性があるため、段階的な回復の重要性を強調し、A氏が無理なく役割を再開できるよう支援することを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
A氏が達成感をもたらすような仕事や役割を再開し、それを通じて自己価値感や生きがいを感じられるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における看護師の役割であることを踏まえて、ケアを計画することが大切です。
遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加するのニーズのポイント
このニーズでは、患者が心身のリフレッシュや生活の質の向上につながる余暇活動や気分転換の機会を持てているかを評価します。入院や疾患による制限がある中で、どのように楽しみや気分転換を見出せるかという視点と、退院後の生活においてレクリエーション活動をどのように再開・継続できるかという視点の両面からアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加するというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 趣味、休日の過ごし方、余暇活動
- 入院、療養中の気分転換方法
- 運動機能障害
- 認知機能、ADL
入院前の余暇活動と生活パターン
事例には、A氏の具体的な趣味や休日の過ごし方についての詳細な記載はありませんが、50歳で事務職として働きながら家族の世話をしているという生活状況から、余暇活動についてどのような可能性が考えられるかを推測して記述するとよいでしょう。
家族構成として、夫と長女(22歳・社会人)、次女(19歳・大学生)がいることから、子育ての中心的な時期は過ぎており、比較的自分の時間を持てる段階にあると考えられます。このライフステージでは、趣味や余暇活動に時間を使える余裕が生まれてくる時期であることを意識して記述するとよいでしょう。
また、飲酒は月に1〜2回程度ビールをグラス1杯程度という記載から、極端に社交的な活動を好むタイプではない可能性や、あるいは家族との時間を大切にする傾向があることなども考慮に入れるとよいかもしれません。
入院中の気分転換と心理的状態
入院期間が比較的短期間(9月15日入院、9月24日退院予定)であることを踏まえて記述することが大切です。術後5日目の現在、A氏は「早く家に帰って普通の生活に戻りたいです」と述べており、入院生活による制約から解放されたいという思いを持っていることが読み取れます。
入院後は「病院の環境に慣れないことと術後の疼痛から、やや入眠困難と中途覚醒が見られた」という記載から、入院という環境の変化がストレスとなっていたことが伺えます。このようなストレスを軽減するための気分転換の方法について、どのような工夫ができたか、あるいはする必要があったかという視点でアセスメントするとよいでしょう。
家族の面会については、夫や長女、次女が面会に訪れていることが記載されており、家族との交流が気分転換や心理的支援につながっている可能性があります。家族との会話や関わりが、入院中のレクリエーション的要素として機能していると考えることもできるでしょう。
活動制限と身体機能の影響
現在の身体状況を踏まえて、レクリエーション活動がどの程度可能かをアセスメントすることが重要です。術後5日目で「疼痛は軽減傾向にあり、歩行も自立している」「創部の発赤や腫脹はなく、感染徴候も認めていない」という状態から、基本的な身体活動能力は回復してきていることが分かります。
しかし、術後という状況を考慮すると、激しい運動や長時間の活動はまだ制限されていると考えられます。医師からは「退院後1週間は重いものを持つことや激しい運動は避け、徐々に活動量を増やしていく」という指示が出ており、この制限がレクリエーション活動にどのような影響を与えるかという視点でアセスメントするとよいでしょう。
認知機能は正常で、見当識も保たれており、ADLも回復してきていることから、認知的・身体的な制約は最小限であり、多くの余暇活動は可能な状態にあると評価できます。
心理的な状態とレクリエーションへの意欲
A氏の性格特性として「几帳面で真面目、やや心配性な傾向がある」という記載があります。このような性格特性は、レクリエーション活動に対する態度にも影響を与える可能性があることを考慮するとよいでしょう。
「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでしたが、良性だとわかって本当に安心しました」という発言からは、診断結果を受けて心理的な安定を取り戻しつつあることが読み取れます。このような心理状態の改善は、退院後に趣味や余暇活動を楽しむ余裕を持つための基盤となることを意識して記述するとよいでしょう。
また、「早く家に帰って普通の生活に戻りたい」という言葉からは、入院前の生活リズムや日常の活動を再開したいという意欲が感じられます。この「普通の生活」の中に、A氏にとってのレクリエーション活動も含まれている可能性があることに着目するとよいでしょう。
退院後のレクリエーション活動の見通し
退院後の生活において、レクリエーション活動をどのように再開できるかという視点も重要です。職場復帰は術後3週間後を目安としているため、それまでの期間は比較的時間的な余裕があると考えられます。
しかし、「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします」という夫の言葉からも分かるように、A氏自身は無理をせず休養を取ることを期待されている状況です。このような期間において、適度な気分転換やリフレッシュを図ることの重要性について考えるとよいでしょう。
活動制限として「重いものを持つことや激しい運動は避け、徐々に活動量を増やしていく」という指示があることから、どのようなレクリエーション活動であれば術後の回復を妨げずに楽しめるかという視点でアセスメントすることが大切です。読書、音楽鑑賞、テレビ視聴、軽い散歩、家族との会話など、身体的負担の少ない活動から始めることが適切であると考えられます。
家族との関係とレクリエーション
家族との良好な関係性も、レクリエーションの要素として捉えることができます。夫や娘たちが協力的で、面会にも訪れていることから、家族との交流自体が心の支えや楽しみとなっている可能性があります。
長女は22歳の社会人、次女は19歳の大学生という年齢であり、ある程度独立しながらも家族との関係を保っている状況です。このような家族構成の中で、A氏がどのように家族との時間を楽しみ、それがどのように生活の質の向上につながっているかという視点も重要でしょう。
退院後、家族のサポートを受けながら回復期を過ごす中で、家族との会話や共に過ごす時間が、レクリエーション的な意味合いを持つことも考えられます。
ニーズの充足状況
A氏のレクリエーションに関するニーズの充足状況を評価する際には、入院前、入院中、退院後という時期的な視点から考えることが重要です。
入院前については、事例に具体的な記載が少ないものの、仕事と家庭生活のバランスの中で、一定の余暇時間や気分転換の機会を持っていたと推測されます。家族との関係も良好であることから、家族との時間を楽しむことができていた可能性があります。
入院中については、短期間の入院ではあるものの、環境の変化や術後の疼痛により、十分な気分転換が図れていなかった可能性があります。しかし、家族の面会や、術後の回復に伴う心理的安定により、徐々に精神的な余裕を取り戻しつつあると評価できるでしょう。
退院後の見通しについては、活動制限はあるものの、認知機能や基本的なADLは保たれており、身体的負担の少ないレクリエーション活動は可能な状態です。職場復帰までの期間を、適度な気分転換を図りながら心身の回復に充てることができれば、このニーズは充足されていくと考えられます。
これらの情報を総合的に判断し、現時点でのニーズの充足状況と、今後どのような支援が必要かを評価するとよいでしょう。
ケアの方向性
A氏のレクリエーションに関するニーズを支援するためのケアは、以下のような方向性で考えるとよいでしょう。
まず、退院指導において、適切なレクリエーション活動について説明することが重要です。術後の活動制限を踏まえつつ、どのような気分転換の方法が可能で推奨されるかを具体的に伝えることで、A氏が安心して余暇を楽しめるよう支援する必要があります。
「重いものを持たない」「激しい運動を避ける」という制限の中でも、軽い散歩、読書、音楽鑑賞、テレビ視聴、手芸などの座位で行える趣味など、楽しめる活動は多くあることを伝えるとよいでしょう。特に、A氏の性格特性(几帳面で真面目)を考慮すると、「どこまで動いてよいか」という具体的な基準を示すことで、安心して活動できるようになると考えられます。
家族との時間を大切にすることの意義についても、言葉にして伝えることが効果的かもしれません。夫や娘たちが協力的であり、家族との良好な関係性がA氏の心理的支援につながっていることから、回復期において家族との会話や穏やかな時間を過ごすことの価値を認識できるよう支援することが望ましいでしょう。
また、段階的な活動の拡大について指導することも重要です。退院後1週間、術後3週間(職場復帰の目安)、術後1ヶ月と、時期に応じてどの程度の活動が可能になるかを説明することで、A氏が見通しを持って余暇活動を計画できるよう支援する必要があります。
心理的な安定を保つための気分転換の重要性について伝えることも大切です。几帳面で真面目、やや心配性という性格特性を持つA氏にとって、適度な気分転換や楽しみを持つことは、過度な心配や不安を軽減し、術後の順調な回復を促進する要素となることを説明するとよいでしょう。
これらの支援を通じて、A氏が退院後の生活において、適切にレクリエーション活動を取り入れながら、心身ともに健康的な回復を遂げられるよう援助していくことが重要です。
“正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させるというニーズのポイント
このニーズでは、患者が自分の健康や発達について学習し、理解を深める能力があるかを評価します。患者が自分の疾患や治療について学び、自己管理できるようになることは、ヘンダーソンが重視する「患者の自立」を実現する上で重要です。
どんなことを書けばよいか
“正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させるというニーズでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 発達段階
- 疾患と治療方法の理解
- 学習意欲、認知機能、学習機会への家族の参加度合い
発達段階
A氏は50歳の女性であり、エリクソンの発達段階では成人期後期から中年期に位置することを踏まえて記述するとよいでしょう。この時期の発達課題は、次世代を育成し、社会に貢献することであり、A氏の場合、二人の娘を育て上げ、現在も職業を通じて社会に貢献していることから、発達課題を達成していると評価できるかどうかに着目することが重要です。
50歳という年齢は、更年期前後の時期にあたり、女性としての身体的変化を経験する時期でもあることを考慮して記載するとよいでしょう。右卵巣を摘出したことによる身体の変化や、今後の健康管理について学習し、適応していくことが、この発達段階における重要な課題となるかどうかを意識してアセスメントすることが大切です。
疾患と治療方法の理解
A氏は「最初に腫瘍と言われたときは癌かもしれないと思って不安でいっぱいでしたが、良性だとわかって本当に安心しました」と述べていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この発言から、A氏が診断結果を正確に理解し、良性という情報を適切に受け止めていることが読み取れるかどうかに着目して評価することが大切です。
「手術の傷も思ったより小さくて、回復も早いと言われて嬉しいです」という発言からは、腹腔鏡下手術の特徴や予後についても理解していることが推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。医療者からの説明を理解し、それを自分の状況に当てはめて解釈する能力があると評価できるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
学習意欲と健康管理への関心
A氏は「左の卵巣にも何か起きないか心配です。定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」と述べていることを踏まえて記述するとよいでしょう。この発言から、A氏が自分の健康状態に関心を持ち、将来の健康管理について学びたいという意欲を持っていることが読み取れるかどうかに着目して評価することが大切です。
既往歴として45歳頃から高血圧で降圧薬を内服し、40歳時の子宮筋腫も継続的に経過観察しているという情報から、A氏はこれまでも自分の健康について学習し、適切な管理を行ってきたと考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。このような継続的な学習姿勢は、今後の健康管理においても重要な資源となるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
認知機能と学習能力
A氏の認知機能は正常で、見当識も保たれていることを踏まえて記述するとよいでしょう。視力は両眼とも1.0、聴力も正常であることから、視覚的・聴覚的な情報を問題なく受け取ることができると評価できるかどうかに着目することが大切です。
コミュニケーション能力は良好で、日本語での会話に問題はなく、意思疎通もスムーズに行えることを考慮して記載するとよいでしょう。これらの機能が良好であることは、医療者からの説明や指導を理解し、学習する能力が十分にあることを示していると考えられるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
情報の理解と処理能力
A氏は疾患の診断結果、手術の内容、予後について適切に理解していることを踏まえて記述するとよいでしょう。また、「定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という発言から、医療者からの説明を理解し、それを自分の行動計画に結びつける能力があることが読み取れるかどうかに着目して評価することが大切です。
几帳面で真面目な性格は、説明を注意深く聞き、重要な情報を整理して理解する能力につながっていると推測できることを考慮して記載するとよいでしょう。このような情報処理能力の高さは、退院指導や自己管理指導において非常に有利な要素であるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
家族の学習機会への参加
夫と娘たちが面会に訪れ、A氏に対して温かい言葉をかけていることを踏まえて記述するとよいでしょう。夫は「退院後はしばらく家事などを手伝って、妻に無理をさせないようにします」と具体的なサポート計画を述べており、A氏の術後の状態や注意点について理解していると考えられるかどうかに着目して評価することが大切です。
家族がA氏の健康状態や治療について関心を持ち、退院後のケアに参加する意欲を示していることは、A氏の学習を支える重要な資源となることを考慮して記載するとよいでしょう。退院指導の際に家族も含めて説明を行うことで、A氏の学習と自己管理がより効果的になる可能性があるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
健康に関する好奇心
A氏は8月下旬に下腹部の違和感と膨満感を自覚し、9月初旬には自ら近医を受診していることを踏まえて記述するとよいでしょう。この行動は、自分の身体の変化に気づき、それについて知ろうとする好奇心や関心があることを示していると評価できるかどうかに着目することが大切です。
「左の卵巣にも何か起きないか心配です」という発言にも、自分の健康状態について知りたい、学びたいという欲求が表れていることを考慮して記載するとよいでしょう。この好奇心や関心は、健康教育を受け入れ、自己管理能力を高めるための基盤となるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
学習内容の実践能力
A氏はこれまでも、高血圧の管理や子宮筋腫の経過観察など、医療者からの指導を守り、継続的に実践してきたことを踏まえて記述するとよいでしょう。この実績は、学習した内容を日常生活の中で実践する能力があることを示していると評価できるかどうかに着目することが大切です。
几帳面で真面目な性格は、学習した内容を正確に守り、継続的に実践する姿勢につながっていると考えられることを考慮して記載するとよいでしょう。今回の手術後の生活指導や健康管理についても、同様に学習し、実践できると期待されるかどうかを意識してアセスメントすることが重要です。
ニーズの充足状況
A氏の「”正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる」というニーズの充足状況について、以下の点を踏まえて評価するとよいでしょう。A氏は疾患と治療について適切に理解しており、将来の健康管理についても学びたいという意欲を持っているかどうかに着目してアセスメントすることが大切です。
ヘンダーソンの看護理論における「意欲」「知識」「体力または意志力」の観点から評価すると、意欲の面では、自分の健康について学習したいという強い関心と意欲が見られるかどうかを記述するとよいでしょう。知識の面では、認知機能が正常で、情報を理解し処理する能力が高いと評価できるかどうかに着目することが重要です。体力の面では、学習に必要な認知機能や感覚機能に問題はなく、学習能力は十分に保たれているかどうかを考慮して記載することが大切です。
発達段階に応じた健康課題について学習し、適応していく能力があると評価できるかどうかを意識してアセスメントするとよいでしょう。家族のサポートも得られており、学習を支える環境も整っていると考えられるかどうかを踏まえて、総合的にニーズの充足状況を判断する視点を持つことが求められます。
ケアの方向性
退院指導では、A氏の高い理解力と学習意欲を活かし、具体的で詳細な情報を提供することが効果的であることを踏まえてケアを計画するとよいでしょう。文書や図表を用いた説明も、A氏の几帳面な性格に合った方法と考えられることを意識することが大切です。
具体的な指導内容としては、創部のケア方法、活動制限の期間と内容、疼痛管理、定期検診の重要性、左卵巣と子宮筋腫の経過観察などについて、分かりやすく説明することを考慮して記述するとよいでしょう。A氏の「定期的に検査を受けて、早めに異常を見つけられるようにしたいです」という意欲を支持し、具体的な検査スケジュールや自己チェックの方法について指導することを意識してケアの方向性を考えることが重要です。
家族も含めた退院指導を行い、A氏の学習と自己管理を家族がサポートできる体制を整えることが望ましいことを踏まえて記載するとよいでしょう。A氏が継続的に学習し、自分の健康を自己管理できるよう支援することが、ヘンダーソンの看護理論における「患者の自立を助ける」という看護師の役割を果たすことになることを考慮してケアを計画することが大切です。
看護計画
看護計画作成のポイント
看護計画を立案する際には、アセスメントで得られた情報を統合し、患者にとって最も重要な問題を明確にすることから始めます。A氏の事例では、術後5日目で退院を2日後に控えている時期であることを踏まえて計画を立てることが重要です。
現在の問題だけでなく、起こりうるリスクや退院後の生活を見据えた問題も含めて考える必要があります。また、A氏の認知機能が正常で健康管理への意欲が高く、家族のサポートも良好であるという強みを活かした計画を立案するとよいでしょう。
看護計画は、看護診断・問題→看護目標→看護計画(O-P、T-P、E-P)という流れの中で、すべてが論理的につながっていることが大切です。
看護診断・看護問題の立案
看護診断や看護問題を立てる際には、アセスメントで明らかになった患者の状態を基に、看護介入が必要な問題を特定します。ヘンダーソンの14項目やゴードンの11パターンのどちらからも、複数の診断・問題を導き出すことができるでしょう。
優先順位については、マズローの欲求階層説を参考にできます。A氏の場合は生命を脅かす問題は認められないため、術後合併症のリスクや退院後の生活管理に関する問題を優先的に考えるとよいでしょう。
診断・問題を立てる際には、問題の原因や関連因子を明確にすることが重要です。また、現在顕在化している問題と潜在的な問題(リスク)を区別して考えることも大切です。術後感染のリスクや退院後の自己管理不足のリスクなど、予防的介入が必要な問題も考慮するとよいでしょう。
看護目標の設定
看護目標は、看護診断・問題に対して患者がどのような状態になることを目指すのかを明確に示すものです。長期目標と短期目標を分けて考えることが一般的です。
長期目標は、最終的に達成したい状態を示します。A氏の場合、「退院までに〇〇できる」あるいは「退院後に〇〇を継続できる」という形で設定することが考えられます。
短期目標は、長期目標を達成するための段階的な目標です。「術後7日目(退院時)までに〇〇できる」「本日中に〇〇を理解できる」といった形で、明確な期限を設定するとよいでしょう。
目標設定では、SMART原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性がある、Time-bound:期限が明確)を意識することが有効です。例えば、「疼痛が軽減する」よりも「NRSスケールで3以下の疼痛レベルを維持できる」の方が測定可能で評価しやすくなります。
また、患者主体の目標にすることも重要です。「看護師が〇〇を説明する」ではなく、「患者が〇〇を理解し説明できる」という形で、患者の行動変容や状態変化を目標とするとよいでしょう。
看護計画の立案
O-P(観察計画)
観察計画では、看護診断・問題に関連した患者の状態を評価するために、何を観察するかを具体的に示します。観察項目は、目標の達成度を評価するための指標となることを意識して選定するとよいでしょう。
A氏の場合、術後合併症の早期発見のための観察が重要です。創部の状態(発赤、腫脹、熱感、浸出液、疼痛の程度)、バイタルサイン(特に体温、脈拍)、血液データ(WBC、CRP)などは、感染徴候を早期に発見するための重要な観察項目となります。
また、疼痛のアセスメント(部位、程度、性質、持続時間、鎮痛薬の効果)、活動状況や日常生活動作(歩行状態、移動の自立度、セルフケア能力)の観察も必要です。
心理的側面の観察も忘れてはいけません。A氏の表情、発言内容、不安の程度、退院に対する思いなどを観察することで、心理的サポートの必要性を評価できます。
退院準備状況については、退院指導の内容の理解度、創部ケアの実施状況、服薬管理の状況、家族のサポート体制などを観察し、安全に退院できる状態にあるかを評価するとよいでしょう。
観察項目を立案する際には、なぜその観察が必要なのかという根拠を考えることが大切です。
T-P(ケア計画)
ケア計画では、看護診断・問題を解決し目標を達成するために、看護師が実施する具体的な介入を示します。直接的ケアと間接的ケアの両面から考えるとよいでしょう。
A氏の場合、疼痛管理(鎮痛薬の確実な投与、疼痛時の体位の工夫、リラクゼーション法の提供)が重要なケアの一つとなります。疼痛が軽減することで、早期離床や活動量の増加につながることを意識して計画を立てることが大切です。
創部管理(創部の清潔保持、ドレッシング交換、感染予防のための手指衛生の徹底)、早期離床と活動量の調整(術後の回復を促進しつつ過度な負担を避ける)も重要です。
心理的サポートでは、A氏の不安や心配事に傾聴し共感的態度で接することで、心理的安定を図ることができます。特に「左の卵巣にも何か起きないか心配」という発言に対しては、その不安を受け止めつつ、定期検診の重要性について情報提供することが効果的でしょう。
家族への支援も計画に含めることが重要です。夫や娘たちが協力的であることを強みとして、退院後のサポート体制を整えるために家族にも適切な情報提供を行うことを計画するとよいでしょう。
ケア計画を立てる際には、エビデンスに基づいたケアを意識し、なぜそのケアが効果的なのかを考えながら立案することが大切です。
E-P(教育計画)
教育計画では、患者や家族が自己管理能力を獲得し、退院後も健康を維持できるようになるための教育的介入を計画します。A氏の場合、退院後の生活管理に必要な知識やスキルの習得が重要な教育課題となります。
創部の観察とケア方法については、どのような状態が正常で、どのような変化があれば受診すべきか、創部の清潔をどのように保つかなどを具体的に説明することが重要です。
活動制限と日常生活の調整については、「重いものを持たない」という指示を、A氏の日常生活に即して具体的に説明することが必要です。買い物袋や洗濯物、鍋など、日常的に持つ可能性のあるものを例に挙げて説明すると理解しやすくなります。
疼痛管理(退院後の鎮痛薬の服薬方法、疼痛が強くなった場合の対処方法)、定期受診の重要性(具体的な受診スケジュールや各検査の目的)、症状観察と異常時の対応(どのような症状があれば受診すべきか)についても指導が必要です。
教育計画を立てる際には、患者の学習スタイルや理解度に合わせた方法を選択することが大切です。口頭での説明だけでなく、パンフレット、実演、返却デモンストレーションなど、複数の方法を組み合わせるとより効果的です。
また、家族も含めた指導を計画することで、退院後のサポート体制を強化することができます。教育の効果を評価するためにティーチバック法を用いることも有効でしょう。
免責事項
- 本記事は教育・学習目的の情報提供です。
- 本事例は完全なフィクションです
- 一般的な医学知識の解説であり、個別の患者への診断・治療の根拠ではありません
- 実際の看護実践は、患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください
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