検査の基本情報
検査名と略称
正式名称はヘモグロビン、略称はHbまたはHemoglobinです。血色素量とも呼ばれます。
基準値
成人の基準値:
- 男性:13.5~17.5 g/dL
- 女性:11.5~15.0 g/dL
高齢者:やや低めの傾向(男性12.0~16.0 g/dL、女性11.0~14.0 g/dL程度)
小児:年齢により異なる(新生児は高値、乳幼児は低値の傾向)
※施設により基準値が異なる場合があるため、各施設の基準値を確認すること
パニック値(緊急報告値):
- 低値:7.0 g/dL未満
- 高値:20.0 g/dL以上
検査の目的
ヘモグロビンは、貧血の有無や程度を評価するための最も基本的な検査です。赤血球の中に含まれる赤い色素で、酸素を全身に運搬する役割を果たしています。手術前検査、健康診断、貧血症状がある時、出血後、輸血の適応判断など、様々な場面で測定されます。
検査値が意味すること
この検査で何がわかるのか
ヘモグロビンは、赤血球の中に含まれる鉄を含むタンパク質で、肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を運搬する重要な役割を果たしています。ヘモグロビン1gは約1.34mLの酸素を運搬できます。
ヘモグロビン値は、体内の酸素運搬能力を反映しています。値が低いということは、体中に十分な酸素が届いていない状態、つまり貧血を意味します。逆に高値の場合は、赤血球が過剰に産生されている状態や、血液が濃縮している状態を示しますね。
ヘモグロビンは赤血球数(RBC)やヘマトクリット(Ht)と密接に関連しており、これら3つを合わせて赤血球系検査として評価します。
検査値の変動要因
生理的変動:
- 日内変動:朝は低く、午後に高くなる傾向
- 体位:臥位より立位の方が高値(血液濃縮のため)
- 脱水:見かけ上高値になる
- 過剰な水分摂取:希釈されて低値になる
性差・年齢差:
- 男性の方が女性より高値(男性ホルモンの影響)
- 月経のある女性は低めの傾向
- 高齢者は低めの傾向
その他の要因:
- 喫煙:慢性的に高値になる
- 高地居住:高値になる(酸素が薄いため代償的に増加)
- 妊娠:血液希釈により低値になる
- 激しい運動:一時的に低値になる
異常値とその意味
低値を示す場合
考えられる疾患・状態
鉄欠乏性貧血:最も頻度が高い貧血です。鉄分の摂取不足、月経過多、消化管出血(胃潰瘍、大腸がんなど)、妊娠・授乳などが原因となります。
出血性貧血:急性出血(外傷、手術、消化管出血など)や慢性出血により、ヘモグロビンが失われます。
溶血性貧血:赤血球が破壊される疾患(自己免疫性溶血性貧血、遺伝性球状赤血球症など)で起こります。
再生不良性貧血:骨髄での赤血球産生が低下する疾患です。
慢性疾患による貧血:慢性腎不全、慢性炎症性疾患、悪性腫瘍などで起こります。
巨赤芽球性貧血:ビタミンB12や葉酸の欠乏により起こります。
身体で起きていること
ヘモグロビンが低下すると、全身への酸素供給が不足します。体は酸素不足を補おうと、心拍数を増やして血液循環を速めようとします(代償機転)。しかし、貧血が進行すると、この代償機転だけでは酸素需要を満たせなくなり、様々な症状が出現します。
特に脳や心臓など、酸素を多く必要とする臓器では、酸素不足の影響が早く現れます。慢性的な貧血では体が徐々に適応するため、Hb 7~8 g/dL程度でも比較的症状が軽いこともありますが、急性の出血による貧血では、同じ値でも重篤な症状が出現しやすいですね。
出現しやすい症状
一般的な貧血症状:
- 全身倦怠感、易疲労感
- めまい、立ちくらみ
- 動悸、息切れ(特に労作時)
- 顔面蒼白、眼瞼結膜蒼白
- 頭痛、耳鳴り
- 集中力低下
重度の貧血(Hb 7 g/dL未満):
- 安静時でも動悸、息切れ
- 胸痛、狭心症様症状
- 頻脈、血圧低下
- 意識障害(Hb 5 g/dL未満では危険)
原因疾患による特異的症状:
- 鉄欠乏性貧血:爪の変形(スプーン爪)、口角炎、舌炎、異食症(氷を好む)
- 溶血性貧血:黄疸、褐色尿
- 慢性腎不全:浮腫、高血圧
高値を示す場合
考えられる疾患・状態
真性多血症(真性赤血球増加症):骨髄の異常により、赤血球が過剰に産生される疾患です。
二次性赤血球増加症:
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD):慢性的な低酸素状態に対する代償
- 心疾患(チアノーゼ性心疾患)
- 高地居住
- 腎腫瘍(エリスロポエチン産生腫瘍)
脱水:下痢、嘔吐、発汗過多、利尿薬使用などにより、血液が濃縮して見かけ上高値になります。
ストレス性赤血球増加症:喫煙、肥満、高血圧などが関連します。
身体で起きていること
ヘモグロビンが高値になると、血液の粘稠度(粘り気)が増加します。血液がドロドロになることで、血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症などのリスクが高まります。
また、血液量が増加することで、心臓への負担も増大します。高血圧や心不全のリスクも高まりますね。
脱水による高値の場合は、全身の循環血液量が減少しているため、臓器への血流が不足し、腎不全などを引き起こす可能性があります。
出現しやすい症状
多血症による症状:
- 顔面紅潮、充血
- 頭痛、めまい
- 視力障害
- 高血圧
- 脾腫
- かゆみ(特に入浴後)
- 血栓症状(脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症)
脱水による症状:
- 口渇、皮膚・粘膜の乾燥
- 尿量減少、濃縮尿
- 皮膚ツルゴールの低下
- 血圧低下、頻脈
- 意識障害
看護アセスメントのポイント
検査前の看護
患者への説明
「血液中の酸素を運ぶヘモグロビンという成分の量を調べる検査です。貧血がないかを確認します。採血だけで、数分で終わります」と説明します。
特別な準備は不要ですが、「できれば朝一番の採血が理想的です」と伝えることもあります(日内変動があるため)。
検査前の準備・確認事項
- 絶食は通常不要(他の検査と同時の場合は除く)
- 抗凝固薬(ワーファリンなど)の使用の有無を確認(出血傾向がある場合、採血後の圧迫時間を延長)
- 前回の検査値を確認し、推移を把握する
患者の状態確認
- 貧血症状の有無:顔色、眼瞼結膜の色、バイタルサイン(特に脈拍、血圧)
- 出血の有無:黒色便、血便、血尿、鼻出血、歯肉出血、月経過多など
- 倦怠感、めまい、動悸、息切れなどの自覚症状
- 食事摂取状況(特に鉄分、タンパク質の摂取)
検査中の看護
観察項目
- 採血時の顔色、表情(迷走神経反射の予防)
- 採血量が適切か(EDTA採血管に適量採取されているか)
安全管理
- 採血後の圧迫止血を確実に行う(特に抗凝固薬使用中の患者)
- 迷走神経反射(気分不良、冷汗、徐脈、血圧低下)に注意
- 貧血が強い患者では、採血量が多いと更に貧血が悪化する可能性があるため、必要最小限の採血にとどめる
検査後の看護
結果の解釈
ヘモグロビン値は、赤血球数(RBC)、ヘマトクリット(Ht)と併せて評価します。
- Hb、RBC、Htの3つが全て低値 → 貧血
- Hb、RBC、Htの3つが全て高値 → 多血症または脱水
- Hbだけ低値、RBCは正常 → 鉄欠乏性貧血の可能性(赤血球1個あたりのHb量が少ない)
さらに、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)を見ることで、貧血のタイプを分類できます。
- 小球性低色素性貧血(MCV↓、MCH↓、MCHC↓):鉄欠乏性貧血
- 正球性正色素性貧血(MCV正常、MCH正常、MCHC正常):出血性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血
- 大球性正色素性貧血(MCV↑、MCH正常、MCHC正常):巨赤芽球性貧血
観察すべき症状・バイタルサイン
低値(貧血)の場合:
- バイタルサイン:頻脈、血圧(起立性低血圧の有無)、SpO2
- 顔色、眼瞼結膜の色
- 倦怠感、めまい、動悸、息切れの程度
- ADL、活動耐性(どの程度動けるか)
- 転倒リスク(ふらつきによる)
- 食事摂取量、嗜好の変化
- 出血徴候の継続的な観察
高値(多血症・脱水)の場合:
- 血圧、脈拍
- 皮膚・粘膜の状態(乾燥、ツルゴール)
- 尿量、尿の色
- In-outバランス
- 意識レベル
- 血栓症状(頭痛、胸痛、下肢の腫脹・疼痛)
日常生活への影響
貧血の場合:
- 易疲労感により、ADLが低下する(入浴、階段昇降などで息切れ)
- 集中力低下により、仕事や学業に支障をきたす
- めまい、ふらつきにより、転倒リスクが高まる
- 慢性的な疲労により、QOLが低下する
多血症の場合:
- 頭痛、めまいにより、日常生活に支障をきたす
- 血栓症のリスクが高まり、致命的な合併症の可能性
報告基準
緊急報告が必要な場合(医師にすぐに連絡):
- Hb 7.0 g/dL未満(特に急性の場合)
- Hb 20.0 g/dL以上
- 急激な低下(前回より2.0 g/dL以上の低下)
- 貧血に伴う重篤な症状(胸痛、呼吸困難、意識障害、ショック症状)
報告が必要な場合(当日中に連絡):
- Hb 8.0~9.0 g/dL未満
- 前回より1.0 g/dL以上の低下
- 貧血症状が強い(安静時の動悸、起立性低血圧など)
経過観察可能な場合:
- 軽度の貧血(Hb 10.0 g/dL以上)で症状が軽微
- 慢性貧血で安定している
関連する検査データ
一緒に評価すべき検査項目
赤血球系検査:
- 赤血球数(RBC):Hbと併せて評価することで、貧血の程度を正確に把握できます。
- ヘマトクリット(Ht):血液中に占める赤血球の容積の割合。Hb、RBCと平行して変動します。
- MCV、MCH、MCHC:貧血のタイプを分類し、原因を推定できます。
鉄代謝関連検査(鉄欠乏性貧血が疑われる場合):
- 血清鉄(Fe):体内の鉄の量を反映
- 総鉄結合能(TIBC):鉄と結合できるトランスフェリンの量
- フェリチン:貯蔵鉄の量を反映。鉄欠乏性貧血で低下
- トランスフェリン飽和度:鉄がトランスフェリンにどれだけ結合しているか
網赤血球数(Ret):
- 骨髄での赤血球産生能を反映。貧血の原因鑑別に有用
- 貧血があるのに網赤血球が少ない → 骨髄での産生低下(再生不良性貧血など)
- 貧血があり網赤血球が多い → 溶血性貧血、出血後の回復期
ビリルビン、LDH(溶血性貧血が疑われる場合):
- 赤血球が破壊されると、間接ビリルビンとLDHが上昇
腎機能(BUN、Cr、eGFR):
- 慢性腎不全ではエリスロポエチン産生が低下し、貧血を来します
炎症マーカー(CRP):
- 慢性炎症性疾患による貧血の評価
実習でよくある場面
場面1:術後患者の貧血の発見と輸血の判断
開腹手術後3日目の患者さんのHbが、術前の13.5 g/dLから7.8 g/dLに低下している場面です。
まず、患者さんの状態を観察しましょう。「調子はいかがですか?」と声をかけ、顔色、表情、バイタルサインを確認します。脈拍が100回/分と頻脈で、「なんだかドキドキして、少し息苦しい感じがします」と訴えがあれば、貧血による代償機転が働いていることを示しています。
次に、出血源を確認します。ドレーン排液の量と性状、創部からの出血、腹部膨満(腹腔内出血の可能性)などを観察します。また、黒色便や血便がないか、尿の色も確認しましょう。
医師に報告し、「Hbが7.8 g/dLに低下しています。脈拍100回/分で、動悸の訴えがあります。ドレーン排液は200mL/日で、血性です」と具体的に伝えます。輸血の適応が検討されるでしょう。
輸血が決定されたら、輸血前の準備(輸血の説明と同意、血液型確認、輸血副作用の観察など)を行います。
場面2:鉄欠乏性貧血患者への生活指導
外来で貧血を指摘された60歳女性患者さん(Hb 9.2 g/dL、MCV 68 fL、フェリチン 8 ng/mL)に、鉄欠乏性貧血の生活指導を行う場面です。
まず、貧血の原因を探るために、「月経はもう終わっていますか?」「黒い便や血便が出たことはありますか?」「最近、体重が減りましたか?」と質問します。消化管出血(胃潰瘍、大腸がんなど)の可能性を考慮し、便潜血検査や内視鏡検査が必要かどうか医師に確認します。
次に、食事指導を行います。「鉄分を多く含む食品を積極的に摂りましょう。レバー、赤身の肉、魚、ほうれん草、小松菜、ひじきなどがおすすめです」と具体的に伝えます。「ビタミンCと一緒に摂ると、鉄の吸収が良くなりますよ」とアドバイスします。
また、「緑茶やコーヒーは、鉄の吸収を妨げることがあるので、食事中や食後すぐは避けた方がいいです」と説明します。
鉄剤が処方された場合は、「便が黒くなることがありますが、心配ありません。胃がむかむかする時は、食後に飲むと良いです」と服薬指導を行いましょう。
場面3:慢性腎不全患者の貧血管理
慢性腎不全で透析中の患者さん(Hb 9.5 g/dL、目標Hb 10~11 g/dL)の貧血管理を行う場面です。
慢性腎不全では、エリスロポエチン(赤血球産生を促すホルモン)の産生が低下するため、腎性貧血を来します。治療としてエリスロポエチン製剤(ダルベポエチン、エポエチンベータなど)が投与されますが、目標Hbは10~11 g/dL程度です(高すぎると血栓症や心血管イベントのリスクが高まるため)。
患者さんの貧血症状を確認します。「最近、疲れやすくないですか?」「息切れはしますか?」と質問し、ADLへの影響を評価します。
また、鉄の状態も確認します。エリスロポエチン製剤を使用すると、鉄の消費が増えるため、鉄欠乏に陥ることがあります。フェリチン、トランスフェリン飽和度をチェックし、必要に応じて鉄剤の補充を行います。
Hbが目標範囲内であっても、急激に上昇している場合(例:2週間で2 g/dL以上上昇)は、血圧上昇や血栓症のリスクがあるため、医師に報告し、エリスロポエチン製剤の減量を検討します。
よくある疑問・Q&A
Q: Hbが10 g/dLの患者さんと、8 g/dLの患者さんでは、どちらが重症ですか?
A: 一般的には8 g/dLの方が重症ですが、貧血の進行速度も重要です。慢性的にゆっくり進行した貧血では、体が徐々に適応するため、Hb 8 g/dLでも比較的症状が軽いことがあります。一方、急性出血で急激にHb 10 g/dLになった場合は、体が適応できず、重篤な症状が出ることがあります。そのため、Hbの絶対値だけでなく、前回からの変化、進行速度、症状の有無を総合的に評価することが重要です。また、高齢者や心疾患のある患者さんでは、同じHb値でも症状が強く出やすいため、個別に判断する必要があります。
Q: 貧血があると、なぜ動悸や息切れが起こるのですか?
A: ヘモグロビンが減少すると、血液の酸素運搬能力が低下します。体は酸素不足を補おうと、心拍数を増やして血液循環を速めることで対応します(代償機転)。これが動悸として感じられます。また、運動時には筋肉が多くの酸素を必要としますが、ヘモグロビンが少ないと十分に酸素を供給できません。そのため、体は呼吸数を増やして酸素を取り込もうとします。これが息切れとして現れます。安静時は何ともなくても、階段を上る、入浴するなどの活動時に動悸や息切れが出現するのは、このためですね。
Q: 貧血の患者さんに輸血する基準はありますか?
A: 輸血の適応は、Hbの絶対値だけでなく、症状、原疾患、年齢、合併症などを総合的に判断します。一般的な目安としては、Hb 7 g/dL未満で輸血を検討することが多いですが、これは絶対的な基準ではありません。心疾患や呼吸器疾患がある患者さん、高齢者では、もっと高いHb値(8~9 g/dL)でも輸血が必要になることがあります。逆に、若く健康で、慢性的にゆっくり進行した貧血であれば、Hb 6~7 g/dLでも輸血せず、鉄剤などで治療することもあります。また、症状が重要で、Hbが7 g/dL以上でも、胸痛、呼吸困難、意識障害などの症状があれば輸血を検討します。輸血にはリスク(感染症、アレルギー、輸血関連循環過負荷など)もあるため、必要最小限にとどめることが原則です。
Q: 脱水でHbが高く出ることがあると聞きましたが、どう見分けますか?
A: 脱水による高値(見かけ上の高値)と、真の多血症を見分けるには、他の所見と併せて評価します。脱水の場合は、口渇、尿量減少、皮膚ツルゴールの低下、血圧低下、頻脈などの脱水症状があります。また、BUN/Cr比が上昇(通常10程度が、20以上に上昇)することも脱水の指標になります。補液後にHbが正常化すれば、脱水による一過性の高値だったと判断できます。一方、真性多血症では、脱水症状はなく、赤血球数も著明に増加し、脾腫などの所見を伴うことが多いです。また、補液してもHbは下がりません。臨床症状、検査データの推移、補液への反応を総合的に見ることが大切ですね。
疾患別の特徴的なパターン
鉄欠乏性貧血
検査値のパターン:
- Hb:低下(10 g/dL未満が多い)
- MCV:低下(80 fL未満、小球性)
- MCH、MCHC:低下(低色素性)
- 血清鉄:低下
- TIBC:上昇
- フェリチン:低下(最も鋭敏な指標)
経過:ゆっくり進行することが多く、体が適応しているため、Hbがかなり低くても症状が軽いことがある。
看護のポイント:食事指導(鉄分摂取)、鉄剤の服薬指導、消化管出血の有無の確認、女性では月経過多の有無を確認。
慢性腎不全による腎性貧血
検査値のパターン:
- Hb:低下(8~10 g/dL程度が多い)
- MCV、MCH、MCHC:正常(正球性正色素性)
- BUN、Cr:上昇
- エリスロポエチン:低値
経過:慢性的に進行。透析患者では、エリスロポエチン製剤で管理。
看護のポイント:目標Hbは10~11 g/dL。高すぎると血栓症リスク。鉄の状態もチェック(フェリチン、トランスフェリン飽和度)。
急性出血後
検査値のパターン:
- 出血直後:Hb、Ht、RBCは正常~やや低下(血液全体が失われるため、割合は変わらない)
- 数時間~24時間後:Hb、Ht、RBCが著明に低下(組織液が血管内に移動して血液が希釈されるため)
- MCV、MCH、MCHC:正常(正球性正色素性)
- 網赤血球:数日後から上昇(骨髄が回復を始める)
経過:急激に進行するため、同じHb値でも症状が強く出やすい。ショック症状に注意。
看護のポイント:バイタルサイン(特に血圧、脈拍)の頻回測定、出血源の確認、輸液・輸血の準備、ショック症状の観察。
溶血性貧血
検査値のパターン:
- Hb、RBC:低下
- MCV、MCH、MCHC:正常(正球性正色素性)
- 網赤血球:著明に上昇(骨髄が活発に赤血球を作っている)
- 間接ビリルビン:上昇(赤血球が壊れてビリルビンが増える)
- LDH:上昇
- ハプトグロビン:低下
経過:赤血球が破壊される速度により、急性~慢性まで様々。
看護のポイント:黄疸の観察、褐色尿の有無、脾腫の有無、溶血の原因(薬剤、感染症、自己免疫など)の確認。
再生不良性貧血
検査値のパターン:
- Hb、RBC:低下
- 白血球(WBC):低下
- 血小板:低下(汎血球減少)
- 網赤血球:低下(骨髄での産生が低下している)
- MCV:正常~やや上昇
経過:進行性で重篤。骨髄移植が必要になることもある。
看護のポイント:感染予防(白血球減少)、出血予防(血小板減少)、貧血症状の観察。易感染状態のため、清潔ケアの徹底が重要。
まとめ
ヘモグロビンは、体内の酸素運搬能力を反映する最も基本的な検査です。貧血の有無や程度を評価し、全身状態を把握するために欠かせない指標ですね。
看護師として最も重要なのは、検査値だけでなく、患者さんの症状や生活への影響を総合的にアセスメントすることです。同じHb値でも、急性か慢性か、年齢や合併症の有無によって、症状の出方や重症度は大きく異なります。
貧血症状の早期発見(顔色、眼瞼結膜の色、バイタルサイン、倦怠感、動悸、息切れ)、転倒リスクの評価(めまい、ふらつき)、ADLへの影響の把握、出血源の確認など、多角的な観察が重要です。
また、Hbは単独で評価するのではなく、RBC、Ht、MCV、MCH、MCHCなどの赤血球系検査と併せて評価することで、貧血のタイプを分類し、原因を推定できます。さらに、鉄代謝検査、網赤血球、ビリルビンなどを組み合わせることで、より詳細な診断につながります。
実習や訪問看護では、様々な原因による貧血患者さんに出会います。検査値の意味を理解し、根拠に基づいた観察とケアを実践することで、患者さんの安全を守り、QOLを向上させることができるでしょう。
免責事項
本記事は看護学生向けの教育・学習目的の情報提供です。一般的な医学知識の解説であり、個別の患者への診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は、患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。記事の情報は公開時点のものであり、最新の医学的知見と異なる場合があります。本記事を課題としてそのまま提出しないでください。正確な情報提供に努めていますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。検査値の解釈や対応については、必ず医師の判断を仰いでください。

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