【eGFR(推算糸球体濾過量)】検査データと看護のポイント

検査データと看護のポイント

検査の基本情報

検査名と略称

正式名称: estimated Glomerular Filtration Rate(推算糸球体濾過量) 略称: eGFR 別名: 推定GFR、eGFRcreat(クレアチニンベース)

基準値

成人の基準値: 60 mL/分/1.73m²以上

※eGFRは年齢とともに低下するため、年齢による正常範囲があります

  • 若年成人(20〜30歳): 90〜120 mL/分/1.73m²
  • 中年成人(40〜50歳): 80〜100 mL/分/1.73m²
  • 高齢者(70歳以上): 60〜80 mL/分/1.73m²

重要な判断基準

  • 60 mL/分/1.73m²未満: 慢性腎臓病(CKD)の可能性
  • 30 mL/分/1.73m²未満: 中等度〜高度の腎機能低下
  • 15 mL/分/1.73m²未満: 末期腎不全、透析導入検討

検査の目的

  • 腎機能の正確な評価(最も重要)
  • 慢性腎臓病(CKD)の診断とステージ分類
  • 腎機能低下の早期発見
  • 薬剤投与量の決定
  • 透析導入時期の判断
  • 腎機能の経時的変化の把握

検査値が意味すること

この検査で何がわかるのか

eGFRは腎臓が1分間にどれだけの血液を濾過できるかを示す指標です。腎臓の糸球体は、血液中の老廃物を濾過して尿を作る働きをしており、この濾過能力を数値化したものがGFR(糸球体濾過量)です。

eGFRの「e」はestimated(推定された)を意味します。本来、GFRを正確に測定するには、イヌリンクリアランスという複雑な検査が必要ですが、実臨床では血清クレアチニン値、年齢、性別から計算式で推定します。これがeGFRです。

eGFRの計算式(日本人用) eGFR = 194 × Cre^(-1.094) × 年齢^(-0.287) × (女性の場合は×0.739)

この計算は自動で行われるため、看護師が計算する必要はありません。採血結果にクレアチニンと一緒に表示されます。

eGFRがクレアチニンより優れている理由

  1. 筋肉量の影響を補正できる 高齢者や筋肉量の少ない人では、クレアチニンが低く出て腎機能低下を見逃すことがありますが、eGFRは年齢・性別で補正するため、より正確です。
  2. 腎機能を直感的に理解できる クレアチニンは「老廃物の蓄積」を示しますが、eGFRは「腎臓の働き具合」を直接示すため、理解しやすいです。
  3. 国際的に標準化されている CKDのステージ分類はeGFRを基準にしているため、世界中で統一された評価が可能です。

検査値の変動要因

低下させる要因

  • 加齢(生理的低下)
  • 慢性腎臓病
  • 急性腎障害
  • 糖尿病性腎症
  • 高血圧性腎硬化症
  • 脱水(一時的)
  • 薬剤性腎障害

影響を受ける要因

  • 筋肉量: 極端に筋肉量が多い・少ない場合は誤差が生じる
  • 食事: クレアチニン同様、高蛋白食で軽度低下
  • 体表面積: 極端に体格が大きい・小さい場合

影響を受けにくい要因

  • 脱水(クレアチニンほど影響を受けない)
  • 日内変動

異常値とその意味

低値を示す場合

eGFRには「高値」という概念はほとんどなく、主に「低値(腎機能低下)」が問題になります。

CKD(慢性腎臓病)のステージ分類

ステージeGFR<br>(mL/分/1.73m²)腎機能の状態主な症状・所見臨床的対応
G1≧90正常または高値<br>(腎障害あり)無症状<br>尿蛋白または血尿原疾患の治療<br>危険因子の管理
G260〜89正常または軽度低下<br>(腎障害あり)無症状〜軽度倦怠感進行抑制<br>定期的な検査
G3a45〜59軽度〜中等度低下軽度の倦怠感<br>軽度貧血合併症予防開始<br>食事療法導入
G3b30〜44中等度〜高度低下倦怠感、浮腫<br>貧血、高血圧合併症の積極的治療<br>専門医への紹介
G415〜29高度低下<br>(保存的腎不全)尿毒症症状出現<br>浮腫、貧血、高血圧透析・移植の準備開始<br>シャント造設検討
G5<15末期腎不全高度の尿毒症症状<br>生命維持困難透析導入または腎移植

身体で起きていること

eGFR 60〜89(G2: 軽度低下) 糸球体の一部が障害されていますが、残りの糸球体が代償的に働くため、自覚症状はほとんどありません。この段階では腎機能低下の進行を食い止めることが重要です。

eGFR 45〜59(G3a: 軽度〜中等度低下) 糸球体の障害が進行し、腎臓全体の濾過能力が低下しています。老廃物の蓄積が始まり、軽度の倦怠感や貧血が出現することがあります。

eGFR 30〜44(G3b: 中等度〜高度低下) 腎機能が正常の30〜44%まで低下しています。貧血、高血圧、浮腫、骨ミネラル代謝異常などの合併症が顕在化します。

eGFR 15〜29(G4: 高度低下) 腎機能が正常の15〜29%まで低下し、尿毒症症状(悪心、嘔吐、食欲不振) が出現します。透析導入の準備が必要な段階です。

eGFR <15(G5: 末期腎不全) 腎機能が正常の15%未満まで低下し、生命維持が困難な状態です。透析または腎移植が必要です。

出現しやすい症状

eGFR 60〜89(G2)

  • ほとんど無症状
  • 健診で尿蛋白や血尿を指摘される程度

eGFR 45〜59(G3a)

  • 軽度の倦怠感
  • 軽度の貧血症状(易疲労感)
  • 夜間頻尿

eGFR 30〜44(G3b)

  • 倦怠感、易疲労感
  • 浮腫(下腿、顔面)
  • 貧血症状(動悸、息切れ)
  • 高血圧
  • 食欲不振

eGFR 15〜29(G4)

  • 尿毒症症状(悪心、嘔吐、食欲不振)
  • 全身倦怠感
  • 高度の浮腫
  • 呼吸困難(肺水腫)
  • 皮膚掻痒感
  • 意識障害の出現

eGFR <15(G5)

  • 高度の尿毒症症状
  • 意識障害、けいれん
  • 呼吸困難(肺水腫、代謝性アシドーシス)
  • 胸痛(心嚢炎)
  • 生命の危険

看護アセスメントのポイント

検査前の看護

患者への説明

「腎臓がどれくらい働いているかを評価する検査です。血液検査のクレアチニンの値から自動的に計算されるため、特別な検査は必要ありません。腎臓の機能を数値で示すもので、60以上が正常とされています」

検査前の準備・確認事項

  • 特別な準備は不要(eGFRはクレアチニンから計算される)
  • 患者の年齢、性別を確認(計算に必要)
  • 体格が極端に大きい・小さい場合は補正が必要なことがある

患者の状態確認

  • 尿量(24時間尿量の把握)
  • 浮腫の有無
  • 血圧(腎性高血圧の有無)
  • 貧血症状(腎性貧血の有無)
  • 尿毒症症状(悪心、嘔吐、掻痒感)

検査中の看護

eGFRはクレアチニン測定と同時に行われるため、特別な検査中の看護はありません。

検査後の看護

結果の解釈

CKDステージの判定 eGFRの値から自動的にCKDステージ(G1〜G5)が判定されます。

尿蛋白との組み合わせ評価 CKDの診断には、eGFRと尿蛋白の両方が重要です。

eGFR × 尿蛋白リスク評価
eGFR ≧60 + 尿蛋白(-)リスク低い(正常)
eGFR ≧60 + 尿蛋白(+)注意が必要
eGFR 45〜59 + 尿蛋白(-)中等度リスク
eGFR 45〜59 + 尿蛋白(+)高リスク
eGFR <45高〜最高リスク

経時的変化の評価 単回の測定だけでなく、数ヶ月〜数年単位での変化を見ることが重要です。

  • 1年間にeGFRが5以上低下: 急速進行性の腎機能低下
  • 1年間にeGFRが25%以上低下: 著明な進行
  • 安定している: 良好な管理

他の検査との組み合わせ

検査eGFRとの関連
Cre(クレアチニン)eGFRの計算に使用、逆相関
BUNeGFR低下で上昇
K(カリウム)eGFR <30で高K血症リスク
Hb(ヘモグロビン)eGFR <60で貧血出現
Ca、PeGFR <45でミネラル代謝異常
尿蛋白CKD診断・リスク評価に必須

観察すべき症状・バイタルサイン

eGFR 45〜59(G3a)の場合

  • 血圧測定(家庭血圧も含む)
  • 体重測定(浮腫の評価)
  • 尿量(夜間頻尿の有無)
  • 貧血症状(顔色、易疲労感)
  • 食事摂取量(蛋白・塩分摂取状況)

eGFR 30〜44(G3b)の場合

  • 上記に加えて
  • 浮腫の程度(下腿周径測定)
  • 貧血の程度(Hb、Ht測定)
  • 尿毒症症状の出現(悪心、食欲不振)
  • 骨症状(骨痛、骨折リスク)

eGFR 15〜29(G4)の場合

  • 上記に加えて
  • 尿毒症症状の詳細評価(悪心・嘔吐の頻度、重症度)
  • 電解質異常の徴候(高K血症、低Ca血症)
  • 呼吸状態(肺水腫、代謝性アシドーシス)
  • 意識レベル(尿毒症性脳症)
  • 透析導入の準備状況(シャントの有無)

eGFR <15(G5)の場合

  • 透析患者に準じた厳重な観察
  • バイタルサイン(4時間ごとまたはそれ以上)
  • 水分出納バランス(厳密な管理)
  • 体重測定(毎日)
  • 意識レベル(頻回評価)
  • 呼吸状態(SpO₂、呼吸音)

日常生活への影響

eGFR 45〜59(G3a)

  • ほぼ通常の生活が可能
  • 軽度の食事制限(塩分6g/日未満)
  • 定期的な通院(3〜6ヶ月ごと)
  • 運動制限はほとんどなし

eGFR 30〜44(G3b)

  • 食事制限の強化(蛋白0.8〜1.0 g/kg/日、塩分6g/日未満)
  • 定期的な通院(1〜3ヶ月ごと)
  • 激しい運動は控える
  • 仕事は継続可能だが疲労しやすい

eGFR 15〜29(G4)

  • 厳格な食事制限(蛋白0.6〜0.8 g/kg/日、塩分6g/日未満、カリウム制限)
  • 頻回の通院(1〜2ヶ月ごと)
  • 透析導入の準備(シャント造設、透析教育)
  • 仕事の調整が必要(軽作業へ変更など)
  • 生活の質(QOL)が低下

eGFR <15(G5)

  • 透析または腎移植が必要
  • 生活が大きく変化(透析通院週3回、1回4時間)
  • 厳格な食事・水分制限
  • 仕事の継続が困難なことが多い
  • 身体障害者手帳の取得

看護として支援すべきこと

  • 食事療法の支援: 管理栄養士と連携し、実行可能な食事指導
  • 服薬管理: 腎機能に応じた薬剤調整、確実な内服
  • 血圧管理: 家庭血圧測定の指導、降圧目標の共有
  • 生活指導: 禁煙、適度な運動、感染予防
  • 心理的サポート: 透析導入への不安、生活変化への適応支援
  • 社会資源の活用: 身体障害者手帳、医療費助成制度の案内

報告基準

緊急報告が必要な状況

  • eGFR <15(G5)に初めて到達
  • eGFR が短期間(数週間〜数ヶ月)で30%以上低下
  • 尿毒症症状の出現(悪心・嘔吐、意識障害)
  • 高K血症(K ≧6.0 mEq/L)、不整脈
  • 肺水腫、呼吸困難
  • 代謝性アシドーシス(pH <7.2)

定時報告でよい状況

  • eGFR 45〜59(G3a)で安定
  • 予測される範囲内の緩徐な低下
  • 症状が安定している

関連する検査データ

一緒に評価すべき検査項目

尿検査(必須)

  • 尿蛋白: CKDの診断・リスク評価に必須
  • 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR): より正確な蛋白尿評価
  • 尿潜血: 糸球体疾患の有無

電解質(eGFR <60で評価)

  • K(カリウム): eGFR <30で高K血症リスク
  • Ca(カルシウム): eGFR <45で低Ca血症
  • P(リン): eGFR <45で高P血症

貧血評価(eGFR <60で評価)

  • Hb、Ht: 腎性貧血の評価
  • Fe、TIBC、フェリチン: 鉄欠乏の有無
  • エリスロポエチン: 造血ホルモンの産生能

骨ミネラル代謝(eGFR <45で評価)

  • Ca、P: ミネラルバランス
  • PTH(副甲状腺ホルモン): 二次性副甲状腺機能亢進症
  • ALP: 骨代謝の指標
  • ビタミンD: 活性型ビタミンD産生能

原疾患の評価

  • HbA1c: 糖尿病性腎症の場合
  • 血圧: 高血圧性腎硬化症の場合
  • 尿酸: 高尿酸血症による腎障害

実習でよくある場面

場面1: 健診でeGFR低下を指摘された患者

55歳男性、健診でeGFR 52 mL/分/1.73m²(G3a)、尿蛋白(-)、血圧148/92 mmHg

アセスメントのポイント

  • eGFR <60でCKDステージG3aと判定
  • 尿蛋白陰性のため、中等度リスク
  • 高血圧あり(高血圧性腎硬化症の可能性)
  • 無症状だが腎機能低下は確実に進行している
  • 早期介入で進行を遅らせることが可能

看護の視点 「まだ大丈夫」と思いがちですが、この段階での介入が極めて重要です。血圧管理(130/80 mmHg未満)、塩分制限(6g/日未満)、禁煙、定期的な検査を開始します。患者に「自覚症状がなくても治療が必要」と理解してもらうことが課題です。

場面2: 糖尿病患者のeGFR急速進行

68歳女性、2型糖尿病、eGFR 55 → 38(1年間で)、尿蛋白(+++)、HbA1c 8.2%

アセスメントのポイント

  • 1年間でeGFR が17低下は急速進行(通常は1年に1〜2程度)
  • CKDステージがG3a→G3bに悪化
  • 尿蛋白(+++)は高度の蛋白尿
  • 血糖コントロール不良(HbA1c 8.2%)
  • 糖尿病性腎症の急速進行を示唆

看護の視点 血糖管理の徹底が最優先です。HbA1c 7%未満を目標に、食事療法、運動療法、薬物療法を強化します。血圧管理も重要(130/80 mmHg未満)。このペースで進行すると2〜3年で透析導入の可能性があるため、透析の説明も開始します。

場面3: 高齢者のeGFRとCreの解離

85歳女性、Cre 0.8 mg/dL(正常)、eGFR 48 mL/分/1.73m²(G3b)、体重42kg、筋肉量減少

アセスメントのポイント

  • Creは正常範囲だがeGFRは低下(G3b)
  • 高齢で筋肉量が少ないため、Creが低く出ている
  • 「Creが正常=腎機能正常」という判断は誤り
  • eGFRで評価すると中等度〜高度の腎機能低下
  • 薬剤投与量の調整が必要

看護の視点 高齢者ではCreに騙されず、eGFRで腎機能を評価します。腎機能に応じた薬剤投与量の調整、腎毒性薬剤(NSAIDsなど)の回避が重要です。脱水予防も重視します。過度の蛋白制限は低栄養を招くため、栄養状態の維持とのバランスを取ります。

場面4: eGFR <15で透析導入検討

62歳男性、慢性腎不全、eGFR 12 mL/分/1.73m²(G5)、悪心・嘔吐あり、K 6.2 mEq/L

アセスメントのポイント

  • eGFR <15で末期腎不全(G5)
  • 尿毒症症状(悪心・嘔吐)が出現
  • 高K血症(K 6.2)で不整脈のリスク
  • 透析導入が必要な段階
  • シャントの有無を確認

看護の視点 透析導入の準備を急ぎます。シャントがなければ緊急造設、または一時的に透析カテーテル留置を検討します。透析導入前の教育(血液透析または腹膜透析の選択、生活の変化)を行います。高K血症への対応(カリウム制限食、カリウム吸着薬)、尿毒症症状の緩和(制吐薬)も重要です。

場面5: 薬剤性腎障害によるeGFR低下

70歳男性、NSAIDs長期服用、eGFR 68 → 45(3ヶ月で)、Cre 0.9 → 1.4 mg/dL

アセスメントのポイント

  • 3ヶ月でeGFRが23低下は急速進行
  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の長期服用歴
  • 薬剤性腎障害を強く疑う
  • NSAIDs中止で改善する可能性

看護の視点 NSAIDsの中止が最優先です。医師と相談し、代替薬(アセトアミノフェンなど)への変更を検討します。患者に「痛み止めで腎臓が悪くなることがある」と説明し、市販薬の使用にも注意を促します。NSAIDs中止後、1〜2ヶ月でeGFRが回復するかモニタリングします。


よくある疑問・Q&A

Q1: eGFRとクレアチニン、どちらを重視すればよいですか?

A: eGFRを重視してください。クレアチニンは筋肉量、年齢、性別の影響を受けるため、特に高齢者や筋肉量の少ない人では腎機能低下を見逃すことがあります。eGFRはこれらの要因を補正した値なので、より正確に腎機能を評価できます。現在、国際的にも腎機能の評価はeGFRが標準とされています。

Q2: eGFRは加齢とともに低下すると聞きましたが、高齢者のeGFR低下は問題ないのですか?

A: 加齢による生理的低下と病的低下は区別が必要です。

生理的な加齢変化

  • 1年に約1 mL/分/1.73m²程度の緩徐な低下
  • 80歳でeGFR 60〜70程度は正常範囲内

病的な低下(治療が必要)

  • 急速な低下(1年に5以上)
  • eGFR <60で尿蛋白(+)
  • eGFR <45(G3b以下)

高齢者でも、尿蛋白があったり、急速に低下している場合は治療が必要です。

Q3: eGFRが60を切ったら必ず透析になりますか?

A: いいえ、すぐに透析にはなりません。eGFR 60はCKDの診断基準であり、透析導入とは大きく離れています。

透析導入の目安

  • eGFR <15(G5)
  • 症状(尿毒症症状、肺水腫など)がある
  • 電解質異常(高K血症など)が治療抵抗性

eGFR 60から透析導入(eGFR <15)まで、適切に管理すれば10〜20年以上かかることもあります。進行を遅らせることが最も重要です。

Q4: eGFRを改善させる方法はありますか?

A: 一度低下したeGFRを正常に戻すことは困難ですが、進行を遅らせることは可能です。

進行を遅らせる方法

  • 血圧管理: 130/80 mmHg未満を目標
  • 血糖管理: HbA1c 7%未満(糖尿病の場合)
  • 食事療法: 蛋白・塩分制限
  • 禁煙: 喫煙は腎機能低下を加速
  • 腎毒性薬剤の回避: NSAIDs、造影剤など
  • 適正体重の維持: 肥満は腎機能低下のリスク

一部で改善が見込める場合

  • 脱水による一時的な低下 → 水分補給で改善
  • 薬剤性腎障害 → 原因薬剤中止で改善
  • 尿路閉塞 → 閉塞解除で改善

Q5: eGFRが低い患者に薬を投与する時、何に注意すればよいですか?

A: 多くの薬剤は腎臓から排泄されるため、eGFRに応じて投与量を調整する必要があります。

eGFR別の薬剤投与の注意点

eGFR薬剤投与の注意
≧60ほとんどの薬剤で通常量投与可能
45〜59一部の薬剤で減量が必要
30〜44多くの薬剤で減量が必要
15〜29ほとんどの薬剤で減量または中止が必要
<15透析患者に準じた投与

特に注意が必要な薬剤

  • 抗菌薬(セフェム系、ニューキノロン系)
  • 糖尿病薬(メトホルミンなど)
  • 抗ウイルス薬
  • 腎毒性のある薬剤(NSAIDs、造影剤)

看護師として確認すべきこと

  • eGFRを確認し、腎機能に応じた投与量になっているか
  • 薬剤投与後の腎機能モニタリング
  • 副作用の早期発見

疾患別の特徴的なパターン

糖尿病性腎症

典型的なパターン

項目所見特徴
eGFR徐々に低下<br>進行すると急速低下も5〜10年で透析に至ることも
尿蛋白持続的陽性(++〜+++)微量アルブミン尿から始まる
HbA1c高値(コントロール不良)血糖管理が予後を左右
網膜症合併していることが多い腎症と網膜症は並行して進行
血圧高血圧を伴う130/80未満にコントロール

看護のポイント 血糖管理(HbA1c 7%未満)と血圧管理(130/80未満)が最重要です。蛋白制限食、禁煙、定期的な検査を行います。

高血圧性腎硬化症

典型的なパターン

項目所見特徴
eGFR緩徐に低下数十年かけて低下
尿蛋白陰性〜軽度陽性糖尿病性腎症より軽度
血圧高血圧(特に収縮期)長年の高血圧歴
眼底所見高血圧性眼底変化細動脈硬化
年齢高齢者に多い60歳以上

看護のポイント 厳格な血圧管理が進行抑制の鍵です。降圧薬の確実な内服、家庭血圧測定、塩分制限を徹底します。

慢性糸球体腎炎

典型的なパターン

項目所見特徴
eGFR徐々に低下数年〜数十年かけて低下
尿蛋白陽性(+〜+++)持続的な蛋白尿
尿潜血陽性赤血球円柱も見られる
浮腫あり(蛋白尿が高度な場合)低アルブミン血症を伴う
若年発症20〜40歳代に多い健診で発見されることも

看護のポイント 蛋白尿のコントロール、血圧管理、ステロイド治療(IgA腎症など)の副作用管理を行います。

急性腎障害(AKI)からの回復期

典型的なパターン

項目所見特徴
eGFR急激に低下後、回復数日〜数週間で変動
Cre急上昇後、低下回復の指標
尿量乏尿→利尿期回復期は多尿になることも
原因脱水、敗血症、薬剤など原因除去で回復
予後完全回復〜慢性腎不全移行高齢者は完全回復しにくい

看護のポイント 原因の除去、水分電解質管理、腎機能の回復モニタリングを行います。利尿期は脱水に注意します。


まとめ

eGFR(推算糸球体濾過量)は腎機能を最も正確に評価する指標であり、現在の腎機能評価の国際標準です。クレアチニンよりも優れた点が多く、特に高齢者や筋肉量の少ない患者での腎機能評価に有用です。

看護アセスメントで押さえるべきポイントは以下の通りです。

  • eGFR 60未満はCKD(慢性腎臓病)の可能性
  • CKDステージ(G1〜G5)を理解し、各ステージに応じた看護を提供
  • eGFRと尿蛋白の組み合わせでリスク評価
  • 経時的変化を重視する(単回測定だけで判断しない)
  • 1年に5以上の低下は急速進行、早急な介入が必要
  • 高齢者ではCreが正常でもeGFRが低下していることがある
  • eGFR <30で合併症出現(貧血、ミネラル代謝異常、高K血症)
  • eGFR <15で透析導入検討
  • 薬剤投与量はeGFRで調整する

実習では、eGFRの値だけを見るのではなく、CKDのステージ、尿蛋白の有無、経時的変化、原疾患(糖尿病、高血圧など)を総合的に評価することが大切です。

腎機能の低下は不可逆的なことが多いため、進行を遅らせることが最も重要な目標になります。血圧管理、血糖管理、食事療法、禁煙など、患者さんが実行可能な形で生活習慣の改善を支援しましょう。

また、eGFRが低下している患者さんは、透析導入という大きな転機に向かっている可能性があります。早期から透析についての情報提供を行い、患者さんと家族が心の準備をできるよう、継続的な支援を提供することも看護師の重要な役割です。

eGFRを正しく理解し、適切な看護介入を提供することで、患者さんの腎機能保護とQOL向上を支援していきましょう。


免責事項

本記事は看護学生向けの教育・学習目的の情報提供です。一般的な医学知識の解説であり、個別の患者への診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は、患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。記事の情報は公開時点のものであり、最新の医学的知見と異なる場合があります。本記事を課題としてそのまま提出しないでください。正確な情報提供に努めていますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。検査値の解釈や対応については、必ず医師の判断を仰いでください。

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