【ゴードン】喘息 初回入院 小児(0039)

ゴードン

事例の要約

本事例は6歳の男児が初めて喘息発作を起こし入院した事例である。患児は呼吸困難と喘鳴を主訴に5月10日に救急外来を受診し、気管支喘息重症発作と診断され即日入院となった。入院後、酸素投与と薬物療法が開始され、徐々に症状は改善してきているが、発作の再発予防と自宅管理に向けた指導が必要な状況である。介入日は5月13日である。

基本情報

A氏は6歳の男児で、身長は118cm、体重は20kgである。家族構成は父親(38歳、会社員)、母親(36歳、パート勤務)、妹(3歳)の4人家族で、キーパーソンは母親である。A氏は小学校1年生で、性格は活発で好奇心旺盛であるが、やや神経質な一面もある。感染症はなく、アレルギー歴としては卵白とハウスダストが判明している。年齢相応の発達で認知機能に問題はない。

病名

気管支喘息重症発作、アトピー型気管支喘息

既往歴と治療状況

A氏は生後8ヶ月からアトピー性皮膚炎の既往があり、皮膚科でステロイド外用薬を処方されている。3歳頃から風邪をひくと喘鳴を伴うことがあり、小児科で気管支拡張薬(シロップ)を処方されることがあったが、これまで入院を要するような重篤な発作はなかった。また、花粉症があり、春と秋に症状が悪化する傾向がある。

入院から現在までの情報

A氏は5月10日午後8時頃、突然の呼吸困難と喘鳴を主訴に救急外来を受診した。前日から軽度の鼻汁と咳嗽があり、当日の夕方から呼吸状態が悪化した。来院時、著明な陥没呼吸と努力呼吸を認め、酸素飽和度の低下から緊急入院となった。入院後、酸素投与、ネブライザー治療、ステロイド点滴が開始された。入院2日目には呼吸状態がやや改善し、3日目の現在は酸素投与を中止できるまでに回復しているが、軽度の喘鳴と咳嗽は持続している。

バイタルサイン

来院時のバイタルサインは、体温38.2℃、脈拍130回/分、呼吸数35回/分と頻呼吸を認め、血圧は105/65mmHgであった。SpO2は室内気で89%と低下しており、頬と口唇周囲にチアノーゼを認めた。現在(5月13日)のバイタルサインは、体温37.0℃、脈拍95回/分、呼吸数22回/分、血圧100/60mmHg、SpO2は室内気で96%と改善している。呼吸音は両肺野で軽度の喘鳴を聴取するが、入院時と比較して明らかに減少している。

食事と嚥下状態

入院前のA氏は食欲良好で、年齢相応の食事摂取ができていた。好き嫌いはあるものの、卵アレルギーがあるため卵料理は除去していた。嚥下状態に問題はなく、喫煙と飲酒の習慣はない。現在の入院中は、呼吸状態悪化のため入院初日は点滴のみで絶食であったが、2日目から流動食を開始し、現在は小児食を7割程度摂取できている。呼吸状態の改善に伴い、食欲も徐々に回復傾向にある。

排泄

入院前は排泄に関する問題はなく、自立して排泄できていた。排便は1日1回の規則的な排便習慣があった。現在の入院中は、点滴や安静による活動量の低下から、排便間隔が延長しており、入院後3日目の現在まで排便がない状態が続いている。下剤の使用はまだ行っていないが、水分摂取と食事摂取量の増加を促している。排尿は問題なく、1日5〜6回程度ある。

睡眠

入院前のA氏は21時に就寝し、朝7時頃に起床する規則正しい生活リズムを保っていた。入眠時に母親が傍にいることを好む傾向があるが、眠剤等の使用はなかった。入院後は、呼吸困難による不安と病院環境への不適応から、入眠困難と中途覚醒が見られた。特に夜間に咳嗽が増悪する傾向があり、断続的な睡眠となっている。眠剤は使用せず、環境調整と母親の付き添いで対応している。

視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰

視力と聴力は正常で、知覚障害はない。コミュニケーションは年齢相応に発達しており、自分の症状や要望を言葉で表現できる。ただし、呼吸困難時には恐怖心から泣き叫ぶことがあり、その際は母親の存在が大きな安心感となっている。特定の宗教的信仰はない。

動作状況

入院前は日常生活動作に制限はなく、活発に遊び回る元気な児童であった。現在は呼吸状態の改善に伴い、病室内の歩行や移動は可能になっているが、長時間の活動後に軽度の呼吸困難が出現することがある。排尿・排便は自立しているが、病院のトイレに慣れていないため、母親の介助を好む傾向がある。入浴は現在シャワー浴に制限されており、母親の介助のもと実施している。衣類の着脱は基本的に自分でできるが、体力消耗を考慮して一部介助している。入院中の転倒歴はない。

内服中の薬
  • プレドニゾロン 5mg 朝食後 2錠 (10mg/日)
  • モンテルカスト 5mg チュアブル錠 就寝前 1錠
  • サルブタモール シロップ 0.5mg/kg 朝・昼・夕食後 1日3回
  • クレマスチン シロップ 0.04mg/kg 朝・夕食後 1日2回
  • ベタメタゾン 軟膏 0.05% 皮疹部に1日2回塗布

服薬状況: 入院中の内服薬は全て看護師管理となっている。A氏は年齢的に自己管理は難しく、特に喘息発作による初回入院であるため、確実な投薬管理が必要と判断された。服薬に対する抵抗はなく、シロップ剤は比較的スムーズに内服できているが、錠剤の内服に若干の抵抗を示すことがある。退院後の服薬管理については、母親への指導を予定しており、特に長期管理薬と発作時の対応薬の区別についての理解を深める必要がある。

検査データ
検査項目基準値入院時 (5月10日)最近 (5月13日)
WBC4,000-12,000/μL15,800/μL9,200/μL
Neu40-70%75%65%
Lym20-50%15%28%
Eos1-6%8%7%
RBC4.0-5.2×10⁶/μL4.5×10⁶/μL4.4×10⁶/μL
Hb11.5-15.0g/dL12.3g/dL12.0g/dL
Ht34-40%37.2%36.5%
PLT15-40×10⁴/μL28.5×10⁴/μL26.8×10⁴/μL
CRP<0.3mg/dL2.8mg/dL0.8mg/dL
TP6.0-8.0g/dL6.8g/dL6.7g/dL
Alb3.5-5.0g/dL3.8g/dL3.7g/dL
AST10-40U/L32U/L28U/L
ALT5-45U/L25U/L22U/L
BUN8-20mg/dL15mg/dL14mg/dL
Cr0.3-0.7mg/dL0.4mg/dL0.4mg/dL
Na135-145mEq/L138mEq/L139mEq/L
K3.5-5.0mEq/L4.2mEq/L4.3mEq/L
Cl98-108mEq/L102mEq/L103mEq/L
血液ガス分析
pH7.35-7.457.327.38
PaO₂80-100mmHg68mmHg92mmHg
PaCO₂35-45mmHg48mmHg42mmHg
HCO₃⁻22-26mEq/L24mEq/L25mEq/L
IgE<170IU/mL580IU/mL
特異的IgE
ハウスダスト<0.35UA/mL3.2UA/mL
ダニ<0.35UA/mL2.8UA/mL
卵白<0.35UA/mL1.5UA/mL
肺機能検査
%FEV₁≧80%測定不能65%
PEF≧80%測定不能70%
今後の治療方針と医師の指示

小児科医師による今後の治療方針は、喘息発作の完全な軽快と再発予防に焦点を当てている。現在の呼吸状態は改善しているが、肺機能検査の結果が基準値まで回復していないことから、引き続き内服加療を継続する方針である。ステロイド内服は徐々に減量し、10日間程度で中止する計画である。また、長期管理薬として吸入ステロイドの導入が予定されており、A氏と母親に対する吸入手技の指導が必要とされている。さらに、ピークフローメーターの使用方法と自宅での測定記録の指導も行うよう指示がある。医師からは、退院時期について「肺機能検査の値が基準値の80%以上に改善し、症状が安定していれば1週間程度で退院可能」との見通しが示されている。また、退院後は2週間後に外来受診し、その後は月1回の定期通院を予定している。家庭内のアレルゲン対策として、ハウスダスト・ダニ対策の実施と、家族の喫煙状況(特に父親)の確認と禁煙指導も必要であると指示されている。

本人と家族の想いと言動

A氏は初めての入院と喘息発作の経験から、特に夜間に「息がしにくい」と不安を訴えることがある。看護師やスタッフには緊張した様子を見せるが、母親が傍にいる時は安心した表情を見せる。治療に対しては「早く良くなりたい」という気持ちがあり、内服や処置にも徐々に協力的になってきているが、特に吸入器の使用に関しては「怖い」と抵抗を示すことがある。母親は終始付き添い、「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」と質問することが多い。特に家庭での管理方法や緊急時の対応について具体的な指示を求める場面が見られる。また、「アレルギー体質は私譲り」と自責の念を語ることもある。父親は仕事の都合で面会時間は限られているが、電話で頻繁に状態を確認しており、「家の中を徹底的に掃除し直す」と話している。家族全体として、A氏の喘息管理に対する意識は高く、特に母親は退院後の生活管理について積極的に学ぼうとする姿勢が見られる。一方で、「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」など、今後の社会生活に関する不安も表明している。


アセスメント

疾患の簡単な説明

A氏は気管支喘息重症発作およびアトピー型気管支喘息と診断されている。気管支喘息は気道の慢性炎症性疾患であり、気道の過敏性亢進状態を特徴としている。気道へ特定の刺激が加わることで、気道の平滑筋収縮、粘膜浮腫、分泌物の増加が生じ、その結果として呼吸困難や喘鳴などの発作症状が出現する。アトピー型気管支喘息はアレルギー素因を有する喘息であり、特にA氏の場合はハウスダストやダニ、卵白に対する特異的IgEが陽性であることから、これらのアレルゲンが喘息発作の誘因となっている可能性が高い。今回の発作は前日からの軽度の鼻汁や咳嗽に続いて急激に呼吸状態が悪化したことから、ウイルス感染を契機とした可能性も考えられる。

健康状態

A氏は現在6歳の小学1年生であり、入院前は活発で好奇心旺盛な性格で年齢相応の発達を示していた。今回の入院は5月10日の突然の呼吸困難と喘鳴を主訴としており、来院時には著明な陥没呼吸と努力呼吸、SpO2 89%(室内気)と重度の呼吸障害を認めていた。入院3日目の現在(5月13日)は、酸素投与を中止できるまでに回復し、バイタルサインも体温37.0℃、脈拍95回/分、呼吸数22回/分、血圧100/60mmHg、SpO2 96%(室内気)と安定している。しかし、両肺野での軽度の喘鳴は残存しており、長時間の活動後には軽度の呼吸困難が出現することがあるため、完全に回復したとはいえない状態である。血液検査データからは、入院時に認められた白血球増多(15,800/μL)、好中球増多(75%)、好酸球増多(8%)、CRP上昇(2.8mg/dL)などの炎症所見が改善傾向にあり、血液ガス分析では入院時の軽度の呼吸性アシドーシスと低酸素血症が改善している。しかし、肺機能検査では%FEV1が65%、PEFが70%と基準値である80%に達しておらず、気道閉塞が残存していることを示している。また、入院後3日目の現在まで排便がない状態が続いており、点滴や安静による活動量の低下が影響している可能性がある。

受診行動、疾患や治療への理解、服薬状況

A氏は3歳頃から風邪をひくと喘鳴を伴うことがあり、小児科で気管支拡張薬(シロップ)を処方されることはあったが、これまで入院を要するような重篤な発作はなかった。今回は症状の急激な悪化を認め、同日の救急外来を受診している。母親はキーパーソンとして「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」と質問することが多く、自宅での管理方法や緊急時の対応について具体的な指示を求めており、疾患理解と治療参加への意欲が高いと判断できる。一方で、「アレルギー体質は私譲り」と自責の念を語ることもあり、心理的サポートも必要である。

服薬については、入院中は全て看護師管理となっており、シロップ剤は比較的スムーズに内服できているが、錠剤の内服に若干の抵抗を示すことがある。また、吸入器の使用に関しては「怖い」と抵抗を示すことがあり、今後導入予定の吸入ステロイドの指導においては特に配慮が必要である。退院後は母親による服薬管理が予定されており、特に長期管理薬と発作時の対応薬の区別についての理解を深める必要がある。

身長、体重、BMI、運動習慣

A氏の身長は118cm、体重は20kgである。小児のBMIは成人と異なり年齢・性別による評価が必要であるが、身長と体重のバランスは適正範囲内にあると考えられる。運動習慣については「活発に遊び回る元気な児童であった」との情報から、日常的な身体活動は十分であったと推測されるが、具体的な運動習慣や種類、頻度については情報が不足しているため、追加の情報収集が必要である。特に喘息管理においては、適切な運動は呼吸筋の強化や全身状態の改善に寄与するため、退院後の運動指導も重要となる。母親からは「友達と同じように運動できるか」という不安も表明されており、適切な運動と喘息コントロールの関連についての指導も考慮すべきである。

呼吸に関するアレルギー、飲酒、喫煙の有無

A氏はハウスダスト(3.2UA/mL)、ダニ(2.8UA/mL)、卵白(1.5UA/mL)に対する特異的IgEが陽性であり、総IgEも580IU/mLと基準値(<170IU/mL)を大幅に上回っている。これらのアレルゲンが喘息発作の誘因となっている可能性が高く、特に家庭内のハウスダスト・ダニ対策が重要である。また、花粉症があり、春と秋に症状が悪化する傾向があるため、季節的な喘息増悪のリスク管理も必要である。

飲酒と喫煙の習慣はA氏自身にはないが、家族の喫煙状況、特に父親の喫煙状況の確認と禁煙指導が医師から指示されている。受動喫煙は小児喘息の重大な悪化因子であり、家庭内で喫煙者がいる場合は早急な対策が必要である。父親からは「家の中を徹底的に掃除し直す」という発言があるが、環境整備と併せて家庭内完全禁煙の必要性についても指導すべきである。

既往歴

A氏は生後8ヶ月からアトピー性皮膚炎の既往があり、皮膚科でステロイド外用薬を処方されている。皮膚症状の管理状況や重症度については追加情報が必要であるが、アトピー性皮膚炎と気管支喘息はいずれもアレルギー疾患であり、「アトピーマーチ」として関連性が高い。3歳頃から風邪をひくと喘鳴を伴うことがあり、小児科で気管支拡張薬(シロップ)を処方されていたが、これまで入院を要するような重篤な発作はなかった。花粉症についても春と秋に症状が悪化する傾向があり、上気道と下気道の関連性(one airway, one disease)の観点からも総合的な管理が必要である。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の健康管理上の課題として、①喘息の急性期管理と症状の安定化、②退院後の長期管理薬の正確な使用方法習得、③家庭におけるアレルゲン対策、④成長・発達と喘息管理の両立という4点が挙げられる。

看護介入としては、まず急性期の呼吸状態の観察と改善を継続し、特に活動後の呼吸状態の変化や夜間の症状増悪について注意深く観察する必要がある。次に、ピークフローメーターの使用方法や吸入ステロイドの使用法について、A氏と母親に対して年齢に応じた理解が得られるよう指導を行う。特に吸入器に対する恐怖感を軽減するために、遊び感覚を取り入れた指導や、同年代の喘息患者の成功体験を共有するなどの工夫が有効である。また、家庭内のアレルゲン対策として具体的な方法(防ダニカバーの使用、定期的な掃除、加湿器の使用、喫煙の回避など)を指導し、家族全体での取り組みを促進する。さらに、学校生活や運動に関する不安を軽減するために、喘息発作の前兆症状の見分け方や予防的な吸入薬の使用方法などを具体的に指導し、A氏が年齢相応の活動を安全に行えるようサポートする。

今後も観察を継続すべき点としては、①肺機能検査値の改善状況、②内服薬・吸入薬への適応状況、③排便状況の変化、④夜間の睡眠状態と呼吸症状の関連性が挙げられる。また、母親の自責の念に対する心理的サポートや、家族全体での喘息管理に対する理解と協力体制の構築も重要な観察点である。

食事と水分の摂取量と摂取方法

A氏は入院前、年齢相応の食事摂取ができており、食欲は良好であった。具体的な食事量や水分摂取量についての詳細な情報はないため、追加の情報収集が必要である。入院後は呼吸状態悪化のため初日は点滴のみで絶食であったが、2日目から流動食を開始し、現在は小児食を7割程度摂取できている。呼吸状態の改善に伴い、食欲も徐々に回復傾向にある。しかし、現在の摂取カロリーや水分摂取量が必要量を満たしているかの評価が必要である。特に気管支喘息の急性期では代謝亢進状態にあり、エネルギー消費が増大しているため、十分なカロリー摂取が重要である。また、呼吸困難感や咳嗽の持続により食事に集中できない可能性もあり、食事環境の調整や食事時間の配慮も必要であろう。水分摂取については、十分な水分補給が気道分泌物の粘稠度を下げ、排出を促進するため、積極的な摂取を促すことが望ましい。

好きな食べ物/食事に関するアレルギー

A氏は好き嫌いがあるとの情報があるが、具体的にどのような食品を好み、あるいは嫌うかについての詳細情報はないため、追加の情報収集が必要である。食事に関するアレルギーとしては卵白アレルギーがあり、卵料理は除去している。特異的IgE検査では卵白に対して1.5UA/mLと陽性を示している。入院中の食事提供においても卵除去食を継続し、誤って卵製品が提供されることがないよう注意が必要である。また、退院後の食事管理においても、保護者に対し卵製品を含む食品の情報提供や代替食品の紹介を行うことが重要である。さらに、アレルギー症状の程度や過去の反応歴についても情報収集し、誤食時の対応についても指導する必要がある。

身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル

A氏の身長は118cm、体重は20kgである。6歳男児の標準的な成長曲線(パーセンタイル)と比較する必要があるが、年齢相応の体格と推測される。BMIは14.4kg/m²となるが、小児のBMIは成人とは異なる評価基準が用いられるため、年齢別・性別のBMIパーセンタイルでの評価が必要である。必要栄養量については、基礎代謝量に身体活動レベルと成長因子、さらに現在の疾患状態を考慮して算出する必要がある。6歳男児の推定エネルギー必要量は約1,550kcal/日程度であるが、気管支喘息の急性期では代謝亢進状態にあるため、通常より10〜20%増の1,700〜1,850kcal/日程度が必要と考えられる。たんぱく質摂取量は体重1kgあたり1.2〜1.5g/日(24〜30g/日)が目安となる。

身体活動レベルについては、入院前は「活発に遊び回る元気な児童であった」という情報から、活発な身体活動レベルと推測される。しかし、入院中は呼吸状態の影響から活動が制限されており、「長時間の活動後に軽度の呼吸困難が出現することがある」ため、現在は低〜中程度の活動レベルにとどまっていると考えられる。退院後の活動レベルについては、喘息のコントロール状態に応じて段階的に増やしていく指導が必要である。

食欲・嚥下機能・口腔内の状態

A氏の入院前の食欲は良好であり、現在も呼吸状態の改善に伴い食欲は徐々に回復傾向にある。嚥下機能に関しては「嚥下状態に問題はなく」との情報があり、器質的な嚥下障害はないと考えられる。しかし、気管支喘息の急性期には呼吸と嚥下の協調が乱れる可能性があり、特に呼吸数が増加している状態では誤嚥のリスクが高まる可能性がある。現在の呼吸数は22回/分と改善しているが、食事中の呼吸状態の観察は継続する必要がある。

口腔内の状態に関する情報は提供されていないため、追加の情報収集が必要である。特に、ステロイド投与中は口腔カンジダ症のリスクが高まるため、口腔内のチェックと適切な口腔ケアの指導が重要である。また、吸入ステロイドの導入が予定されているため、吸入後の含嗽の重要性についても指導する必要がある。

嘔吐・吐気

A氏の嘔吐や吐気に関する情報は提供されていないため、追加の情報収集が必要である。気管支喘息の急性発作時には咳嗽が激しくなることで嘔吐を誘発する可能性があるほか、気道分泌物の嚥下による吐気も起こりうる。また、使用している薬剤(特にテオフィリン製剤)による消化器症状の出現の可能性もあるため、薬剤の副作用としての消化器症状の有無についても確認が必要である。

皮膚の状態、褥創の有無

A氏は生後8ヶ月からアトピー性皮膚炎の既往があり、現在もベタメタゾン軟膏0.05%を皮疹部に1日2回塗布している。具体的な皮膚症状の部位や重症度についての詳細情報はないが、アトピー型気管支喘息との関連から、皮膚バリア機能の異常と全身的なアレルギー素因を持つと考えられる。皮膚の乾燥や掻痒感などが強い場合は、適切な保湿剤の使用や入浴方法の指導も必要となる。

褥創については情報がないが、小児であり活動性も徐々に回復していることから、現時点での褥創発生リスクは低いと考えられる。しかし、ステロイド投与による皮膚の脆弱化や、発汗増加による湿潤環境の形成などが皮膚トラブルのリスク因子となる可能性があるため、皮膚の観察は継続する必要がある。特に、点滴刺入部周囲の皮膚状態や、固定テープによる皮膚トラブルの有無についての観察が重要である。

血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na.K、TG、TC、HbA1C、BS)

A氏の血液データを評価すると、まず栄養状態の指標であるAlbは3.8g/dL(入院時)、3.7g/dL(5月13日)と基準値(3.5-5.0g/dL)の下方に位置しているが、大きな低下はみられない。TPも6.8g/dL(入院時)、6.7g/dL(5月13日)と基準値(6.0-8.0g/dL)内である。これらの値から、現時点では明らかな低栄養状態ではないと判断できる。

貧血の指標であるRBCは4.5×10⁶/μL(入院時)、4.4×10⁶/μL(5月13日)、Hbは12.3g/dL(入院時)、12.0g/dL(5月13日)、Htは37.2%(入院時)、36.5%(5月13日)といずれも基準値内であり、貧血は認められない。

電解質バランスについては、Naは138mEq/L(入院時)、139mEq/L(5月13日)、Kは4.2mEq/L(入院時)、4.3mEq/L(5月13日)、Clは102mEq/L(入院時)、103mEq/L(5月13日)と、いずれも基準値内で安定している。点滴管理から経口摂取への移行が進んでいるが、電解質バランスは維持されている。

TG、TC、HbA1C、BSについての情報は提供されていないため、必要に応じて追加検査を検討する。ステロイド療法中は血糖値上昇のリスクがあるため、特に高用量・長期使用の場合は血糖モニタリングが推奨される。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の栄養-代謝に関する健康管理上の課題として、①呼吸状態改善に伴う適切な栄養摂取の確保、②卵アレルギーへの対応と誤食防止、③アトピー性皮膚炎のスキンケア、④ステロイド療法に伴う代謝変化への対応の4点が挙げられる。

看護介入としては、まず栄養摂取状況のモニタリングを継続し、食事摂取量の記録と必要栄養量との比較評価を行う。小児食7割程度の摂取から全量摂取へと改善するよう、食事環境の調整や、好みの食品を取り入れるなどの工夫を行う。また、水分摂取を促進するために飲みやすい温度や味の工夫、楽しい雰囲気での提供などを心がける。

卵アレルギーに関しては、入院中の食事提供において誤食防止を徹底するとともに、母親に対して卵を含む食品のリストや、食品表示の見方、代替食品の情報提供を行う。また、誤食時の症状と対応方法についても指導する。

アトピー性皮膚炎のスキンケアについては、現在の皮膚状態を詳細に評価した上で、適切な保湿剤の使用方法や、入浴方法、衣類の選択などについて指導する。ステロイド外用薬の適切な使用方法についても再確認し、過少使用や過剰使用を防ぐための指導を行う。

ステロイド療法に伴う代謝変化への対応としては、血糖値の変動や電解質バランスの変化に注意し、必要に応じて追加検査を検討する。また、長期的なステロイド使用による骨代謝への影響も考慮し、適切なカルシウム摂取や運動についての指導も視野に入れる。

観察を継続すべき点としては、①食事摂取量と水分摂取量の推移、②呼吸状態と食事摂取の関連性、③口腔内状態とステロイド関連の副作用、④皮膚状態の変化、⑤成長に伴う栄養必要量の変化が挙げられる。特に退院に向けては、家庭での食事管理や栄養バランスについての具体的な指導が重要であり、母親の理解度に応じた個別的な指導計画を立案する必要がある。

排便と排尿の回数と量と性状

A氏は入院前、排便については1日1回の規則的な排便習慣があり、排泄に関する問題はなく自立して排泄できていた。しかし、現在の入院中は点滴や安静による活動量の低下から、排便間隔が延長しており、入院後3日目の現在まで排便がない状態が続いている。排便の性状や量に関する詳細情報は記載されていないため、入院前の通常の排便の性状(硬さ、色調、量など)についての追加情報収集が必要である。便秘の状態が続いているため、腹部症状(腹痛、腹部膨満感など)の有無についても確認が必要である。

排尿については、1日5〜6回程度あり、問題なく経過している。排尿量や性状(色調、濁りの有無など)についての詳細情報は記載されていないため、追加の情報収集が必要である。特に、呼吸状態の悪化時には低酸素や交感神経緊張による腎血流の変化から排尿量が減少する可能性があり、呼吸状態の改善に伴う尿量の変化についても評価が必要である。また、使用中の薬剤(特にステロイド)による多尿の可能性もあるため、観察を継続する必要がある。

下剤使用の有無

下剤の使用についてはまだ行っていないが、水分摂取と食事摂取量の増加を促していると記載されている。排便がない状態が3日間継続しているため、今後も排便がない場合は下剤の使用を検討する必要があるが、小児への下剤投与は成人と異なる配慮が必要である。下剤の種類、投与量、投与方法については年齢や体重、既往歴などを考慮して慎重に選択する必要がある。特に、刺激性下剤の長期使用は腸管機能の低下を招く可能性があるため、まずは食物繊維の摂取増加や水分摂取の促進、適度な運動の奨励など非薬物的アプローチを優先することが望ましい。

in-outバランス

In-outバランスに関する具体的な情報は記載されていないため、追加の情報収集が必要である。入院初日は点滴のみで絶食であったが、2日目から流動食を開始し、現在は小児食を7割程度摂取できている状況である。点滴の種類や投与量、現在も継続しているかどうかについての情報がなく、また経口摂取量についても具体的な量の記載がないため、正確なin-outバランスの評価は困難である。特に小児では体液バランスの変動が成人より大きく、脱水や過剰輸液のリスクが高いため、正確な摂取量と排泄量の記録と評価が重要である。体重の日々の変動も体液バランスの良い指標となるため、定期的な体重測定も有用である。

排泄に関連した食事・水分摂取状況

A氏は入院初日は点滴のみで絶食であったが、2日目から流動食を開始し、現在は小児食を7割程度摂取できている。食物繊維の摂取状況や好みの食品などの詳細情報はないが、排便促進のためには食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、全粒穀物など)の摂取を増やすことが有効である。小児の場合、食物繊維の過剰摂取は栄養バランスを崩す可能性もあるため、年齢に応じた適切な量を考慮する必要がある。

水分摂取については「水分摂取と食事摂取量の増加を促している」と記載されているが、具体的な摂取量や種類、摂取方法についての詳細情報はない。小児の適切な水分摂取量は体重や活動量によって異なるが、A氏の場合、体重20kgであることから、1日約1,000〜1,200mLの水分摂取が目安となる。また、呼吸状態の改善に伴う発汗増加や、気道分泌物の排出促進のためにも十分な水分摂取が重要である。水分摂取を促進するためには、好みの飲み物を提供する、適切な温度で提供する、楽しい雰囲気で飲水を促すなどの工夫が効果的である。

安静度・バルーンカテーテルの有無

A氏の現在の安静度については、「病室内の歩行や移動は可能になっている」と記載されており、呼吸状態の改善に伴い活動範囲が拡大していることが確認できる。ただし、「長時間の活動後に軽度の呼吸困難が出現することがある」ため、活動と休息のバランスに配慮が必要である。排泄行動においても、トイレまでの移動や排泄動作による酸素消費の増加が呼吸状態に影響を与える可能性があるため、排泄時の呼吸状態の観察が重要である。

バルーンカテーテルの留置に関する情報は記載されていないが、「排尿は問題なく、1日5〜6回程度ある」「排尿・排便は自立している」との記載から、バルーンカテーテルは留置されていないと推測される。自立排泄が可能な状態であり、特に問題はないと考えられる。ただし、「病院のトイレに慣れていないため、母親の介助を好む傾向がある」ため、環境の変化による心理的影響も考慮する必要がある。

腹部膨満・腸蠕動音

腹部膨満や腸蠕動音に関する情報は記載されていないため、追加の情報収集が必要である。入院後3日目の現在まで排便がない状態が続いているため、腹部膨満感や腹痛の有無、腸蠕動音の亢進や減弱などを評価することが重要である。特に小児の場合、腹部症状の訴えが曖昧であることが多く、観察による客観的評価が重要となる。定期的な腹部の視診、聴診、触診を行い、腹部状態の変化を評価する必要がある。

気管支喘息の症状(特に呼吸困難時)により、腹筋を使った排便動作が困難になる可能性もあるため、呼吸状態と排便状況の関連性についても注意深く観察する必要がある。また、ステロイド投与による腸管蠕動への影響(特に腸管運動の低下)も考慮する必要がある。

血液データ(BUN、Cr、GFR)

A氏の腎機能に関する血液データでは、BUNは入院時15mg/dL、5月13日には14mg/dLであり、基準値(8-20mg/dL)内で安定している。Crも入院時0.4mg/dL、5月13日も0.4mg/dLと変化なく、基準値(0.3-0.7mg/dL)内である。GFRについては具体的な数値の記載はないが、BUNとCrの値から推測すると、腎機能は正常範囲内と考えられる。ただし、小児のGFR評価には年齢や体表面積を考慮した計算式が必要であり、成長の段階によって正常値も変動するため、小児科領域での専門的評価が望ましい。

電解質バランスについては、Naは入院時138mEq/L、5月13日には139mEq/L、Kは入院時4.2mEq/L、5月13日には4.3mEq/L、Clは入院時102mEq/L、5月13日には103mEq/Lと、いずれも基準値内で安定している。これらの値から、現時点では腎機能障害や電解質異常は認められず、体液バランスも比較的良好に保たれていると考えられる。ただし、ステロイド投与による電解質バランスへの影響(特にNaの貯留やKの排泄促進)についても注意が必要である。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の排泄に関する健康管理上の課題として、①入院後の排便がない状態の改善、②活動量の低下による腸管蠕動低下への対策、③適切な水分・食物繊維摂取の促進、④呼吸状態と排泄行動のバランスの確保という4点が挙げられる。

看護介入としては、まず排便状況の詳細な観察と記録を継続し、腹部状態(膨満感、腸蠕動音など)を定期的に評価する。3日間排便がない状態が続いているため、非薬物的アプローチとして水分摂取の促進、食物繊維摂取の増加、可能な範囲での活動量増加(病室内歩行や軽い体操など)を実施する。特に水分摂取については、好みの飲み物を提供するなど工夫し、1日の目標摂取量(約1,000〜1,200mL)を設定して摂取状況を記録する。

活動量の増加については、呼吸状態の安定度を評価しながら、徐々に活動範囲を拡大していく。特に排便を促進するための腹部マッサージや温罨法なども、呼吸状態に配慮しながら実施を検討する。また、排便時の姿勢や環境(プライバシーの確保、リラックスできる環境など)にも配慮し、特に病院という不慣れな環境での排泄不安を軽減するための支援を行う。

排尿については現時点で問題はないが、尿量や性状の観察を継続し、特にステロイド投与による多尿や、感染症による尿混濁などの変化がないかを注意深く観察する。また、in-outバランスの正確な評価のために、摂取量(経口・点滴)と排泄量(尿・便・その他)の詳細な記録を行う。

母親への指導としては、退院後の排泄管理について、規則的な排便習慣の重要性、適切な水分・食物繊維摂取の方法、腸内環境を整える食品の選択などについて具体的に説明する。特に、喘息発作時の排便困難や便秘への対応方法についても指導し、必要に応じて小児用緩下剤の適切な使用方法についても説明する。

今後も観察を継続すべき点としては、①排便の有無と性状、②腹部症状の変化、③水分・食事摂取量との関連性、④呼吸状態の変化と排泄行動への影響、⑤薬剤(特にステロイド)による排泄への影響が挙げられる。特に排便が4日以上ない場合は、医師と相談の上、適切な緩下剤の使用を検討する必要がある。

ADLの状況、運動機能、運動歴、安静度、移動/移乗方法

A氏は入院前、日常生活動作(ADL)に制限はなく、活発に遊び回る元気な児童であった。年齢相応の発達を示しており、6歳児として自立した基本的ADLを獲得していたと考えられる。具体的な運動歴や好みの遊びについての詳細情報はないため、追加の情報収集が必要である。特に、喘息管理においては運動誘発性喘息の有無や、運動時の症状発現パターンを把握することが重要であるため、どのような活動で症状が誘発されやすいか、発症前にどのような前駆症状があるかなどの情報を収集する必要がある。

入院後は呼吸状態の悪化により、入院初期には活動制限があったと推測されるが、現在(入院3日目)は呼吸状態の改善に伴い、病室内の歩行や移動は可能になっている。ただし、長時間の活動後に軽度の呼吸困難が出現することがあるため、活動と休息のバランスに配慮が必要である。現時点での具体的な安静度の指示については明記されていないが、呼吸状態の安定度に応じた段階的な活動拡大が望ましいと考えられる。

排泄に関しては自立しているが、病院のトイレに慣れていないため母親の介助を好む傾向があり、環境変化による心理的影響も考慮する必要がある。入浴は現在シャワー浴に制限されており、母親の介助のもと実施している。衣類の着脱は基本的に自分でできるが、体力消耗を考慮して一部介助している状況である。これらの情報から、現時点でのADLは部分介助レベルであり、特に活動による呼吸状態への影響を考慮した援助が必要である。入院中の転倒歴はないとの情報があるが、転倒リスク評価については別項で詳述する。

移動・移乗方法については具体的な記載はないが、病室内の歩行や移動が可能であることから、独歩での移動が基本と推測される。ただし、呼吸状態の変動や治療(点滴など)による制約が移動に影響を与える可能性があるため、移動時の安全確保と呼吸状態の観察が重要である。

バイタルサイン、呼吸機能、職業、住居環境

A氏の来院時(5月10日)のバイタルサインは、体温38.2℃、脈拍130回/分、呼吸数35回/分と頻呼吸を認め、血圧は105/65mmHgであった。SpO2は室内気で89%と低下しており、頬と口唇周囲にチアノーゼを認め、著明な陥没呼吸と努力呼吸を呈していた。これらの所見から、来院時は重度の呼吸障害状態であったことが確認できる。

現在(5月13日)のバイタルサインは、体温37.0℃、脈拍95回/分、呼吸数22回/分、血圧100/60mmHg、SpO2は室内気で96%と改善している。呼吸音は両肺野で軽度の喘鳴を聴取するが、入院時と比較して明らかに減少している。これらの所見から、呼吸状態は改善傾向にあるが、完全に正常化したわけではなく、まだ軽度の気道閉塞が残存していると考えられる。

呼吸機能検査では、入院時は測定不能であったが、5月13日の検査では%FEV1が65%、PEFが70%と、いずれも基準値(≧80%)を下回っている。この結果から、客観的な呼吸機能の指標は改善傾向にあるものの、まだ気道閉塞が残存しており、今後も呼吸機能の改善を目指した治療継続が必要である。特に小児の場合、呼吸機能検査の実施には協力が必要であり、正確な評価が難しい場合もあるため、客観的な検査値と臨床症状の両面から総合的に評価することが重要である。

職業については、A氏は6歳の小学1年生である。学校生活での活動状況や、特に体育の授業や休み時間の遊びなどでの症状出現について、詳細情報を収集することが重要である。また、「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」という母親の不安も表明されていることから、退院後の学校生活における活動管理や、教師への情報提供についても考慮する必要がある。

住居環境については詳細な情報が不足しているため、追加の情報収集が必要である。特に、住居の構造(集合住宅か一戸建てか、築年数など)、寝室の環境(寝具の種類、カーペットの有無など)、ペットの有無、カビやホコリの存在、喫煙者の有無などは、アレルギー性喘息の管理において重要な情報である。父親からは「家の中を徹底的に掃除し直す」という発言があることから、住環境の改善への意欲は見られるが、具体的で効果的な環境整備の方法について指導が必要であろう。

血液データ(RBC、Hb、Ht、CRP)

A氏の血液データを評価すると、RBCは入院時4.5×10⁶/μL、5月13日は4.4×10⁶/μLと基準値(4.0-5.2×10⁶/μL)内である。Hbは入院時12.3g/dL、5月13日は12.0g/dLと基準値(11.5-15.0g/dL)内だが、若干の低下傾向を示している。Htも入院時37.2%、5月13日は36.5%と基準値(34-40%)内だが、同様に軽度低下している。これらの値から、明らかな貧血はないが、入院中のわずかな赤血球系の減少傾向が見られる。この変化は採血による影響や、急性期の炎症反応に伴う変化、水分バランスの変動などが影響している可能性がある。現時点では臨床的に問題となるレベルではないが、今後の推移を観察する必要がある。

CRPは入院時2.8mg/dL、5月13日は0.8mg/dLと、基準値(<0.3mg/dL)を上回っているものの、明らかな改善傾向を示している。これは呼吸器感染や炎症の軽減を反映していると考えられる。白血球数も入院時15,800/μLから5月13日には9,200/μLへと減少し、好中球比率も75%から65%へと低下していることから、全身的な炎症反応が改善していることが確認できる。また、好酸球比率は入院時8%、5月13日は7%と、基準値(1-6%)をやや上回っており、アレルギー反応の持続を示唆している。これらの血液データは、気管支喘息の急性増悪からの回復過程を示していると考えられるが、まだ完全に正常化していないことも示している。

転倒転落のリスク

A氏の転倒転落リスクを評価すると、年齢的に6歳という小児であること自体がリスク因子となる。小児は成長発達段階にあり、危険認知能力や判断力が十分に発達していないため、環境変化への適応が難しく、転倒リスクが高まる。特に病院という不慣れな環境、点滴や医療機器の存在、体調不良による身体能力の一時的低下などが転倒リスクを増加させる要因となる。

しかし、A氏は「入院中の転倒歴はない」との情報があり、現時点での転倒予防対策が適切に機能していると考えられる。「母親が終始付き添い」をしている状況も、見守りによる転倒予防に寄与していると考えられる。ただし、呼吸状態の改善に伴い活動範囲が拡大することで、新たな転倒リスクが生じる可能性もある。特に、「長時間の活動後に軽度の呼吸困難が出現することがある」ため、活動による疲労や突然の症状悪化が転倒につながる可能性も考慮する必要がある。

また、使用中の薬剤(特に抗ヒスタミン薬のクレマスチン)による眠気や注意力低下が転倒リスクとなる可能性もある。夜間の排泄行動時や、睡眠導入後の覚醒時などは特に注意が必要である。病室内の環境整備(障害物の除去、適切な照明、ベッド柵の使用など)や、活動時の適切な見守りと支援が継続的に必要である。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の活動-運動に関する健康管理上の課題として、①呼吸状態の安定と活動耐性の向上、②適切な活動と休息のバランスの確保、③転倒リスクの予防、④退院後の学校生活における活動管理の4点が挙げられる。

看護介入としては、まず呼吸状態のモニタリングを継続し、活動前後のバイタルサイン(特に呼吸数、SpO2)や自覚症状の変化を詳細に評価する。活動耐性を段階的に向上させるために、呼吸状態に応じた活動計画を立案し、短時間の活動から始めて徐々に活動時間と強度を増加させる。活動中は呼吸状態の悪化兆候(呼吸数増加、喘鳴、陥没呼吸、チアノーゼなど)に注意し、必要に応じて休息を取り入れる。

呼吸リハビリテーションの観点から、適切な呼吸法(腹式呼吸や口すぼめ呼吸など)の指導や、気道クリアランスを促進する体位ドレナージなどの実施も有効である。ただし、小児の場合は年齢に応じた理解度を考慮し、遊びの要素を取り入れた方法で指導することが重要である。

転倒予防については、環境整備を徹底し、特に夜間のトイレ移動時や薬剤投与後の注意力低下時などにリスクが高まることを家族にも説明し、協力を得る。また、点滴やモニター類の配置にも配慮し、活動の妨げにならないよう工夫する。

退院に向けては、家庭や学校での活動管理について具体的な指導を行う。特に、運動誘発性喘息の予防として、適切なウォーミングアップの方法や、症状出現時の対応(休息の取り方、発作時の薬剤使用方法など)を母親と共に確認する。また、学校の教師に対する情報提供用の資料作成や、必要に応じて学校訪問看護の導入なども検討する。

観察を継続すべき点としては、①日々の活動量と呼吸状態の変化、②呼吸機能検査値の推移、③薬剤(特に吸入ステロイド)の効果と副作用、④睡眠状態と活動耐性の関連性が挙げられる。小児の場合、自覚症状の訴えが曖昧であることも多いため、客観的な観察と評価が特に重要である。また、成長発達段階にある小児の特性を考慮し、年齢に応じた説明と指導を行うとともに、家族の理解と協力を得ることが治療効果を高める上で不可欠である。

睡眠時間、熟眠感、睡眠導入剤使用の有無

A氏は入院前、21時に就寝し、朝7時頃に起床する規則正しい生活リズムを保っていた。この睡眠パターンは6歳児として適切であり、発達段階に応じた十分な睡眠時間(約10時間)が確保されていたと考えられる。熟眠感に関する具体的な情報は記載されていないが、日中の活動状況から判断すると、「活発に遊び回る元気な児童であった」とあるため、質的にも適切な睡眠が取れていたと推測される。ただし、入眠時に母親が傍にいることを好む傾向があり、就寝儀式や安心感の獲得に母親の存在が重要な役割を果たしていることが窺える。これは6歳児の発達段階において一般的に見られる特徴であるが、依存度の程度や、母親不在時の対応についての追加情報があれば、より詳細な評価が可能となる。

入院後は、呼吸困難による不安と病院環境への不適応から、入眠困難と中途覚醒が見られた。特に夜間に咳嗽が増悪する傾向があり、断続的な睡眠となっている。これは気管支喘息の特徴的な症状パターンであり、夜間の気道過敏性の亢進や副交感神経優位への移行、就寝による体位変化、気道分泌物の貯留などが影響していると考えられる。また、入院という環境変化やストレス、治療に伴う不安などの心理的要因も睡眠の質に影響を与えていると推測される。さらに、治療薬(特にステロイドやβ刺激薬)の中には中枢神経系を刺激し、不眠や興奮を誘発する可能性のあるものもあるため、薬剤の影響についても考慮する必要がある。

睡眠導入剤については、「眠剤は使用せず、環境調整と母親の付き添いで対応している」との情報がある。小児、特に急性期の喘息発作患者に対しては、呼吸抑制のリスクを考慮して睡眠導入剤の使用は慎重に検討されるべきであり、現時点での非薬物的アプローチは適切と考えられる。環境調整の具体的内容(室温、照明、音環境など)や、母親の付き添いの状況(添い寝か見守りかなど)についての詳細情報があれば、より効果的な睡眠支援の方法を検討できる。

日中/休日の過ごし方

A氏の入院前の日中および休日の過ごし方に関する具体的な情報は限られているため、追加の情報収集が必要である。「活発に遊び回る元気な児童であった」という記述から、一般的な6歳児同様に活発な遊びや活動を好むことが推測される。小学1年生であることから、平日は学校で過ごし、放課後や休日の過ごし方、特に好きな遊びや活動、家族との時間の使い方などについての情報収集が重要である。特に気管支喘息患児の場合、どのような環境や活動で症状が誘発されやすいか、あるいは緩和されるかを把握することが、退院後の生活指導において有用である。

入院中の日中の過ごし方については詳細な記載がないが、呼吸状態の改善に伴い「病室内の歩行や移動は可能になっている」状況である。ただし、「長時間の活動後に軽度の呼吸困難が出現することがある」ため、活動と休息のバランスに配慮が必要である。入院中の小児にとって、日中の適切な活動と刺激は、夜間の良質な睡眠を促進するとともに、精神的健康や発達支援の観点からも重要である。特に、入院という環境や体調不良によるストレスを軽減するために、年齢に応じた遊びや学習活動、コミュニケーションの機会を提供することが望ましい。

また、喘息発作による活動制限や、不規則な睡眠パターンが日中の活動レベルにどのような影響を与えているかについても評価する必要がある。睡眠不足や質の低下による日中の倦怠感、集中力の低下、イライラなどの症状は、喘息の症状管理や治療への取り組みにも影響を与える可能性がある。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の睡眠-休息に関する健康管理上の課題として、①夜間の咳嗽による睡眠中断の改善、②入院環境への適応促進と不安の軽減、③日中の適切な活動と休息のバランス確保、④退院後の規則正しい睡眠習慣の維持という4点が挙げられる。

看護介入としては、まず夜間の咳嗽コントロールを強化するために、就寝前の内服薬(特にモンテルカストやクレマスチン)の確実な投与と効果確認を行う。また、就寝時の体位を工夫し、上半身を少し挙上した姿勢を促すことで気道分泌物の排出を促進し、咳嗽を軽減することができる。必要に応じて、就寝前に温かい飲み物の摂取や、スチーム吸入などを実施し、気道の加湿を図ることも有効である。

入院環境への適応を促進するために、できるだけ自宅での睡眠環境に近づける工夫(好みの寝具やぬいぐるみの持参、適切な室温や照明の調整など)を行う。また、入眠時の儀式(絵本の読み聞かせや、静かな会話など)を継続することで、安心感を提供する。特に母親の付き添いが重要な要素となっているため、面会時間や付き添い方法について柔軟な対応を検討する。同時に、医療スタッフとの信頼関係構築を図り、母親不在時でも安心して過ごせる環境を徐々に整えていくことも重要である。

日中の活動と休息のバランスについては、呼吸状態のモニタリングを継続しながら、年齢に応じた遊びや学習活動を取り入れる。特に、呼吸困難を誘発しにくい静的な活動(塗り絵、読書、ブロック遊びなど)と、呼吸機能改善に寄与する活動(呼吸体操、軽い運動など)をバランスよく組み合わせることが望ましい。活動後は適切な休息時間を設け、オーバーワークによる呼吸状態悪化を予防する。また、日中の過ごし方と夜間の睡眠状態の関連性を観察し、効果的な日課の確立を目指す。

退院に向けては、規則正しい睡眠習慣の重要性について母親に説明し、特に喘息管理における睡眠の役割についての理解を深める。夜間の症状悪化の兆候とその対応方法、予防的な吸入薬の使用タイミングなどについても具体的に指導する。また、学校再開に向けた生活リズムの調整や、疲労回復のための休息の取り方についてもアドバイスを提供する。

今後も観察を継続すべき点としては、①夜間の呼吸状態と咳嗽の頻度・強度、②睡眠時間と質(入眠状況、中途覚醒、熟眠感など)、③日中の活動量と疲労度、④治療薬(特にステロイド)の睡眠への影響、⑤環境要因(音、光、温度など)と睡眠の関連性が挙げられる。これらの観察結果を総合的に評価し、個別性に配慮した睡眠支援計画を継続的に調整していくことが重要である。

意識レベル、認知機能

A氏は入院時、重度の呼吸困難状態であったものの、意識レベルの低下に関する記載はない。急性期の低酸素状態(SpO2 89%)により一時的な意識レベルの変動があった可能性も考えられるが、現在の意識状態は清明であると推測される。具体的な意識レベル評価(Japan Coma Scale や Glasgow Coma Scale など)の記載はないため、より詳細な情報収集が必要である。

認知機能については、「年齢相応の発達で認知機能に問題はない」との記載があり、6歳児として適切な認知発達を示していると考えられる。小学1年生として学校生活を送っており、基本的な言語理解、数概念、記憶力などの認識機能は獲得していると推測される。ただし、疾患の理解や治療への認識については、発達段階を考慮した評価が必要である。6歳という年齢は、Piagetの認知発達理論では前操作期から具体的操作期への移行期にあたり、論理的思考が発達し始める時期である。しかし、抽象的な概念理解には限界があり、喘息という疾患や治療の必要性について、年齢に応じた具体的な説明と理解の確認が重要である。特に吸入器の使用に関しては「怖い」と抵抗を示すことがあるとの情報があり、処置や治療に対する恐怖心の評価と対応が必要である。

聴力、視力

A氏の聴力と視力については、「視力と聴力は正常」との記載があり、感覚機能に問題はないと判断できる。ただし、具体的な視力測定値や聴力検査結果の記載はなく、これらが専門的に評価されたものか、日常生活上の観察から判断されたものかは不明である。6歳児は視力発達途上であり、平均的な視力は0.7〜1.0程度とされている。また、聴力も成人レベルに達しているが、選択的聴取や注意の持続などの聴覚処理能力はまだ発達段階にある。

感覚機能が正常であることは、コミュニケーションや情報提供、治療教育において重要であり、視覚的・聴覚的な教材を効果的に活用できる可能性を示している。特に吸入手技の指導やピークフローメーターの使用方法の説明など、視覚的デモンストレーションと聴覚的説明を組み合わせた指導が有効と考えられる。また、6歳児は視覚的な情報処理が優位であることが多いため、絵や図を用いた説明や、模型などを使った具体的な指導が理解を促進する可能性がある。

認知機能

A氏の認知機能は年齢相応の発達を示しているとの記載があるが、具体的な認知能力の詳細(言語理解、表現能力、空間認識、記憶力など)については追加情報が必要である。6歳児の一般的な認知特性として、自己中心性がまだ残存しているものの、他者の視点を理解し始める時期にある。また、具体的な事象についての論理的思考が可能になるが、抽象的な概念理解には限界があり、時間概念も発達途上である。これらの発達段階を考慮した対応が必要である。

認知機能に関連する重要な側面として、病気や治療に対する理解度の評価が挙げられる。A氏は「早く良くなりたい」という気持ちを持ち、徐々に治療に協力的になってきているとの記載があり、病状改善への意欲と理解が形成されつつあると考えられる。ただし、長期的な疾患管理の概念(予防行動の重要性や定期的な内服の必要性など)の理解は、6歳児にとって難しい可能性があり、発達段階に応じた説明と教育的アプローチが求められる。

また、性格的特徴として「活発で好奇心旺盛であるが、やや神経質な一面もある」との記載があり、この特性が認知的側面にも影響している可能性がある。好奇心旺盛な性格は新しい知識や技術の習得にプラスに働く一方、神経質な傾向は不安や恐怖を強く感じる要因となり得る。これらの個人特性を考慮した関わりが重要である。

不安の有無、表情

A氏は初めての入院と喘息発作の経験から、特に夜間に「息がしにくい」と不安を訴えることがあると記載されている。呼吸困難感は強い不安や恐怖を引き起こす症状であり、特に小児にとっては対処が難しい体験となる。こうした身体感覚と心理的不安の相互作用により、症状の悪循環が生じる可能性もある。看護師やスタッフには緊張した様子を見せるとの記載もあり、医療環境や医療者に対する不安も存在すると考えられる。

表情については、「母親が傍にいる時は安心した表情を見せる」との記載があり、母親の存在が精神的安定に重要な役割を果たしていることが窺える。この観察結果は、6歳児の発達段階として適切であり、母親という愛着対象からの情緒的安全基地を必要としている状態と理解できる。逆に言えば、母親が不在の際には不安が高まる可能性があり、そうした状況下での支援方法を検討する必要がある。

治療に対する不安としては、特に吸入器の使用に関して「怖い」と抵抗を示すことがあるとの記載がある。これは機器の見た目や使用感、薬剤の味や感覚などに対する恐怖反応である可能性が高く、年齢相応の反応と考えられる。このような治療に対する恐怖や不安は、治療アドヒアランスに直接影響するため、適切な対応が必要である。

また、両親も「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」など、疾患管理や今後の生活に関する不安を表明しており、家族全体の心理的サポートも重要である。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の認知-知覚に関する健康管理上の課題として、①呼吸困難感に伴う不安への対処、②年齢に応じた疾患理解と自己管理能力の育成、③治療(特に吸入器)に対する恐怖の軽減、④家族の不安軽減と適切な情報提供という4点が挙げられる。

看護介入としては、まず呼吸困難感に伴う不安への対処として、症状出現時の対応方法を年齢に合わせて説明し、呼吸法や姿勢の工夫などの自己対処スキルを指導する。例えば、「ゆっくり大きく息を吸って、口をすぼめてゆっくり息を吐く」といった簡単な呼吸法を、遊びの要素を取り入れながら練習する。また、不安時には看護師を呼ぶこと、必要な場合はすぐに対応することを伝え、安心感を提供する。

年齢に応じた疾患理解を促進するために、絵本やイラスト、模型などの視覚教材を活用し、喘息のメカニズムを分かりやすく説明する。例えば、気管支を「呼吸の通り道」として描写し、喘息発作を「通り道が狭くなって息が通りにくくなる状態」と具体的に説明するなど、6歳児の認知レベルに合わせた表現を工夫する。また、自己管理能力の育成に向けて、ピークフローメーターの使用方法を段階的に指導し、測定結果を視覚的に記録(例:色分けしたシールを貼るなど)することで、自己管理への参加意識を高める。

吸入器に対する恐怖の軽減には、まず脅威を感じさせない形で機器に慣れる機会を提供する。例えば、吸入器の模型やプラセボを使って遊びの中で触れる、好きなキャラクターのシールを貼るなどの工夫をする。また、吸入手技の習得においては、ステップバイステップの指導と、成功体験の積み重ねを重視する。特に上手にできた際には具体的に褒め、自信を育むことが重要である。

家族の不安軽減と情報提供については、母親の「アレルギー体質は私譲り」という自責の念に対して、喘息の発症には様々な因子が関与することを説明し、過度の自責感を軽減する。また、家庭での具体的な管理方法や緊急時の対応についての詳細な指導を行い、特に「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」といった不安に対しては、適切な管理のもとでの活動参加の可能性を具体的に説明する。必要に応じて、家族向けの喘息教室や支援グループの情報も提供する。

観察を継続すべき点としては、①呼吸状態の変化と不安レベルの関連性、②治療への理解度と協力状況の推移、③家族(特に母親)の心理状態と対処行動、④医療環境への適応状況などが挙げられる。特に、吸入手技の習得状況や自己管理スキルの発達については、退院後の治療効果に直結する重要な要素であるため、継続的な評価と支援が必要である。

性格

A氏は6歳の男児で、「活発で好奇心旺盛であるが、やや神経質な一面もある」と記載されている。活発で好奇心旺盛という特性は、6歳児の発達段階として一般的であり、環境を積極的に探索し、新しい経験を通して学ぶという認知的・社会的発達の特徴を示している。一方、やや神経質な一面は、環境変化や新しい状況に対する敏感さ、予測不能な事態への不安感として表れる可能性がある。このような性格特性は、気質的要素や環境要因、家族の関わり方などにより形成され、A氏の場合は特にアレルギー疾患の長期的経験(生後8ヶ月からのアトピー性皮膚炎、3歳頃からの喘鳴)が影響している可能性も考えられる。

入院生活における行動観察では、看護師やスタッフには緊張した様子を見せるが、母親が傍にいる時は安心した表情を見せるとの記載がある。これは、不慣れな環境や人に対する緊張感と、愛着対象である母親への安心感という対比を示しており、6歳児として妥当な反応である。また、治療に対しては「早く良くなりたい」という気持ちがあり、内服や処置にも徐々に協力的になってきているという変化は、A氏が状況を理解し適応しようとする柔軟性と回復への意欲を持っていることを示唆している。一方で、「吸入器の使用に関しては『怖い』と抵抗を示すことがある」との記載から、新しい処置や経験に対する不安や恐怖感も持ち合わせていることが分かる。

これらの性格特性を総合的に考慮すると、A氏は好奇心と不安の両面を持ち、環境や関わり方により異なる反応を示す可能性がある。好奇心旺盛な側面を活かした説明や指導は理解を促進する一方、神経質な側面に配慮した安心感の提供や段階的なアプローチが必要と考えられる。

ボディイメージ

A氏のボディイメージに関する直接的な記載は少ないが、喘息発作による呼吸困難の体験や、病気による身体感覚の変化がボディイメージに影響を与えている可能性がある。特に、「息がしにくい」という不安の訴えは、呼吸という生命維持に直結する身体機能の変化に対する恐怖感や違和感を表しており、身体に対する認識や感覚に影響を及ぼしていると考えられる。

6歳という発達段階では、身体図式(body schema)が発達し、自分の身体部位や機能について具体的な理解を形成し始める時期である。しかし、内部器官やその機能についての概念はまだ発達途上であり、呼吸器系の構造や機能についての理解は限定的である。そのため、喘息発作による身体感覚の変化(呼吸困難、胸部の圧迫感、咳嗽など)が、どのように自己の身体認識に統合されているかについては、さらなる情報収集と評価が必要である。

また、アトピー性皮膚炎の既往があり、現在もベタメタゾン軟膏を皮疹部に塗布しているとの記載があるが、皮膚症状の程度や部位、それに対するA氏の認識や感情についての詳細情報はない。可視的な皮膚症状は、特に小児期においてボディイメージやそれに基づく自己評価に影響を与える可能性があるため、この点についても追加の情報収集が望ましい。

疾患に対する認識

A氏の疾患に対する認識については、「早く良くなりたい」という気持ちがあり、内服や処置にも徐々に協力的になってきているとの記載がある。これは、疾患状態からの回復を望む自然な欲求と、治療が回復につながるという基本的な認識を持っていることを示唆している。しかし、6歳という年齢を考慮すると、喘息という疾患の本質や長期管理の必要性についての理解は限定的である可能性が高い。

発達心理学的観点からは、6歳頃の子どもは健康と病気について、目に見える症状や行動制限を中心に認識し、内的な生理学的プロセスについての理解は具体的な説明や視覚教材などを通じて徐々に形成される段階にある。A氏が喘息という疾患をどのように認識しているか、特に症状の原因や予防の可能性、長期管理の必要性についてどの程度理解しているかについては、追加の情報収集が必要である。

また、吸入器の使用に対して「怖い」と抵抗を示すことがあるという点は、治療法に対する恐怖感や違和感を示しており、疾患管理に対する心理的障壁となる可能性がある。この恐怖感の具体的な要因(機器の外観、使用感覚、効果への不安など)を明らかにし、適切に対応することが重要である。

一方、家族の疾患認識については、母親が「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」と質問し、「アレルギー体質は私譲り」と自責の念を語るなど、原因究明と予防に関心を持ちつつも、遺伝的要因に対する心理的負担を感じていることが窺える。また、父親も「家の中を徹底的に掃除し直す」と環境整備への意欲を示している。これらの家族の認識や姿勢はA氏の疾患認識や自己概念形成に影響を与える重要な環境要因である。

自尊感情

A氏の自尊感情に関する直接的な記載は少ないが、発達段階や現在の状況から推察される要素がある。6歳頃は、Eriksonの発達理論では「勤勉性対劣等感」の時期に該当し、自分の能力や成果に基づいて自己評価を形成し始める。学校や家庭での活動を通じて成功体験を積み、有能感や自己効力感を育む重要な時期である。

A氏は小学1年生であり、学校生活が始まったばかりの時期に喘息の重症発作で入院するという経験をしている。この経験が学校生活への適応や、学業・対人関係における自己評価にどのような影響を与えているかについては、追加の情報収集が必要である。特に、「友達と同じように運動できるか」という母親の不安からは、身体活動の制限が子どもの社会的比較や自己評価に影響する可能性が示唆されている。

治療場面での観察では、A氏は内服や処置に徐々に協力的になってきているとの記載があり、これは治療への参加を通じた達成感や自己コントロール感を得始めている可能性を示唆している。一方で、吸入器の使用に抵抗を示すことがあるという点は、新しい技術の習得における挫折感や不安が、自己効力感の発達に影響する可能性を示している。

自尊感情の発達においては、周囲の大人(特に親や教師)からの評価や反応も重要な要素である。母親の「アレルギー体質は私譲り」という自責の念が、A氏自身のアレルギー疾患に対する感情や自己概念にどのように影響するかについても留意する必要がある。

育った文化や周囲の期待

A氏の育った文化的背景や家庭環境に関する詳細情報は限られているため、追加の情報収集が必要である。家族構成は父親(38歳、会社員)、母親(36歳、パート勤務)、妹(3歳)の4人家族であり、両親はともに30代後半の働く親であることから、現代の日本の都市部における一般的な核家族と推測される。

周囲の期待については、母親が「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」という不安を表明していることから、A氏が一般的な学校生活を送り、同年代の子どもと同様の活動に参加できることを期待していることが窺える。こうした期待は、子どもの社会化や正常発達への自然な願望として理解できるが、同時に慢性疾患管理との両立における葛藤や不安も含んでいると考えられる。

父親については「仕事の都合で面会時間は限られている」が、「電話で頻繁に状態を確認」し、「家の中を徹底的に掃除し直す」と話しているとの記載がある。これは父親としての関心と責任感を示すと同時に、物理的環境の改善による疾患管理への貢献意欲を表している。両親の期待や価値観がA氏の自己概念やアイデンティティ形成にどのように影響するかについては、長期的な視点での観察と評価が必要である。

家族全体として「A氏の喘息管理に対する意識は高く、特に母親は退院後の生活管理について積極的に学ぼうとする姿勢が見られる」という記載から、家族が疾患管理を重視し、そのために必要な知識や技術を習得する意欲を持っていることが分かる。このような家族の姿勢は、A氏自身の疾患への向き合い方や自己管理能力の発達に肯定的な影響を与える可能性がある。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の自己知覚-自己概念に関する健康管理上の課題として、①喘息という慢性疾患を持つことへの自己認識の形成、②年齢に適した疾患理解と自己管理能力の育成、③吸入器使用への恐怖感の軽減と自己効力感の向上、④家族の疾患認識と対応が子どもの自己概念に与える影響の調整という4点が挙げられる。

看護介入としては、まずA氏の発達段階に適した方法で喘息についての理解を促進する。例えば、絵本や人形、簡単な模型などを用いて、呼吸の仕組みや喘息がどのように身体に影響するかを具体的に説明する。その際、A氏の活発で好奇心旺盛な性格を活かし、質問や探索を促しながら理解を深める工夫をする。同時に、「病気だから」という否定的なラベリングを避け、「みんなと同じように生活できるけれど、息がしにくくならないように特別なお薬や方法を知っていることが大切」というポジティブな枠組みで説明することで、肯定的な自己認識を支援する。

吸入器使用への恐怖感に対しては、その具体的な要因を丁寧に評価した上で、段階的なアプローチを採用する。例えば、最初は吸入器に触れるだけ、次に顔の近くに持ってくるだけ、という具合に少しずつ慣れる過程を設け、各ステップでの成功体験を積み重ねることで自己効力感を高める。また、吸入器に好きなキャラクターのシールを貼るなど、恐怖対象を馴染みやすいものに変える工夫も有効である。さらに、吸入手技の習得過程では小さな進歩に対しても具体的に褒め、達成感を促すことが重要である。

家族への介入としては、母親の「アレルギー体質は私譲り」という自責の念に対して、喘息の多因子的な原因を説明し、過度の自責感を軽減するようサポートする。また、父親の環境整備への意欲を支持しつつ、効果的な方法(アレルゲン除去の優先順位や具体的技術など)を指導する。両親がA氏の喘息を「対処可能な健康課題」として捉え、過度の不安や制限を課さずに適切な管理と支援を行えるよう援助することが、A氏の健全な自己概念形成につながる。

さらに、退院後の学校生活への移行を見据え、「友達と同じように運動できるか」という不安に対しては、適切な管理下での活動参加の可能性を具体的に説明する。例えば、運動前の予防的吸入や、徐々に運動強度を上げる方法、症状出現時の対処法などを、親子で理解できるよう指導する。また、必要に応じて学校の教師への情報提供や、クラスメイトへの説明方法についてもアドバイスを提供する。

観察を継続すべき点としては、①治療への参加度や自己表現の変化、②吸入手技習得過程での感情反応と達成感、③家族の対応と子どもの自己認識の相互作用、④退院後の学校適応と自己評価の推移などが挙げられる。特に、慢性疾患を持つ子どもの自己概念は長期的に形成されるものであり、定期的な評価と支援の継続が重要である。

職業、社会役割

A氏は6歳の男児で、小学校1年生である。小学校入学は子どもの社会的役割において大きな転換点であり、「児童」としての新たな役割と責任を担い始めた時期である。学校生活における児童としての役割(授業への参加、宿題の遂行、学級での係活動など)を通じて、社会性や責任感を発達させる重要な段階にある。また、家庭内では長子として3歳の妹がおり、兄としての役割も担っていると考えられる。兄妹関係における相互作用や、両親から期待される兄としての振る舞いなど、家庭内での役割習得も発達課題の一つとなっている。

学校生活や友人関係については具体的な情報が少ないため、追加の情報収集が必要である。特に、クラスでの友人関係、授業や特別活動への参加状況、教師との関係性、学業の進捗状況などは、A氏の社会的役割の重要な側面であり、退院後の学校復帰支援においても考慮すべき情報である。「友達と同じように運動できるか」という母親の不安からは、学校の体育や休み時間の遊びなどにおける身体活動の制限が懸念されており、これがA氏の児童としての役割遂行や仲間関係に影響する可能性がある。

入院という経験は、A氏にとって「患者」という新たな役割への適応を意味する。入院前は活発に遊び回る元気な児童であったが、現在は疾患管理や治療のために一時的に日常生活が制限され、医療者からの処置や指示に従うという経験をしている。「看護師やスタッフには緊張した様子を見せる」という記載からは、医療環境における患者役割への適応過程で緊張や不安を感じていることが窺える。一方で、「内服や処置にも徐々に協力的になってきている」との変化は、患者役割への徐々の適応を示唆している。ただし、「吸入器の使用に関しては『怖い』と抵抗を示すことがある」など、年齢的な発達段階や個人の気質も影響し、全ての医療処置に均等に適応できているわけではない状況である。

家族の面会状況、キーパーソン

A氏の家族構成は父親(38歳、会社員)、母親(36歳、パート勤務)、妹(3歳)の4人家族である。キーパーソンは母親と記載されており、入院中も「母親が終始付き添い」をしていることから、母親が主要な養育者であり、医療上の意思決定や情報提供の窓口となっていることが確認できる。母親は「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」と質問することが多く、特に家庭での管理方法や緊急時の対応について具体的な指示を求める場面が見られる。これらの様子から、母親は子どもの健康管理に高い関心と責任感を持ち、積極的に情報収集と学習を行おうとしていることが窺える。ただし、「アレルギー体質は私譲り」と自責の念を語ることもあり、遺伝的要因に対する心理的負担を感じている側面もある。

父親は「仕事の都合で面会時間は限られている」ものの、「電話で頻繁に状態を確認しており、『家の中を徹底的に掃除し直す』と話している」との記載がある。これは、父親としての関心と責任感を示すと同時に、直接的なケア提供よりも、環境整備や経済的支援など、異なる形での家族役割を担っている可能性を示唆している。現代の日本社会における父親役割の多様性を反映していると考えられるが、父親自身の疾患理解度や、具体的な育児参加の状況についてはさらなる情報収集が必要である。特に、母親がパート勤務をしていることから、退院後の療養生活における父親の役割や協力体制の構築が重要となる。

妹(3歳)については具体的な情報がないため、追加の情報収集が必要である。兄の入院による妹への影響(分離不安、注目の変化など)や、家族システムにおける役割の変化についても考慮する必要がある。特に母親が入院中のA氏に付き添っている場合、妹の養育がどのように行われているか(父親、祖父母、保育施設など)、その体制の安定性や持続可能性についても評価が重要である。

経済状況

A氏の家庭の経済状況に関する直接的な情報は限られているため、追加の情報収集が必要である。父親は会社員、母親はパート勤務という就労状況から、一般的な共働き家庭と推測される。具体的な収入水準や生活水準、経済的余裕の程度については不明である。医療費の支払い能力や、健康保険の種類、公的補助(小児医療費助成制度など)の利用状況についても情報がない。

喘息は長期的な管理が必要な慢性疾患であり、定期的な通院、継続的な薬剤使用、環境整備のための設備投資(空気清浄機、布団乾燥機など)、また場合によっては住環境の改善(引っ越し、リフォームなど)が必要となる可能性がある。父親が「家の中を徹底的に掃除し直す」と話していることからは、環境改善への意欲は見られるが、具体的にどの程度の経済的投資が可能かについては情報がない。

また、母親がパート勤務であることから、A氏の通院や体調不良時の看護のために仕事を休む必要が生じた場合の収入減少や、雇用の安定性への影響についても考慮する必要がある。特に、今後「月1回の定期通院を予定している」ことから、通院のための時間確保と就労との両立についての家族の見通しや対処計画を確認することが重要である。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の役割-関係に関する健康管理上の課題として、①学校生活への円滑な復帰と児童役割の再開、②家族システムにおける役割調整と協力体制の構築、③継続的な疾患管理に必要な経済的・社会的資源の確保という3点が挙げられる。

看護介入としては、まず学校生活への円滑な復帰を支援するために、退院前に学校関係者(担任教師、養護教諭など)との連携を図り、A氏の健康状態や必要な配慮について情報提供を行う。特に、「友達と同じように運動できるか」という不安に対しては、喘息管理が適切に行われれば多くの活動に参加可能であることを説明し、具体的な運動参加の方法(運動前の予防的吸入、徐々に強度を上げる、症状悪化時の休息など)を指導する。また、クラスメイトへの説明方法についても家族と相談し、A氏が疾患により不必要に制限されたり、特別視されたりしないよう配慮する。

家族システムにおける役割調整については、母親への過度な負担集中を避けるため、父親や他の家族資源(祖父母、親族など)の活用可能性を検討する。特に、退院後の通院や薬剤管理、環境整備などの具体的な役割分担について家族間で話し合いを促進する。また、母親の自責の念に対しては、喘息の多因子的な原因を説明し、過度の自責感を軽減するよう心理的サポートを提供する。同時に、父親の「電話で頻繁に状態を確認」する関心を支持しつつ、より直接的なケア参加(例:吸入手技の習得、発作時の対応訓練など)を促進することで、両親の協力体制を強化する。

経済的・社会的資源の確保については、まず医療費助成制度(小児医療費助成、特定疾患医療費助成など)の活用状況を確認し、未利用の場合は申請を支援する。また、地域の喘息患者会や家族会、小児慢性疾患の支援団体などの情報提供を行い、社会的サポートネットワークの構築を促進する。特に母親のパート勤務と通院の両立が困難な場合は、職場での理解を得るための情報提供や、必要に応じて訪問看護サービスの導入なども検討する。

観察を継続すべき点としては、①母親の疲労度と心理的負担の変化、②父親の疾患管理への参加度と理解度の向上、③家族全体の適応過程と役割再構築の状況、④退院後の学校適応と社会関係の発達などが挙げられる。特に、家族システムが子どもの慢性疾患という課題にどのように適応し、新たな均衡状態を形成していくかという長期的な過程を支援することが重要である。また、退院後の外来受診時には、学校生活の状況や家族の役割分担の実際について継続的に評価し、必要に応じて追加の支援を提供することが求められる。

年齢、家族構成、更年期症状の有無

A氏は6歳の男児であり、性的発達においては前思春期段階にある。エリクソンの心理社会的発達理論によれば、6歳頃は「勤勉性対劣等感」の段階に相当し、性的アイデンティティの確立よりも、基本的な知識や技能の習得、社会的役割の理解が主要な発達課題となる時期である。フロイトの精神性的発達理論では潜伏期に該当し、性的関心が一時的に抑制され、同性の仲間関係や知的活動に興味が向かう時期とされている。A氏の性的発達に関する具体的な情報は記載されていないが、年齢からすると性に関する関心や知識は初歩的段階にあると推測される。

家族構成は父親(38歳、会社員)、母親(36歳、パート勤務)、妹(3歳)の4人家族である。核家族形態であり、両親はともに30代後半で、A氏と妹の2人の子どもを養育している。この家族構成は現代の日本社会における一般的な家族形態の一つであり、両親が共働きである点も現代的な特徴を示している。A氏が男児であり、母親と妹という女性家族員と、父親という男性家族員の両方と生活していることは、性別役割の学習やジェンダー・アイデンティティの形成において多様なモデルに接する機会があることを意味する。父親は「仕事の都合で面会時間は限られている」が、「電話で頻繁に状態を確認」するなど関心を示していることから、物理的な不在を補う形でのコミュニケーションを維持していることが窺える。このような父親の関わり方がA氏の男性役割のモデルとして、どのように認識され内在化されていくかは長期的な発達課題となるだろう。

更年期症状については、A氏が6歳の男児であること、また両親もそれぞれ38歳と36歳であることから、現時点では該当しない。ただし、親世代の健康状態は子どもの養育環境に影響を与える重要な要素であるため、両親の健康状態に関する情報収集は有用である。特に母親は「終始付き添い」をしており、育児と仕事の両立に加えて、入院中の付き添いによる心身の疲労が蓄積している可能性がある。母親自身の健康状態や疲労度、休息の確保状況などについても把握することが、家族全体の健康管理において重要である。

性的発達と関連する可能性のある側面として、A氏の身体イメージや入院・治療体験の影響について考慮する必要がある。喘息という慢性疾患を持ち、特に今回のような重症発作により入院治療を受けるという体験は、身体に対する認識や自己イメージに影響を与える可能性がある。また、医療処置や身体的ケアを受ける過程で、プライバシーや身体的境界に関する感覚が形成される。これらの体験がA氏の身体認識や性の発達にどのように影響するかについては、年齢相応の反応と特別な配慮が必要な反応を区別しながら観察することが重要である。

性発達の基盤となる健全な身体発達の側面からは、A氏の身長118cm、体重20kgというデータから、年齢相応の身体発育状況にあると考えられる。慢性疾患を持つ小児の場合、疾患自体や治療(特に長期的なステロイド使用など)が身体発育に影響を与える可能性があるため、定期的な発育評価と適切な栄養管理が重要である。また、運動機会の制限による筋力低下や体力減少も発育に影響する可能性があるため、喘息コントロールの改善に伴う適切な身体活動の促進も考慮すべき点である。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の性-生殖に関する健康管理上の課題として、①年齢相応の身体的自律性とプライバシー尊重の確保、②健全な身体イメージの形成支援、③将来の性教育に向けた家族との信頼関係構築という3点が挙げられる。

看護介入としては、まず入院環境における身体的自律性とプライバシーの尊重を徹底する。具体的には、処置や身体的ケアの実施時には年齢に応じた説明と同意を得る過程を大切にし、必要以上の露出を避け、プライバシーを保護する配慮を行う。特に6歳という年齢は、自己の身体に対する意識や羞恥心が発達する時期であるため、入浴介助や排泄援助においても本人の意思を尊重し、できる限り自立を促す関わりが重要である。

健全な身体イメージの形成支援としては、喘息という疾患を「欠陥」や「弱さ」としてではなく、「特別なケアが必要な個性の一部」として肯定的に認識できるよう支援する。例えば、「息が苦しくなるのは体が教えてくれているサイン」「薬や吸入器は体を助ける特別な道具」といった肯定的な説明を用いることで、疾患や治療に対するポジティブな認識を促す。また、治療の成功体験(吸入手技の上達、症状の改善など)を通じて自己効力感や身体への信頼感を育むことも重要である。

将来の性教育に向けた家族との信頼関係構築については、現時点でのA氏の発達段階では性教育自体は主要課題ではないが、親子間のオープンなコミュニケーションの基盤を築くことが将来的に重要となる。そのため、両親、特に母親の育児不安や疲労に対するサポートを提供し、余裕を持って子どもと関わる環境を整える。また、必要に応じて子どもの発達段階に関する情報提供や、疾患管理と通常の発達支援を両立させるための具体的アドバイスを行う。

観察を継続すべき点としては、①医療処置に対する反応と心理的影響、②同年代の子どもとの交流状況と社会性の発達、③身体発育の推移と喘息管理の関連性などが挙げられる。特に、長期的な喘息管理においては、思春期に向けた身体変化や感情の変動が疾患管理にも影響する可能性があるため、成長に伴う変化を見据えた継続的な支援計画が重要である。

また、現時点では主要な課題ではないが、思春期に向けた準備として、成長に伴う身体変化や感情の理解、自己管理能力の発達などについても、年齢に応じた段階的な支援を計画することが望ましい。特に慢性疾患を持つ子どもの場合、疾患管理に意識が集中するあまり、通常の発達課題に対する支援が不足する可能性があるため、バランスの取れた発達支援の視点が重要である。

入院環境

A氏は6歳の男児で、気管支喘息重症発作により初めての入院を経験している。入院環境についての具体的な記載(個室か大部屋か、同室者の有無、病棟の雰囲気など)は限られているため、追加の情報収集が必要である。ただし、「看護師やスタッフには緊張した様子を見せる」という記載から、医療環境や医療者との関わりにストレスを感じていることが窺える。これは6歳児にとって、不慣れな環境、多くの見知らぬ大人との関わり、治療や処置による痛みや不快感が強いストレス要因となることを反映している。

また、「入院後は、呼吸困難による不安と病院環境への不適応から、入眠困難と中途覚醒が見られた」という記載から、環境変化による心理的ストレスが睡眠に影響していることが確認できる。小児の場合、慣れ親しんだ家庭環境から離れること自体が大きなストレスとなり、さらに病院特有の音、光、匂い、温度などの環境刺激が違和感やストレスを増強する可能性がある。特に夜間の環境(照明、音、スタッフの出入りなど)がA氏の睡眠に与える影響についても評価する必要がある。

一方で、「母親が終始付き添い」をしているという状況は、A氏にとって大きな心理的安心感となっていると考えられる。「母親が傍にいる時は安心した表情を見せる」という観察からも、母親の存在がストレス緩和の重要な要素となっていることが窺える。この母親という愛着対象の存在は、特に6歳という発達段階において、未知の環境や状況に対処するための重要な心理的安全基地となっている。

仕事や生活でのストレス状況、ストレス発散方法

A氏は小学1年生であり、「仕事」という観点ではなく、学校生活や日常生活におけるストレス状況を評価する必要がある。学校生活での具体的なストレス要因(学業の難しさ、友人関係の課題、教師との関係など)に関する情報は限られているため、追加の情報収集が重要である。特に、喘息という慢性疾患を持つことが学校生活にどのような影響を与えているか、例えば体育の授業や休み時間の活動への参加制限、クラスメイトからの反応、教師の理解度などについての情報が有用である。

母親からは「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」という不安が表明されていることから、これらが潜在的なストレス要因となる可能性が示唆される。特に6歳の男児にとって、身体活動や仲間との遊びは重要な発達課題であり、これらが制限されることは心理的ストレスとなりうる。実際にA氏がこれらの状況をどのように認識し、どのような感情を抱いているかについての詳細な情報は必要である。

ストレス発散方法については具体的な記載がないため、追加の情報収集が必要である。6歳児の一般的なストレス発散方法としては、遊び(特に身体を動かす遊び、創造的な遊び)、好きな活動への没頭、信頼できる大人との対話などが挙げられる。A氏が喘息という身体的制約を持つ中で、どのようにストレスを発散し、リラクゼーションを図っているかを把握することは、入院中のストレス管理および退院後の生活指導において重要な情報となる。

また、入院前の日常生活におけるストレス要因(家庭環境、兄妹関係、生活リズムなど)についても追加情報が必要である。特に「やや神経質な一面もある」という性格特性は、ストレスへの感受性や反応パターンに影響する可能性がある。どのような状況で緊張や不安が高まりやすいか、それに対してどのような対処行動を示すかという個人特性を理解することが、効果的な支援につながる。

家族のサポート状況、生活の支えとなるもの

A氏の家族サポート状況については、母親がキーパーソンであり、入院中も「終始付き添い」をしていることから、主要な養育者として強い心理的支援を提供していることが窺える。母親は「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」と質問することが多く、特に家庭での管理方法や緊急時の対応について具体的な指示を求める場面が見られることから、子どもの健康管理に対する高い関心と責任感を持っていることが確認できる。一方で、「アレルギー体質は私譲り」と自責の念を語ることもあり、遺伝的要因に対する心理的負担も感じており、母親自身のストレスや心理的サポートの必要性も示唆されている。

父親については、「仕事の都合で面会時間は限られている」ものの、「電話で頻繁に状態を確認しており、『家の中を徹底的に掃除し直す』と話している」との記載がある。これは父親としての関心と責任感を示す一方で、物理的なサポート(直接的なケア提供、付き添いなど)は限定的である可能性を示唆している。父親の仕事状況(勤務形態、労働時間、職場の理解度など)や、退院後の家庭内役割分担についての詳細情報が必要である。

また、他の家族資源(祖父母、親族など)の有無や関与度についての情報は記載されていないため、追加の情報収集が有用である。特に母親がパート勤務をしながら子どもの養育と喘息管理を担っている状況においては、広範な家族サポートネットワークの存在が重要な資源となる。

A氏にとって生活の支えとなるものについては、具体的な記載はないため、追加の情報収集が必要である。6歳児にとっての心理的支えとなり得るものとしては、特定の玩具やぬいぐるみ、好きな遊びや活動、親密な友人関係、安心できる日課や儀式などが挙げられる。特に「入眠時に母親が傍にいることを好む傾向がある」という情報からは、就寝時の儀式や母親の存在が安心感の重要な源となっていることが窺える。入院という非日常的な環境においても、これらの心理的支えとなるものをできる限り維持することが、ストレス耐性を高める上で重要である。

健康管理上の課題と看護介入

A氏のコーピング-ストレス耐性に関する健康管理上の課題として、①入院環境による心理的ストレスの軽減、②発達段階に応じたストレス対処スキルの習得支援、③家族(特に母親)のストレス管理とサポート強化、④退院後の学校・社会生活におけるストレス管理計画の4点が挙げられる。

看護介入としては、まず入院環境によるストレスを軽減するために、できるだけ自宅に近い環境づくりを心がけ、好みのおもちゃや絵本などの持ち込みを促進する。また、処置や検査の前には年齢に応じた説明を行い、心の準備を整える機会を提供する。特に吸入器の使用に「怖い」と抵抗を示すことがあるため、プレイセラピーの要素を取り入れた導入(例:人形を使ったデモンストレーション、キャラクターシールの活用など)を工夫する。また、日常的な病棟生活においても予測可能性を高めるために、視覚的スケジュールの活用や、ルーティンの確立などを行う。

発達段階に応じたストレス対処スキルの習得支援としては、呼吸困難時の不安に対処するための簡単なリラクゼーション技法(ゆっくりとした深呼吸、イメージ療法など)を遊びの要素を取り入れながら指導する。例えば、「風船を膨らませるように大きく息を吸って、小さな口で息を吐く」といった呼吸法を練習し、症状出現時に自己対処できる感覚を育む。また、感情表現を促進するために、絵を描いたり、人形遊びを通じて体験を表現する機会を提供するなど、年齢に適した表現方法を活用する。

家族、特に母親のストレス管理とサポート強化については、母親の自責の念に対して、喘息の多因子的な原因を説明し、過度の自責感を軽減するようサポートする。また、入院中の付き添いによる疲労蓄積を考慮し、適切な休息時間の確保や、父親や他の家族資源の活用を促進する。家族に対しては、A氏の喘息管理に関する具体的な知識や技術の指導だけでなく、疾患管理に伴う心理的負担や家族システムへの影響についても理解を深め、対処戦略を共に考える機会を設ける。

退院後の学校・社会生活におけるストレス管理計画としては、学校関係者(担任教師、養護教諭など)との連携を図り、喘息に関する基本的情報や必要な配慮について共有する。特に「友達と同じように運動できるか」という不安に対しては、適切な喘息管理のもとでの活動参加の可能性を具体的に説明し、必要に応じて運動前の対策(予防的吸入など)や症状出現時の対応について指導する。また、クラスメイトに対する疾患説明の方法についても家族と相談し、A氏が疾患によって不必要に特別視されることなく、自然な社会関係を維持できるよう支援する。

観察を継続すべき点としては、①入院中のストレス反応の変化(睡眠パターン、情緒状態、行動変化など)、②処置や治療に対する対処行動の発達、③母親の疲労度と心理的状態の変化、④退院準備に伴う不安や期待の表現などが挙げられる。特に、介入の効果を評価するために、A氏のストレス反応の客観的指標(睡眠の質、食欲、遊びへの参加度、表情や声のトーンなど)を継続的に記録し、変化を評価することが重要である。

信仰、意思決定を決める価値観/信念、目標

A氏は6歳の男児であり、提供された情報では「特定の宗教的信仰はない」と記載されている。宗教的信仰がないことから、医療上の意思決定において宗教的制約や特別な配慮が必要な儀式等はないと考えられる。ただし、宗教的信仰がなくとも、家族固有の文化的背景や価値観が存在する可能性があるため、治療や療養生活に関する家族の考え方や重視する点について、さらに詳細な情報収集が有用である。

6歳という発達段階を考慮すると、A氏自身の価値観や信念は形成過程にあり、主に親や家族、教育環境からの影響を受けながら徐々に内在化されている段階にある。ピアジェの認知発達理論によれば、6歳頃は前操作期から具体的操作期への移行期にあたり、思考の柔軟性が増し、視点取得能力も発達し始めるが、まだ具体的な事象に基づいた思考が中心であり、抽象的な価値概念の理解は限定的である。そのため、「良い」「悪い」といった道徳的判断は可能であっても、複雑な価値の葛藤や抽象的な信念体系の理解は発達途上にある。

A氏の保護者、特に母親の価値観や信念が、現時点での医療上の意思決定や療養管理に大きな影響を与えていると考えられる。母親は「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」と質問することが多く、特に家庭での管理方法や緊急時の対応について具体的な指示を求める場面が見られる。この姿勢から、子どもの健康管理に対する高い責任感と、具体的な知識や技術を習得することで状況をコントロールしたいという価値観が窺える。また、「アレルギー体質は私譲り」と自責の念を語ることから、子どもの健康問題に対する母親としての責任感と、遺伝的要因に対する意識が見て取れる。

父親については、「仕事の都合で面会時間は限られている」ものの、「電話で頻繁に状態を確認しており、『家の中を徹底的に掃除し直す』と話している」との記載がある。これは父親としての責任感と家族の健康を重視する価値観を示すと同時に、物理的環境の改善という具体的行動で貢献しようとする問題解決志向の価値観を示唆している。

A氏本人の意思決定に関わる価値観や意向については、発達段階を考慮した理解が必要である。「早く良くなりたい」という気持ちがあり、内服や処置にも徐々に協力的になってきているとの情報から、健康回復への意欲と、そのために必要な治療への協力姿勢が形成されつつあることが窺える。一方で、「吸入器の使用に関しては『怖い』と抵抗を示すことがある」という点は、恐怖や不快感といった直接的な感情反応が、この年齢ではまだ意思決定に大きな影響を与えることを示している。これは発達段階として自然な反応であり、恐怖を乗り越える経験や、成功体験の積み重ねを通じて徐々に理性的な判断が感情的反応に優先するようになっていく発達過程の一部と捉えることができる。

目標については、A氏本人にとっては「早く良くなりたい」という直接的で短期的な目標が中心であると考えられる。6歳児の認知特性として、具体的で身近な目標は理解できるが、長期的・抽象的な目標設定の理解は限定的である。一方、保護者の目標としては、母親の「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」という不安からは、子どもの正常な発達と社会参加を重視する価値観と、それを可能にするための健康管理という目標が読み取れる。また、医師からの「肺機能検査の値が基準値の80%以上に改善し、症状が安定していれば1週間程度で退院可能」という見通しは、当面の医療目標を提示するものであり、これを保護者と共有することで目標指向型の治療参加を促進することができる。

健康管理上の課題と看護介入

A氏の価値-信念に関する健康管理上の課題として、①発達段階に適した疾患理解と治療参加の促進、②家族の価値観を尊重した療養指導、③長期的な健康管理と発達支援のバランス、④子どもの主体性を育む段階的な意思決定参加という4点が挙げられる。

看護介入としては、まず発達段階に適した疾患理解を促進するために、A氏の認知レベルに合わせた具体的で視覚的な説明方法を用い、喘息の仕組みや治療の必要性を分かりやすく伝える。例えば、絵本やアニメーションを用いた説明、人形を使ったデモンストレーション、簡単な比喩(「呼吸の道が狭くなっている」など)の使用などが有効である。また、治療への参加意欲を高めるために、成功体験の機会を意図的に設定し、具体的に褒めることで自己効力感を育む。特に吸入器の使用に恐怖を示している点については、段階的な接近法(最初は触れるだけ、次に口元に近づけるだけなど)を用いて恐怖を軽減し、各ステップでの成功を称賛することで前向きな経験に変えていく。

家族の価値観を尊重した療養指導については、母親の「何が原因で発作が起きたのか」「今後どうしたら発作を防げるのか」という疑問に対して、科学的根拠に基づく情報を提供するとともに、家庭環境や生活スタイルに合わせた個別的な管理方法を一緒に検討する。「アレルギー体質は私譲り」という自責の念に対しては、喘息の多因子的な発症機序を説明し、過度の自責感を軽減するよう心理的サポートを提供する。また、父親の「家の中を徹底的に掃除し直す」という環境整備への意欲を支持しつつ、効果的な清掃方法や、優先すべき環境調整(寝室環境の整備、ハウスダスト対策など)について具体的にアドバイスする。

長期的な健康管理と発達支援のバランスについては、母親の「学校生活で制限されることはないか」「友達と同じように運動できるか」という不安に対して、喘息管理の目標が「制限のない通常の生活」であることを強調し、適切な管理下での活動参加の方法を具体的に説明する。例えば、運動誘発性喘息の予防方法(運動前の予防的吸入、ウォーミングアップの徹底など)や、症状出現時の対処法を指導し、不必要な活動制限を避けるよう援助する。また、学校関係者との連携方法や、クラスメイトへの説明方法についても家族と相談し、A氏の社会的発達を支援する環境づくりを促進する。

子どもの主体性を育む段階的な意思決定参加については、A氏の年齢に応じた選択肢を提供し、徐々に疾患管理への参加を促していく。例えば、薬の服用方法(シロップか錠剤か)や、吸入のタイミング(朝食前か後か)など、小さな選択から始め、成功体験を積み重ねていく。また、ピークフローメーターの記録を視覚的に楽しい形式(色分けしたシールを貼るなど)で行うことで、自己モニタリングへの興味と参加を促進する。このような段階的アプローチにより、現時点では限定的な意思決定能力も、成長に応じて徐々に発達させることができる。

観察を継続すべき点としては、①治療への理解度と参加状況の変化、②家族の疾患理解と管理能力の発展、③子どもの自己表現や意向の明確化、④家族内での健康管理における役割分担の調整などが挙げられる。特に、価値観や信念は直接観察できない内的要素であるため、言動や反応から間接的に理解を深める継続的な観察と関わりが重要である。また、A氏の成長に伴い、価値観や意思決定能力も発達していくため、定期的な再評価と発達段階に応じた支援の調整が必要である。

看護計画

看護問題

気管支喘息重症発作に伴う気道クリアランス障害に関連した呼吸機能の低下

長期目標

退院までに肺機能検査の値が基準値の80%以上に改善し、日常活動による呼吸困難がなくなる

短期目標

1週間以内に安静時の喘鳴が消失し、軽度の活動でも呼吸困難を生じなくなる

≪O-P≫観察計画

・呼吸数、呼吸パターン、呼吸の深さを1日4回観察する
・喘鳴、咳嗽の頻度、強さ、性状、痰の性状を観察する
・酸素飽和度(SpO2)を定期的にモニタリングする
・活動前後の呼吸状態の変化を観察する
・肺音(喘鳴、副雑音)の部位と性質を聴診する
・口唇や爪床のチアノーゼの有無を観察する
・胸部の動きや陥没呼吸の有無を観察する
・日中と夜間の呼吸状態の違いを観察する
・内服薬や吸入薬の効果と副作用を観察する
・呼吸困難時の不安や恐怖反応を観察する
・肺機能検査値(%FEV1、PEF)の推移を観察する
・ピークフローメーターの測定値の変動を観察する

≪T-P≫援助計画

・上半身を30~45度挙上した姿勢で休息できるよう調整する
・呼吸が楽になる体位(前傾座位など)をとれるよう援助する
・処方された吸入薬や内服薬を確実に投与する
・呼吸状態に応じて酸素流量を適切に調整する
・呼吸状態に合わせた活動と休息のバランスを調整する
・就寝前に痰の喀出を促し、夜間の咳嗽を軽減する
・湿度を50~60%に保ち、気道の乾燥を予防する
・室内の環境整備(アレルゲン除去、清潔保持)を徹底する
・段階的に活動を拡大し、呼吸機能の回復を促進する
・呼吸リハビリテーション(腹式呼吸、口すぼめ呼吸)を実施する
・不安時には母親の付き添いで安心感を提供する
・気道分泌物の排出を促進するための体位ドレナージを実施する

≪E-P≫教育・指導計画

・年齢に応じた呼吸訓練(風船吹きなど遊びの要素を取り入れた呼吸法)を指導する
・吸入薬の正しい使用方法を人形などを用いて年齢に合わせて説明する
・ピークフローメーターの使用方法と記録の仕方を親子で練習する
・呼吸困難時のリラクゼーション方法を家族とともに練習する
・喘息発作の前兆症状とその対処法を家族に指導する
・発作時の緊急対応(救急受診の目安など)について説明する
・環境整備(アレルゲン除去、寝具の管理方法など)について指導する
・喘息日誌の記載方法と活用法を説明する

看護問題

初めての入院体験と疾患に伴う不安に関連した睡眠障害

長期目標

退院までに入院前の睡眠パターン(21時就寝〜7時起床)が回復し、途中覚醒なく熟眠感が得られる

短期目標

3日以内に夜間の睡眠を4時間以上継続して取れるようになり、日中の倦怠感が軽減する

≪O-P≫観察計画

・就寝時間、起床時間、総睡眠時間を記録する
・中途覚醒の回数と時間帯を観察する
・夜間の咳嗽やその他の症状の出現頻度を観察する
・入眠時の様子(不安、緊張、落ち着きのなさなど)を観察する
・睡眠環境(音、光、温度など)による影響を観察する
・母親の付き添いの有無による睡眠状態の変化を観察する
・日中の活動状況と眠気の有無を観察する
・不安や恐怖の表出(言葉、表情、行動)を観察する
・夜間の呼吸状態(喘鳴、呼吸困難など)を観察する
・処置や治療に対する反応(特に吸入器に対する恐怖)を観察する
・母親の疲労度や精神状態を観察する
・日中のストレス発散や遊びの状況を観察する

≪T-P≫援助計画

・就寝前の環境を整え、静かで暗い環境を提供する
・夜間の処置やケアは最小限にし、まとめて行うよう調整する
・就寝前に温かい飲み物や軽いマッサージでリラックスを促す
・就寝前に痰の喀出を促し、夜間の咳嗽を軽減する
・自宅から好みの寝具やぬいぐるみを持参してもらう
・入眠儀式(絵本の読み聞かせなど)を取り入れる
・母親の付き添いが可能な環境を調整する
・夜間の適切な体位(上半身挙上など)を工夫する
・日中の適度な活動を促し、生活リズムを整える
・処置や検査の前には十分な説明と心の準備の時間を設ける
・不安時にはすぐに対応できるよう体制を整える
・母親の休息時間も確保できるよう支援する

≪E-P≫教育・指導計画

・年齢に合わせた病院環境への適応方法を説明する
・就寝前の咳嗽軽減のための方法(姿勢、温かい飲み物など)を指導する
・不安や恐怖を和らげるためのリラクセーション法を遊びの要素を取り入れて指導する
・吸入器に対する恐怖を軽減するため、段階的な慣れる方法を指導する
・夜間の症状出現時の対処法を家族に説明する
・帰宅後の良好な睡眠習慣の維持方法について説明する
・喘息と睡眠の関係について発達段階に合わせて説明する
・家族でのコミュニケーション方法(不安や恐怖の表現方法)について助言する

看護問題

慢性疾患管理に関連した疾患・治療に対する知識不足

長期目標

退院までに家族が喘息の病態と管理方法を理解し、必要な自己管理技術を習得して家庭での継続管理に自信を持てる

短期目標

1週間以内に母親が基本的な喘息管理(薬の種類と役割、吸入手技、症状観察)を理解し、A氏が年齢に応じた治療参加(吸入への協力など)ができる

≪O-P≫観察計画

・母親の喘息に関する知識レベルと理解度を評価する
・A氏の年齢に応じた疾患理解の程度を観察する
・吸入手技の習得状況を確認する
・ピークフローメーターの使用方法の理解度を観察する
・薬剤(長期管理薬と発作時対応薬)の区別に関する理解度を確認する
・アレルゲン対策に関する知識と実践意欲を観察する
・質問の内容や頻度から疑問点や不安を評価する
・処方された薬剤の副作用に関する理解度を確認する
・発作時の対応方法の理解度を観察する
・家族の治療参加度や協力体制を観察する
・父親の疾患理解度と環境整備への取り組みを確認する
・学校生活での管理に関する不安や質問内容を観察する

≪T-P≫援助計画

・年齢に応じた説明ツール(絵本、人形など)を活用する
・吸入手技の練習を毎日の投薬時に実施する
・ピークフローメーターの測定を毎日実施し記録方法を確立する
・長期管理薬と発作時対応薬を視覚的に区別しやすいよう工夫する
・家庭での環境整備計画を家族と一緒に立案する
・質問しやすい環境を作り、疑問点にはすぐに対応する
・薬剤投与のスケジュールを視覚的に分かりやすく表示する
・吸入器使用への抵抗感を軽減するための段階的アプローチを行う
・面会時に父親も含めた家族指導の機会を設ける
・退院後の外来受診日や連絡方法を明確に伝える
・学校関係者との連携方法について具体的に提案する
・地域の支援資源(訪問看護、患者会など)の情報を提供する

≪E-P≫教育・指導計画

・喘息の病態とアレルギー因子の影響について家族に説明する
・吸入ステロイドの効果と正しい使用方法を指導する
・長期管理薬と発作時対応薬の違いと使用タイミングを説明する
・ピークフローメーターの意義と測定方法、記録の仕方を指導する
・発作の前兆症状と早期対応の方法について説明する
・環境整備の具体的方法(ハウスダスト対策、寝具管理、掃除方法)を指導する
・日常生活での注意点(運動、入浴、感染予防など)を説明する
・喘息日誌の記載方法と活用法を指導する
・学校での管理方法(教師への情報提供、運動時の注意点など)を説明する
・次回外来受診時に持参すべきものや確認事項を説明する
・家族が利用できる社会資源や医療費助成制度について情報提供する

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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