【レビー小体型認知症】疾患解説と看護のポイント

疾患解説

疾患概要


定義

レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies:DLB)とは、脳神経細胞内にレビー小体という異常蛋白質が蓄積することにより、認知機能が低下する神経変性疾患です。

レビー小体型認知症の最大の特徴は、認知機能低下に加えて、視幻覚、パーキンソニズム(動きが悪くなる)、睡眠障害などの独特な症状を示すことです。これらの症状が、他の認知症(アルツハイマー病、血管性認知症)とは異なり、DLBに特異的な診断的手がかりとなります。

DLBは、認知症の中では治療により症状が改善する可能性がある数少ない疾患の一つです。特に、抗精神病薬への極度の過敏性が特徴的であり、この特徴を理解しておくことが、患者さんの生命を守るために極めて重要です。

疫学

レビー小体型認知症は、認知症の第2~3位の原因とされており、アルツハイマー病に次ぐ、あるいは血管性認知症と同程度の頻度で起こるとされています。日本では、約50万人以上がDLBを有すると推計されています。

平均発症年齢は70代後半であり、高齢になるほど発症率が高くなります。男女差は、やや男性に多い傾向があります。

DLBは、診断が遅れやすい認知症として知られています。理由は、初期段階では記憶障害がアルツハイマー病ほど著明でなく、むしろ視幻覚やパーキンソニズムが診断の手がかりとなるため、医療者でもDLBを見落とすことがあるためです。

原因

レビー小体型認知症の原因は、α-synuclein(アルファシヌクレイン)という蛋白質の異常です。

α-synucleinは、通常、脳神経細胞内で適切に処理されますが、何らかの原因により、異常な形に変化して凝集し、レビー小体という封入体を形成します。

レビー小体が脳神経細胞に蓄積することにより、神経細胞の機能が障害され、やがて神経細胞が死滅し、認知機能低下が起こります。

遺伝的因子:DLBは、ほとんどの場合孤発性ですが、SNCA遺伝子などのα-synucleinに関連する遺伝子変異が、発症リスクを増加させることが報告されています。

環境因子:喫煙、農薬への曝露などが、DLB発症リスクと関連することが報告されていますが、因果関係は確立していません。

年齢:加齢に伴い、α-synucleinの異常と凝集が起こりやすくなるため、加齢がDLBの最大の危険因子です。


病態生理


レビー小体型認知症の病態は、α-synuclein凝集体(レビー小体)が、脳の広い領域に蓄積し、神経細胞機能が障害される過程です。

第1段階:α-synucleinの異常化と凝集

神経細胞内のα-synucleinが、何らかの機序により異常な形(misfolded)に変化します。この異常なα-synucleinが、さらに凝集して、レビー小体を形成します。

レビー小体は、アルツハイマー病のアミロイドβやタウ蛋白とは異なる蛋白質であり、DLBの特徴的な病理学的所見です。

第2段階:レビー小体の脳全域への蓄積

レビー小体は、脳の特定の領域に選択的に蓄積します。特に以下の部位での蓄積が特徴的です。

  • 黒質:パーキンソニズムの原因となります
  • 青斑核:睡眠・覚醒の調整障害、うつ症状の原因
  • 視覚皮質や側頭葉:視幻覚の原因
  • 前頭葉と頭頂葉:認知機能低下の原因

第3段階:神経細胞機能の障害と神経炎症

レビー小体の蓄積により、神経細胞の正常な機能が障害されます。特に、以下の機能が障害されます。

ドーパミン神経系の障害:黒質でのレビー小体蓄積により、ドーパミン産生が低下し、パーキンソニズム(動きの悪さ、筋固縮、静止時振戦)が起こります。

アセチルコリン神経系の低下:認知機能低下と、視幻覚の原因となります。

同時に、レビー小体の蓄積により、神経炎症が活性化され、さらに神経細胞が傷つく悪循環が形成されます。

第4段階:神経細胞死と脳委縮

レビー小体が蓄積した神経細胞は、機能が低下し、やがて死滅します。その結果、脳が委縮し、脳脊髄液腔が拡大します。

第5段階:認知症症状の顕在化

多くの神経細胞が死滅し、脳機能が著しく低下すると、患者さんは認知症症状を自覚するようになります。

重要な特徴:DLBにおいて、アミロイドβやタウ蛋白の蓄積も同時に起こることが多いという報告があります。つまり、DLBとアルツハイマー病の病理学的特徴が混在する場合があり、これをレビー小体型認知症とアルツハイマー型変化の混合と呼びます。


症状・診断・治療


症状

レビー小体型認知症の症状は、認知機能低下、視幻覚、パーキンソニズム、睡眠障害の4つの主要症状により特徴付けられます。

認知機能低下

DLBの記憶障害は、アルツハイマー病と異なり、比較的軽度であることが多いです。むしろ、実行機能(計画的に行動する機能)と注意機能の低下が特徴的です。

患者さんは「頭がぼんやりしている」「考えがまとまらない」「物事に集中できない」と訴えることが多いです。

同時に、見当識障害(日時や場所の認識障害)も起こります。

視幻覚

DLBの最も特徴的な症状の一つが、視幻覚です。患者さんは、「人物が見える」「動物が見える」「物が見える」と訴えます。

特に特徴的なのは、幻覚が非常にリアルで、詳細であることです。患者さんは「本当に見えている」と確信し、家族に「あの人は誰か」などと質問することがあります。

視幻覚は、明け方や夜間に起こることが多く、昼間は起こらないことが多いという特徴があります。

この視幻覚の出現が、DLBの診断における最も重要な手がかりになります。

パーキンソニズム

レビー小体がドーパミン神経系に蓄積することにより、パーキンソン病と類似した症状が起こります。

  • 筋固縮:筋肉の張りが強くなり、「動きが硬い」という感覚
  • 静止時振戦:安静時に手が震える
  • 無動:動きが遅い、表情が乏しくなる
  • 姿勢反射障害:バランスが悪くなり、転倒しやすい

これらのパーキンソニズムにより、患者さんは転倒のリスクが非常に高くなり、骨折などの重篤な合併症が起こりやすくなります。

睡眠障害

  • REM睡眠行動障害最も特徴的な症状。患者さんが睡眠中に大きな声で叫んだり、激しく動いたり、時には寝床から落ちたりします。これは、通常、REM睡眠時に起こる筋肉の弛緩が起こらないため、患者さんが夢を「演じて」しまう症状です。
  • 昼間の眠気:日中に過度の眠気を感じ、突然眠り込む
  • 不眠:夜間に眠れず、昼間に眠くなる逆転現象

その他の症状

  • うつ症状:初期段階でうつ症状が前景に出ることがあり、DLBが見落とされる原因となります
  • 自律神経症状:起立性低血圧(立ち上がると血圧が低下する)、便秘、尿失禁
  • 感情的不安定性:唐突に泣いたり、怒ったりする
  • 誤嚥のリスク:嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎のリスクが高くなる

診断

DLBの診断には、臨床的特徴と検査所見が組み合わせられます。

臨床的診断基準(DLBコンソーシアム改訂基準)

以下の4つの主要特徴のうち、2つ以上が存在すれば、DLBと診断されます。

  1. 視幻覚(通常は詳細でリアル)
  2. パーキンソニズム(筋固縮、静止時振戦、動作緩慢など)
  3. REM睡眠行動障害
  4. 著明な神経画像異常(PET検査での後頭葉の血流低下など)

認知機能検査

MMSE、MoCAなどのスクリーニング検査により、認知機能低下の程度を評価します。

神経心理学的検査により、実行機能と注意機能の低下が、記憶障害よりも著明かどうかを評価することが、DLBとアルツハイマー病の鑑別に重要です。

脳画像検査

頭部MRI:脳委縮の程度を評価します。DLBでは、後頭葉の委縮は軽度であることが多いです。これは、アルツハイマー病で海馬の委縮が著明なのとは対照的です。

脳血流検査(SPECT)後頭葉と側頭葉の血流低下が特徴的です。DLBに特異的な「後頭葉の血流低下」パターンが認識されます。

PET検査:後頭葉でのアミロイド蓄積の有無を評価でき、アルツハイマー病との鑑別に役立ちます。

脳脊髄液検査

タウ蛋白やアミロイドβを測定し、他の認知症との鑑別に役立つことがあります。

病理学的診断

確定診断は、脳病理検査により、レビー小体の蓄積を組織学的に確認することで行われます。ただし、これは剖検後に行われます。

治療

DLBの治療には、複数のアプローチがあります。

認知機能改善薬

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン)が、DLB患者さんの認知機能低下を遅延させ、視幻覚を改善させることが報告されており、推奨されています。

NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)も、補助的な役割を果たすことがあります。

パーキンソニズムの管理

L-dopa製剤(レボドパ)は、パーキンソン病治療の標準薬剤ですが、DLB患者さんでは、視幻覚が悪化することがあるため、慎重に使用する必要があります。

ドーパミン受容体作動薬も、同様に視幻覚を悪化させる可能性があります。

つまり、DLB患者さんでは、パーキンソニズムが存在しても、これを過度に治療すると、別の症状が悪化するという治療のジレンマが存在します。

睡眠障害の管理

REM睡眠行動障害に対して、クロナゼパムなどの睡眠薬が用いられることがあります。

昼間の眠気に対しては、刺激薬(メチルフェニデートなど)が用いられることがあります。

抗精神病薬の使用に関する重要な注意

DLB患者さんは、抗精神病薬(特に典型的抗精神病薬)に極度に過敏であるという極めて重要な特徴があります。

視幻覚に対して、通常のアルツハイマー病患者さんと同じように抗精神病薬を投与すると、生命を脅かす重篤な有害事象が起こることがあります。

具体的には、パーキンソニズムの悪化、意識障害、体温上昇、筋肉のこわばり(悪性症候群)などが起こり、患者さんの死亡に至る可能性があります。

したがって、DLB患者さんでは、抗精神病薬の使用を可能な限り避け、やむを得ず使用する場合も、最小用量で慎重に観察することが極めて重要です。

その他の対症療法

起立性低血圧に対して、圧迫ストッキングや、時には薬物療法(ミドドリン)が用いられます。

便秘に対して、浸透圧性下剤や、時には刺激性下剤が用いられます。

うつ症状に対して、SSRIなどの抗うつ薬が用いられることがあります。

リハビリテーション

転倒予防のための物理療法が重要です。また、認知機能維持のための認知トレーニングも有効です。


看護アセスメント・介入


よくある看護診断・問題

  • 知識不足:疾患、症状、治療について
  • 視幻覚に伴う不安と混乱
  • パーキンソニズムに伴う転倒・転落のリスク
  • REM睡眠行動障害による睡眠障害と安全上の課題
  • 抗精神病薬の使用に関する危険性の認識不足
  • 自律神経症状(起立性低血圧、便秘)の管理困難
  • 認知機能低下に伴う自己管理困難
  • 家族の介護負担と心理的苦痛
  • 転倒による骨折や外傷のリスク

ゴードン機能的健康パターン

健康知覚-健康管理パターンでは、患者さんがDLBという疾患をどの程度理解しているか、そして視幻覚などの症状にどのように対処しようとしているかが重要です。患者さんの中には、視幻覚を現実のものと信じ込み、それに基づいた行動をする患者さんもいます。

認識-認知パターンでは、患者さんの視幻覚が極めてリアルであり、患者さん自身が「本当に見えている」と確信しているという状況を理解することが極めて重要です。

ストレス-対処パターンでは、患者さんが視幻覚にどのように対処しようとしているか(家族に報告する、無視する、反応する、など)を評価します。

睡眠-休息パターンでは、特にREM睡眠行動障害により、患者さんの睡眠が著しく障害されている可能性があり、昼間の眠気や認知機能低下につながっているかどうかを評価します。

活動-運動パターンでは、パーキンソニズムにより、患者さんの身体活動が制限され、転倒のリスクが高まっている状況を評価します。

値値-信念パターンでは、患者さんと家族が、抗精神病薬などの薬物療法についてどのように考えているか、そして治療方針についてどのような希望を持っているかを評価します。

ヘンダーソン14基本的ニード

認識では、患者さんが視幻覚により、現実と虚構が混同している状況を理解することが極めて重要です。患者さんの視幻覚を否定するのではなく、患者さんの経験を受け入れながら、患者さんが危険な行動をしないようにすることが看護の要点です。

活動と運動では、パーキンソニズムにより、患者さんが転倒のリスクを有しており、継続的な監視と環境設定が必要です。

睡眠と休息では、REM睡眠行動障害により、患者さんが安全に睡眠できるような環境設定が重要です。

排泄では、自律神経症状による便秘が一般的であり、便秘管理が重要です。

危機的状況への安全として、抗精神病薬の使用により、生命を脅かす有害事象が起こる可能性があるため、薬物療法の慎重な管理が極めて重要です。また、転倒による骨折のリスクも常に念頭に置くべきです。


看護計画・介入の内容


  • レビー小体型認知症の疾患教育:患者さんと家族への情報提供:患者さんと家族に対して、「DLBは、視幻覚、パーキンソニズム、睡眠障害という独特な症状を示す認知症であり、これらの症状は、脳の病理学的変化による症状であること」を説明することが重要です。また、「DLBは、アルツハイマー病や血管性認知症とは異なり、適切な治療により症状の改善が期待できる可能性がある」という情報提供が、患者さんと家族に希望を持たせることが重要です。
  • 視幻覚への対応と患者さんの不安軽減:患者さんが視幻覚を経験しているとき、看護師は「その幻覚は本当には存在しない」と否定するべきではありません。むしろ、患者さんの経験を受け入れながら、患者さんが落ち着き、危険な行動をしないようにすることが重要です。例えば、患者さんが「人物が見える」と訴えた場合、看護師は「私には見えませんが、あなたに見えているのですね。その人物は危険な人ですか?」という対応が、患者さんの不安を軽減させます。
  • 抗精神病薬の使用に関する医療チームへの警告と家族への教育:DLB患者さんが抗精神病薬に極度に過敏であることを、医療チーム全体が理解し、抗精神病薬の使用を避けることが極めて重要です。特に、通院中の患者さんが、他の医療機関(例えば、内科や整形外科)で、DLBであることが医療者に告知されないまま、抗精神病薬を処方されるリスクがあります。看護師は、患者さんと家族に対して、「DLBの場合、特定の抗精神病薬は非常に危険であり、必ず医療提供者に伝える必要がある」と強く指導することが重要です。
  • 転倒予防と安全な環境設定:パーキンソニズムにより、患者さんの転倒リスクが極めて高いため、環境設定が重要です。段差の除去、手すりの設置、床の滑り止め、照明の改善などが必要です。また、患者さんが独歩している場合は、スタッフによる見守りが重要です。
  • REM睡眠行動障害への対応と安全な睡眠環境の確保:患者さんがREM睡眠行動障害により、睡眠中に激しく動いたり、叫んだりするリスクがあるため、安全な環境設定が重要です。ベッドから転落しないような工夫、周囲に危険物がないことの確認などが必要です。また、配偶者と同室の場合は、配偶者の安全確保も重要です。
  • 起立性低血圧への対応:患者さんが起立性低血圧により、立ち上がった時にふらつきや失神のリスクを有している場合、「ゆっくり立ち上がる」「圧迫ストッキングを使用する」などの対策が重要です。
  • 便秘管理:自律神経症状による便秘が一般的であり、定期的な排便管理と、必要に応じた下剤の使用が重要です。また、患者さんが便秘に気づかないことがあるため、定期的な排便チェックが重要です。
  • 認知機能改善薬の使用と効果の監視:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬などの認知機能改善薬が、患者さんの認知機能低下と視幻覚を改善させるかどうか、継続的に評価することが重要です。
  • 患者さんと家族への心理的サポート:DLBは、患者さんの認知機能が低下し、視幻覚を経験し、パーキンソニズムにより動きが困難になっていく疾患です。患者さんが自分の病状の進行を経験し、不安や絶望感を感じることが多いため、心理的サポートが重要です。また、家族も患者さんの介護に伴う身体的・心理的負担を経験しており、家族自身の心理的ケアも重要です。
  • 医薬品相互作用の監視:DLB患者さんが複数の薬剤を服用している場合、薬剤間相互作用により、有害事象が起こる可能性があります。特に、抗精神病薬や、パーキンソンニズムに対する治療薬の使用には、注意が必要です。
  • 誤嚥と肺炎予防:DLB患者さんでは、嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。食事時の体位管理、食形態の工夫、嚥下機能の定期的な評価が重要です。
  • 社会的サポートと患者支援組織との連携:DLB患者さんと家族に対して、利用可能な社会的リソース(デイサービス、ショートステイ、認知症カフェ、患者会など)に関する情報提供が重要です。

よくある疑問・Q&A


Q: レビー小体型認知症と診断されました。治りますか?

A: レビー小体型認知症は、完全には治りませんが、適切な治療により症状の改善が期待できる可能性がある認知症です。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬などの認知機能改善薬により、認知機能低下と視幻覚が改善することが報告されています。つまり、DLBは、アルツハイマー病よりも、治療への反応性が良い可能性がある認知症です。

Q: 患者さんが見えない人物が見えると言い張っています。何をしたらよいですか?

A: DLB患者さんの視幻覚は、極めてリアルであり、患者さんは「本当に見えている」と確信しています。看護師が「それは幻覚です。本当には存在しません」と否定することは、患者さんの不信を招き、患者さんの不安を増加させるだけです。重要なのは、患者さんの経験を受け入れながら、患者さんが危険な行動をしないようにすることです。例えば、「その人物は危険な人ですか?」「その人物はあなたに危害を加えようとしていますか?」などと、患者さんの不安や恐怖を軽減させる対話が重要です。

Q: 患者さんが睡眠中に激しく動き、寝床から落ちそうです。何ができますか?

A: これはREM睡眠行動障害の症状です。患者さんの安全を確保するために、以下の対策が重要です。ベッドの周囲にマットレスを置く、ベッドの高さを低くする、床に危険物がないことの確認。また、医師に相談して、睡眠薬(クロナゼパム)の使用を検討することも重要です。さらに、配偶者と同室の場合は、配偶者の安全確保も重要です。

Q: 患者さんのパーキンソニズムを治療するため、L-dopa製剤を処方されました。これは安全ですか?

A: DLB患者さんでは、L-dopa製剤が視幻覚を悪化させることがあるため、慎重に使用する必要があります。医師に「DLBであることを確認し、L-dopaの使用が適切かどうか相談することが重要です。パーキンソニズムが存在しても、これを過度に治療すると、別の症状が悪化するという治療のジレンマが存在することを理解することが重要です。

Q: 患者さんが立ち上がるとふらつきます。これは何ですか?

A: これは起立性低血圧の症状で、DLBに特有の自律神経症状です。患者さんの血圧が、立ち上がった時に低下し、脳への血流が一時的に低下することが原因です。患者さんに対して、「ゆっくり立ち上がる」「立ち上がる前に足の運動をする」「圧迫ストッキングを使用する」などの対策が有効です。

Q: 患者さんが便秘でほぼ毎日下剤を使用しています。これは安全ですか?

A: DLB患者さんでは、自律神経症状による便秘が一般的です。下剤の定期的な使用は、適切な便秘管理の一部です。ただし、下剤の長期使用により、腸の自然な排便反射が低下することがあるため、医師と相談して、下剤の種類と用量を適切に管理することが重要です。また、食物繊維と水分摂取も便秘予防に有効です。

Q: 患者さんが「抗精神病薬は危険」と言われました。なぜですか?

A: DLB患者さんは、抗精神病薬(特に典型的抗精神病薬)に極度に過敏であり、通常の用量でも、重篤な有害事象(パーキンソニズムの悪化、意識障害、体温上昇、筋肉のこわばり)が起こり、患者さんの死亡に至る可能性があります。これは、DLBの脳病理学的特徴(ドーパミン神経系の障害)により、脳が抗精神病薬に過度に反応するためです。したがって、DLB患者さんでは、抗精神病薬の使用を可能な限り避けることが極めて重要です。

Q: 患者さんがうつ症状を示しています。抗うつ薬を使用してもよいですか?

A: はい、DLB患者さんでは、うつ症状が初期段階で現れることが多く、SSRIなどの抗うつ薬が用いられることがあります。ただし、抗精神病薬ではなく、抗うつ薬やアルツハイマー病治療薬などの他の治療薬を優先的に検討することが重要です。医師に相談して、DLBに適切な治療方針を確認することが重要です。

Q: 患者さんが転倒して骨折しました。これはDLBと関連していますか?

A: はい、極めて関連しています。DLBのパーキンソニズムにより、患者さんの動きが悪くなり、バランスが悪くなり、転倒のリスクが著しく高くなります。特に、高齢者では骨粗鬆症も伴うため、軽微な転倒でも骨折する可能性があります。転倒予防のための環境設定と、見守りが極めて重要です。

Q: 患者さんが複数の医療機関を受診しています。DLBであることを伝えるべきですか?

A: はい、非常に重要です。特に、他の医療機関(例えば、内科、整形外科)で、患者さんがDLBであることが伝わらないまま、抗精神病薬が処方されるリスクがあります。患者さんと家族に対して、「すべての医療提供者にDLBであることを伝え、抗精神病薬を処方しないように指示することが、患者さんの生命を守るために極めて重要」と指導することが重要です。


まとめ


レビー小体型認知症は、認知症の中では比較的診断が遅れやすく、治療により症状の改善が期待できる可能性がある数少ない認知症です。

DLBの最大の特徴は、視幻覚、パーキンソニズム、REM睡眠行動障害、自律神経症状という独特な症状群です。これらの症状が、他の認知症とは異なり、DLBに特異的な診断的手がかりとなります。

極めて重要な注意点は、DLB患者さんが抗精神病薬に極度に過敏であり、通常の用量でも生命を脅かす有害事象が起こる可能性があり、場合によっては死亡に至る可能性があるということです。看護師は、この事実を深く理解し、DLB患者さんが誤って抗精神病薬を処方されることがないよう、患者さんと家族を教育し、医療チーム全体に警告することが、極めて重要な責任です。

DLB患者さんの視幻覚は、極めてリアルであり、患者さんは本当に見えていると確信しています。看護師は、患者さんの幻覚を否定するのではなく、患者さんの経験を受け入れながら、患者さんが危険な行動をしないようにすることが重要です。このアプローチにより、患者さんの不安が軽減され、患者さんと看護師の信頼関係が築かれます。

パーキンソニズムにより、患者さんの転倒リスクが著しく高いため、環境設定と継続的な見守りが重要です。転倒による骨折は、高齢者の自立喪失と生活の質低下につながるため、転倒予防は看護ケアの最優先事項の一つです。

REM睡眠行動障害により、患者さんの睡眠が著しく障害されており、同時にベッドから転落するリスクもあります。患者さんと配偶者(同室の場合)の両者の安全を考慮した環境設定が重要です。

DLB患者さんと家族は、診断から、進行に伴う症状の多様性に直面し、高い心理的負担を経験しています。看護師は、患者さんと家族に対して、「DLBは治療により症状の改善が期待できる可能性がある認知症である」という希望を持たせながら、同時に現実的で実行可能なサポートを提供することが重要です。

実習では、DLB患者さんの視幻覚、パーキンソニズム、睡眠障害などの多様な症状を経験し、患者さんの経験を理解し、患者さんの尊厳と安全を守るための看護の本質を学ぶ貴重な機会になるでしょう。特に、「抗精神病薬に対する極度の過敏性」という、DLBに特異的で生命に関わる知識を習得することは、看護師として患者さんの生命を守るための極めて重要なスキルです。


免責事項

・本記事は教育・学習目的の情報提供です。

・一般的な医学知識の解説であり、個別の患者への診断・治療の根拠ではありません。

・実際の看護実践は、患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。

・記事の情報は公開時点のものであり、最新の医学的知見と異なる場合があります。

・本記事を課題としてそのまま提出しないでください。

・正確な情報提供に努めていますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。


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