【疾患解説】尿路感染症

疾患解説

疾患概要

定義

尿路感染症とは、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に細菌などの病原微生物が感染することで起こる炎症性疾患です。感染部位により上部尿路感染症(腎盂腎炎)と下部尿路感染症(膀胱炎、尿道炎)に分類されますね。

疫学

女性に圧倒的に多く、男女比は約1:8となっています。これは女性の尿道が短く(約4cm)、肛門に近いという解剖学的特徴が関係しています。年齢では20~30代の性的活動期と60歳以降の高齢者に多く見られるでしょう。

原因

最も多い原因菌は大腸菌(E.coli)で、全体の約80~90%を占めています。その他、腸球菌、クレブシエラ、プロテウスなどのグラム陰性桿菌が原因となることもあります。感染経路は主に上行性感染で、会陰部から尿道を通って膀胱へと細菌が侵入します。

病態生理

正常な尿路には自浄作用があり、定期的な排尿により細菌は洗い流されています。しかし、尿流の停滞、免疫力の低下、尿道カテーテルの留置などにより細菌が増殖しやすい環境になると感染が成立します。細菌が膀胱壁に付着・増殖すると炎症反応が起こり、膀胱粘膜の充血・浮腫・出血が生じるのです。

症状・診断・治療

症状

下部尿路感染症では排尿時痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感が主な症状となります。尿の混濁や血尿が見られることもあるでしょう。上部尿路感染症では下部症状に加えて発熱(38℃以上)、悪寒戦慄、腰背部痛が現れ、重篤な場合は敗血症に進行する可能性もあります。

診断

診断は主に尿検査により行われます。尿中白血球数の増加(5個/hpf以上)、細菌尿(103~104 CFU/ml以上)が診断の指標となります。尿培養検査では原因菌の同定と薬剤感受性を確認し、適切な抗菌薬選択に役立てます。症状と検査所見を総合的に判断することが重要ですね。

治療

軽症の下部尿路感染症では経口抗菌薬による治療が基本となります。第一選択薬はニューキノロン系やセフェム系抗菌薬で、通常3~7日間投与します。上部尿路感染症や重症例では静脈内抗菌薬投与が必要となり、入院治療を要することもあるでしょう。治療効果の判定は症状改善と尿検査の正常化により行います。

看護アセスメント・介入

よくある看護診断・問題

・排尿パターンの変調
・急性疼痛
・感染リスク状態
・体液量不足のリスク状態
・知識不足
・不安
・活動耐性低下

ゴードンのポイント

排泄パターンが最も重要な評価項目となります。排尿回数、尿量、排尿時の症状、尿の性状(色調、混濁、臭い)を詳細に観察する必要があります。また、活動・運動パターンでは発熱による全身倦怠感や疼痛による日常生活への影響を評価しましょう。認知・知覚パターンでは疼痛の程度や性質、部位を正確にアセスメントすることが大切です。

ヘンダーソンのポイント

正常な排泄のニードにおいて、排尿困難や頻尿による患者の苦痛を理解し、適切な援助を提供する必要があります。清潔と身だしなみのニードでは、感染予防の観点から会陰部の清潔保持が重要となるでしょう。安全で健康的な環境で生活するニードとして、再発防止のための生活指導や感染管理を行うことが求められます。

看護計画・介入の内容

・バイタルサインの定期的な観察(特に体温、脈拍)
・尿量・尿回数・尿性状の観察と記録
・疼痛スケールを用いた痛みの評価
・十分な水分摂取の促進(1日1500ml以上)
・会陰部の清潔保持の指導と援助
・排尿後の外陰部清拭の指導(前から後ろへ)
・規則正しい排尿習慣の指導
・抗菌薬の確実な服薬指導
・症状悪化時の受診タイミングの説明
・再発予防のための生活指導

よくある疑問・Q&A

Q: なぜ女性に尿路感染症が多いのですか?

A: 女性の尿道は男性と比べて短く(約4cm)、また肛門に近い位置にあるため、腸内細菌が尿道に侵入しやすい解剖学的特徴があります。さらに性行為により細菌が機械的に押し上げられることも感染リスクを高める要因となっています。

Q: 水分摂取はどの程度必要ですか?

A: 一般的に1日1500ml以上の水分摂取が推奨されています。十分な水分摂取により尿量が増加し、細菌を洗い流す効果が期待できます。ただし、心疾患や腎疾患がある場合は医師の指示に従う必要があるでしょう。

Q: 抗菌薬は症状が改善したら中止してもよいですか?

A: 症状が改善しても処方された抗菌薬は最後まで服用することが重要です。途中で中止すると細菌が完全に除菌されず、再発や薬剤耐性菌の出現リスクが高まります。必ず医師の指示通りに服薬を継続してください。

Q: 再発を防ぐにはどうすればよいですか?

A: 日常生活での予防策として、十分な水分摂取、規則正しい排尿(尿を我慢しない)、排便後や性行為後の適切な清拭、綿素材の下着着用、便秘の予防などが効果的です。これらの指導を患者さんに分かりやすく説明することが看護師の重要な役割ですね。

Q: カテーテル関連尿路感染症とは何ですか?

A: 尿道カテーテル留置中に起こる尿路感染症のことで、**CAUTI(Catheter-Associated Urinary Tract Infection)**と呼ばれます。カテーテル留置により正常な排尿機能が阻害され、細菌が増殖しやすくなります。予防には無菌的操作、適切な固定、早期抜去が重要となります。

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この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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