概要
定義
白内障とは、眼球の水晶体が混濁(濁る)することで視力が障害される疾患ですね。水晶体は本来透明でレンズの役割を果たしていますが、これが白く濁ることで光の通り道が遮られ、視力低下や視野異常を引き起こします。
疫学
白内障は高齢者に最も多く見られる眼疾患で、70歳以上では90%以上の人に何らかの水晶体混濁が認められます。日本では年間約140万件の白内障手術が行われており、失明原因の上位を占める重要な疾患でしょう。男女差はほとんどありませんが、やや女性に多い傾向があります。
原因
最も多いのは加齢性白内障で、全体の約90%を占めます。その他の原因として、糖尿病などの代謝性疾患、ステロイドなどの薬剤性、外傷性、先天性、放射線による影響などがあります。紫外線への長期曝露も発症リスクを高める要因として知られていますね。
病態生理
水晶体は水晶体線維とそれを包む水晶体嚢から構成されています。加齢とともに水晶体蛋白質の変性や酸化ストレスの増加により、蛋白質が凝集して不溶性となり混濁が生じます。また、水晶体の代謝異常により水分バランスが崩れることも混濁の原因となるでしょう。糖尿病では高血糖により水晶体内にソルビトールが蓄積し、浸透圧変化を起こして混濁を促進します。
症状・診断・治療
症状
初期症状として視力低下、霧視(かすんで見える)、羞明(まぶしさ)が現れます。進行すると、単眼複視(片目で物が二重に見える)、色覚異常、夜間視力の低下などが生じるでしょう。混濁の部位によって症状の現れ方が異なり、核白内障では近視化、皮質白内障では羞明が強く現れる傾向があります。患者さんは「新聞が読みにくい」「階段の段差がわからない」「夜間の運転が怖い」といった日常生活への支障を訴えることが多いですね。
診断
診断は主に細隙灯顕微鏡検査により水晶体の混濁を直接観察することで行います。視力検査では矯正視力の測定、眼圧検査で緑内障の合併を確認します。散瞳検査により水晶体全体の状態を詳しく観察し、混濁の程度や部位を評価するでしょう。眼底検査では網膜の状態も同時に確認し、他の眼疾患との鑑別を行います。
治療
白内障の根本的治療は外科的手術のみです。点眼薬による薬物療法は進行抑制効果が期待されますが、混濁した水晶体を透明に戻すことはできません。手術適応は視力低下の程度と患者の生活への支障度で決定されます。現在主流の術式は超音波水晶体乳化吸引術で、小切開から混濁した水晶体を除去し、眼内レンズを挿入します。日帰り手術が可能で、術後視力回復も良好でしょう。
看護アセスメント・介入
よくある看護診断・問題
・視覚障害に関連した転倒・外傷のリスク
・視力低下に関連した日常生活動作の障害
・疾患や手術に対する不安
・視覚情報の減少に関連した社会的孤立のリスク
・術後感染のリスク
・点眼に関連した知識不足
ゴードンのポイント
健康知覚-健康管理パターンでは、患者が白内障の病態や治療方法を理解しているか、定期的な眼科受診の必要性を認識しているかを確認することが重要です。活動-運動パターンでは、視力低下による転倒リスクや日常生活動作への影響を詳しくアセスメントしましょう。特に階段昇降、入浴、調理などの安全性について具体的に聞き取ることが大切ですね。認知-知覚パターンでは視力低下の程度、見え方の変化、痛みの有無を評価します。役割-関係パターンでは、視力低下による仕事や家事
ヘンダーソンのポイント
安全の確保では、視力低下による転倒や事故のリスクが最も重要な問題となります。住環境の整備や移動時の注意点について具体的な指導が必要ですね。コミュニケーションでは、視覚情報の減少により非言語的コミュニケーションが困難になることがあります。学習では、疾患の理解や術後管理に関する教育が重要で、視力低下を考慮した教材の選択や説明方法の工夫が求められるでしょう。レクリエーションでは、視力低下により今まで楽しんでいた活動ができなくなることによる精神的な影響も考慮する必要があります。
看護計画・介入の内容
・転倒予防のための環境整備指導(手すりの設置、段差の解消、照明の改善)
・日常生活動作の安全な方法の指導と練習
・白内障の病態と治療に関する患者教育
・術前オリエンテーション(手術の流れ、麻酔方法、術後の注意点)
・術後の点眼指導と感染予防教育
・視力回復過程の説明と期待される効果の明確化
・家族を含めたサポート体制の構築
・定期受診の重要性と継続の支援
・視覚障害者向けサービスの情報提供
・心理的サポートとカウンセリング
よくある疑問・Q&A
Q: 白内障は目薬で治りますか?
A: 残念ながら、一度濁った水晶体を透明に戻す目薬はありません。現在使用されている白内障治療薬は進行を遅らせる効果が期待されますが、根本的な治療にはならないでしょう。確実な視力回復には手術が必要です。
Q: 手術は痛いですか?
A: 現在の白内障手術は点眼麻酔で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。術中は目を触られている感覚はありますが、強い痛みを感じることは稀でしょう。術後も軽度の違和感程度で、日常生活に支障をきたすような痛みはありません。
Q: 両目同時に手術できますか?
A: 通常は片眼ずつ手術を行います。これは感染などの合併症リスクを避けるためと、術後の視力バランスを確認するためです。片眼の手術後、1〜2週間程度の間隔をあけてもう片方の手術を行うのが一般的ですね。
Q: 術後の視力はすぐに回復しますか?
A: 多くの場合、術後翌日から視力の改善を実感できます。しかし、完全な視力安定には1〜3ヶ月程度かかることもあります。個人差がありますが、90%以上の患者さんで良好な視力回復が期待できるでしょう。
Q: 再発することはありますか?
A: 白内障自体の再発はありません。ただし、術後数ヶ月から数年後に後発白内障(後嚢混濁)が起こることがあります。これは水晶体嚢の後面が濁る現象で、レーザー治療により簡単に改善できますね。
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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