【急性腎不全】疾患解説と看護のポイント

疾患解説

疾患概要

定義

急性腎不全とは、数時間から数日という短期間のうちに急速に腎機能が低下し、体内の老廃物や水分、電解質の調節ができなくなった状態です。現在は急性腎障害(AKI: Acute Kidney Injury)という用語が国際的に使用されており、血清クレアチニンの上昇や尿量の減少を基準に診断されます。適切な治療により腎機能の回復が期待できる可逆的な病態ですが、重症化すると慢性腎臓病へ移行したり、生命に関わる合併症を引き起こすため、早期発見と迅速な対応が極めて重要です。

疫学

急性腎障害は入院患者の約5〜20%に発症し、特に集中治療室では30〜50%という高い頻度で見られます。高齢者、糖尿病患者、慢性腎臓病の既往がある患者、心不全患者などがハイリスク群です。近年、高齢化や複雑な医療処置の増加に伴い、発症率は上昇傾向にあります。死亡率は原因や重症度によって異なりますが、透析を要する重症例では30〜50%と高く、多臓器不全を合併した場合はさらに予後不良となります。また、一度急性腎障害を発症すると、将来的に慢性腎臓病や心血管疾患のリスクが高まることが明らかになっています。

原因

急性腎不全の原因は、発症機序により腎前性腎性腎後性の3つに分類されます。

腎前性(約55〜60%)は、腎臓への血流が減少することで起こります。具体的には、脱水、出血、ショック、心不全、肝硬変による循環血液量の減少、NSAIDsやACE阻害薬などの薬剤による腎血流量の低下が原因となります。腎臓自体には障害がないため、早期に原因を除去すれば回復が期待できます。

腎性(約35〜40%)は、腎臓自体が障害される病態です。急性尿細管壊死が最も多く、虚血や薬剤、造影剤、横紋筋融解症などが原因となります。その他、急速進行性糸球体腎炎、急性間質性腎炎、腎血管障害なども含まれます。腎組織の障害があるため、回復に時間がかかることがあります。

腎後性(約5%)は、尿路の閉塞により尿の排出が妨げられることで起こります。前立腺肥大、尿路結石、腫瘍、後腹膜線維症などが原因です。両側性の閉塞、または単腎の場合は片側の閉塞でも発症します。閉塞を早期に解除すれば、腎機能の回復が期待できます。


病態生理

急性腎不全の病態は、原因により異なるメカニズムで進行します。

腎前性急性腎不全では、脱水、出血、心拍出量低下などにより腎血流量が減少します。すると、糸球体濾過量が低下し、尿細管での再吸収が亢進します。この段階では腎臓自体に器質的な障害はなく、血液量や循環動態が改善されれば速やかに腎機能は回復します。しかし、腎血流低下が持続すると、尿細管細胞が虚血状態に陥り、急性尿細管壊死へと進行します。

腎性急性腎不全の代表である急性尿細管壊死では、尿細管上皮細胞が障害され、壊死・脱落が起こります。虚血性の場合、近位尿細管と太い上行脚が主に障害され、毒性物質による場合は近位尿細管が選択的に障害されます。障害された尿細管からは糸球体濾過液が漏出し、尿細管腔は剥離した細胞や円柱で閉塞します。これにより糸球体濾過量がさらに低下します。

糸球体濾過量の低下により、体内の老廃物である尿素窒素やクレアチニンが蓄積します。また、カリウムの排泄が障害され、高カリウム血症を引き起こします。高カリウム血症は心臓の電気的活動に影響を与え、不整脈や心停止のリスクとなります。

酸塩基平衡の異常も生じ、水素イオンの排泄障害により代謝性アシドーシスが進行します。アシドーシスは意識障害や呼吸促迫を引き起こします。

体液量の調節障害により、乏尿や無尿の場合は水分が体内に貯留し、浮腫、肺水腫、心不全を引き起こします。逆に多尿期には脱水のリスクがあります。

電解質異常として、高カリウム血症のほか、低ナトリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症なども出現します。

これらの代謝産物の蓄積や電解質異常により、尿毒症症状が現れます。消化器症状として悪心・嘔吐、食欲不振、神経症状として意識障害、痙攣、循環器症状として心膜炎、不整脈などが生じます。

急性腎不全は一般に、導入期→維持期→利尿期→回復期という経過をたどります。維持期は数日から数週間続き、この時期に透析療法が必要となることが多いです。利尿期に入ると尿量が増加しますが、尿細管の再吸収機能はまだ回復していないため、大量の水分と電解質が失われる可能性があり注意が必要です。


症状・診断・治療

症状

急性腎不全の症状は、腎機能低下の程度や原因、経過により多様です。

初期には尿量の変化が重要なサインとなります。乏尿(1日尿量400ml未満)または無尿(1日尿量100ml未満)が出現することが多いですが、尿細管の再吸収機能が障害されている場合は、腎機能が低下していても尿量は維持される非乏尿性急性腎不全もあります。このため、尿量だけでなく血液検査での評価が必須です。

体液貯留による症状として、全身の浮腫、体重増加、呼吸困難、起坐呼吸などが見られます。肺水腫が進行すると、喘鳴や泡沫状の痰を伴う重度の呼吸困難が出現します。

尿毒症症状は多岐にわたります。消化器症状では、悪心・嘔吐、食欲不振、口内炎、消化管出血が見られます。神経症状では、倦怠感、集中力低下、意識障害、傾眠、痙攣、ミオクローヌスなどが出現します。循環器症状では、心膜炎による胸痛、心嚢液貯留、不整脈があります。

高カリウム血症は生命を脅かす重大な合併症です。初期には特異的症状がありませんが、進行すると筋力低下、しびれ、不整脈が出現し、重症例では心室細動や心停止に至ります。

代謝性アシドーシスにより、深くゆっくりとした呼吸であるクスマウル呼吸が見られることがあります。

原因疾患に関連した症状も重要です。腎前性では脱水症状や低血圧、腎性では血尿や発熱、腎後性では腹痛や膀胱充満感などが見られることがあります。

診断

診断は、詳細な病歴聴取、身体診察、検査所見を総合的に評価して行われます。

KDIGO基準による急性腎障害の診断は以下のいずれかを満たす場合です。

  • 48時間以内に血清クレアチニンが0.3mg/dl以上上昇
  • 7日以内に血清クレアチニンが基礎値の1.5倍以上に上昇
  • 6時間以上にわたり尿量が0.5ml/kg/時未満

血液検査では、血清クレアチニンとBUNの上昇を確認します。BUN/Cr比は原因鑑別に有用で、腎前性では比が20以上に上昇することが多いです。電解質検査では、高カリウム血症、低ナトリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症などをチェックします。血液ガス分析では代謝性アシドーシスの有無と程度を評価します。

尿検査も重要です。尿比重、尿浸透圧、尿中ナトリウム濃度、尿中クレアチニン濃度を測定し、腎前性か腎性かを鑑別します。腎前性では尿が濃縮されるため尿比重が高く、尿中ナトリウムは低値となります。尿沈渣で円柱や上皮細胞を確認し、腎実質障害の有無を評価します。

画像診断では、超音波検査で腎臓のサイズ、水腎症の有無、尿路閉塞の有無を確認します。CTやMRIは閉塞部位の特定や腎血管の評価に有用です。

原因検索のため、薬剤歴、造影剤使用歴、感染症の有無、自己免疫疾患の既往などを詳しく聴取します。必要に応じて腎生検を行い、組織学的診断をつけることもあります。

治療

治療の基本方針は、原因の除去腎機能の保護合併症の予防と管理、そして透析療法の適切なタイミングでの導入です。

原因別の治療として、腎前性では循環血液量の回復が最優先です。脱水の場合は輸液、出血の場合は輸血、心不全の場合は強心薬や利尿薬を使用します。腎性では原因物質の除去が重要で、薬剤性であれば原因薬剤の中止、感染症であれば抗菌薬投与を行います。腎後性では、尿路閉塞の解除が急務です。膀胱留置カテーテルの挿入、尿管ステント留置、腎瘻造設などを速やかに行います。

体液管理が極めて重要です。乏尿期には水分制限を行い、前日の尿量+不感蒸泄(約500ml)+その他の喪失量を目安に水分摂取量を調整します。体重測定を毎日行い、急激な体重増加は体液過剰のサインです。利尿薬は乏尿を改善する目的で使用されることがありますが、腎機能そのものを改善するわけではありません。

電解質管理では、高カリウム血症への対応が最優先です。血清カリウム値が6.0mEq/L以上、または心電図異常がある場合は緊急治療が必要です。カルシウム製剤で心筋保護を図り、インスリン・グルコース療法やβ2刺激薬で細胞内へのカリウム移動を促進します。カリウム吸着薬や透析でカリウムを体外に除去します。カリウムを多く含む食品の摂取制限も重要です。

代謝性アシドーシスに対しては、重炭酸ナトリウムの投与を検討しますが、ナトリウム負荷による体液過剰に注意が必要です。

栄養管理では、適切なエネルギー摂取(25〜35kcal/kg/日)とタンパク質制限(0.6〜0.8g/kg/日)を行います。ただし、透析導入後はタンパク質制限を緩和します。

透析療法の適応は、高カリウム血症(7mEq/L以上)、代謝性アシドーシス(pH7.2未満)、肺水腫・体液過剰、尿毒症症状の出現、BUN100mg/dl以上などです。最近では、早期に透析を開始する傾向にあります。血液透析または持続的腎代替療法(CRRT)が選択されますが、循環動態が不安定な場合はCRRTが推奨されます。

薬剤の調整も重要で、腎排泄性の薬剤は減量または中止し、腎毒性のある薬剤の使用を避けます。


看護アセスメント・介入

よくある看護診断・問題

  • 体液量過剰:腎機能低下による水分・ナトリウム排泄障害に関連した体液貯留
  • ガス交換障害:体液過剰による肺水腫に関連した呼吸困難
  • 心拍出量減少のリスク:高カリウム血症に関連した不整脈・心停止の可能性

ゴードン機能的健康パターン

健康知覚-健康管理パターン

患者さんが自身の腎機能低下をどの程度理解しているか、急性の変化であることの認識があるかを確認します。原因となった要因についての理解度、治療への協力姿勢、透析療法への不安や受け入れ状況などをアセスメントします。また、家族の理解度やサポート体制も重要です。

栄養-代謝パターン

食事摂取量、食事内容を詳しく評価します。尿毒症による食欲不振、悪心・嘔吐の有無と程度を確認します。カリウム、リン、タンパク質、塩分の摂取状況を把握し、制限食に対する理解と実行可能性をアセスメントします。体重の日々の変動は体液貯留の重要な指標となります。浮腫の部位と程度、皮膚の状態も観察します。

排泄パターン

尿量の正確な測定が最も重要です。時間尿量を記録し、乏尿・無尿の有無を判断します。尿の性状、色調、混濁の有無も観察します。利尿期に入ると大量の尿が排出されるため、脱水のリスクをアセスメントします。また、便秘は高カリウム血症のリスクを高めるため、排便状況の確認も必要です。

活動-運動パターン

倦怠感や息切れにより活動能力が低下します。日常生活動作の自立度、活動時の呼吸困難の有無、安静の必要性と程度を評価します。長期臥床による合併症予防の必要性もアセスメントします。透析導入後は、透析中と透析後の活動能力の変化にも注意します。

睡眠-休息パターン

尿毒症による不眠、夜間の呼吸困難、掻痒感、不安などにより睡眠が障害されやすいです。睡眠の質と量、日中の傾眠の有無を確認します。また、透析療法のスケジュールによる生活リズムへの影響もアセスメントします。

認知-知覚パターン

尿毒症性脳症により、意識レベルの低下、見当識障害、集中力低下が生じることがあります。意識レベルを定期的に評価し、変化の早期発見に努めます。また、疾患や治療に対する理解度、透析療法の必要性についての認識もアセスメントします。

ヘンダーソン14基本的ニード

正常に呼吸する

体液過剰による肺水腫や肺うっ血により、呼吸困難が生じます。呼吸数、呼吸音、SpO2を定期的にモニタリングし、呼吸困難の程度を評価します。起坐呼吸の有無、夜間の呼吸困難の有無も確認します。酸素療法の必要性を判断し、効果を評価します。

適切に飲食する

尿毒症による食欲不振、悪心・嘔吐により、経口摂取が困難になります。しかし、栄養状態の維持は重要であり、摂取可能な食品の工夫や少量頻回食などの対応が必要です。水分制限がある場合は、口渇への対処も考えます。カリウム、リン、タンパク質の制限食について、患者さんが理解し実践できるよう支援します。

あらゆる排泄経路から排泄する

尿量の正確な測定が最重要です。1時間ごと、少なくとも2〜4時間ごとに尿量を測定し、乏尿や無尿の早期発見に努めます。尿の性状も観察します。透析療法導入後は、透析中の除水量と血圧の変化にも注意します。便秘はカリウムの排泄を妨げるため、排便コントロールも重要です。

身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する

呼吸困難がある場合は、セミファーラー位や起坐位など、楽な体位を保持できるよう支援します。長期臥床による合併症を予防するため、可能な範囲での体位変換や離床を促します。ただし、循環動態が不安定な場合は、無理な活動は避けます。

睡眠をとり休息する

尿毒症や呼吸困難、不安により睡眠が障害されやすいです。静かで落ち着ける環境を整え、必要に応じて睡眠薬の使用も検討します。呼吸困難に対する体位の工夫や酸素療法により、睡眠の質を改善します。

体温を正常範囲に維持する

感染症の合併は予後を悪化させるため、体温測定を定期的に行い、発熱の早期発見に努めます。透析用カテーテル挿入部の感染徴候にも注意します。

身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する

尿毒症により皮膚の掻痒感が生じることがあります。清潔保持とともに、保湿ケアを行います。浮腫部位の皮膚は脆弱なため、褥瘡予防に努めます。透析用カテーテル挿入部の清潔管理も重要です。

危険を回避し、他者を傷害しないようにする

高カリウム血症による不整脈や心停止、尿毒症性脳症による意識障害や痙攣のリスクがあります。心電図モニタリングを行い、異常の早期発見に努めます。意識レベルが低下している場合は、転倒・転落予防の対策が必要です。

自分の感情、欲求、恐怖、あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションをもつ

急激な病状変化や透析療法の導入により、患者さんは強い不安や恐怖を感じます。患者さんの思いを傾聴し、不安を表出できる機会を提供します。透析療法について十分な説明を行い、理解を深めることで不安の軽減を図ります。

看護計画・介入の内容

  • 水分出納管理:1日の水分出納バランスを正確に記録する。尿量は1〜2時間ごとに測定し、乏尿や無尿の早期発見に努める。体重を毎日同じ条件で測定し、急激な増減を把握する。水分制限が必要な場合は、前日の尿量+不感蒸泄+その他の喪失量を目安に、医師の指示に従って水分量を調整する
  • 呼吸状態のモニタリング:呼吸数、呼吸音、SpO2を定期的に測定し、呼吸困難の程度を評価する。湿性ラ音の出現や呼吸困難の増強があれば速やかに報告する。体液過剰による肺水腫の徴候を早期に発見する。起坐呼吸がある場合はセミファーラー位を保持し、呼吸を楽にする
  • 循環動態の観察:血圧、脈拍を定期的に測定する。心電図モニタリングを行い、高カリウム血症による波形変化(T波の増高、QRS幅の拡大など)や不整脈の出現に注意する。異常があれば直ちに医師に報告し、緊急対応を行う
  • 電解質異常の早期発見:血清カリウム値を頻回に確認し、6.0mEq/L以上または心電図異常がある場合は緊急対応が必要であることを認識する。カリウムを多く含む食品(果物、芋類、生野菜など)の摂取を制限する。便秘はカリウムの体内蓄積を助長するため、排便コントロールを行う
  • 意識レベルの評価:尿毒症性脳症による意識障害の早期発見のため、定期的に意識レベルを評価する。傾眠、見当識障害、集中力低下、痙攣などの神経症状の出現に注意する。異常があれば速やかに報告する
  • 栄養管理の支援:食事摂取量を記録し、栄養状態を評価する。尿毒症による悪心・嘔吐がある場合は、制吐薬の使用と効果を評価する。少量頻回食や嗜好に合わせた食事の工夫を行う。カリウム、リン、タンパク質、塩分の制限について、患者・家族に具体的に説明し、理解を促す
  • 透析療法の準備と管理:透析導入が決定した場合は、患者・家族に透析の必要性と方法について十分に説明し、理解と同意を得る。透析用アクセス(カテーテルや内シャント)の管理を適切に行う。透析中はバイタルサインを定期的に測定し、血圧低下や不整脈などの合併症に注意する。透析後は除水による循環血液量の減少に伴う低血圧に注意する
  • 感染予防:透析用カテーテル挿入部を清潔に保ち、感染徴候(発赤、腫脹、熱感、排膿)の有無を観察する。手洗いを徹底し、無菌操作を確実に行う。発熱や炎症反応の上昇があれば速やかに報告する
  • 皮膚のケア:尿毒症による掻痒感に対し、保湿剤の使用や室温調整を行う。浮腫部位の皮膚は損傷しやすいため、体位変換を定期的に行い、褥瘡を予防する
  • 心理的支援:急激な病状変化や透析導入への不安に対し、患者の思いを傾聴する。透析は一時的なものか、継続が必要かなど、予後についての説明を医師と連携して行う。家族の不安にも配慮し、サポート体制を整える
  • 安全管理:意識レベル低下時は転倒・転落予防のため、ベッド柵の使用やナースコール位置の確認を行う。痙攣が起きた場合の対応を準備しておく。高カリウム血症による心停止のリスクがあるため、緊急カートの場所を確認し、心肺蘇生の準備をしておく

よくある疑問・Q&A

Q: 「尿が出ていないのに水を飲んではいけない」と言われた患者さんが、「喉が渇いて辛い」と訴えています。どう対応すればよいですか?

A: 乏尿期の患者さんにとって、口渇は非常に辛い症状です。水分制限の必要性を説明しつつ、口渇を和らげる工夫をしましょう。まず、口腔ケアをこまめに行い、口の中を湿らせます。氷片を少量口に含む方法も効果的です。氷は溶けると体積が減るため、水分摂取量を抑えられます。また、レモンのスライスや無糖のガムで唾液分泌を促すことも有効です。水分を摂取する際は、小さなコップで少量ずつ飲むようにし、1日の制限量を守りながら回数を分けて摂取できるよう支援します。さらに、室内の乾燥を避けることも口渇の軽減につながります。患者さんの辛さに共感しながら、なぜ水分制限が必要なのか、肺水腫などの合併症を予防するためであることを丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。

Q: 心電図モニターで高カリウム血症を疑う波形が出た場合、どのような変化に注意すればよいですか? また、どう対応すべきですか?

A: 高カリウム血症の心電図変化は段階的に進行し、非常に危険です。初期にはT波の増高・尖鋭化が見られます。進行すると、PR間隔の延長、P波の平坦化・消失、QRS幅の拡大が現れます。さらに悪化すると、sine wave(サインウェーブ)と呼ばれる正弦波様の波形となり、心室細動や心停止に至る危険性が極めて高くなります。このような心電図変化を認めた場合は、直ちに医師に報告し、緊急対応が必要です。血清カリウム値を至急測定し、カルシウム製剤による心筋保護、インスリン・グルコース療法、β2刺激薬吸入などの緊急治療を開始します。場合によっては緊急透析が必要です。看護師は、心電図モニターの異常を見逃さないよう常に注意を払い、高カリウム血症のリスクが高い患者さんでは特に警戒を強める必要があります。また、緊急カートの場所を確認し、心肺蘇生の準備を整えておくことも重要です。

Q: 急性腎不全の患者さんで、急に尿量が増えてきました。「良くなってきた」と喜んでいいのでしょうか?

A: 尿量が増えてきたのは、急性腎不全の利尿期に入った可能性があります。これは回復の兆しではありますが、手放しで喜べる状況ではありません。利尿期では、尿細管の再吸収機能がまだ十分に回復していないため、大量の尿とともに水分と電解質が失われます。そのため、脱水や低カリウム血症、低ナトリウム血症などの電解質異常のリスクが高まります。この時期は、尿量を正確に測定し、それに応じた水分補給が必要です。また、電解質を頻回にモニタリングし、必要に応じて補正します。患者さんには、「腎臓が回復してきている良い兆候ですが、まだ完全には回復していないので、引き続き注意深く観察していく必要があります」と説明しましょう。急に水分制限が解除されるわけではなく、尿量に応じて段階的に調整されることも伝えます。

Q: 透析導入が決まった患者さんが「一生透析をしなければいけないのか」と不安そうです。どう説明すればよいですか?

A: まず、患者さんの不安な気持ちに寄り添い、しっかりと話を聞くことが大切です。急性腎不全の場合、透析は一時的な治療である可能性が高いことを説明します。慢性腎臓病と異なり、急性腎不全は適切な治療により腎機能の回復が期待できる病態です。透析は、腎機能が回復するまでの間、腎臓の機能を代行する治療であり、腎機能が回復すれば透析を離脱できる可能性が十分にあることを伝えます。ただし、回復までの期間は原因や障害の程度により個人差があり、数週間から数ヶ月かかることもあります。また、残念ながら一部の患者さんでは腎機能が十分に回復せず、慢性腎不全に移行することもあるため、経過を見ながら判断していく必要があることも正直に伝えます。不確実な状況で不安が強いと思いますが、現在の状態や今後の見通しについて、医師から詳しく説明を受けられるよう調整することも看護師の役割です。

Q: 急性腎不全の患者さんに「カリウムを制限してください」と言われましたが、具体的にどんな食品を避ければよいか聞かれました。どう答えればよいですか?

A: カリウムを多く含む食品について、具体的に説明することが大切です。高カリウム食品として、果物では バナナ、メロン、キウイ、アボカド、干し柿などがあります。野菜では、生野菜全般、ほうれん草、小松菜、たけのこ、かぼちゃ、芋類(じゃがいも、さつまいも、里芋)が該当します。その他、海藻類、豆類、ナッツ類、チョコレート、インスタントコーヒーなども高カリウム食品です。ただし、野菜は茹でこぼしや水にさらすことでカリウムを減らすことができます。野菜を小さく切って、たっぷりのお湯で茹で、茹で汁は捨てます。また、果物は缶詰のシロップ漬けを選ぶとカリウムが少なくなっています。逆に、カリウムが比較的少ない食品として、白米、パン、うどん、きゅうり、レタス、キャベツ、もやし、りんご(少量)などがあります。ただし、腎機能の状態により制限の程度は異なるため、栄養士による個別の食事指導を受けることをお勧めします。

Q: 急性腎不全と慢性腎不全の違いは何ですか? 実習中に見分けるポイントはありますか?

A: 急性腎不全と慢性腎不全の最大の違いは、発症の速さと可逆性です。急性腎不全は数時間から数日で急速に腎機能が低下しますが、原因を除去すれば回復が期待できる可逆的な病態です。一方、慢性腎不全は数ヶ月から数年かけて徐々に進行し、一度失われた腎機能は回復しない非可逆的な病態です。実習中の見分けるポイントとして、まず病歴を確認します。最近の手術、造影剤使用、脱水、薬剤使用などのエピソードがあれば急性の可能性が高いです。画像検査では、超音波検査で腎臓のサイズを確認します。慢性腎不全では腎臓が萎縮して小さくなっていますが、急性腎不全では正常サイズまたはやや腫大しています。貧血の程度も参考になり、慢性腎不全では腎性貧血により強い貧血が見られますが、急性腎不全の初期では貧血は軽度です。透析の予定も手がかりになり、急性腎不全では「一時的な透析」と説明されることが多く、慢性腎不全では「継続的な透析」が前提となります。カルテで経過を確認し、これまでの腎機能の推移を見ることが最も確実な方法です。


まとめ

急性腎不全は、数時間から数日という短期間で急速に腎機能が低下し、体内の老廃物や水分、電解質の調節ができなくなる病態です。病態の核心は、糸球体濾過量の急激な低下により、尿素窒素やクレアチニンが蓄積し、高カリウム血症や代謝性アシドーシスなどの生命を脅かす合併症が生じることにあります。

原因は腎前性、腎性、腎後性の3つに分類され、それぞれ発症機序が異なります。腎前性は腎血流量の減少、腎性は腎実質の障害、腎後性は尿路閉塞によるもので、原因の早期特定と除去が腎機能回復の鍵となります。

看護の要点として、第一に正確な水分出納管理が極めて重要です。尿量を1〜2時間ごとに測定し、体重を毎日測定することで、体液バランスを厳密に管理します。第二に、高カリウム血症の早期発見と対応が生命に直結します。心電図モニタリングを継続し、T波の変化や不整脈の出現を見逃さないよう警戒します。第三に、呼吸状態の観察です。体液過剰による肺水腫は急速に進行するため、呼吸困難の徴候を早期に発見し、速やかに対応する必要があります。

患者教育のポイントとして、水分制限とカリウム制限の必要性を理解してもらうことが重要です。なぜこれらの制限が必要なのか、肺水腫や不整脈といった合併症を予防するためであることを具体的に説明します。また、透析療法は一時的な可能性があることを伝え、過度な不安を軽減します。急性腎不全は適切な治療により回復が期待できる病態であり、希望を持って治療に取り組めるよう支援します。

実習での心構えとして、急性腎不全の患者さんは急激な病状変化のリスクが高いため、常に緊張感を持って観察することが大切です。尿量の測定、バイタルサインの変化、意識レベルの評価など、基本的な観察項目を確実に実施し、わずかな変化も見逃さないよう注意を払いましょう。また、高カリウム血症による心停止など、生命に関わる緊急事態が起こりうることを認識し、異常を発見した際は速やかに報告する姿勢が重要です。患者さんは急激な病状変化や透析導入への強い不安を抱えているため、寄り添う姿勢を忘れず、丁寧にコミュニケーションを取りましょう。正確な観察と記録、迅速な報告・連絡・相談が、患者さんの命を守ることにつながります。


免責事項

本記事は教育・学習目的の情報提供です。

  • 一般的な医学知識の解説であり、個別の患者への診断・治療の根拠ではありません
  • 実際の看護実践は、患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください
  • 記事の情報は公開時点のものであり、最新の医学的知見と異なる場合があります
  • 本記事を課題としてそのまま提出しないでください
  • 正確な情報提供に努めていますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません

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