本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。
実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。
この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。
それでは、見ていきましょう。
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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。
今回の事例
基本情報
A氏、72歳、男性。身長168cm、体重74kg(入院時78kg)。妻と二人暮らしで、キーパーソンは妻である。元建設会社の営業職で、温厚で几帳面な性格である。感染症とアレルギーはなく、認知機能は正常である。
診断と既往
現病名は慢性心不全(NYHA分類III度)の急性増悪である。既往歴として高血圧(15年前より)、2型糖尿病(10年前より)、脂質異常症(8年前より)があり、3年前に陳旧性心筋梗塞の既往がある。現在は内服治療と食事療法を継続している。
現在の状態
11月12日の夜間、呼吸困難と下腿浮腫の悪化を主訴に救急搬送された。来院時、起座呼吸がみられ、両下肢に著明な圧痕性浮腫を認めた。胸部X線で心拡大と肺うっ血が確認され、心不全の急性増悪と診断された。入院後は酸素療法(鼻カニューラ2L/分)と利尿薬の点滴治療を開始し、現在は症状が改善傾向にある。
現在のバイタルサインは、体温36.4℃、血圧128/76mmHg、脈拍78回/分(整)、呼吸数18回/分、SpO2 96%(酸素2L/分)である。
食事は心不全食(塩分6g/日、1600kcal/日)を8割程度摂取している。入院前は特に食事制限をしておらず、外食も多かった。排泄は利尿薬の効果で尿量が増加しており、1日2000ml程度の排尿がある。排便は2日に1回程度で、便秘傾向である。睡眠は入院前は息苦しさで夜間に何度も目が覚めていたが、現在は酸素療法により改善し、6時間程度眠れている。
ADLは、歩行は自立しているが息切れがあり30m程度で休息が必要である。トイレ歩行は見守りで実施している。セルフケアは概ね自立しているが、入浴は全身清拭で対応している。転倒歴はない。
検査と治療
主要な検査データとして、入院時はBNP 850pg/ml(基準値18.4以下)、BUN 28mg/dl(基準値8-20)、Cr 1.4mg/dl(基準値0.6-1.1)、Na 136mEq/L(基準値136-147)、K 4.2mEq/L(基準値3.6-5.0)であった。現在(入院3日目)はBNP 420pg/ml、BUN 22mg/dl、Cr 1.2mg/dl、Na 138mEq/L、K 3.8mEq/Lと改善傾向にある。
内服薬は以下の通りである。
- フロセミド(ラシックス)20mg 1日1回 朝食後
- エナラプリル(レニベース)5mg 1日1回 朝食後
- カルベジロール(アーチスト)10mg 1日2回 朝夕食後
- アスピリン100mg 1日1回 朝食後
- アトルバスタチン(リピトール)10mg 1日1回 夕食後
- メトホルミン500mg 1日2回 朝夕食後
今後の治療方針として、利尿薬の調整を継続し、体重と尿量のモニタリングを行う。症状が安定すれば酸素療法を中止し、心臓リハビリテーションと塩分制限の栄養指導を実施予定である。退院後の生活指導として、体重の自己管理と塩分制限の徹底が重要である。
本人・家族の想い
A氏は「こんなに苦しくなるとは思わなかった。塩分を気にしていなかったのが悪かったのかな」と後悔の言葉を述べている。また「退院したら食事に気をつけたいが、何をどう気をつければいいのか分からない」と不安を訴えている。妻は「夫の食事管理をしっかりしたい。減塩の料理方法を教えてほしい」と積極的に学ぶ姿勢を示している。
ゴードン11項目アセスメント解説
1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント
このパターンでは、A氏とそのご家族が慢性心不全という疾患をどのように理解し、どのように健康管理を行ってきたか、そして今回の急性増悪をどう受け止めているかを評価します。特に、疾患の自己管理能力と学習意欲は退院後の生活を左右する重要な要素となります。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
疾患に対する認識と理解度
A氏は「こんなに苦しくなるとは思わなかった」と述べており、今回の急性増悪の重篤さに驚きを示しています。この発言からは、NYHA分類III度という中等度の心不全を抱えながら、症状の深刻さや疾患管理の重要性への認識が不十分だったことが読み取れます。「塩分を気にしていなかった」という事実は、心不全が日常生活管理を必要とする慢性疾患であることへの理解が不足していたことを示しています。
しかし、「塩分を気にしていなかったのが悪かったのかな」という発言は、自身の生活習慣と症状悪化の因果関係に気づき始めていることを示しており、この気づきは今後の行動変容につながる重要な第一歩といえます。入院前は外食も多く、推定で1日15~20g程度の塩分を摂取していた可能性があり、これが心不全食の塩分6g/日と比較して2~3倍に相当することを踏まえて、過剰な塩分摂取が体液貯留を引き起こし、急性増悪の主要因となったことを理解してもらう必要があります。
健康管理行動のパターン
入院前の健康管理行動には、興味深い特徴が見られます。15年前からの高血圧、10年前からの糖尿病、3年前の心筋梗塞という重大な既往がありながら、「特に食事制限をしておらず、外食も多かった」という状況です。一方で、内服治療は継続されており、複数の薬剤が処方されていることから、医療機関とのつながりは維持されていました。
つまり、「服薬管理はできているが食事管理はできていない」という明確なパターンがあります。この背景には、「薬を飲んでいれば大丈夫」という認識や、食事療法の具体的な指導を受ける機会が少なかった可能性、あるいは元営業職という職業柄の外食中心の生活パターンが長年確立されていたことなどが考えられます。この点を踏まえると、A氏が「できなかった」のではなく「どうすればよいかわからなかった」という視点を持つことが、今後の患者教育の方向性を考える上で重要です。
学習意欲と家族のサポート
「退院したら食事に気をつけたいが、何をどう気をつければいいのか分からない」というA氏の発言と、「夫の食事管理をしっかりしたい。減塩の料理方法を教えてほしい」という妻の発言は、本人・家族ともに学習意欲が高いことを示す重要な情報です。意欲はあるものの具体的な方法がわからないというジレンマを抱えており、この不安に対して実践可能な具体的方法を提示することが看護介入の重要なポイントとなります。
妻がキーパーソンとして積極的にサポートする姿勢を示していることは、退院後の生活管理において非常に大きな強みです。夫婦を一つのユニットとして捉え、両者への教育的介入を計画することが効果的でしょう。ただし、妻の年齢や健康状態、負担能力にも配慮が必要です。
複数の健康リスク因子
高血圧15年、糖尿病10年、脂質異常症8年、陳旧性心筋梗塞3年前という複数の基礎疾患は、すべて心血管疾患のリスク因子であり、相互に影響し合って心不全の発症と進行に関与しています。これらの疾患が統合的に管理される必要があることを、A氏がどの程度理解しているかを評価することが重要です。特に糖尿病10年という既往は、現在の軽度腎機能低下(Cr 1.2mg/dl)との関連も考慮し、糖尿病性腎症の可能性も念頭に置く必要があるでしょう。
アセスメントの視点
A氏は今回の急性増悪を契機として疾患管理の必要性を認識し始めており、学習意欲も高いという前向きな姿勢が見られます。しかし、入院前の健康管理行動には課題があり、特に食事管理についての具体的な知識と実践方法が不足していました。妻の積極的な学習意欲と協力姿勢は大きな強みとなりますので、夫婦で協力して疾患管理に取り組める体制を整えることが重要です。複数の基礎疾患を持つことから、心不全だけでなく総合的な自己管理能力の向上を目指す必要があります。
ケアの方向性
疾患と治療に対する理解を深めるための教育的介入が中心となります。心不全の病態生理、塩分制限の必要性、体重測定の意義、症状悪化のサインなど、実践可能な自己管理方法を丁寧に指導します。外食時の選び方、加工食品の塩分含有量、減塩調味料の使用方法など、日常生活で応用できる具体的な知識を、A氏と妻の両者に提供することが大切です。医師、栄養士など多職種と連携し、一貫性のある情報提供を行い、完璧を求めすぎず段階的な目標達成を評価することで、自己効力感を高めることを意識するとよいでしょう。
2. 栄養-代謝パターンのポイント
このパターンでは、A氏の栄養摂取状況と代謝の状態を評価します。特に心不全における塩分・水分管理は症状のコントロールに直結する重要な要素であり、糖尿病の食事療法とも統合する必要があります。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
入院前の食事パターンと塩分摂取
入院前は「特に食事制限をしておらず、外食も多かった」とのことですが、一般的な外食は塩分が多く、1食あたり5~10g程度含まれることも珍しくありません。外食中心の生活では、推定で1日15~20g以上の塩分を摂取していた可能性があり、これは心不全食の塩分6g/日の2~3倍に相当します。塩分を1g摂取すると約200mlの水分が体内に貯留するといわれており、過剰な塩分摂取が体液貯留を引き起こし、心臓への持続的な負担となって急性増悪の引き金となったと考えられます。この点を踏まえて、食事管理の重要性を理解してもらう必要があります。
現在の食事摂取状況
心不全食(塩分6g/日、1600kcal/日)を8割程度摂取しています。8割という摂取率をどう評価するかが重要です。食欲そのものは比較的保たれていると評価できますが、残りの2割を摂取できていない理由を明らかにすることが、退院後の食事管理を成功させるための手がかりとなります。減塩食の味付けに満足していないのか、量が多いと感じているのか、あるいは食習慣の違いによるものかなど、摂取率低下の原因を評価する必要があります。この情報を基に、減塩でも美味しく食べる工夫を提案することが大切です。
体重変化と体組成
入院時78kgから現在74kgへと4kgの体重減少がみられます。これは主に利尿薬による体液の排出によるもので、約4Lの過剰な体液が排出されたことを示しています。現在のBMI約26.2はやや肥満傾向にあり、標準体重(BMI 22として約62kg)と比較すると約12kg過体重という状況です。糖尿病の管理という観点からは適正体重への緩やかな減量が望ましいですが、急激な体重減少は筋肉量の低下を招く可能性があるため、栄養状態を保ちながら月に1~2kg程度の緩やかなペースで減量していくことが理想的です。
電解質バランス
入院時のNa 136mEq/L、K 4.2mEq/Lから、現在はNa 138mEq/L、K 3.8mEq/Lと変化しています。ナトリウムの改善は治療の効果を示していますが、カリウムは正常範囲内ではあるものの低下傾向にあります。これはフロセミドなどの利尿薬がカリウムも排泄させる作用があるためで、低カリウム血症は不整脈のリスクを高めるため、継続的なモニタリングが必要です。腎機能についても、BUN、Crともに改善傾向にありますが依然として基準値より高値であり、慢性的な腎機能低下が存在する可能性を考慮する必要があります。
糖尿病との統合的管理
2型糖尿病10年の既往があり、心不全食と糖尿病食を統合した食事管理が必要です。塩分制限とカロリー制限、栄養バランスを同時に考慮した食事管理は複雑であり、栄養士による専門的な指導が不可欠です。糖尿病の食事療法では炭水化物の適切な摂取や食物繊維の重要性、脂質異常症を考慮した脂質の選択なども含めて、包括的に考える必要があります。
アセスメントの視点
A氏の栄養管理において最も重要な課題は、塩分制限の実践と体重管理です。入院前の外食中心の生活が過剰な塩分摂取につながり、体液貯留を招いたという因果関係を明確に理解してもらうことが重要です。現在の8割摂取率の背景を評価し、減塩食への適応を支援する必要があります。糖尿病食との統合、適正体重への緩やかな減量、電解質バランスのモニタリング、腎機能への配慮など、多角的な視点が求められます。
ケアの方向性
塩分制限の具体的な方法について、妻も含めた栄養指導を実施します。加工食品の塩分含有量、食品表示の見方、外食時の選び方、減塩調味料の活用、だしや香辛料を使った減塩でも美味しく感じる調理の工夫など、実生活で応用可能な知識を提供します。毎日の体重測定の習慣化を支援し、体重増加が体液貯留のサインであることを理解してもらいます。栄養士と連携した包括的な食事指導を計画し、完璧を求めすぎず実践可能な範囲での目標設定を行うことが大切です。
続きはnoteで公開中です✨️
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