本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。
実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。
この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。
それでは、見ていきましょう。
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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。
今回の事例
診断と既往
現病名は慢性心不全(心機能分類Ⅲ度)で、3年前に心筋梗塞の既往がある。当時PCI施行後より左室駆出率が低下し、現在45%で推移している。主要既往には高血圧症、糖尿病(2型)、脂質異常症がある。現治療はACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬、硝酸薬の4種類の内服と、訪問看護週2回(月・木)の利用、月1回の外来受診で経過観察中である。
現在の状態
自宅での生活は妻と二人暮らしで、日中は一人になることが多い。訪問看護導入は3ヶ月前(3月1日)で、現在は6月10日(訪問開始から102日経過)となっている。導入時より軽度の下肢浮腫の増悪傾向が見られ、夜間に夜間発作性呼吸困難が月2~3回生じており、寝具を高くして対応している。バイタルサインは体温36.8℃、血圧148/88mmHg、脈拍96/分で若干頻脈、呼吸数22/分、SpO2は96%である。食事は妻が毎日調理し塩分制限を試みているが、本人は濃い味を好む傾向があり、訪問時に栄養士と相談した食事療法を導入している最中である。排泄は便秘傾向で3~4日に1回の排便となっており、利尿薬の影響で尿量は日中900~1000mL程度だが夜間尿が3~4回である。睡眠時間は5~6時間で熟眠感に乏しく、夜間の苦しさで中途覚醒が多い。ADLについては自宅内では自立しているが、階段昇降時に息切れが著明であり、外出は週1~2回の通院以外はほぼ行っていない。転倒歴はなく、訪問看護師による生活環境整備により安全性が確保されている。
検査と治療
最新の血液検査(6月5日)ではBNP値が280pg/mL(基準値<100)と上昇しており、クレアチニン値1.3mg/dLで腎機能の軽度低下がみられる。電解質はナトリウム138mEq/L、カリウム4.2mEq/Lで大きな異常はない。心エコー検査(5月20日)で左室駆出率45%、左室拡張末期径65mmで心構造の変化が続いている。内服薬はリシノプリル5mg朝1回、メトプロロール50mg朝夕2回、フロセミド20mg朝1回、イソソルビド二硝酸20mg朝夕2回である。訪問看護ではバイタルサインの定期測定、下肢浮腫の観察と記録、体重管理(目標体重維持±2kg)、内服薬の管理支援を行っており、症状変化を把握している。今後の方針として、塩分・水分管理と活動レベルの調整を継続し、症状悪化時には主治医への即時報告体制を整備する。BNP値の推移や下肢浮腫の変化を定期的に確認し、心不全増悪の早期発見に努める。
本人・家族の想い
本人は「訪問看護の先生が来てくれるようになって、少し安心できるようになった」と述べており、定期的な支援により不安が軽減されている。一方で「息切れが出ると怖い気がして、動くのが億劫になってしまう」という訴えもあり、活動意欲の低下が課題である。本人は「できるだけ長く今の生活を続けたい、妻に負担をかけたくない」という強い願いを持っている。妻は「訪問看護が始まってから、夜間に何かあった時の相談先ができて心強い」と述べており、介護負担感が軽減されつつある。しかし「夜間の苦しさはまだ続いており、いつ悪くなるか心配」という懸念も示している。また妻は「本人が濃い味ばかり求めるので、塩分を控えながらおいしく食べられる工夫を教えてほしい」と栄養管理に関する相談を訪問看護師に寄せており、日々の生活の中での具体的な支援が求められている。
ゴードンの11の機能的健康パターンによるアセスメント
1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント
健康知覚-健康管理パターンでは、患者と家族が自身の健康状態をどのように認識し、どのように管理しようとしているかを評価します。特に慢性疾患を持つ患者では、疾患の理解度や受け止め方が今後の療養生活に大きく影響するため、この視点から丁寧にアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
疾患の理解と受け止め方
この患者は3年前の心筋梗塞後から慢性心不全の状態が続いており、現在はNYHA心機能分類III度という比較的進行した状態にあります。PCI施行後から左室駆出率が45%まで低下し、現在も改善していないという事実は、心機能の回復が困難であることを示しています。このような病態について、本人と家族がどの程度理解しているかを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。
本人の「訪問看護の先生が来てくれるようになって、少し安心できるようになった」という発言からは、専門職による定期的な観察と支援が心理的な安心感につながっていることが読み取れます。一方で「息切れが出ると怖い気がして、動くのが億劫になってしまう」という訴えは、症状に対する不安と恐怖を示しており、この感情が活動制限につながっている可能性があります。症状の意味や対処方法についての理解が十分であるか、という視点でアセスメントすることが重要です。
妻の「夜間の苦しさはまだ続いており、いつ悪くなるか心配」という発言は、症状の持続に対する不安と、心不全増悪への懸念を表しています。この不安が介護負担感にどのように影響しているか、また家族全体の健康管理意識にどう関連しているかを考慮するとよいでしょう。
健康管理行動の実際
現在の治療は4種類の内服薬(ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬、硝酸薬)、訪問看護週2回、月1回の外来受診という体制で行われています。この治療体制が3ヶ月間継続できているという事実は、基本的な受診行動や服薬管理が維持できていることを示しており、健康管理行動の基盤があることを踏まえて記載するとよいでしょう。
訪問看護では内服薬の管理支援が行われていますが、この支援がどの程度必要とされているのか、つまり本人の服薬自己管理能力がどの程度維持されているのかという点に着目してアセスメントすることが大切です。日中は一人になることが多いという生活状況の中で、確実な服薬管理ができているかどうかは、今後の療養生活の安全性に直結します。
食事管理における課題
妻が毎日調理し塩分制限を試みているという事実は、家族による健康管理への取り組みがあることを示しています。しかし本人が濃い味を好む傾向があり、栄養士との相談による食事療法を導入している最中であることから、食事管理における本人の理解と実践には課題があることが読み取れます。
妻の「本人が濃い味ばかり求めるので、塩分を控えながらおいしく食べられる工夫を教えてほしい」という相談は、家族が食事療法の重要性を認識し、実践しようとする意欲があることを示しています。一方で、本人が塩分制限の必要性をどの程度理解し、受け入れているかという点については、さらに情報を得る必要があるでしょう。心不全における塩分制限の意義について、本人の理解度を確認し、その上で食事管理に対する本人の受け止め方をアセスメントするとよいでしょう。
症状の認識と対処行動
夜間発作性呼吸困難が月2〜3回生じており、寝具を高くして対応しているという情報は、症状出現時の対処方法が確立されていることを示しています。この対処方法が訪問看護師からの指導によるものなのか、本人が自ら編み出したものなのかによって、健康管理能力の評価が変わってきます。また、この対処で症状が軽減しているのか、それとも不十分なのかという点も、症状認識と対処能力を評価する上で重要な情報となります。
下肢浮腫の増悪傾向が3ヶ月前の訪問看護導入時から続いているという事実に対して、本人がどのように認識しているかを考慮する必要があります。浮腫の増悪が心不全の悪化サインであることを理解しているか、また体重管理(目標体重±2kg)の意味を理解して実践できているかという点を踏まえてアセスメントするとよいでしょう。
既往歴とリスク因子の管理
高血圧症、糖尿病(2型)、脂質異常症という複数の生活習慣病の既往があり、これらは心不全の増悪因子となります。血圧が148/88mmHgと目標値よりやや高めであること、クレアチニン値1.3mg/dLと腎機能の軽度低下が見られることは、これらの基礎疾患の管理状況を反映している可能性があります。
これらの基礎疾患について、本人がどの程度重要性を認識しているか、また相互の関連性を理解しているかという視点でアセスメントすることが大切です。心不全だけでなく、高血圧や糖尿病の管理も重要であるという認識があるかどうかは、今後の包括的な健康管理を考える上で重要な情報となります。
生活への影響の認識
階段昇降時に息切れが著明であり、外出は週1〜2回の通院以外はほぼ行っていないという状況は、日常生活における活動制限を示しています。本人の「できるだけ長く今の生活を続けたい、妻に負担をかけたくない」という願いからは、現在の生活を維持したいという強い意欲が読み取れます。
しかし「息切れが出ると怖い気がして、動くのが億劫になってしまう」という発言は、症状への恐怖が過度な活動制限につながっている可能性を示唆しています。適切な活動レベルの理解と、症状をコントロールしながら安全に活動する方法についての認識を確認することが重要です。どの程度の活動なら安全なのか、どのような症状が出たら休息が必要なのかという具体的な判断基準を本人が持っているかどうかを、アセスメントに含めるとよいでしょう。
アセスメントの視点
健康知覚-健康管理パターンでは、本人と家族の疾患理解、症状認識、健康管理行動を多角的に評価することが重要です。この事例では、訪問看護の導入により基本的な健康管理体制は整いつつありますが、本人の症状への恐怖感、食事管理における実践の課題、活動制限の適切さなどについて、さらに詳しく情報を収集し分析する必要があります。
本人と家族の発言からは、医療者への信頼と療養生活への意欲が感じられる一方で、疾患管理における具体的な理解度や実践能力については、より詳細な評価が求められます。特に心不全という慢性疾患の特性上、日々のセルフモニタリングと早期の異常察知が重要となるため、本人と家族がどのようなサインに注意すべきかを理解しているかという視点を意識してアセスメントするとよいでしょう。
ケアの方向性
このパターンから導かれる看護ケアの方向性としては、まず疾患と症状についての理解を深めるための教育的支援が挙げられます。心不全の病態、症状の意味、悪化のサイン、適切な対処方法について、本人と家族の理解度に合わせた説明を行うことが重要です。
次に、実践可能な健康管理行動の確立に向けた支援が必要です。特に食事管理においては、塩分制限の必要性の理解を促しながら、実際においしく食べられる工夫を具体的に提示することで、継続可能な食事療法の確立を目指します。
また、症状への適切な対処方法と活動レベルの調整について、過度な活動制限を避けつつ、安全に生活できる具体的な基準を本人と共有することが大切です。訪問看護による定期的な評価とフィードバックを通じて、本人と家族が自信を持って日常生活を送れるよう支援していく方向性を考えるとよいでしょう。
2. 栄養-代謝パターンのポイント
栄養-代謝パターンでは、患者の栄養摂取状況と代謝機能を評価します。特に心不全患者においては、塩分・水分管理が症状のコントロールに直結するため、食事内容や嗜好、家族の支援体制を含めて総合的にアセスメントすることが重要です。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
塩分管理の実際と課題
妻が毎日調理し塩分制限を試みているという事実は、家族による食事管理への取り組みがあることを示しています。しかし本人が濃い味を好む傾向があり、訪問時に栄養士と相談した食事療法を導入している最中であるという情報からは、塩分制限の実践に課題があることが読み取れます。
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