看護過程の解説【大腿骨頸部骨折-人工骨頭置換術を受けた78歳女性の事例】ゴードン・ヘンダーソン・関連図・看護計画

成人看護学

本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。

実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。

この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。

それでは、見ていきましょう。

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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。


今回の事例

本事例は、自宅で転倒し大腿骨頸部骨折を受傷した78歳女性である。受傷翌日に人工骨頭置換術を施行し、術後7日目(8月15日、入院8日目)の時点での看護実践を学習する事例である。高齢者の骨折後における疼痛管理、早期離床の重要性、認知機能の変化、そして自宅退院に向けた多職種連携について理解を深めることを目的とする。

診断と既往

現病名は右大腿骨頸部骨折(Garden分類III型)であり、8月9日に人工骨頭置換術(後方アプローチ)を施行された。主要な既往歴として骨粗鬆症(10年前から治療中)、高血圧症(15年前から内服管理)、変形性膝関節症(両膝、5年前から)を有している。骨粗鬆症に対してはビスホスホネート製剤による治療を継続していたが、骨密度はYAM値の65%と低下していた。現在の治療は術後疼痛管理としてアセトアミノフェン定期内服とNSAIDs頓用、感染予防のための抗菌薬投与(術後3日間で終了済み)、深部静脈血栓症予防のための抗凝固療法と弾性ストッキング着用、そして理学療法士によるリハビリテーション(荷重訓練と歩行訓練)が実施されている。

現在の状態

8月8日夜に自宅トイレで転倒し受傷、翌9日に手術となり、現在術後7日目である。入院からの経過として、術直後は創部痛が強く安静時でもNRS5程度であったが、鎮痛薬の定期使用により術後3日目からNRS2-3程度に軽減した。術後2日目から理学療法開始、術後4日目から歩行器歩行訓練を開始している。夜間に一時的な見当識障害(術後せん妄疑い)が術後2-3日目に出現したが、環境調整と家族の付き添いにより改善傾向である。バイタルサインは体温36.8℃、血圧128/76mmHg、脈拍72回/分・整、呼吸18回/分、SpO2 96%(室内気)と安定している。食事は常食を摂取しており、食事摂取量は7-8割程度、水分摂取は1日1200ml程度である。食欲は徐々に改善傾向で、特に家族が持参した果物はよく摂取する。排泄は術後3日目までは床上排泄であったが、現在はポータブルトイレを使用している。排便は2日に1回程度で、緩下剤を使用しながら調整中である。尿意・便意の訴えは明瞭で、失禁はない。睡眠は術後初期は創部痛と環境変化により不眠傾向であったが、現在は睡眠薬なしで5-6時間程度の睡眠が確保できている。ADLに関して、移動は歩行器使用で病棟内歩行が可能となっているが、術側の荷重制限(部分荷重:体重の1/3程度)があり、理学療法士の指導のもと段階的に荷重量を増加中である。セルフケアは上半身の清拭・整容は自立しているが、下半身の清潔ケアと更衣には一部介助を要する。転倒歴として、今回の受傷前にも1年前に自宅で転倒した経験があるが、その際は打撲のみで骨折には至らなかった。

検査と治療

主要な検査データとして、血液検査では白血球数6800/μL(術後感染なし)、ヘモグロビン10.2g/dL(軽度の貧血、術前は11.5g/dLであり術中出血による低下)、CRP 0.8mg/dL(術後炎症反応は軽度)、アルブミン3.2g/dL(低栄養傾向あり)、eGFR 58mL/分/1.73m²(軽度腎機能低下あり)である。骨代謝マーカーではBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)が高値を示し、骨粗鬆症の活動性が示唆される。術後レントゲンでは人工骨頭の位置は良好で、脱臼や感染の兆候はない。内服薬はアムロジピン5mg(降圧薬、1日1回朝食後)、アレンドロン酸35mg(骨粗鬆症治療薬、週1回)、エルデカルシトール0.75μg(活性型ビタミンD3、1日1回朝食後)、アセトアミノフェン400mg(鎮痛薬、1日3回毎食後)、エドキサバン30mg(抗凝固薬、1日1回夕食後)、センノシド12mg(緩下剤、1日1回就寝前・頓用)である。今後の方針として、術後2週間程度での退院を目標とし、リハビリテーションを継続しながら歩行能力の向上と日常生活動作の自立度を高めていく。退院後は訪問看護・訪問リハビリテーションの導入を検討し、自宅環境の調整(手すり設置、段差解消)を家族と相談中である。整形外科外来でのフォローアップと、骨粗鬆症治療の継続が必要である。

本人・家族の想い

本人の発言として「手術してもらってありがたいけど、痛くて思うように動けないのがもどかしいわ」「リハビリの先生が優しく教えてくれるから、少しずつ歩けるようになってきたの」「また転んだらどうしようって不安で、家に帰るのが少し怖いのよ」「夜中にトイレに行こうとして転んだから、これからは気をつけないとね」と語っている。家族(長女)の発言として「母が転んだと聞いて、すぐに駆けつけました。高齢だから手術に耐えられるか心配でしたが、無事に終わって本当に良かったです」「退院後のことを考えると、私も仕事があるので毎日見守るのは難しくて…どうしたらいいか悩んでいます」「家の中に段差が多いので、手すりをつけたり、できるだけ安全にしたいと思っています」「母には元気で長生きしてほしいので、できる限りのことはしたいです」と述べている。本人は自宅退院への意欲を示しつつも再転倒への不安を抱えており、家族は在宅での介護体制と環境整備について現実的な課題を認識している状況である。


ゴードン11項目アセスメント解説

1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント

このパターンでは、患者と家族が骨折の受傷と治療についてどのように理解し、受け止めているか、また今後の健康管理に向けてどのような認識を持っているかを評価します。特に高齢者の骨折では、再発予防の意識や骨粗鬆症管理の継続が重要となります。

どんなことを書けばよいか

健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
  • 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
  • 現在の健康状態や症状の認識
  • これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
  • 疾患が日常生活に与えている影響の認識
  • 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)

骨折と治療に対する理解と受け止め

本人は「手術してもらってありがたいけど、痛くて思うように動けないのがもどかしいわ」と述べており、手術治療への感謝の気持ちと、回復の遅れに対するもどかしさを表現しています。この発言からは、手術の必要性は理解しつつも、術後の身体機能の制限に戸惑いを感じている様子が読み取れます。また、「また転んだらどうしようって不安で、家に帰るのが少し怖いのよ」という言葉には、再転倒への強い不安と、それが退院への心理的障壁となっている状況が表れています。家族である長女も「高齢だから手術に耐えられるか心配でしたが、無事に終わって本当に良かったです」と述べており、手術に対する不安を乗り越えた安堵感を示していますが、同時に退院後の生活に対する具体的な不安も抱えていることを踏まえて記述するとよいでしょう。

既往歴と健康管理の継続性

骨粗鬆症については10年前から治療を継続しており、ビスホスホネート製剤を定期的に服用していることから、一定の健康管理意識があることが分かります。高血圧症も15年前から内服管理を行っており、長期にわたる慢性疾患の自己管理能力を有していると考えられます。しかし、骨密度がYAM値の65%まで低下していることを踏まえると、治療を継続していても骨折リスクは高い状態にあったことが示唆されます。この点について、本人や家族がどの程度認識していたか、また今後の骨粗鬆症治療の重要性についてどう理解しているかを確認することが重要です。

転倒リスクの認識と予防行動

今回の転倒は自宅トイレで発生しており、本人も「夜中にトイレに行こうとして転んだから、これからは気をつけないとね」と述べています。さらに1年前にも自宅で転倒歴があることから、転倒のリスクが継続的に存在していたことが分かります。しかし、前回の転倒後に具体的な予防策を講じていたかどうかは不明であり、転倒リスクに対する認識や予防行動の実施状況について、さらに情報を収集する必要があるでしょう。家族は「家の中に段差が多いので、手すりをつけたり、できるだけ安全にしたいと思っています」と述べており、住環境の危険因子を認識し、改善への意欲を示している点は、今後の転倒予防計画を立てる上で重要な情報となります。

アセスメントの視点

本人と家族は手術治療の必要性を理解し、受け入れていますが、再転倒への不安が退院への大きな心理的障壁となっています。長期にわたる慢性疾患の管理は継続できているものの、転倒予防に関する具体的な知識や行動については強化が必要な状況です。骨粗鬆症治療の継続性と骨折リスクの認識、そして退院後の生活環境調整への取り組み姿勢を総合的に評価し、どのような健康管理支援が必要かを考えることが求められます。

ケアの方向性

退院後の生活に向けて、本人と家族が再転倒のリスクを正しく理解し、具体的な予防行動を取れるよう支援することが重要です。骨粗鬆症治療の継続の重要性を再確認し、定期的な骨密度測定や内服管理の継続を促すとともに、住環境の調整や日常生活での安全な動作方法について、多職種と連携しながら教育的関わりを持つことが必要でしょう。


2. 栄養-代謝パターンのポイント

このパターンでは、術後の栄養状態の回復と創傷治癒の促進、そして骨折治癒に必要な栄養素の確保という観点から評価します。高齢者の術後は異化亢進により栄養状態が悪化しやすく、適切な栄養管理が重要となります。

どんなことを書けばよいか

栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 食事と水分の摂取量と摂取方法
  • 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
  • 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
  • 嚥下機能・口腔内の状態
  • 嘔吐・吐気の有無
  • 皮膚の状態、褥瘡の有無
  • 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)

食事摂取状況と回復の兆候

現在、常食を摂取しており食事摂取量は7-8割程度、水分摂取は1日1200ml程度と記載されています。術後7日目でこの程度の摂取が可能であることは、消化機能が回復してきていることを示しています。また、「食欲は徐々に改善傾向で、特に家族が持参した果物はよく摂取する」という記述から、食欲の回復が進んでいることが分かります。家族が持参した食品を好んで摂取することは、患者の嗜好に合った食品提供が食欲促進につながることを示唆しており、この点を活かした栄養管理の方法を考えるとよいでしょう。

栄養状態の評価と課題

血液検査ではアルブミン値が3.2g/dLと低栄養傾向を示しています。高齢者の基準値としても低値であり、術前からの栄養状態が十分ではなかった可能性を考慮する必要があります。また、ヘモグロビン値が術前の11.5g/dLから術後10.2g/dLに低下しており、これは術中出血による影響と考えられます。軽度の貧血状態にあることから、鉄分やタンパク質の摂取を意識した食事内容について検討することが重要です。骨折の治癒にはタンパク質、カルシウム、ビタミンDなどが必要であり、現在の低栄養状態ではこれらの栄養素が不足している可能性があることを踏まえてアセスメントするとよいでしょう。

骨代謝と栄養の関連

骨粗鬆症の既往があり、骨密度がYAM値の65%と低下しています。骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)が高値を示しており、骨代謝が活発であることが分かります。現在、エルデカルシトール(活性型ビタミンD3)を内服していますが、カルシウムの吸収を促進するためには適切なカルシウム摂取も必要です。退院後の食生活において、骨の健康を維持するための栄養素摂取について、本人と家族がどの程度理解しているかを確認し、必要に応じて栄養指導を行うことが求められます。

皮膚の状態と創傷治癒

術後7日目で創部の感染徴候はなく、CRP値も0.8mg/dLと軽度であることから、創傷治癒は順調に進んでいると考えられます。しかし、低栄養状態にあることから、今後の創傷治癒の遅延や皮膚トラブルのリスクを考慮する必要があります。現時点では褥瘡の記載はありませんが、活動制限がある状態であり、皮膚の観察と栄養状態の改善を並行して進めることが重要です。

アセスメントの視点

食事摂取量は徐々に改善しているものの、低栄養状態にあり、骨折治癒と貧血改善のために十分な栄養摂取が必要な状況です。患者の嗜好を活かしながら、必要な栄養素を効率よく摂取できる方法を考えることが求められます。また、退院後の食生活において、骨粗鬆症の進行予防と再骨折予防のための栄養管理の重要性を、本人と家族に理解してもらう必要があるでしょう。

ケアの方向性

食欲の改善傾向を活かし、高タンパク質・高カロリーの食品を嗜好に合わせて提供することで、栄養状態の改善を図ることが重要です。骨折治癒に必要なカルシウム、タンパク質、ビタミン類の摂取を意識した食事内容について、栄養士と連携しながら指導を行うとともに、退院後も継続できる現実的な食事プランを本人と家族と一緒に考えていくことが必要でしょう。

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