【ゴードン】誤嚥性肺炎 入院5日目(0006)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
本事例の要約
78歳男性A氏の誤嚥性肺炎による入院で、発熱と呼吸困難を主訴に救急搬送され、入院後に重度の嚥下機能低下を認め経鼻経管栄養を開始した。今後はリハビリテーションをしながら経口摂取を進めていく予定。
この事例で勉強できること
誤嚥性肺炎・転倒転落・せん妄・経鼻経管栄養のアセスメント
今回の情報
基本情報
A氏は78歳の男性で、身長165cm、体重は入院前62kg、入院後58kgまで減少している。妻(75歳)と都内の持ち家で2人暮らしをしており、キーパーソンは月1回訪問する長男(50歳)である。次男(47歳)は大阪在住で2ヶ月に1回の帰省がある。40年間大手電機メーカーで製造ラインの管理職として勤務し、65歳で定年退職している。性格は几帳面で社交的だが自己主張は控えめで、体調不良時でも周囲に相談せず無理をする傾向がある。薬剤および食物アレルギーはない。認知機能は年相応でMMSE27点である。
病名
誤嚥性肺炎
既往歴と治療状況
・高血圧症:アムロジピン5mg内服中
・胃潰瘍:ラベプラゾール10mg内服中
入院から現在までの情報
20XX年1月21日頃から食事でのむせが増加し、23日夜から微熱が出現。24日夜間に39.2℃の発熱と呼吸困難を認め救急搬送された。救急外来での胸部X線・CTで両肺下葉に浸潤影を認め、血液検査でCRP15.2mg/dL、WBC12800/μLと炎症反応の著明な上昇を認めたため、誤嚥性肺炎の診断で即日入院となった。入院後、ABPC/SBTによる抗生剤治療を開始し、第2病日の嚥下評価で重度の嚥下機能低下を認めたため経鼻経管栄養(1500ml/日)を開始した。第3病日には解熱傾向となったが、第4病日夜間からせん妄を発症しハロペリドールの投与を開始。現在の第5病日では、呼吸状態は改善傾向にあり、炎症反応も低下傾向(WBC 9200/μL、CRP 8.4mg/dL)を示しているが、せん妄による夜間不穏が継続している。嚥下訓練を実施しており、リハビリテーション開始を予定している。
バイタルサイン
来院時:体温39.2℃、脈拍98回/分・整、血圧146/88mmHg、呼吸数24回/分、SpO2 92%(室内気) 意識レベルJCS I-1
現在(第5病日):体温36.8℃、脈拍82回/分・整、血圧132/78mmHg、呼吸数18回/分、SpO2 97%(酸素1L/分投与下) 意識レベルJCS I-1(日中)、夜間せん妄あり
食事と嚥下状態
入院前:食事は3食とも妻の手作りを自力摂取していたが、半年前から咀嚼力の低下があり、食事時間が延長していた。水分摂取は1日1000ml程度で緑茶を好んで飲用。軽度の嚥下機能低下があり、月1-2回程度のむせこみがあったが、医療機関は未受診。喫煙歴は1日20本を40年間継続していたが55歳で禁煙。飲酒は週1-2回の地域の友人との集まり時のみでビール350ml程度の機会飲酒。
現在:嚥下機能の重度低下により経鼻経管栄養(1500ml/日)を実施中。嚥下訓練を開始している段階。
排泄
入院前:自立。排尿・排便ともに問題なく、下剤の使用歴なし。
現在:尿意・便意は維持。せん妄による不穏時は看護師の誘導を要するが、日中はポータブルトイレを自力で使用可能。排尿回数6-7回/日、黄色透明。排便は2日に1回程度で普通便。下剤の使用なし。
睡眠
入院前:21時就寝、6時起床と規則正しい生活リズムを維持。睡眠導入剤等の使用なし。
現在:第4病日夜間からのせん妄により、夜間不眠と不穏状態が出現。「仕事に行かなければ」「会社の資料を作らないと」などの発言がみられ、ハロペリドール0.75mgを使用している。日中も傾眠傾向がみられるが、声かけにより覚醒し会話可能。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力:軽度の老眼あり、読書時には老眼鏡を使用。
聴力:日常会話に支障なし。
知覚:四肢の感覚障害なし。
コミュニケーション:日中は意識清明で、医療者に対して礼儀正しく穏やかな態度で接している。夜間はせん妄により見当識障害あり。
信仰:特になし。
動作状況
入院前:日常生活動作は概ね自立していた。毎朝、近所の公園まで30分程度の散歩を日課としており、歩行は安定していた。移乗、排泄、入浴、衣類の着脱もすべて自立していた。転倒歴はない。
現在:日中はベッド上での座位保持が可能で、看護師見守りのもとポータブルトイレへの移乗が可能。歩行は未実施。衣類の着脱は声かけと一部介助を要する。清拭対応中。夜間はせん妄による不穏時に転倒リスクが高く、ベッド柵を使用し、頻回な観察を実施している。現時点での転倒歴はない。
内服中の薬
・アムロジピン 5mg 1日1回 朝食後(高血圧症)
・ラベプラゾール 10mg 1日1回 朝食前(胃潰瘍予防)
・ハロペリドール 0.75mg 不穏時(せん妄に対して)
【服薬状況】 入院前:自己管理で確実に内服できていた。
現在:入院後は看護師管理とし、経鼻経管栄養チューブより投与している。 アムロジピン、ラベプラゾールは粉砕して投与。 ハロペリドールは不穏時に看護師が投与を判断している。
認知力
・アムロジピン 5mg 1日1回 朝食後(高血圧症)
・ラベプラゾール 10mg 1日1回 朝食前(胃潰瘍予防)
・ハロペリドール 0.75mg 不穏時(せん妄に対して)
検査データ
検査項目 | 基準値 | 入院時(1/24) | 現在(1/28) |
---|---|---|---|
WBC | 4000-8000/μL | 12800 | 9200 |
RBC | 410-530万/μL | 432 | 428 |
Hb | 13.0-16.5g/dL | 13.2 | 12.8 |
Ht | 40-50% | 39.8 | 38.6 |
Plt | 15-35万/μL | 22.4 | 21.8 |
CRP | 0-0.3mg/dL | 15.2 | 8.4 |
TP | 6.7-8.3g/dL | 6.8 | 6.6 |
Alb | 3.8-5.2g/dL | 3.6 | 3.4 |
AST | 10-40U/L | 28 | 25 |
ALT | 5-45U/L | 32 | 30 |
BUN | 8-20mg/dL | 18.2 | 17.8 |
Cr | 0.6-1.1mg/dL | 0.9 | 0.8 |
Na | 135-145mEq/L | 138 | 140 |
K | 3.5-5.0mEq/L | 4.2 | 4.0 |
Cl | 98-108mEq/L | 102 | 103 |
BS | 70-110mg/dL | 126 | 108 |
今後の治療方針と医師の指示
現在の誤嚥性肺炎に対して、抗生剤(ABPC/SBT)による治療を継続する。炎症反応の推移を確認するため3日ごとの採血検査を実施し、SpO2が95%以上維持できれば酸素投与量を漸減していく方針である。嚥下機能の改善に向けては、言語聴覚士による評価と訓練を毎日実施し、経鼻経管栄養(1500ml/日)を継続しながら、機能改善に応じて経口摂取を検討する。必要に応じて嚥下造影検査(VF)も予定している。
また、呼吸状態の改善に伴い、理学療法士による呼吸リハビリテーションと運動機能維持のためのリハビリテーションを開始する。状態をみながら段階的な離床を進め、作業療法士による日常生活動作訓練も実施予定である。
せん妄に対しては、ハロペリドール0.75mgを不穏時に使用し、日中の覚醒を促して夜間の良眠が得られるよう生活リズムを整えていく。バイタルサインは1日2回観察する。転倒予防のための環境整備と観察も継続する。
予定されている長男との家族カンファレンスにて、今後の治療方針と退院後の生活について検討する予定である。なお、これらの治療方針は患者の状態に応じて適宜見直しを行う予定。
本人と家族の想いと言動
本人は入院当初「管を入れるのは嫌だが、早く良くなりたい」と治療に協力的であったが、現在はせん妄により「仕事に行かなければ」などの発言が続いている。入院前から「息子たちは忙しいから、あまり頼りたくない」と周囲への遠慮がみられ、体調不良時でも相談せずに我慢する傾向があった。
妻は毎日面会に訪れ「早く家に帰れるように頑張ってね」と声をかけているが、せん妄症状に対して「主人らしくない。早く元気になってほしい」と不安を表出している。
長男は仕事の都合をつけて来院予定で、次男も電話で状況を確認するなど関心を寄せている。両親の今後の生活支援について、家族での話し合いを希望している。
【ゴードン】誤嚥性肺炎 入院5日目(0006)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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