本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。
実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。
この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。
それでは、見ていきましょう。
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ぜひ参考にしてみてくださいね!
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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。
今回の情報
基本情報
A氏は82歳の女性で、身長152cm、体重46kg、BMIは19.9である。家族構成は長男が58歳で同市内に在住しており、週に2回程度面会に来ている。長男夫婦がキーパーソンとなっている。元事務職で、温和で几帳面な性格である。感染症はなく、薬物アレルギーも特にない。認知機能は軽度の低下が見られ、HDS-Rは22点、MMSEは24点であった。見当識は保たれているが、短期記憶の低下と注意力の散漫さが認められる。
病名
左中大脳動脈領域の脳梗塞による右片麻痺、構音障害、嚥下障害。
既往歴と治療状況
既往歴として高血圧症があり、10年前から降圧薬を内服していた。また脂質異常症もあり、スタチン系薬剤を服用していた。糖尿病は5年前に診断され、食事療法と内服薬でコントロールしていたが、HbA1cは7.2%とやや高めで推移していた。現在は脳梗塞の再発予防として抗血小板薬を内服し、血圧と血糖のコントロールを継続している。
入院から現在までの情報
4月20日の早朝、自宅で倒れているところを訪問した長男に発見され、救急搬送された。来院時は右上下肢の麻痺と構音障害、嚥下困難が認められた。頭部CTとMRIで左中大脳動脈領域の脳梗塞が確認され、発症から4時間以内であったためt-PA療法が実施された。急性期治療後、リハビリテーション目的で回復期リハビリテーション病棟へ転棟し、約6週間のリハビリを行った。リハビリの結果、右上肢は軽度の麻痺が残存し、右下肢は中等度の麻痺が残った。歩行は四点杖を使用すれば可能だが、ふらつきがあり見守りが必要な状態となった。独居での生活継続は困難と判断され、長男家族との同居も検討されたが、長男夫婦も仕事があり日中の見守りが難しいため、本人と家族で話し合った結果、有料老人ホームへの入所となった。6月8日に当施設へ入所し、現在5日目である。入所後は環境の変化からか表情が硬く、「家に帰りたい」という発言が聞かれている。
バイタルサイン
来院時のバイタルサインは、体温36.8℃、血圧178/96mmHg、脈拍96回/分で不整あり、呼吸数22回/分、SpO2 95%であった。現在のバイタルサインは、体温36.5℃、血圧138/82mmHg、脈拍78回/分で整、呼吸数18回/分、SpO2 97%と安定している。
食事と嚥下状態
入院前は自炊で3食摂取しており、食事内容は和食中心で塩分が多めであった。喫煙歴はなく、飲酒も機会飲酒程度であった。発症後は嚥下障害のため絶食となり、経鼻経管栄養が開始された。その後、嚥下訓練を経て嚥下食へ移行し、現在は嚥下調整食3相当の食事を摂取している。食事摂取量は6割から7割程度で、むせることは減ったが、食事に時間がかかり疲労感を訴えることがある。水分はとろみ付きで提供しており、1日の水分摂取量は約1000mlである。
排泄
入院前は自立しており、夜間は1回程度トイレに起きていた。便通は2日に1回程度で、特に問題はなかった。現在は日中はトイレでの排泄を行っているが、移動に時間がかかるため、間に合わず失禁することが1日に1回程度ある。夜間は移動のリスクを考慮してポータブルトイレを使用しているが、ナースコールを押して介助を求めることができている。排便は下剤を使用して2日に1回程度あり、やや硬めの便が出ている。
睡眠
入院前は23時頃に就寝し、6時頃に起床する生活リズムであった。夜間は1回程度覚醒するが、すぐに入眠できていた。現在は環境の変化や不安から入眠に時間がかかり、夜間も2から3回覚醒している。日中に傾眠傾向があり、昼食後は1時間程度うたた寝をしている。眠剤は使用していないが、睡眠の質の低下が見られる。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は老眼があり、普段は老眼鏡を使用している。聴力は軽度の難聴があるが、補聴器は使用しておらず、大きめの声で話せば聞き取ることができる。知覚は右半身に軽度の感覚鈍麻があり、熱さや冷たさを感じにくい。コミュニケーションは構音障害があり、言葉が不明瞭で聞き取りにくいことがあるが、筆談や身振りを交えることで意思疎通は可能である。信仰は特になし。
動作状況
歩行は四点杖を使用し、見守りがあれば可能だが、ふらつきがあり転倒リスクが高い。移乗は軽介助で可能であるが、右下肢の筋力低下により時間がかかる。排泄はトイレまでの移動と衣類の着脱に一部介助が必要である。入浴は週2回の介助浴を実施しており、浴槽への出入りは全介助が必要である。衣類の着脱は上衣の右袖通しに介助が必要だが、その他は時間をかければ自分で行える。転倒歴は入所後はまだないが、病院のリハビリ中に1回転倒したことがある。
内服中の薬
- アムロジピン5mg 1錠 1日1回朝食後(降圧薬)
- テルミサルタン40mg 1錠 1日1回朝食後(降圧薬)
- アスピリン100mg 1錠 1日1回朝食後(抗血小板薬)
- アトルバスタチン10mg 1錠 1日1回夕食後(脂質異常症治療薬)
- メトホルミン500mg 1錠 1日2回朝夕食後(糖尿病治療薬)
- センノシド12mg 1錠 1日1回就寝前(緩下剤)
- レバミピド100mg 1錠 1日3回毎食後(胃粘膜保護薬)
検査データ
服薬は看護師管理で実施している。
| 検査項目 | 入院時(4/20) | 現在(6/10) | 基準値 |
|---|---|---|---|
| WBC | 8900 | 6200 | 3500-9000/μL |
| RBC | 420 | 398 | 380-500万/μL |
| Hb | 12.8 | 11.5 | 12.0-16.0g/dL |
| Ht | 38.5 | 35.2 | 36.0-45.0% |
| PLT | 25.2 | 22.8 | 15.0-35.0万/μL |
| TP | 6.8 | 6.2 | 6.5-8.0g/dL |
| Alb | 3.8 | 3.2 | 3.8-5.2g/dL |
| AST | 28 | 24 | 10-40U/L |
| ALT | 22 | 19 | 5-45U/L |
| BUN | 18.5 | 16.2 | 8.0-20.0mg/dL |
| Cre | 0.82 | 0.78 | 0.4-1.0mg/dL |
| Na | 138 | 140 | 135-145mEq/L |
| K | 4.2 | 4.0 | 3.5-5.0mEq/L |
| Cl | 102 | 103 | 98-108mEq/L |
| BS | 182 | 148 | 70-110mg/dL |
| HbA1c | 7.8 | 7.2 | 4.6-6.2% |
| CRP | 2.8 | 0.3 | 0.0-0.3mg/dL |
今後の治療方針と医師の指示
今後の治療方針は、脳梗塞の再発予防を最優先とし、血圧・血糖・脂質のコントロールを継続する。リハビリテーションは施設内で週3回実施し、歩行能力と日常生活動作の維持・向上を図る。嚥下機能の評価を定期的に行い、食事形態のアップを検討する。栄養状態の改善のため、栄養補助食品の追加も検討する。転倒予防のため、環境整備と見守り体制の強化を行う。医師からの指示は、バイタルサインの定期的な測定、血圧は収縮期140mmHg以上で報告、食事摂取量が5割未満の場合は報告、転倒や体調変化時は速やかに報告することである。
本人と家族の想いと言動
A氏は「家に帰りたい。一人でも大丈夫だから」と繰り返し訴えており、施設での生活に対する抵抗感が強い。食事の際には「こんな食事は食べたくない。普通のご飯が食べたい」と嚥下食に不満を示している。一方で、「息子に迷惑をかけたくない」「自分のことは自分でしたい」という発言も聞かれ、自立への強い思いと現実とのギャップに葛藤している様子が伺える。夜間には「ここはどこ?家はどこ?」と不安そうに訴えることもある。
長男は「母は一人暮らしが長かったので、施設に馴染めるか心配です」と話しており、A氏の気持ちを理解しつつも、「一人暮らしは無理だと思います。転んだらまた大変なことになる」と独居生活の継続には否定的である。長男の妻は「でき
事例の要約
独居生活中に脳梗塞を発症し、急性期治療とリハビリテーションを経て、回復期病院から有料老人ホームへ入所となった82歳女性の事例。介入日は6月12日、施設入所後5日目の状況である。
基本情報
A氏は82歳の女性で、身長152cm、体重46kg、BMIは19.9である。家族構成は長男が58歳で同市内に在住しており、週に2回程度面会に来ている。長男夫婦がキーパーソンとなっている。元事務職で、温和で几帳面な性格である。感染症はなく、薬物アレルギーも特にない。認知機能は軽度の低下が見られ、HDS-Rは22点、MMSEは24点であった。見当識は保たれているが、短期記憶の低下と注意力の散漫さが認められる。
病名
左中大脳動脈領域の脳梗塞による右片麻痺、構音障害、嚥下障害。
既往歴と治療状況
既往歴として高血圧症があり、10年前から降圧薬を内服していた。また脂質異常症もあり、スタチン系薬剤を服用していた。糖尿病は5年前に診断され、食事療法と内服薬でコントロールしていたが、HbA1cは7.2%とやや高めで推移していた。現在は脳梗塞の再発予防として抗血小板薬を内服し、血圧と血糖のコントロールを継続している。
入院から現在までの情報
4月20日の早朝、自宅で倒れているところを訪問した長男に発見され、救急搬送された。来院時は右上下肢の麻痺と構音障害、嚥下困難が認められた。頭部CTとMRIで左中大脳動脈領域の脳梗塞が確認され、発症から4時間以内であったためt-PA療法が実施された。急性期治療後、リハビリテーション目的で回復期リハビリテーション病棟へ転棟し、約6週間のリハビリを行った。リハビリの結果、右上肢は軽度の麻痺が残存し、右下肢は中等度の麻痺が残った。歩行は四点杖を使用すれば可能だが、ふらつきがあり見守りが必要な状態となった。独居での生活継続は困難と判断され、長男家族との同居も検討されたが、長男夫婦も仕事があり日中の見守りが難しいため、本人と家族で話し合った結果、有料老人ホームへの入所となった。6月8日に当施設へ入所し、現在5日目である。入所後は環境の変化からか表情が硬く、「家に帰りたい」という発言が聞かれている。
バイタルサイン
来院時のバイタルサインは、体温36.8℃、血圧178/96mmHg、脈拍96回/分で不整あり、呼吸数22回/分、SpO2 95%であった。現在のバイタルサインは、体温36.5℃、血圧138/82mmHg、脈拍78回/分で整、呼吸数18回/分、SpO2 97%と安定している。
食事と嚥下状態
入院前は自炊で3食摂取しており、食事内容は和食中心で塩分が多めであった。喫煙歴はなく、飲酒も機会飲酒程度であった。発症後は嚥下障害のため絶食となり、経鼻経管栄養が開始された。その後、嚥下訓練を経て嚥下食へ移行し、現在は嚥下調整食3相当の食事を摂取している。食事摂取量は6割から7割程度で、むせることは減ったが、食事に時間がかかり疲労感を訴えることがある。水分はとろみ付きで提供しており、1日の水分摂取量は約1000mlである。
排泄
入院前は自立しており、夜間は1回程度トイレに起きていた。便通は2日に1回程度で、特に問題はなかった。現在は日中はトイレでの排泄を行っているが、移動に時間がかかるため、間に合わず失禁することが1日に1回程度ある。夜間は移動のリスクを考慮してポータブルトイレを使用しているが、ナースコールを押して介助を求めることができている。排便は下剤を使用して2日に1回程度あり、やや硬めの便が出ている。
睡眠
入院前は23時頃に就寝し、6時頃に起床する生活リズムであった。夜間は1回程度覚醒するが、すぐに入眠できていた。現在は環境の変化や不安から入眠に時間がかかり、夜間も2から3回覚醒している。日中に傾眠傾向があり、昼食後は1時間程度うたた寝をしている。眠剤は使用していないが、睡眠の質の低下が見られる。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は老眼があり、普段は老眼鏡を使用している。聴力は軽度の難聴があるが、補聴器は使用しておらず、大きめの声で話せば聞き取ることができる。知覚は右半身に軽度の感覚鈍麻があり、熱さや冷たさを感じにくい。コミュニケーションは構音障害があり、言葉が不明瞭で聞き取りにくいことがあるが、筆談や身振りを交えることで意思疎通は可能である。信仰は特になし。
動作状況
歩行は四点杖を使用し、見守りがあれば可能だが、ふらつきがあり転倒リスクが高い。移乗は軽介助で可能であるが、右下肢の筋力低下により時間がかかる。排泄はトイレまでの移動と衣類の着脱に一部介助が必要である。入浴は週2回の介助浴を実施しており、浴槽への出入りは全介助が必要である。衣類の着脱は上衣の右袖通しに介助が必要だが、その他は時間をかければ自分で行える。転倒歴は入所後はまだないが、病院のリハビリ中に1回転倒したことがある。
内服中の薬
- アムロジピン5mg 1錠 1日1回朝食後(降圧薬)
- テルミサルタン40mg 1錠 1日1回朝食後(降圧薬)
- アスピリン100mg 1錠 1日1回朝食後(抗血小板薬)
- アトルバスタチン10mg 1錠 1日1回夕食後(脂質異常症治療薬)
- メトホルミン500mg 1錠 1日2回朝夕食後(糖尿病治療薬)
- センノシド12mg 1錠 1日1回就寝前(緩下剤)
- レバミピド100mg 1錠 1日3回毎食後(胃粘膜保護薬)
検査データ
服薬は看護師管理で実施している。
| 検査項目 | 入院時(4/20) | 現在(6/10) | 基準値 |
|---|---|---|---|
| WBC | 8900 | 6200 | 3500-9000/μL |
| RBC | 420 | 398 | 380-500万/μL |
| Hb | 12.8 | 11.5 | 12.0-16.0g/dL |
| Ht | 38.5 | 35.2 | 36.0-45.0% |
| PLT | 25.2 | 22.8 | 15.0-35.0万/μL |
| TP | 6.8 | 6.2 | 6.5-8.0g/dL |
| Alb | 3.8 | 3.2 | 3.8-5.2g/dL |
| AST | 28 | 24 | 10-40U/L |
| ALT | 22 | 19 | 5-45U/L |
| BUN | 18.5 | 16.2 | 8.0-20.0mg/dL |
| Cre | 0.82 | 0.78 | 0.4-1.0mg/dL |
| Na | 138 | 140 | 135-145mEq/L |
| K | 4.2 | 4.0 | 3.5-5.0mEq/L |
| Cl | 102 | 103 | 98-108mEq/L |
| BS | 182 | 148 | 70-110mg/dL |
| HbA1c | 7.8 | 7.2 | 4.6-6.2% |
| CRP | 2.8 | 0.3 | 0.0-0.3mg/dL |
今後の治療方針と医師の指示
今後の治療方針は、脳梗塞の再発予防を最優先とし、血圧・血糖・脂質のコントロールを継続する。リハビリテーションは施設内で週3回実施し、歩行能力と日常生活動作の維持・向上を図る。嚥下機能の評価を定期的に行い、食事形態のアップを検討する。栄養状態の改善のため、栄養補助食品の追加も検討する。転倒予防のため、環境整備と見守り体制の強化を行う。医師からの指示は、バイタルサインの定期的な測定、血圧は収縮期140mmHg以上で報告、食事摂取量が5割未満の場合は報告、転倒や体調変化時は速やかに報告することである。
本人と家族の想いと言動
A氏は「家に帰りたい。一人でも大丈夫だから」と繰り返し訴えており、施設での生活に対する抵抗感が強い。食事の際には「こんな食事は食べたくない。普通のご飯が食べたい」と嚥下食に不満を示している。一方で、「息子に迷惑をかけたくない」「自分のことは自分でしたい」という発言も聞かれ、自立への強い思いと現実とのギャップに葛藤している様子が伺える。夜間には「ここはどこ?家はどこ?」と不安そうに訴えることもある。
長男は「母は一人暮らしが長かったので、施設に馴染めるか心配です」と話しており、A氏の気持ちを理解しつつも、「一人暮らしは無理だと思います。転んだらまた大変なことになる」と独居生活の継続には否定的である。長男の妻は「できれば一緒に住みたいのですが、日中は仕事で留守にするので、何かあったときに対応できません」と同居の難しさを語っている。長男は「母が少しでも安心して過ごせるように、できるだけ面会に来ます」と述べ、A氏への支援を続ける意向を示している。
ゴードン11項目アセスメント解説
1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント
健康知覚-健康管理パターンでは、A氏が自身の脳梗塞とその後遺症をどのように認識し、受け止めているか、また長年管理してきた生活習慣病に対する認識を評価することが重要です。特に、入所5日目という環境の変化期における疾患受容の状況と、家族の理解・サポート体制を把握することで、今後の療養生活の方向性を見出すことができます。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
既往歴と長年の健康管理
A氏は高血圧症を10年前から、糖尿病を5年前から治療しており、降圧薬やスタチン系薬剤、血糖降下薬を継続的に内服していたという情報があります。これは、A氏が長年にわたって医療機関と関わりを持ち、処方された薬剤を継続していたことを示しています。ただし、HbA1cが7.2%とやや高めで推移していたという点から、疾患管理の実際の状況や、食事療法の実施状況、自己管理能力についてさらに詳しく記述するとよいでしょう。入院前の自炊生活において、和食中心だが塩分が多めであったという食習慣の情報は、健康管理に対する意識や知識の状況を示唆する重要な情報となります。
疾患の受容と現在の認識
A氏は「家に帰りたい。一人でも大丈夫だから」と繰り返し訴えており、現在の自身の状態と独居生活の可否について、医療者や家族とは異なる認識を持っている可能性があります。この発言の背景には、自身の機能障害の程度に対する認識の不足があるのか、それとも認識はしているが受け入れられていないのか、という視点でアセスメントすることが重要です。また、「息子に迷惑をかけたくない」という発言は、家族への配慮を示すものですが、同時に現実的な身体機能の評価よりも、自立への願望が先行している状態を表している可能性も考えられます。
症状の認識と訴え
A氏は構音障害がありながらも、「こんな食事は食べたくない。普通のご飯が食べたい」と嚥下食に対する不満を表明しており、自分の思いを言語化して訴える力は保たれています。しかし、嚥下障害という症状の重大性や、誤嚥のリスクについてどの程度理解しているかという点を踏まえてアセスメントするとよいでしょう。食事摂取時に疲労感を訴えることがあるという情報から、A氏自身が体力の低下や疲れやすさを自覚していることが読み取れます。
家族の理解とサポート体制
長男は「一人暮らしは無理だと思います。転んだらまた大変なことになる」と現実的な判断を示しており、母親の状態を客観的に評価できています。週に2回の面会を継続しており、「できるだけ面会に来ます」という発言からも、継続的な支援の意向が読み取れます。長男の妻も「日中は仕事で留守にするので、何かあったときに対応できません」と同居が困難な理由を具体的に説明しており、家族全体で状況を把握し話し合いを重ねてきたことが伺えます。この家族の理解度と現実認識を踏まえて、今後の療養環境の調整や本人への説明のあり方を考えるとよいでしょう。
健康リスク因子の管理
A氏には喫煙歴がなく、飲酒も機会飲酒程度であり、感染症や薬物アレルギーもないという情報は、リスク管理の面ではプラスの要因です。しかし、高血圧・糖尿病・脂質異常症という複数の生活習慣病を抱えており、これらは脳梗塞の危険因子であると同時に再発リスク因子でもあります。現在は服薬管理が看護師により行われており、確実な内服が保証されている状況ですが、今後の生活を見据えたときに、本人の服薬管理能力や疾患管理の意欲についてもアセスメントに含めるとよいでしょう。
アセスメントの視点
A氏の健康管理における最も重要な課題は、現在の自身の状態と独居生活の困難さという現実とのギャップをどのように埋めていくかという点です。長年の独居生活で培われた自立への強い思いは尊重すべきですが、同時に脳梗塞による機能障害と再発リスクという医学的事実も踏まえた現実的な認識を持てるよう支援していく必要があります。家族の理解と協力体制は良好ですが、本人の受容が進まない状況をどう捉えるか、入所5日目という時期的な要因も含めて総合的に評価することが求められます。
ケアの方向性
A氏が自身の状態を段階的に理解し、現実的な目標設定ができるよう支援していくことが重要です。脳梗塞の病態、後遺症の内容、再発予防の重要性について、A氏の理解度に合わせた説明を行い、特に転倒リスクや嚥下障害のリスクについて具体的に認識できるよう働きかける必要があります。同時に、家族との協働体制を維持し、本人と家族が共通の理解のもとで療養方針を決定していけるよう調整していくことが求められます。
2. 栄養-代謝パターンのポイント
栄養-代謝パターンでは、脳梗塞による嚥下障害が食事摂取に与えている影響を評価するとともに、栄養状態の低下傾向を示す検査データと身体計測値から、今後の栄養改善の方向性を考えることが重要です。また、入院前の食習慣と現在の食事形態とのギャップが、A氏の心理面や食事摂取意欲にどのような影響を与えているかという視点も必要です。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
身体計測値と栄養必要量
A氏は身長152cm、体重46kg、BMI 19.9という体格です。BMI 19.9は正常範囲内ではありますが、下限に近い値であり、82歳という年齢を考慮すると、栄養状態の維持には十分な注意が必要です。高齢者では低栄養によるフレイルやサルコペニアのリスクが高まるため、現在の体重を維持し、可能であれば筋肉量を増やしていく視点が重要となります。独居生活時の自炊状況や食事内容を踏まえて、これまでの栄養摂取状況についても記述するとよいでしょう。
嚥下機能と食事摂取の実際
A氏は脳梗塞による嚥下障害のため、発症後は経鼻経管栄養から開始し、嚥下訓練を経て現在は嚥下調整食3相当の食事を摂取しています。食事摂取量は6割から7割程度で、むせることは減ったものの、食事に時間がかかり疲労感を訴えるという状況です。この情報から、嚥下機能は一定程度回復しているものの、完全ではなく、食事動作そのものが身体的負担となっていることが読み取れます。疲労感により食事摂取量が制限されている可能性を考慮し、食事時間の調整や食事環境の工夫、栄養補助食品の活用といった視点でアセスメントすることが大切です。
栄養状態を示す検査データ
血液データを見ると、Alb 3.2g/dl(基準値3.8-5.2)、TP 6.2g/dl(基準値6.5-8.0)と、いずれも基準値を下回っており、低栄養状態を示しています。また、Hb 11.5g/dl(基準値12.0-16.0)、Ht 35.2%(基準値36.0-45.0)と軽度の貧血も認められます。これらのデータは入院時(4月20日)と比較してさらに低下しており、急性期から回復期を経て現在に至るまでの約2ヶ月間で、栄養状態が悪化傾向にあることを示しています。この背景には、嚥下障害による摂取量不足や、リハビリテーションによるエネルギー消費の増加などが考えられるため、それらの要因を統合的に評価するとよいでしょう。
水分摂取の状況
水分はとろみ付きで提供されており、1日の水分摂取量は約1000mlです。高齢者の1日の水分必要量を体重1kgあたり約30-35mlとすると、A氏の場合は約1400-1600ml程度が目安となります。現在の1000mlという摂取量は必要量を下回っている可能性があり、脱水のリスクや便秘への影響を考慮する必要があります。ただし、心不全などの循環器系の問題がない場合でも、高齢者では過剰な水分摂取は負担となることもあるため、全身状態を踏まえたバランスを考えることが重要です。
食事に対する本人の思いと受容
A氏は「こんな食事は食べたくない。普通のご飯が食べたい」と嚥下食に対する不満を表明しています。これは、食事形態の変化を受け入れられていないことを示すだけでなく、独居生活で慣れ親しんだ和食中心の食事への強い思いがあることを表しています。食事は栄養摂取という生理的な側面だけでなく、生活の質や精神的満足度とも深く関連しているため、A氏のこの発言を単なる不満として捉えるのではなく、食事を通じた自己実現やアイデンティティの喪失感として理解する視点が必要です。
糖尿病管理との関連
A氏は5年前から糖尿病の診断を受けており、HbA1cは入院時7.8%から現在7.2%へと改善傾向にあります。血糖値も182mg/dlから148mg/dlへ低下していますが、依然として基準値を上回っています。入院前は食事療法と内服薬でコントロールしていましたが、塩分が多めの食事であったという情報から、糖尿病食事療法が十分に実施できていなかった可能性も考えられます。現在は施設での食事管理とメトホルミンの内服により、以前よりも良好なコントロールが得られている状況を踏まえて記述するとよいでしょう。
アセスメントの視点
A氏の栄養-代謝パターンにおける主要な課題は、嚥下障害による食事摂取量の不足と、それに伴う栄養状態の悪化です。Albの低下は創傷治癒の遅延、感染抵抗力の低下、筋肉量の減少などにつながるため、早急な栄養改善が必要です。同時に、食事に対する本人の不満や抵抗感が食欲や摂取意欲を低下させている可能性もあるため、身体的側面だけでなく心理的側面からのアプローチも重要となります。医師の方針として栄養補助食品の追加が検討されていることも含めて、総合的な栄養改善計画を考える視点が求められます。
ケアの方向性
嚥下機能の定期的な評価を行いながら、可能な範囲で食事形態のアップを目指すとともに、現在の食事形態でも摂取量を増やせるよう、食事時間の調整、環境整備、栄養補助食品の活用などを検討する必要があります。A氏の食事に対する思いに寄り添いながら、嚥下食の中でも本人の嗜好に近い味付けや盛り付けの工夫を行い、食事への満足度を高めることも重要です。また、疲労感への対応として、1回の食事量を減らして回数を増やす、または少量でも高カロリー・高タンパクの食品を取り入れるなどの工夫が考えられます。
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ゴードンの続きとヘンダーソン・関連図・看護計画について解説しています😊



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