看護過程の解説【脳梗塞-入院している82歳男性の事例】ゴードン・ヘンダーソン・関連図・看護計画

成人看護学

本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。

実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。

この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。

それでは、見ていきましょう。

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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。


今回の事例

82歳男性のB氏は、心原性脳塞栓症による右中大脳動脈領域の脳梗塞で急性期治療を受けた後、リハビリテーション目的で当病棟に転棟してきた患者である。発症から3週間が経過し、左片麻痺と運動性失語を呈している。もともと独居で自立した生活を送っていたが、今後の療養生活について本人・家族ともに不安を抱えている。

診断と既往

現病名は心原性脳塞栓症(右中大脳動脈領域)であり、発症後ただちに血栓溶解療法(t-PA静注療法)が実施された。既往歴として心房細動、高血圧症、脂質異常症があり、以前から抗凝固療法の必要性を指摘されていたが服薬アドヒアランスが不良であった。現在の治療は抗凝固療法、降圧療法、脂質管理に加えて、リハビリテーションが中心となっている。

現在の状態

発症は3月15日の早朝で、家族が訪問した際に倒れているところを発見され救急搬送された。急性期病院でt-PA療法を受けた後、3月22日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院となった。現在は転院後12日目(4月2日)である。バイタルサインは安定しており、体温36.5℃、血圧132/78mmHg、脈拍72回/分(不整)、呼吸18回/分、SpO2 96%(室内気)で推移している。

食事は刻み食・とろみ付き水分で摂取しており、摂取量は6割程度である。嚥下機能の低下があり、食事中にむせることがあるため嚥下訓練も並行して実施中である。排泄は尿意・便意の訴えがあるものの、トイレまでの移動に介助が必要なためポータブルトイレを使用している。排便は2日に1回程度で、下剤を使用している。睡眠は入眠困難を訴えることがあり、不眠時指示で睡眠導入剤を使用している。

ADLについては、移動は車椅子を使用し、左上下肢の筋力低下(MMT:上肢2/5、下肢3/5)により自立歩行は困難である。平行棒内での歩行訓練を開始したばかりである。セルフケアは右手での整容・食事動作は部分的に可能だが、更衣・入浴は全介助が必要である。認知機能は保たれているものの、運動性失語により意思疎通に時間を要することがストレス要因となっている。入院後の転倒歴は1回あり、夜間にトイレに行こうとして転倒した経験がある。

検査と治療

入院時の頭部CTでは右中大脳動脈領域に約5cm大の低吸収域を認め、頭部MRIでも同部位に梗塞巣が確認された。血液検査ではD-dimer 2.8μg/mL(基準値:1.0以下)と凝固系の異常を認め、BNP 280pg/mL(基準値:18.4以下)と心不全マーカーの上昇がみられた。その他、HbA1c 6.2%、LDLコレステロール 145mg/dL(基準値:140以下)とやや高値であった。心電図では心房細動が持続している。

内服薬は抗凝固薬(エドキサバン30mg 1日1回)、降圧薬(アムロジピン5mg 1日1回)、スタチン系脂質異常症治療薬(アトルバスタチン10mg 1日1回)、下剤(酸化マグネシウム330mg 1日3回)、不眠時指示でゾルピデム5mgである。

今後の方針としては、リハビリテーションを継続しながらADLの向上と自宅退院の可能性を模索していく。嚥下機能の改善が十分でない場合は、療養型病院への転院や施設入所も検討する必要がある。家族との面談を重ね、退院後の生活環境の調整を進めていく予定である。

本人・家族の想い

B氏本人は「家に帰りたい」「一人で何でもできるようになりたい」と繰り返し訴えるが、言葉がうまく出ないことに強い焦りと苛立ちを感じている様子である。「前はこんなじゃなかった」「情けない」といった発言も聞かれる。長女(58歳)は「父は頑固で人の世話になるのが嫌いな性格なので、今の状態はとても辛いと思う」と述べ、「できれば自宅で看たいが、仕事もあるし毎日は難しい」と介護負担への不安を口にしている。長男(56歳)は遠方に住んでおり、「できる限り協力したいが、現実的には姉に任せることになってしまう」と申し訳なさそうに話していた。家族全体としては「本人の希望を尊重したいが、安全に生活できる環境を整えることが最優先」という考えを持っている。


ゴードンの11の機能的健康パターンによるアセスメント

1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント

このパターンでは、B氏と家族が脳梗塞という疾患をどのように理解し、受け止めているか、そしてこれまでの健康管理行動がどうであったかを評価することが重要です。特に再発予防の観点から、服薬管理や生活習慣の改善に対する認識と実行可能性を見極める必要があります。

どんなことを書けばよいか

健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
  • 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
  • 現在の健康状態や症状の認識
  • これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
  • 疾患が日常生活に与えている影響の認識
  • 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)

疾患と治療に関する理解

B氏は「家に帰りたい」「一人で何でもできるようになりたい」と繰り返し訴えており、自宅復帰への強い意欲を示していますが、脳梗塞の病態や今後のリハビリテーションの必要性についてどこまで理解しているかは慎重に見極める必要があります。運動性失語があるため、理解していても十分に表現できない可能性も考慮すべきでしょう。長女は「父は頑固で人の世話になるのが嫌いな性格」と述べており、B氏の性格特性が疾患受容や治療への協力にどう影響するかという視点でアセスメントすることが重要です。

服薬管理と再発リスク

事例では「以前から抗凝固療法の必要性を指摘されていたが服薬アドヒアランスが不良であった」という情報が示されています。これは今回の脳梗塞発症の重要な背景因子であり、退院後の再発予防を考える上で極めて重要な情報となります。なぜ服薬を継続できなかったのか、その理由を明らかにすることが必要でしょう。認識の問題なのか、経済的理由なのか、副作用への不安なのか、それとも独居による管理の困難さなのか、多角的に考えるとよいでしょう。

現在の状態認識と受容

B氏は「前はこんなじゃなかった」「情けない」と発言しており、現在の自分の状態と以前の自立した生活とのギャップに強い苦痛を感じている様子がうかがえます。このような発言は、一方では現実認識ができていることを示していますが、同時に受容には至っておらず、心理的危機状態にある可能性も考えられます。焦りや苛立ちといった感情が、リハビリテーションへの意欲にプラスに働く場合もあれば、過度な期待や無理な行動につながるリスクもあるという視点を持つことが大切です。

家族の理解と支援体制

長女は介護負担への不安を口にしながらも「できれば自宅で看たい」と述べており、本人の希望を尊重したいという思いと現実的な制約との間で葛藤している様子が読み取れます。長男は遠方に住んでおり、具体的な支援は難しい状況です。家族全体として「本人の希望を尊重したいが、安全に生活できる環境を整えることが最優先」という現実的な判断を示している点は、今後の退院支援を考える上で重要な情報となります。この家族の認識が、退院後の生活設計やサービス導入の検討にどうつながっていくかを意識してアセスメントするとよいでしょう。

アセスメントの視点

健康知覚-健康管理パターンでは、B氏と家族が疾患をどう捉え、今後の生活をどう構築していこうとしているかを総合的に評価することが重要です。特に服薬アドヒアランス不良という既往は、退院後の再発予防における重大なリスク因子であり、この背景要因を明らかにし、改善策を検討する必要があります。また、B氏の強い自立への意欲は回復の原動力となりうる一方で、現実と理想のギャップによる心理的負担や、無理な行動による安全面でのリスクにもつながる可能性があるという両面から捉えるとよいでしょう。

ケアの方向性

疾患と治療に関する理解度を確認し、必要な健康教育を計画的に実施していく必要があります。特に抗凝固療法の重要性と服薬継続の必要性については、B氏だけでなく家族も含めて理解を深められるよう支援することが重要です。また、本人の自立への強い意欲を尊重しながら、現実的な目標設定ができるよう支援し、家族の介護負担軽減のための社会資源の活用についても情報提供していく方向性が考えられます。


2. 栄養-代謝パターンのポイント

このパターンでは、脳梗塞後の嚥下機能低下と栄養摂取状況、さらに再発予防のための代謝管理を評価することが重要です。食事摂取量が6割程度であることや、複数の代謝性疾患を合併していることから、栄養状態の維持と疾患管理の両面から見ていく必要があります。

どんなことを書けばよいか

栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。

  • 食事と水分の摂取量と摂取方法
  • 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
  • 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
  • 嚥下機能・口腔内の状態
  • 嘔吐・吐気の有無
  • 皮膚の状態、褥瘡の有無
  • 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)

嚥下機能と食事摂取状況

B氏は刻み食・とろみ付き水分で摂取しており、摂取量は6割程度という状況です。食事中にむせることがあり、嚥下訓練も並行して実施されています。摂取量が6割という数値は、必要栄養量を下回っている可能性があり、長期的には栄養状態の悪化や体力低下につながるリスクがあると考えられます。また、嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎のリスクも高めるため、この点も含めてアセスメントすることが重要です。嚥下訓練の効果や今後の改善見込みについても、リハビリテーションスタッフと連携しながら評価していく視点を持つとよいでしょう。

代謝性疾患の管理

B氏は脂質異常症の既往があり、LDLコレステロールが145mg/dLとやや高値を示しています。また、HbA1cが6.2%であることから、糖代謝にも注意が必要な状態と考えられます。これらの値は、動脈硬化の進行や脳梗塞の再発リスクに直結する重要な指標です。現在の食事摂取量が6割程度であることを考えると、これらの値が食事摂取不足によるものなのか、あるいは食事内容や代謝の問題なのかを見極める必要があります。脂質管理と血糖管理のバランスを取りながら、適切な栄養摂取を実現するための支援を考えるとよいでしょう。

栄養状態の評価

事例には具体的な身長・体重・BMIの記載がありませんが、これらの基本的な栄養指標を把握することは重要です。また、血液データとしてアルブミンや総蛋白などの栄養状態を反映する指標があれば、それらも含めて総合的に評価する必要があります。独居で自立した生活を送っていた方が、入院後刻み食で6割程度の摂取となっている背景には、嚥下機能の問題だけでなく、食欲低下や食事内容への不満、心理的要因なども関与している可能性があるという視点を持つことが大切です。

皮膚の状態と水分バランス

脳梗塞後の片麻痺患者では、体位変換の困難さや感覚障害により褥瘡のリスクが高まります。B氏の場合、左片麻痺があり、ADLに制限があるため、皮膚の観察と褥瘡予防は重要な看護課題となります。また、水分摂取状況についても、とろみ付き水分を使用していることから、十分な水分摂取ができているかを評価する必要があるでしょう。心房細動があり抗凝固療法を受けている患者では、脱水は血栓形成のリスクを高める可能性があるため、この点も含めて水分バランスを見ていくとよいでしょう。

アセスメントの視点

栄養-代謝パターンでは、嚥下機能低下による摂取量不足と、複数の代謝性疾患の管理という2つの大きな課題を統合的に捉えることが重要です。現在の摂取量6割という状態が継続すれば、栄養状態の悪化やリハビリテーション効果の低下、免疫力低下による感染リスクの増大などにつながる可能性があります。一方で、脂質異常症や耐糖能異常の管理も脳梗塞再発予防の観点から重要であり、これらのバランスをどう取っていくかが看護の重要なポイントとなります。

ケアの方向性

嚥下機能の改善に向けた訓練を継続しながら、摂取量を増やすための工夫が必要です。食事形態や内容の調整、食事環境の整備、本人の嗜好の把握などを通じて、安全に、かつ十分な栄養を摂取できる方法を検討していくことが重要です。また、脂質管理や血糖管理のための食事指導も、退院後の生活を見据えて計画的に実施していく必要があります。家族への栄養管理の指導も、在宅復帰を考える上で欠かせない要素となるでしょう。

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