本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。
実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。
この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。
それでは、見ていきましょう。
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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。
今回の事例
診断と既往
患者: 68歳、男性 診断名: 2型糖尿病(罹患歴12年)、糖尿病性網膜症(単純期)、糖尿病性神経障害 既往歴: 高血圧症(5年前~)、脂質異常症(3年前~)
現病歴: 12年前に2型糖尿病と診断され内服治療を継続していたが、ここ2年間は仕事の多忙を理由に通院が不規則となり、食事療法や運動療法も実施できていなかった。3ヶ月前の外来でHbA1c 10.2%と高値を認め教育入院を勧められたが拒否。その後、易疲労感の増強と体重減少(3ヶ月で5kg減)、口渇・多飲・多尿が出現し、2週間前の外来でHbA1c 11.8%、随時血糖値380mg/dLと更なる悪化を認めたため、今回教育入院となった。
現在の治療: 持効型インスリン療法を開始。メトホルミン内服継続、血糖自己測定実施中。2週間の糖尿病教育入院プログラムに参加予定。
現在の状態
入院からの経過: 入院日は12月25日(入院1日目)、介入開始日は12月26日(入院2日目)、介入2日目。入院時、全身倦怠感と口渇感が強く「最近疲れやすくて仕事にならない」「夜中に何度もトイレに起きる」と訴えあり。入院2日目の朝、「薬さえ飲めば良くなると思っていた」「食事制限とか運動とか、仕事が忙しくてできない」と話し、疾患管理に対する理解不足と消極的な姿勢が見られた。
バイタルサイン(入院2日目 朝8時): 体温36.8℃、血圧148/92mmHg、脈拍88回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 98%(室内気)。身長168cm、体重62kg(3ヶ月前は67kg)、BMI 22.0。意識清明だが全身倦怠感が持続。皮膚・口腔内ともに乾燥傾向。両下肢にしびれ感あり「足の裏がジンジンする」と表現。視力低下の自覚はあるが「老眼だと思っていた」と話す。
食事: 糖尿病食1600kcal/日開始。入院前は朝食抜き、昼は外食中心(ラーメンや丼物)、夕食は22時以降が多い。缶コーヒー(微糖)を1日3-4本、カップ麺を週3-4回摂取していた。入院後の朝食は「量が少ない」と不満を述べながらも全量摂取。
排泄: 頻尿あり、夜間4-5回トイレに起きる。尿量は1回200-300mL程度。便通は2-3日に1回、硬便傾向。
睡眠: 頻尿により中途覚醒が頻回で「ぐっすり眠れない」と訴え。睡眠時間は実質4-5時間程度と推測される。
ADL: 移動は独歩で自立しているが「疲れやすい」ため病棟内の移動も億劫がる様子あり。セルフケアは全て自立。転倒歴はないが、両下肢のしびれ感により「足元がおぼつかない時がある」と話す。
検査と治療
主要な検査データ(入院時): 血糖値362mg/dL(基準値: 空腹時70-109)、HbA1c 11.8%(基準値: 4.6-6.2)、空腹時血糖285mg/dL。総コレステロール245mg/dL、LDLコレステロール158mg/dL、中性脂肪220mg/dL。eGFR 55mL/分/1.73m²(軽度腎機能低下)、尿蛋白(+)、尿糖(3+)。眼科検査では単純糖尿病性網膜症を認める。神経学的検査では両下肢の振動覚低下、アキレス腱反射減弱あり。
内服薬: メトホルミン500mg 1日2回(朝・夕食後)、アムロジピン5mg 1日1回(朝食後)、ロスバスタチン5mg 1日1回(夕食後)。持効型インスリン(グラルギン)12単位 1日1回(就寝前)を新規開始。血糖自己測定(毎食前・就寝前)実施中。
今後の方針: 2週間の教育入院を予定。インスリン量調整を行いながら、糖尿病教室への参加、栄養指導、運動療法指導を実施。退院後は外来でインスリン継続と定期的な血糖コントロール評価を行う。
本人・家族の想い
本人: 「仕事が忙しくて、食事や運動に気を付ける余裕がなかった」「薬さえきちんと飲めば大丈夫だと思っていた」「最近本当に疲れやすくて、このままじゃ仕事を続けられないかもしれない」「糖尿病がこんなに怖い病気だとは思わなかった」「入院は仕事に支障が出るから早く退院したいが、ちゃんと治さないといけないとも思う」
妻(面会時): 「主人は仕事人間で、自分の体のことは二の次にしてきた」「食事も外食ばかりで、家で作っても帰りが遅くて冷めたものを食べる状態だった」「私も糖尿病の食事について詳しく知らなかったので、一緒に勉強したい」「これを機に生活を見直してほしい」
ゴードン11項目アセスメント解説
1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント
健康知覚-健康管理パターンでは、患者が自身の健康状態をどのように認識し、疾患管理にどう取り組んでいるかを評価します。特に糖尿病のような慢性疾患では、患者の疾患理解と健康管理行動が予後を大きく左右するため、このパターンのアセスメントは極めて重要です。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
疾患理解と健康管理行動の実態
この患者は「薬さえ飲めば良くなると思っていた」と述べており、糖尿病の病態や治療の本質について十分な理解が得られていないことがうかがえます。12年間の罹患歴がありながらも、ここ2年間は仕事の多忙を理由に通院が不規則となり、3ヶ月前の教育入院の勧めも拒否していた点を踏まえて記述するとよいでしょう。この背景には、糖尿病を「薬物療法だけで管理できる疾患」と捉えている認識の誤りがあり、食事療法や運動療法の重要性が理解されていないという問題があることを意識して書くことが大切です。
また「食事制限とか運動とか、仕事が忙しくてできない」という発言からは、疾患管理に対する消極的な姿勢と、仕事を優先する価値観が読み取れます。こうした認識のずれが通院中断や生活習慣の乱れにつながり、結果としてHbA1cが10.2%から11.8%へと悪化したという経緯を関連づけて考えるとよいでしょう。
症状の認識と疾患の重大性への気づき
「最近疲れやすくて仕事にならない」「夜中に何度もトイレに起きる」という訴えは、高血糖による症状が日常生活に支障をきたしていることを示しています。さらに3ヶ月で5kgの体重減少という顕著な身体変化があったにもかかわらず、それを疾患のシグナルとして捉えられなかった点に着目するとよいでしょう。
一方で「糖尿病がこんなに怖い病気だとは思わなかった」「このままじゃ仕事を続けられないかもしれない」という発言からは、入院を契機に疾患の重大性に気づき始めている様子がうかがえます。この認識の変化は、今後の行動変容につながる重要な転機となる可能性があり、その点を踏まえて健康管理への動機づけを考えることが重要です。
既存の合併症とリスク因子
既に糖尿病性網膜症(単純期)、糖尿病性神経障害が出現しており、さらにeGFR 55mL/分/1.73m²と軽度腎機能低下、尿蛋白(+)も認められています。しかし視力低下を「老眼だと思っていた」と述べている点から、合併症の進行について自覚的な理解が不足していることが読み取れます。これらの合併症は不可逆的であり、今後の血糖コントロール次第でさらに進行するリスクがあることを踏まえて、アセスメントを記述するとよいでしょう。
また高血圧症(5年前~)、脂質異常症(3年前~)という複数のリスク因子を抱えており、これらが相互に作用して動脈硬化性疾患のリスクを高めている点も重要です。
妻の理解とサポート体制
妻は「主人は仕事人間で、自分の体のことは二の次にしてきた」と患者の健康管理行動の問題点を認識しており、「私も糖尿病の食事について詳しく知らなかったので、一緒に勉強したい」と学習意欲を示しています。この家族の姿勢は退院後の生活調整において重要な資源となることを意識して記述するとよいでしょう。
アセスメントの視点
健康知覚-健康管理パターンのアセスメントでは、患者の疾患理解の程度と実際の健康管理行動のギャップに着目することが重要です。この患者の場合、12年の罹患歴がありながら疾患の本質的理解が不足しており、それが通院中断や生活習慣の乱れという行動につながっています。一方で、入院を契機に疾患の重大性に気づき始めている変化の兆しも見られます。
既に複数の合併症が出現している事実と、本人の症状認識の乏しさとの対比も重要なポイントです。さらに仕事優先の価値観が健康管理行動の障壁となっている構造を理解し、家族のサポート体制という強みも含めて総合的に評価することが求められます。
ケアの方向性
このパターンから導かれるケアの方向性として、まず糖尿病教育を通じた疾患理解の促進が最優先となります。特に「薬物療法だけでなく、食事・運動・服薬の三本柱が必要である」という基本的理解を確立することが重要です。
教育にあたっては、患者が「仕事を続けられないかもしれない」という危機感を抱いている点を動機づけとして活用し、仕事と治療の両立という視点から生活調整を一緒に考えていく姿勢が効果的でしょう。また妻の学習意欲を活かし、家族を含めた教育を実施することで、退院後の継続的な支援体制を構築することが望まれます。
既に出現している合併症については、その意味と今後の進行予防の重要性について丁寧に説明し、定期的な検査と自己管理の必要性を理解してもらうことが大切です。
2. 栄養-代謝パターンのポイント
栄養-代謝パターンでは、食事摂取の状況、栄養状態、代謝機能を評価します。糖尿病患者にとって適切な栄養管理は血糖コントロールの基盤であり、このパターンのアセスメントは治療の成否を左右する重要な要素です。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
入院前の食生活パターン
この患者の入院前の食生活は著しく不規則で、朝食抜き、昼は外食中心でラーメンや丼物といった炭水化物・塩分・脂質の多い食事、夕食は22時以降という生活リズムの乱れが見られます。さらに缶コーヒー(微糖)を1日3-4本、カップ麺を週3-4回摂取していた点を踏まえると、糖質過多の食生活であったことがわかります。この食生活パターンが血糖コントロール不良の主要因の一つとなっていることを意識して記述するとよいでしょう。
「仕事が忙しくて食事や運動に気を付ける余裕がなかった」という発言から、仕事中心の生活リズムが食事の質と時間帯に影響を及ぼしている構造が読み取れます。妻も「食事も外食ばかりで、家で作っても帰りが遅くて冷めたものを食べる状態だった」と述べており、家庭での食事管理が困難な状況であったことがうかがえます。
体重変化と代謝状態
3ヶ月で5kgの体重減少(67kg→62kg)という顕著な変化は、高血糖による異化亢進を示唆しています。現在のBMIは22.0と標準範囲内ですが、短期間での体重減少は栄養状態の悪化と捉えることができます。この体重減少の背景には、血糖値362mg/dL、HbA1c 11.8%という著明な高血糖状態があり、インスリン作用不足によりブドウ糖を細胞内に取り込めず、代わりに脂肪やタンパク質が分解されてエネルギー源として利用されている病態を考える必要があります。
血糖コントロール状態と代謝指標
HbA1c 11.8%、空腹時血糖285mg/dL、随時血糖362mg/dL、尿糖(3+)という検査データは、著明な高血糖状態が持続していることを示しています。HbA1cは過去1-2ヶ月の平均血糖値を反映する指標であり、11.8%という値は長期的な血糖コントロール不良を意味します。この数値の推移(3ヶ月前10.2%→現在11.8%)から、血糖コントロールがさらに悪化していたことがわかり、不規則な通院と食生活の乱れの影響を具体的に示す根拠となることを踏まえて記述するとよいでしょう。
また総コレステロール245mg/dL、LDLコレステロール158mg/dL、中性脂肪220mg/dLという脂質異常も認められ、脂質代謝の問題も併存していることがわかります。
高血糖による症状と水分代謝
口渇・多飲・多尿という典型的な高血糖症状が出現しており、これは浸透圧利尿による脱水状態を反映しています。夜間4-5回のトイレ覚醒という頻尿も、この病態の現れと考えられます。皮膚・口腔内ともに乾燥傾向が見られる点も、脱水状態を示唆する所見として重要です。
水分摂取については缶コーヒー(微糖)の多飲という情報があり、これは口渇に対して糖質を含む飲料で対応していたことを示しています。この行動がさらなる血糖上昇を招くという悪循環を形成していた可能性を考慮して記述するとよいでしょう。
入院後の食事摂取状況
糖尿病食1600kcal/日が開始され、朝食は「量が少ない」と不満を述べながらも全量摂取できています。この反応は、これまでの食生活と比較して摂取量が減少したことへの違和感を表していると考えられます。しかし全量摂取できている点は、食欲が保たれており、治療食を受け入れる意欲があることを示す肯定的な情報として捉えることができます。
アセスメントの視点
栄養-代謝パターンのアセスメントでは、入院前の不規則で糖質過多の食生活が血糖コントロール不良を招いた主要因であることを明確にすることが重要です。3ヶ月で5kgの体重減少とHbA1c 11.8%という検査データから、高血糖による異化亢進状態が持続していたことを病態生理的に理解し記述するとよいでしょう。
口渇・多飲・多尿、皮膚・口腔粘膜の乾燥という症状は、浸透圧利尿による脱水状態を示しており、水分代謝の問題も含めて評価する必要があります。一方で、入院後の糖尿病食を全量摂取できている点は、栄養管理への取り組みの基盤となる強みとして捉えることができます。
仕事中心の生活リズムが食事の質と時間帯に影響を及ぼしている構造的な問題も見逃せません。退院後の食生活をどう調整するかという視点で、妻の協力体制も含めて考えることが求められます。
ケアの方向性
このパターンから導かれるケアの方向性として、まず糖尿病食の意義と具体的な食事療法について理解を深めることが必要です。単に量を制限するだけでなく、バランスの取れた食事の重要性、食事時間の規則性、間食や飲料の選び方など、実生活に即した具体的な指導が求められます。
栄養指導では、仕事中の昼食をどうするか、帰宅が遅い場合の夕食の工夫など、患者の生活パターンに合わせた実践可能な方法を一緒に考えていく姿勢が効果的でしょう。妻も「一緒に勉強したい」と述べているため、家族を含めた栄養指導を実施し、退院後の食事管理をサポートする体制を整えることが重要です。
また持効型インスリン療法が開始されていますが、食事療法との併用により血糖コントロールの改善を図ることを理解してもらう必要があります。血糖自己測定の結果と食事内容を関連づけて振り返ることで、食事が血糖値に与える影響を実感できるような支援も有効でしょう。
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ゴードンの続きとヘンダーソン・関連図・看護計画について解説しています😊



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