【ゴードン】腰椎圧迫骨折 入院5日目(0024)

ゴードン

事例の要約

本事例は、自宅の玄関で転倒し、腰椎圧迫骨折(L1)を受傷した75歳女性A氏の事例。保存的治療目的で入院となり、入院5日目11月10日に介入。痛みのコントロールと早期離床に向けたリハビリテーションが進行中である。

基本情報

A氏は75歳女性で、身長155cm体重48kg、BMI 19.9である。家族構成は夫(78歳)との二人暮らしで、キーパーソンは長女(50歳)である。長女は車で30分の距離に住んでおり、週に2回ほど様子を見に来ている。職業は元小学校教諭で、10年前に退職している。性格は几帳面で社交的、また自立心が強く、これまでは家事全般を一人でこなしていた。感染症はなく、アレルギーは花粉症食物アレルギー(エビ)がある。認知機能に問題はなく、会話は明瞭で意思疎通は良好である。HDS-Rは28点で、認知症の兆候は認められない。

病名

腰椎圧迫骨折第1腰椎)。保存的治療の方針となり、手術は行っていない。骨密度検査の結果、骨粗鬆症の診断も受けている。

既往歴と治療状況

高血圧症(10年前から治療中)で、降圧剤を内服中。血圧はほぼコントロールされている。骨粗鬆症(5年前に診断)に対しては、ビスホスホネート製剤を服用中。また、2型糖尿病(8年前から)があり、経口血糖降下薬で治療中であるが、最近のHbA1cは6.8%とやや高めである。白内障(両眼)については3年前に右眼の手術を受け、左眼は経過観察中である。変形性膝関節症(両膝)に対しては、定期的に整形外科で診察を受けており、痛み止めを必要時服用している。

入院から現在までの情報

A氏は11月6日、自宅の玄関で転倒し、腰部に強い痛みを感じた。自力で起き上がることができず、偶然訪問していた長女が119番通報し、救急搬送された。救急外来でのX線検査とMRI検査の結果、第1腰椎の圧迫骨折と診断され、同日入院となった。入院時、腰部痛はNRSで8/10と強く、体動時に増強していた。ベッド上での体位変換や起き上がりにも介助が必要な状態であった。

入院後は、コルセットの装着と安静が指示され、疼痛コントロール目的で非ステロイド性抗炎症薬が開始された。入院2日目からはリハビリテーション科の介入があり、理学療法士によるベッドサイドでの関節可動域訓練筋力強化訓練が開始された。入院3日目には腰痛がNRSで5/10まで軽減し、看護師の介助のもとベッドサイドでの座位保持訓練が開始された。

入院4日目からは、リハビリ室での立位訓練が開始され、歩行器を使用しての短距離歩行にも挑戦している。現在の入院5日目では、腰痛はNRSで3/10まで軽減し、コルセット装着下で歩行器を使用した歩行病棟内で20m程度可能となっている。しかし、長時間の座位保持や立位でまだ疼痛が増強する傾向にあり、日中は臥床時間が長い状態である。また、夜間は腰痛により睡眠が中断されることがあり、眠剤を使用している。

バイタルサイン

来院時のバイタルサインは、体温36.5℃血圧158/90mmHgと高値を示し、脈拍92回/分呼吸数24回/分とやや速く、SpO2 97%(室内気)であった。疼痛による緊張と不安から、血圧上昇と頻脈、呼吸数増加が見られた。また、顔面蒼白で冷汗があり、痛みによるストレス反応が現れていた。

現在(入院5日目)のバイタルサインは、体温36.3℃血圧132/78mmHgと安定し、脈拍76回/分呼吸数18回/分SpO2 98%(室内気)と全体的に落ち着いている。疼痛コントロールが進み、自律神経症状も改善している。起立時に一過性の血圧低下(安静時132/78mmHgから立位時122/70mmHg)があるが、めまい等の自覚症状はない。

食事と嚥下状態

入院前の食事状況は、A氏自身が毎日3食を調理し、夫と共に規則正しく摂取していた。食事内容は和食中心で、野菜を多く取り入れたバランスの良い食事を心がけていた。嚥下状態に問題はなく、普通食を摂取していた。糖尿病のため、砂糖や炭水化物の摂取には気をつけており、主治医からの食事指導を守っていた。喫煙歴はなく飲酒週に1〜2回、晩酌として日本酒を1合程度摂取する習慣があった。

現在は、入院食として糖尿病食1600kcalが提供されている。入院当初は強い腰痛のため臥床したままの食事摂取が必要で、看護師の介助を受けていたが、現在はベッド上での座位が可能となり、自力で食事ができるようになっている。しかし、長時間の座位保持が困難なため、食事時間が長くなる傾向がある。嚥下状態は良好で、摂取量は7〜8割程度である。入院による環境変化と活動量の低下から、食欲の低下がみられる。また、排便コントロールのため、食物繊維が多い食品を意識的に摂取するよう栄養士から指導を受けている。入院中は禁酒している。

排泄

入院前の排泄状況は、排尿については1日6〜7回程度で、夜間頻尿1〜2回あった。尿の色調や性状に異常はなく、自立して排泄していた。排便2日に1回程度の規則的なリズムで、便秘傾向はあるものの、食物繊維を意識的に摂取することで調整していた。下剤時々使用する程度で、酸化マグネシウムを主治医から処方されていた。

現在は、排尿についてはポータブルトイレを使用しており、1日5〜6回程度である。入院当初は疼痛のため看護師の介助が必要であったが、現在は歩行器を使用して自力でポータブルトイレまで移動できるようになっている。尿量は十分で、色調や性状に異常はない排便については、入院後の活動量低下環境変化臥床時間の延長により排便間隔が延長し、3日間排便がない状態が続いた。4日目に下剤(酸化マグネシウム330mg 3錠/日)の内服を開始し、5日目の朝に排便があった。便性状はやや硬めで、量は少なめであった。現在は、排便を促すために水分摂取を増やし、乳製品や食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取するよう指導を受けている。

睡眠

入院前の睡眠状況は、午後9時頃就寝し、午前6時頃起床する規則正しい生活リズムを保っていた。寝つきは良好で、中途覚醒トイレのため1回程度あったが、すぐに再入眠できていた。睡眠時間は7時間程度が確保できており、眠剤などの睡眠薬は使用していなかった。夕食後にテレビを見たり読書をしたりするなど、就寝前の習慣が確立されていた。

現在の睡眠状況は、入院環境への適応が十分でなく、また腰痛による影響で入眠困難中途覚醒が見られる。就寝時に体位変換時の痛みがあり、側臥位での睡眠を好んでいる。入院後2日目からは眠剤(ゾルピデム5mg)が開始され、内服後は入眠できるものの、3〜4時間後に痛みで目覚めることがあり、睡眠の質は低下している。日中も疼痛処置のために断片的な仮眠をとる状態で、睡眠と覚醒のリズムが乱れている。眠剤については依存性を心配しており、「早く自分の力で眠れるようになりたい」と話している。

視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰

視力は、右眼は白内障手術後で視力0.8、左眼は白内障進行中で視力0.5である。老眼があり、読書時には老眼鏡を使用している。書類の記入や新聞を読む際にも眼鏡が必要である。聴力は年齢相応で、普通の会話では問題なく聞き取れるが、早口での会話や騒がしい環境では聞き返すことがある。知覚については、腰部の圧痛運動時痛があるが、感覚鈍麻や異常感覚はない。両下肢の感覚は正常で、左右差もない。コミュニケーション能力は良好で、意思表示は明確であり、質問に対する応答も適切である。時々痛みによる表情の歪みがあるが、言葉で状態を正確に表現できる。信仰は特になく、宗教的な制限や要望はない。

動作状況

入院前の動作状況は、歩行独歩可能で、変形性膝関節症による軽度の痛みはあったが、屋内外問わず自立していた。杖などの補助具は使用せず、買い物や近所への散歩も行っていた。移乗動作も自立しており、椅子やトイレ、ベッドへの移動に問題はなかった。排尿・排便は完全に自立しており、トイレまで自力で行き、排泄行為も介助なく行えていた。入浴自宅の浴槽を使用し、週4回程度入浴していた。浴槽の出入りには手すりを使用するが、洗体・洗髪も含めて自立していた。衣類の着脱自立しており、ボタンの留め外しなどの細かい動作も問題なく行えていた。転倒歴としては、今回の転倒の3年前玄関の段差つまずいて転倒した経験があるが、その際は軽度の打撲のみで、重篤な外傷はなかった。

現在の動作状況は、歩行コルセット着用歩行器使用により、20m程度可能になっている。しかし、腰痛のため歩行時間は制限され、疲労感が強い。移乗看護師の見守りのもと、ベッドからポータブルトイレ椅子への移動が可能になっているが、動作時の疼痛があり、やや時間を要する排尿日中ポータブルトイレを使用し、夜間看護師の介助でポータブルトイレを使用する。排便も同様にポータブルトイレを使用しており、腰への負担を考慮した姿勢の工夫が必要である。入浴は現在は行っておらず、清拭部分浴(手浴・足浴)で対応している。洗髪は洗髪車を使用し、看護師の介助を受けている。衣類の着脱上半身自立しているが、下半身腰を屈曲させる動作に痛みがあるため、看護師の一部介助を必要としている。特に靴下ズボンの着脱時には支援が必要である。今回の転倒をきっかけに、転倒への不安が強く、動作時に慎重さが増している。

内服中の薬

内服中の薬:

  • アムロジピン 5mg 1錠 1日1回 朝食後(降圧剤)
  • グリメピリド 1mg 1錠 1日1回 朝食後(血糖降下剤)
  • メトホルミン 250mg 2錠 1日2回 朝夕食後(血糖降下剤)
  • リセドロン酸ナトリウム 17.5mg 1錠 週1回 起床時(骨粗鬆症治療薬)
  • ロキソプロフェン 60mg 1錠 疼痛時 1日3回まで(非ステロイド性抗炎症薬)
  • レバミピド 100mg 2錠 1日2回 朝夕食後(胃粘膜保護薬)
  • 酸化マグネシウム 330mg 3錠 1日3回 毎食後(下剤)
  • ゾルピデム 5mg 1錠 就寝前 不眠時(睡眠薬)
  • カルシウム 600mg 1錠 1日1回 夕食後(カルシウム補給剤)
  • ビタミンD3 1000IU 1錠 1日1回 朝食後(ビタミンD補給剤)

服薬状況は、入院前は自己管理で、薬ケースを活用し、きちんと内服できていた。入院後は看護師管理となっており、配薬から内服確認まで看護師が行っている。疼痛時のロキソプロフェンは、内服後に効果判定を行い、痛みのアセスメントを実施している。入院中の服薬に関しては、ほぼ予定通りに内服できており、拒否嚥下困難はない。退院後の自己管理に向けて、薬の効能副作用注意点について患者教育を進めている。

検査データ

検査データ比較表

検査項目基準値入院時(11月6日)最近(11月10日)
血液学的検査
白血球数(WBC)3.5~9.0×10³/μL9.8×10³/μL7.2×10³/μL
赤血球数(RBC)3.8~5.0×10⁶/μL4.2×10⁶/μL4.1×10⁶/μL
ヘモグロビン(Hb)11.5~15.0 g/dL11.8 g/dL11.6 g/dL
ヘマトクリット(Ht)34.0~45.0 %36.5 %35.8 %
血小板数(PLT)15.0~35.0×10⁴/μL23.5×10⁴/μL24.1×10⁴/μL
生化学的検査
総蛋白(TP)6.5~8.2 g/dL6.8 g/dL6.7 g/dL
アルブミン(Alb)3.5~5.0 g/dL3.4 g/dL3.3 g/dL
AST(GOT)10~35 IU/L28 IU/L25 IU/L
ALT(GPT)5~30 IU/L22 IU/L20 IU/L
ALP115~359 IU/L342 IU/L338 IU/L
γ-GTP30 IU/L以下28 IU/L27 IU/L
総ビリルビン0.2~1.2 mg/dL0.8 mg/dL0.7 mg/dL
BUN8~20 mg/dL18 mg/dL17 mg/dL
クレアチニン0.4~0.8 mg/dL0.7 mg/dL0.7 mg/dL
尿酸2.5~7.0 mg/dL5.2 mg/dL5.0 mg/dL
Na135~145 mEq/L140 mEq/L138 mEq/L
K3.5~5.0 mEq/L4.2 mEq/L4.1 mEq/L
Cl98~108 mEq/L102 mEq/L101 mEq/L
Ca8.5~10.5 mg/dL8.3 mg/dL8.6 mg/dL
CRP0.3 mg/dL以下2.8 mg/dL1.2 mg/dL
血糖(空腹時)70~110 mg/dL156 mg/dL142 mg/dL
HbA1c4.6~6.2 %6.8 %6.7 %
凝固系検査
PT10.0~13.0秒11.5秒11.4秒
APTT24.0~38.0秒32.5秒31.8秒
尿検査
尿糖(−)1+±
尿蛋白(−)(−)(−)
尿潜血(−)(−)(−)
骨代謝マーカー
血清NTx10.0~20.0 nmolBCE/L24.8 nmolBCE/L未検査
血清BAP3.8~22.6 μg/L25.2 μg/L未検査
骨密度検査
腰椎BMDT-score > -1.0T-score -2.8未検査
大腿骨頸部BMDT-score > -1.0T-score -2.5未検査
今後の治療方針と医師の指示

今後の治療方針としては、A氏の腰椎圧迫骨折に対して保存的治療を継続する。現在のコルセット装着による外固定を6週間程度継続し、骨癒合を待つ方針である。リハビリテーションでは、筋力強化訓練日常生活動作訓練を段階的に進めていく。まずは歩行距離の延長を目指し、最終的にはコルセット装着下での自立歩行を目標とする。痛みのコントロールについては、現在の非ステロイド性抗炎症薬を継続し、痛みの程度に応じて用量を調整していく。

医師からは以下の指示が出されている。

活動に関する指示として、離床時間を徐々に増やし、1日3回のリハビリテーション(午前・午後・夕方)を実施する。歩行はコルセット装着下で行い、疲労感や痛みの増強がある場合は休息を取るよう指示されている。また、腰部に負担がかかる動作(前屈重いものの持ち上げ)は禁止されている。

骨粗鬆症治療に関しては、ビスホスホネート製剤の継続に加え、カルシウムビタミンD摂取量増加が指示されている。食事で不足する場合はサプリメントの使用も検討する。

退院時期については、歩行が安定し、基本的な日常生活動作コルセット装着下で自立できれば退院可能とされており、現在の回復状況から2週間後を目途に退院を検討している。退院後も整形外科外来での定期的なフォローアップ(2週間に1回)が必要であり、X線検査による骨癒合の確認を行う予定である。

糖尿病管理に関しては、入院中の血糖値の推移を見ながら、必要に応じて薬剤調整を行う方針である。

本人と家族の想いと言動

A氏自身は、「早く痛みがなくなって家に帰りたい」という思いが強く、特に「夫が一人で心配」と頻繁に口にしている。リハビリテーションには積極的に取り組んでおり、「痛みはあるけれど、動けないと筋力が落ちる」と話している。一方で、「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」と自身の骨粗鬆症に対する落胆も見られる。また、「退院後も家事ができるか不安」と退院後の生活に対する心配を看護師に打ち明けている。

夫は面会時に「早く良くなって帰ってきてほしい」と話し、A氏の不在中は「食事は惣菜で済ませている」と言っている。キーパーソンである長女は、「もっと早く母の骨粗鬆症に気づいて対策すべきだった」と自責の念を抱いており、「退院後は週に3〜4回は様子を見に行きたい」と話している。また、「両親が二人で暮らし続けられるよう、家の環境整備を考えている」と前向きな姿勢も見せている。家族全体として、A氏の回復と安全な在宅生活に向けて協力的である。

1.健康知覚-健康管理

A氏は第1腰椎の圧迫骨折と診断され、保存的治療を受けている75歳の女性である。圧迫骨折とは、椎体に垂直方向から強い力が加わることで椎体が潰れる骨折であり、高齢者や骨粗鬆症患者に多くみられる。A氏の場合も骨密度検査でT-scoreが腰椎-2.8、大腿骨頸部-2.5と骨粗鬆症の診断基準である-2.5以下であることから、骨粗鬆症が骨折の要因となったと考えられる。特に加齢による女性の骨密度低下は閉経後にエストロゲンの減少により急速に進むため、A氏の骨折リスクが高まっていたと推察される。

健康状態としては、自宅の玄関で転倒し受傷した経緯があり、身体機能の低下と生活環境の安全性に課題があると考えられる。入院5日目の現在、腰痛はNRSで初期の8/10から3/10まで軽減しているが、長時間の座位保持や立位で疼痛が増強する傾向にあり、日常生活動作に制限がある。バイタルサインは体温36.3℃、血圧132/78mmHg、脈拍76回/分、呼吸数18回/分、SpO2 98%(室内気)と安定しており、全身状態は改善傾向にある。しかし、起立時に一過性の血圧低下(安静時132/78mmHgから立位時122/70mmHg)が認められるため、起立性低血圧のリスクがあり、転倒予防の観点から慎重な観察が必要である。

受診行動としては、高血圧症、2型糖尿病、骨粗鬆症、白内障、変形性膝関節症の既往があり、いずれも定期的に医療機関を受診し治療を継続している点から、健康管理への意識は高いと評価できる。一方で、「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」という発言からは、骨粗鬆症に関する十分な疾患理解ができていなかった可能性がある。また、退院後の生活について「家事ができるか不安」と話していることから、疾患や治療の自己管理に対する不安が存在していると考えられる。

服薬状況については、入院前は薬ケースを活用して自己管理できていた点は評価できる。現在は看護師管理となっているが、服薬拒否や嚥下困難はなく、治療に対する受容性は良好である。しかし、HbA1c値が6.8%とやや高値であることから、糖尿病管理が十分でない可能性があり、服薬アドヒアランスや生活習慣の再評価が必要である。また、眠剤の依存性を心配している発言から、薬剤に対する過度な不安も観察される。

身体状況として、身長155cm、体重48kg、BMI 19.9であり、標準範囲内である。しかし、高齢者の栄養状態としてはBMIがやや低めであり、骨粗鬆症の進行リスクとなる可能性がある。運動習慣については明確な情報がないが、入院前は「買い物や近所への散歩」を行っていたとの記載から、ある程度の身体活動は維持していたと推測される。一方で、変形性膝関節症による活動制限があった可能性もあり、これが骨密度低下に影響した可能性も考慮すべきである。

アレルギー状況としては、花粉症とエビに対する食物アレルギーがあり、医療処置や食事提供時の注意が必要である。呼吸に関するアレルギーの具体的な情報は少ないため、花粉症による呼吸器症状の有無や季節性の確認が必要である。飲酒については週に1~2回、晩酌として日本酒を1合程度摂取する習慣があったが、入院中は禁酒している。喫煙歴はない。

既往歴として、高血圧症(10年前から治療中)、2型糖尿病(8年前から治療中)、骨粗鬆症(5年前に診断)、白内障(両眼、右眼は3年前に手術済み)、変形性膝関節症(両膝)がある。これらの複数の慢性疾患の存在は、相互に悪影響を及ぼす可能性があり、包括的な管理が必要である。特に骨粗鬆症と糖尿病の併存は骨質の劣化を促進する可能性があり、より積極的な治療介入が検討されるべきである。また、変形性膝関節症は歩行時の安定性に影響を与え、今回の転倒の一因となった可能性もある。

看護介入としては、まず骨粗鬆症と圧迫骨折について理解度を確認し、必要に応じて疾患教育を行うことが重要である。特に骨粗鬆症の進行予防のためのカルシウムやビタミンDを含む食事の重要性、適切な運動療法の指導が必要である。また、複数の慢性疾患を有するため、服薬管理の支援と各疾患の相互関係についての理解促進も重要である。現在の疼痛状況を継続的に評価し、効果的な疼痛管理を行うとともに、起立時の血圧変動についても継続観察し、転倒リスクの軽減に努める必要がある。さらに、退院後の生活不安に対応するため、日常生活動作訓練と家族を含めた退院支援計画の立案が求められる。

今後の観察ポイントとしては、疼痛の変化、活動量の増加に伴う自立度の変化、服薬自己管理能力の回復状況、血糖値の推移、そして退院後の生活に対する不安の変化などを継続的に評価することが重要である。また、骨粗鬆症の治療効果を判定するための定期的な骨代謝マーカーのモニタリングも推奨される。

2.栄養-代謝

A氏は入院前、自身で毎日3食を調理し、夫と共に規則正しく摂取していた。食事内容は和食中心で野菜を多く取り入れたバランスの良い食事を心がけており、糖尿病のため砂糖や炭水化物の摂取にも配慮していた。水分摂取量については具体的な記載がないため、脱水リスクの評価のためにも日常の水分摂取量や水分に対する嗜好の情報収集が必要である。現在は糖尿病食1600kcalが提供されているが、長時間の座位保持が困難なため食事時間が長くなる傾向があり、摂取量は7~8割程度と食欲低下がみられる。この食欲低下は入院による環境変化と活動量の低下が影響していると考えられる。

食事に関するアレルギーではエビに対するアレルギーがあるため、食事提供時には誤配膳による誤食がないよう注意が必要である。好きな食べ物に関する具体的な情報はないが、和食中心の食事を心がけていたという情報から、日本の伝統的な食文化を好む傾向があると推測される。食欲促進のためにも嗜好調査を行い、好みの食事を提供することが重要である。

身体状況として、身長155cm、体重48kg、BMI 19.9である。BMIは標準範囲内ではあるが、高齢者としてはやや低めであり、低栄養リスクに注意が必要である。高齢者は加齢に伴いサルコペニアや低栄養のリスクが高まるため、十分なタンパク質摂取と適切な栄養管理が重要となる。A氏の基礎代謝量は、ハリス・ベネディクト方程式を用いた概算では約1150kcal/日程度と推測される。身体活動レベルは入院前は家事全般をこなし、買い物や散歩も行っていたことから中程度(1.3~1.5倍)と推測され、必要エネルギー量は約1500~1700kcal/日程度と考えられる。現在提供されている糖尿病食1600kcalは必要量を満たしているが、7~8割程度の摂取では約1120~1280kcalとなり、必要量を下回る可能性がある。

嚥下機能は良好で、嚥下障害の徴候はみられない。口腔内の状態に関する具体的な情報はないため、口腔衛生状態や義歯の使用状況、咀嚼能力などの評価が必要である。高齢者は唾液分泌量の減少や歯牙の喪失により口腔トラブルが生じやすいため、口腔ケアの重要性について指導することも重要である。吐気や嘔吐の症状は報告されていない。

皮膚の状態については、現在臥床時間が長いことから褥瘡発生のリスクがある。特に骨突出部(仙骨部、踵部など)の皮膚状態の定期的な観察と、体位変換やマットレスの選択など予防的介入が必要である。圧迫骨折による疼痛があるため、体位変換時には痛みの管理に配慮しながら皮膚の保護を行う必要がある。また、栄養状態と皮膚の関連性を考慮し、タンパク質や亜鉛など創傷治癒に関与する栄養素の十分な摂取を促すことも重要である。

血液データの分析では、アルブミン値が入院時3.4g/dL、最近では3.3g/dLと基準値(3.5~5.0g/dL)をやや下回っている。これは低栄養状態を示唆するものであり、特に骨折治癒や褥瘡予防の観点から懸念される。総蛋白も入院時6.8g/dL、最近では6.7g/dLと基準値下限(6.5~8.2g/dL)に近く、栄養状態の注意深い評価が必要である。赤血球数は入院時4.2×10⁶/μL、最近では4.1×10⁶/μLと基準値内(3.8~5.0×10⁶/μL)であるが、軽度の低下傾向がみられる。ヘモグロビン値は入院時11.8g/dL、最近では11.6g/dLと基準値内(11.5~15.0g/dL)であるがやや低値で、ヘマトクリット値も入院時36.5%、最近では35.8%と基準値内(34.0~45.0%)ながら低めである。これらの値は貧血傾向を示唆するものではないが、骨折治癒に必要な酸素運搬能力の観点から注意深く観察する必要がある。

電解質では、ナトリウムが入院時140mEq/L、最近では138mEq/Lと基準値内(135~145mEq/L)であり、カリウムも入院時4.2mEq/L、最近では4.1mEq/Lと基準値内(3.5~5.0mEq/L)で安定している。カルシウム値は入院時8.3mg/dL、最近では8.6mg/dLと改善しているが、骨粗鬆症治療の観点からは基準値下限(8.5~10.5mg/dL)近くであり、カルシウム摂取の強化が望ましい。

血糖コントロールに関しては、空腹時血糖が入院時156mg/dL、最近では142mg/dLと高値(基準値70~110mg/dL)であり、HbA1cも入院時6.8%、最近では6.7%と基準値(4.6~6.2%)を上回っている。これは糖尿病管理が不十分であることを示唆しており、食事療法、運動療法、薬物療法の見直しが必要である。特に骨折治癒には適切な血糖コントロールが重要であり、高血糖状態が長期化すると治癒過程に悪影響を及ぼす可能性がある。

看護介入としては、まず食事摂取量の改善のために食事環境の調整と座位保持時間の延長訓練を行うことが重要である。また、栄養状態の改善のためにタンパク質やカルシウムなど骨折治癒に必要な栄養素の摂取を強化する食事指導が必要である。アルブミン値の低下に対しては栄養補助食品の活用も検討すべきである。皮膚の保護については定期的な観察と体位変換、適切なマットレスの使用などが重要である。さらに、退院後の食事管理について本人・家族への教育を行い、特に糖尿病食と骨粗鬆症予防のための食事を両立させる方法について具体的に指導する必要がある。

継続的な観察が必要な点としては、食事摂取量の変化、体重の推移、アルブミン値などの栄養指標の変動、皮膚状態の変化、そして血糖値の推移が挙げられる。特に回復期においては適切な栄養状態が骨折治癒を促進するため、栄養状態の詳細な評価と介入が重要である。

3.排泄

A氏の排泄状況について、入院前の排尿は1日6~7回程度で、夜間頻尿が1~2回あったが、尿の色調や性状に異常はなく、自立して排泄していた。現在は、ポータブルトイレを使用しており、1日5~6回程度の排尿がある。入院当初は疼痛のため看護師の介助が必要であったが、現在は歩行器を使用して自力でポータブルトイレまで移動できるようになっている。尿量は十分で、色調や性状に異常はないと記載されているが、具体的な尿量の記録はなく、脱水状態や腎機能の評価のためには1日尿量の測定が必要である。また、高齢女性では尿失禁のリスクが高まるため、尿もれの有無についても確認が必要である。

排便に関しては、入院前は2日に1回程度の規則的なリズムで排便があり、便秘傾向はあるものの、食物繊維を意識的に摂取することで調整していた。下剤は時々使用する程度で、酸化マグネシウムを主治医から処方されていた。入院後は活動量低下と環境変化、臥床時間の延長により排便間隔が延長し、3日間排便がない状態が続いた。4日目に下剤(酸化マグネシウム330mg 3錠/日)の内服を開始し、5日目の朝に排便があった。便性状はやや硬めで、量は少なめであった。高齢者は加齢に伴う腸蠕動の低下、腹筋力の低下、水分摂取量の減少などから便秘になりやすく、また腰椎圧迫骨折による疼痛や活動制限も排便機能に影響を与えていると考えられる。

排泄に関連した食事・水分摂取状況については、現在は糖尿病食1600kcalが提供されており、摂取量は7~8割程度である。排便を促すために水分摂取を増やし、乳製品や食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取するよう指導を受けているが、具体的な水分摂取量は記載されていない。食物繊維の摂取が便秘予防に効果的であるため、食物繊維の摂取状況を確認し、必要に応じて食事内容の調整を行うことが重要である。また、水分摂取量についても具体的に把握し、脱水の予防と排便コントロールの両面から適切な摂取量を確保する必要がある。

安静度については、現在コルセット装着下で歩行器を使用した歩行が病棟内で20m程度可能となっているが、長時間の座位保持や立位でまだ疼痛が増強する傾向にあり、日中は臥床時間が長い状態である。この活動制限は腸蠕動を低下させ、便秘を悪化させる要因となっているため、疼痛コントロールをしながら徐々に活動量を増やしていくことが排便機能の改善につながる。バルーンカテーテルの留置はない。

腹部膨満感の有無や腸蠕動音に関する情報は記載されていないため、便秘の評価と管理のためにも腹部の視診・聴診・触診による評価が必要である。特に腸蠕動音の低下や腹部膨満、腹部の張りや圧痛がある場合は、腸閉塞や便秘の重症化のリスクもあるため注意深く観察する必要がある。

血液データでは、BUNが入院時18mg/dL、最近では17mg/dLと基準値内(8~20mg/dL)であり、クレアチニンも入院時0.7mg/dL、最近では0.7mg/dLと基準値内(0.4~0.8mg/dL)である。これらの値から腎機能は保たれていると考えられるが、GFR(糸球体濾過量)の具体的な数値は記載されていない。高齢者では加齢に伴う腎機能低下があり、特に薬剤代謝への影響もあるため、推算GFRの計算や腎機能の継続的な評価が必要である。また、腎機能が保たれているとはいえ、高齢者では脱水のリスクが高く、活動量低下や食事摂取量減少に伴い水分摂取量も減少している可能性があるため、水分バランスの評価と管理が重要である。

in-outバランスについては具体的な記録がないが、尿量が十分であることから極端な脱水状態ではないと推測される。しかし、高齢者は体内水分量が減少しており、脱水のリスクが高いため、1日の摂取水分量と排泄量のバランスを確認し、必要に応じて水分摂取を促す必要がある。特に発熱や下痢、嘔吐などの脱水リスク因子がある場合は注意が必要である。

看護介入としては、まず排便状況を改善するために、適切な水分摂取の促進、食物繊維の摂取増加、可能な範囲での活動量増加を図ることが重要である。下剤の使用については、効果と副作用を評価しながら適切に調整する必要がある。また、排便の自立に向けて、腰痛への配慮を含めたポータブルトイレの使用方法や、腹圧をかけるための適切な姿勢の指導も重要である。排尿については、自立度が改善しているため、安全な移動方法の確保と、夜間の排尿に対する支援体制を整えることが必要である。さらに、退院後の排泄管理に向けて、便秘予防のための生活指導(水分・食事・運動)を本人・家族に行うことも重要である。

継続的な観察が必要な点としては、排便の回数・性状・量の変化、下剤の効果と副作用、排尿の回数・量・色調の変化、腹部状態(膨満感・蠕動音)の変化、そして水分バランスの変化が挙げられる。特に高齢者は便秘と脱水のリスクが高く、これらが互いに影響し合うため、包括的な評価と管理が重要である。

4.活動-運動

A氏は入院前、日常生活動作(ADL)は自立しており、歩行は変形性膝関節症による軽度の痛みはあったが杖などの補助具を使用せず独歩で屋内外問わず活動していた。移乗動作も自立しており、椅子やトイレ、ベッドへの移動に問題はなかった。排泄は完全に自立していた。入浴は週4回程度であり、浴槽の出入りには手すりを使用していたが洗体・洗髪も含めて自立していた。衣類の着脱も問題なく行えていた。しかし、第1腰椎圧迫骨折の受傷により、現在のADLは大きく制限されている状況である。

現在の活動状況としては、コルセット着用と歩行器使用により20m程度の歩行が可能であるが、腰痛のため歩行時間は制限され、疲労感が強い。移乗は看護師の見守りのもと、ベッドからポータブルトイレや椅子への移動が可能になっているが、動作時の疼痛があり、やや時間を要する。排泄は日中・夜間ともにポータブルトイレを使用している。入浴は現在行っておらず、清拭と部分浴で対応している。衣類の着脱は上半身は自立しているが、下半身は腰を屈曲させる動作に痛みがあるため、看護師の一部介助を必要としている。これらの状況から、A氏は急性期の骨折による一時的なADL低下の状態にあると考えられる。加齢に伴う筋力低下と骨粗鬆症の存在が骨折のリスク因子となったと考えられ、現在の活動制限が長期化すると廃用症候群のリスクが高まる。

安静度については、医師の指示では離床時間を徐々に増やし、1日3回のリハビリテーション(午前・午後・夕方)を実施することとなっている。リハビリでは、入院2日目からベッドサイドでの関節可動域訓練と筋力強化訓練が開始され、入院4日目からはリハビリ室での立位訓練、歩行器を使用しての短距離歩行に進んでいる。しかし、腰部に負担がかかる動作(前屈や重いものの持ち上げ)は禁止されており、疲労感や痛みの増強がある場合は休息を取るよう指示されている。コルセットの装着は6週間程度継続する方針であり、この期間中はADLの制限が続くことになる。

バイタルサインは、入院5日目の現在、体温36.3℃、血圧132/78mmHg、脈拍76回/分、呼吸数18回/分、SpO2 98%(室内気)と安定している。しかし、起立時に一過性の血圧低下(安静時132/78mmHgから立位時122/70mmHg)があり、これは起立性低血圧の可能性を示唆している。高齢者は自律神経機能の低下により起立性低血圧を起こしやすく、転倒リスクが高まるため注意が必要である。呼吸機能に関する詳細な情報はないが、SpO2値が正常範囲内であることから現時点での呼吸機能低下は認められない。しかし、長期臥床による肺機能低下や肺合併症のリスクがあるため、深呼吸や体位変換などの予防的介入が必要である。

職業は元小学校教諭で10年前に退職しており、これまでは社会的に活動的な生活を送っていたと考えられる。住居環境については、夫と二人暮らしであるが、具体的な住居形態(一戸建てやマンションなど)や段差の有無、手すりの設置状況など安全性に関する情報が不足している。今回の転倒が自宅の玄関で発生していることから、住環境の安全性の評価と必要に応じた環境調整が退院に向けて重要である。自宅での転倒リスク評価と対策が必要であり、長女の協力も得ながら住環境の整備を検討することが望ましい。

血液データでは、赤血球数(RBC)は入院時4.2×10⁶/μL、最近では4.1×10⁶/μLと基準値内(3.8~5.0×10⁶/μL)であるが、軽度の低下傾向が見られる。ヘモグロビン(Hb)は入院時11.8g/dL、最近では11.6g/dLと基準値内(11.5~15.0g/dL)であるが、下限に近い値である。ヘマトクリット(Ht)も入院時36.5%、最近では35.8%と基準値内(34.0~45.0%)であるが、やや低値である。これらの値は顕著な貧血を示すものではないが、高齢者では軽度の貧血でも活動耐性や回復力に影響を与える可能性があるため、注意深く観察する必要がある。また、CRPは入院時2.8mg/dL、最近では1.2mg/dLと基準値(0.3mg/dL以下)を上回っているが、低下傾向にあることから炎症反応は改善傾向にあると考えられる。しかし、依然として炎症反応が残存しており、疼痛や回復過程の影響と考えられる。

転倒転落のリスク評価については、A氏には複数のリスク因子が存在する。年齢(75歳)、骨粗鬆症、変形性膝関節症、第1腰椎圧迫骨折による疼痛と活動制限、起立時の血圧低下、夜間頻尿(1~2回)、睡眠薬の使用(ゾルピデム5mg)などが挙げられる。また、今回の転倒をきっかけに転倒への不安が強くなっており、この心理的不安も転倒リスクを高める要因となる。転倒歴として、3年前に玄関の段差でつまずいた経験があり、これも重要なリスク因子である。これらの要因から、A氏は転倒リスクが高い状態にあると評価される。特に夜間のポータブルトイレ使用時や、慣れない歩行器での移動時には注意が必要である。

看護介入としては、まず疼痛管理を適切に行いながら、計画的な活動量の増加を図ることが重要である。リハビリテーションと連携し、ADL動作の改善に向けた援助計画を立案する必要がある。特に腰部への負担を軽減する動作方法の指導(ベッドからの起き上がり方、椅子からの立ち上がり方など)が重要である。転倒予防のために、環境整備(ベッド周囲の整理整頓、夜間照明の確保など)、移動時の見守りと介助、適切な履物の選択、起立時の血圧低下に対する注意喚起などの介入が必要である。また、廃用症候群予防のための体位変換や関節可動域訓練、呼吸訓練なども重要である。さらに、退院に向けて自宅環境の評価と調整、必要な福祉用具(手すり、浴槽台など)の検討を行い、家族を含めた退院指導を実施することが求められる。

継続的な観察が必要な点としては、疼痛の程度と活動への影響、ADL自立度の変化、バイタルサインの変動(特に起立時の血圧変化)、転倒リスクの変化、血液データの推移(特にHbやCRPの値)などが挙げられる。また、運動機能の回復過程を評価するために、定期的な歩行距離や移動能力、筋力の測定も重要である。これらの観察を通じて、個別的なリハビリテーション計画の見直しや、退院に向けた準備を進めていく必要がある。

5.睡眠-休息

A氏は入院前、午後9時頃就寝し午前6時頃起床という規則正しい生活リズムを保っていた。寝つきは良好で、中途覚醒はトイレのため1回程度あったが、すぐに再入眠できていた。睡眠時間は7時間程度が確保できており、睡眠導入剤などの睡眠薬は使用していなかった。また、夕食後にテレビを見たり読書をしたりするなど、就寝前の習慣が確立されていた。これらの情報から、入院前のA氏は良好な睡眠パターンを維持していたと評価できる。

しかし現在の睡眠状況は、入院環境への適応が十分でなく、また腰痛による影響で入眠困難と中途覚醒が見られている。就寝時に体位変換時の痛みがあり、側臥位での睡眠を好んでいる。入院後2日目からは眠剤(ゾルピデム5mg)が開始され、内服後は入眠できるものの、3~4時間後に痛みで目覚めることがあり、睡眠の質は低下している。日中も疼痛や処置のために断片的な仮眠をとる状態で、睡眠と覚醒のリズムが乱れている。眠剤については依存性を心配しており、「早く自分の力で眠れるようになりたい」と話している。これらの状況から、A氏は急性期の疼痛に伴う睡眠障害の状態にあると考えられる。

加齢に伴う睡眠の変化として、高齢者は若年者に比べて睡眠が浅くなり、中途覚醒が増加する傾向がある。また、レム睡眠やノンレム睡眠の深い段階(徐波睡眠)が減少し、睡眠の質が低下しやすい。これらの生理的変化に加えて、腰椎圧迫骨折による疼痛や入院環境の変化、活動量の低下などが重なり、A氏の睡眠の質をさらに低下させていると考えられる。特に疼痛は睡眠の質を著しく低下させる要因であり、適切な疼痛管理が睡眠改善の鍵となる。

睡眠導入剤としてゾルピデム5mgが使用されているが、高齢者は薬物の感受性が高まるため、副作用のリスクも考慮する必要がある。特にゾルピデムは高齢者においてふらつきや転倒リスクを高める可能性があるため、使用には注意が必要である。また、A氏自身が薬物依存を心配していることからも、薬物療法だけに頼らない睡眠改善策を検討することが重要である。

日中の過ごし方については、現在は疼痛のために臥床時間が長く、活動量が制限されている状況である。リハビリテーションは1日3回(午前・午後・夕方)実施されているが、それ以外の時間の過ごし方に関する具体的な情報は少ない。日中の活動量が不足すると夜間の睡眠の質が低下するため、疼痛管理を行いながら日中の適切な活動と休息のバランスを整えることが重要である。また、入院前の趣味や関心事などの情報も不足しており、これらを活かした日中の活動計画を立てることで、生活の質を向上させるとともに睡眠の改善にもつながる可能性がある。

休日の過ごし方についても情報が不足しているが、入院という環境では平日と休日の区別が曖昧になりやすい。しかし、生活リズムを整えるためには、時間の見当識を保ち、メリハリのある生活を送ることが重要である。特に元教師というA氏の背景を考慮すると、規則正しい生活習慣を大切にしてきた可能性が高く、入院中もこれを尊重した関わりが必要である。

看護介入としては、まず疼痛管理の強化が重要である。就寝前の鎮痛薬の適切な使用や、体位の工夫(クッションの活用など)により、夜間の疼痛による中途覚醒を減らす取り組みが必要である。また、睡眠環境の調整として、室温や照明、音などの環境要因の管理や、就寝前のリラクゼーション技法(深呼吸、軽いストレッチなど)の指導も効果的である。日中の活動量を徐々に増やし、昼夜のリズムを整えることも重要である。特に午後から夕方にかけての適度な活動は夜間の睡眠の質を高める効果がある。さらに、入院前の就寝儀式(読書やテレビなど)を可能な範囲で継続できるよう支援することも、睡眠の質の向上につながる。

睡眠薬の使用については、A氏の不安に配慮しながら、依存性のリスクと適切な使用方法について説明し、徐々に減量・中止できるよう計画を立てることが望ましい。また、非薬物的介入(リラクゼーション、温罨法など)の効果を評価し、これらを積極的に取り入れることで薬物依存のリスクを軽減することができる。

継続的な観察が必要な点としては、睡眠パターンの変化(入眠時間、中途覚醒の頻度と原因、総睡眠時間など)、睡眠の質の主観的評価(熟眠感、目覚めの爽快感など)、日中の活動量と疲労度、疼痛の変化と睡眠への影響、睡眠薬の効果と副作用などが挙げられる。これらを定期的に評価することで、個別性のある睡眠改善計画を修正していくことが重要である。また、退院に向けて自宅での睡眠環境や習慣についても情報収集し、入院前の良好な睡眠パターンに戻れるよう支援していく必要がある。

6.認知-知覚

A氏の意識レベルは明瞭であり、コミュニケーション能力も良好で、質問に対する応答も適切である。認知機能については、HDS-Rが28点であり、認知症の兆候は認められない。HDS-Rの満点は30点であり、21点以上が正常範囲とされているため、A氏の認知機能は年齢を考慮しても保たれていると評価できる。しかし、高齢者は急性期の疾患や環境の変化によって一時的な認知機能低下(せん妄)を起こす可能性があるため、継続的な観察が必要である。特に、疼痛、睡眠障害、入院環境への不適応、薬剤(特に鎮痛薬や睡眠薬)の影響などはせん妄の誘発因子となりうる。A氏は現在、腰痛による睡眠障害があり、ゾルピデムを服用しているため、これらの要因がせん妄のリスクを高める可能性がある。

視力については、右眼は白内障手術後で視力0.8、左眼は白内障進行中で視力0.5であり、老眼があるため読書時には老眼鏡を使用している。書類の記入や新聞を読む際にも眼鏡が必要である。このような視力の低下は高齢者に一般的な変化であるが、A氏の日常生活において情報収集や安全な活動を行う上で影響する可能性がある。特に、入院環境では慣れない場所でのナースコールの位置確認や、薬剤の識別などにおいて視力低下が障壁となる可能性があるため、配慮が必要である。また、左眼の白内障が進行中であることから、症状の進行状況を確認し、必要に応じて適切な照明環境を整える必要がある。

聴力は年齢相応であり、普通の会話では問題なく聞き取れるが、早口での会話や騒がしい環境では聞き返すことがある。これは高齢者に見られる加齢性難聴の初期症状である可能性がある。加齢性難聴では特に高音域の聴力が低下し、言葉の聞き取りが困難になる特徴があるため、コミュニケーション方法に工夫が必要となる。特に医療情報の伝達や指示の説明においては、A氏の聴力状況を考慮した対応が重要である。

知覚については、腰部の圧痛と運動時痛があるが、感覚鈍麻や異常感覚はない。両下肢の感覚は正常で、左右差もない。これは神経学的には問題がないことを示しているが、疼痛による行動制限が認められるため、疼痛の詳細な評価と適切な管理が必要である。A氏の腰痛はNRSで初期の8/10から現在は3/10まで軽減しているが、体動時に増強する傾向があり、特に長時間の座位保持や立位で疼痛が増強する。このような疼痛パターンを理解し、日常生活動作やリハビリテーションのタイミングを調整することが重要である。

不安については、「早く痛みがなくなって家に帰りたい」という発言や、「夫が一人で心配」と頻繁に口にしていることから、自宅や家族に対する心配が強いことがうかがえる。また、「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」という発言からは、自身の身体状態の変化に対する受容過程にあることが推測される。さらに、「退院後も家事ができるか不安」という表出からは、将来の生活への不安も抱えていることがわかる。これらの不安は、A氏の回復過程や治療への取り組みに影響を与える可能性があるため、心理的支援が重要である。

表情については、時々痛みによる表情の歪みがあるが、言葉で状態を正確に表現できると記載されている。これは疼痛評価において重要な観察点であり、表情の変化と疼痛の自己申告を併せて評価することで、より正確な疼痛管理が可能となる。また、表情は心理状態を反映することも多いため、不安や抑うつ傾向の早期発見においても重要な手がかりとなる。

看護介入としては、まず認知機能を維持・促進するために、環境の整備(時計やカレンダーの設置、見慣れた物品の配置など)と定期的なオリエンテーションの提供が重要である。また、視力低下に対しては、適切な照明の確保、大きな文字での情報提供、眼鏡の適切な管理と使用支援などが必要である。聴力に関しては、適切なコミュニケーション方法(ゆっくり明瞭に話す、騒音の少ない環境を整える、必要に応じて筆談を活用するなど)を用い、重要な情報の理解を確認することが大切である。

疼痛管理においては、定期的な疼痛評価(強度、性質、誘発因子、緩和因子など)を行い、薬物的・非薬物的介入を組み合わせた総合的なアプローチが効果的である。また、不安に対しては、傾聴と共感的な理解を基本とし、具体的な情報提供や家族との連携を通じて心理的支援を行うことが重要である。特に退院後の生活に関する不安に対しては、早期から退院支援計画を立案し、必要なサポート体制を整えることで不安の軽減を図ることができる。

継続的な観察が必要な点としては、認知機能の変化(特に夜間や疲労時)、疼痛の変化とその表現方法、不安の内容と程度の変化、環境適応の状況などが挙げられる。また、服薬の影響(特に睡眠薬や鎮痛薬)によるせん妄や転倒リスクの増加にも注意が必要である。これらの観察を通じて、個別的なケア計画の修正と、安全で快適な入院生活の提供を目指すことが重要である。

7.自己知覚-自己概念

A氏は性格が几帳面で社交的、また自立心が強いと記載されている。これまでは家事全般を一人でこなしていたことからも、日常生活における自己効力感が高く、家庭内での役割意識が強いことが推察される。元小学校教諭という職業からは、責任感が強く、他者との関わりを大切にする傾向があると考えられる。このような自立心の強さは、現在の入院生活において制約を感じる要因となり得る。特に「早く痛みがなくなって家に帰りたい」「夫が一人で心配」という発言からは、家庭での役割遂行ができないことへの焦りや不安が表れている。

ボディイメージについては、腰椎圧迫骨折という身体的変化に直面している状況である。「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」という発言からは、骨粗鬆症による身体機能の低下を十分に受け入れられていない可能性がある。高齢者にとって、加齢に伴う身体機能の変化を受容することは大きな心理的課題であり、特に突然の骨折という出来事は、自己身体像の再構築を余儀なくされる経験となる。また、現在コルセットを装着していることや、歩行器を使用していることも、これまでの自立した身体イメージとのギャップを生じさせている可能性がある。これらの身体的変化がA氏の自己概念にどのように影響しているかについて、さらに詳細な情報収集が必要である。

疾患に対する認識としては、骨粗鬆症に関して「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」という発言から、疾患の重症度や影響についての理解が十分でなかった可能性がある。一方で、「痛みはあるけれど、動けないと筋力が落ちる」という発言からは、リハビリテーションの重要性を理解し、積極的に取り組む姿勢が見られる。これは、A氏が自分の健康状態を改善するための行動を起こす意欲を持っていることを示している。しかし、「退院後も家事ができるか不安」という発言からは、将来の生活に対する懸念も抱えており、疾患が日常生活に与える長期的な影響についての不安があることがうかがえる。骨粗鬆症や腰椎圧迫骨折に関する知識、治療に対する期待、予後に対する認識などについて、より詳細な情報収集を行うことで、適切な教育的介入につなげることが重要である。

自尊感情については、これまで家事全般を一人でこなし、自立して生活してきたA氏にとって、現在の活動制限や介助を必要とする状況は、自己価値感の低下をもたらす可能性がある。特に高齢者にとって、身体機能の低下は自尊感情と密接に関連することが多い。また、「早く自分の力で眠れるようになりたい」という発言からは、薬剤に頼ることへの抵抗感も見られ、自分自身でコントロールできる部分を大切にしたいという思いが表れている。一方で、リハビリテーションに積極的に取り組む姿勢からは、困難な状況においても前向きに対処しようとする自己効力感の高さもうかがえる。しかし、自尊感情に関する詳細な情報は限られているため、A氏が現在の状況をどのように受け止め、自己評価しているかについてさらなる情報収集が必要である。

育った文化や周囲の期待については、具体的な情報が記載されていないため、A氏の文化的背景、価値観、家族内での期待される役割などについての情報収集が必要である。75歳という年代を考慮すると、伝統的な家族観や女性の役割意識が強い世代である可能性があり、家事や夫の世話を担うことに大きな責任を感じていることが推測される。夫と長女との関係性については、夫は「早く良くなって帰ってきてほしい」と話し、長女は「退院後は週に3~4回は様子を見に行きたい」と前向きな姿勢を示しているという情報から、家族の支持的な態度がうかがえる。このような家族の期待や支援がA氏の回復意欲にどのように影響しているかを評価することも重要である。

加齢に伴う自己概念の変化として、高齢者は身体機能の低下や社会的役割の変化に直面し、自己イメージの再構築を迫られることが多い。A氏の場合、退職後も家事全般を担うなど家庭内での役割を維持してきたが、今回の骨折により、その役割遂行が困難な状況に置かれている。このような状況下では、自己価値感の低下やアイデンティティの揺らぎが生じる可能性があり、心理的適応を支援する介入が重要となる。

看護介入としては、まずA氏の自己概念や価値観を尊重した関わりが基本となる。具体的には、できることに焦点を当て、日常生活の中で自己決定の機会を増やすことで自律性を支援することが重要である。また、疾患や治療に関する正確な情報提供を行い、骨粗鬆症や腰椎圧迫骨折についての理解を深めることで、疾患受容を促進することも必要である。ボディイメージの変化に対しては、現在の身体状況を受け入れながらも、リハビリテーションを通じて機能回復への希望を持てるよう支援することが大切である。さらに、家族を含めた退院支援計画を早期から立案し、退院後の生活に対する不安の軽減を図ることも重要な介入となる。

継続的な観察が必要な点としては、リハビリテーションの進行に伴う自己効力感の変化、疾患受容の過程、家族との関係性の変化、退院に向けての不安の内容と程度などが挙げられる。特に高齢者は環境の変化や突然の健康問題に対して適応力が低下していることがあるため、心理的適応状態を細やかに観察し、必要に応じて介入を調整していくことが重要である。

8.役割-関係

A氏は元小学校教諭であり、10年前に退職している。教職という職業から推察すると、社会的責任を担う立場にあり、他者との関わりや教育的役割を重視してきた可能性が高い。退職後は家庭内での役割に重点が移行し、家事全般を一人でこなすなど、家庭内での中心的役割を担ってきたことがわかる。性格が几帳面で社交的、また自立心が強いという特徴は、これまでの職業生活や家庭内での役割形成に影響を与えていると考えられる。退職後の社会活動や地域との関わりについては詳細な情報がないため、退職後の社会的役割や活動状況についての情報収集が必要である。退職教員としてのアイデンティティが現在の自己認識にどのように影響しているかを理解することも重要である。

家族関係については、A氏は夫(78歳)との二人暮らしであり、キーパーソンは長女(50歳)である。長女は車で30分の距離に住んでおり、週に2回ほど様子を見に来ている。この家族構成からは、高齢夫婦世帯であり、子世代の支援を受けながらも基本的には夫婦で自立した生活を営んでいることがわかる。A氏は「夫が一人で心配」と頻繁に口にしており、夫に対する強い配慮と責任感を持っていることが推察される。夫は面会時に「早く良くなって帰ってきてほしい」と話し、A氏の不在中は「食事は惣菜で済ませている」と言っている。このことから、日常生活においてA氏が家事を担当し、夫は家事面でA氏に依存している関係性が推測される。このような状況は高齢者世帯において一般的であるが、A氏の入院により役割バランスが崩れ、退院後の生活再建に向けた準備が必要となる。

キーパーソンである長女は「もっと早く母の骨粗鬆症に気づいて対策すべきだった」と自責の念を抱いており、「退院後は週に3~4回は様子を見に行きたい」と支援の意思を示している。また、「両親が二人で暮らし続けられるよう、家の環境整備を考えている」と前向きな姿勢も見せている。このような長女の反応からは、親の健康や生活に対する関心と責任感が高く、サポート資源として期待できることがわかる。ただし、長女自身の家庭状況や仕事の状況については情報がないため、実際にどの程度の支援が可能であるかを確認する必要がある。また、他の家族(他の子どもや親族など)の状況や支援可能性についても情報収集が必要である。

面会状況については、夫の面会があったことは記載されているが、頻度や時間帯、面会時の様子など詳細な情報が不足している。また、長女の面会状況も明確ではない。入院中の家族との関わりは、A氏の精神的安定や回復意欲に影響を与える重要な要素であるため、面会の状況や面会時のA氏の反応などについて詳細に観察し記録することが必要である。

経済状況については具体的な情報が記載されていないため、経済的基盤や医療費・介護費用の負担能力、退職金や年金の状況などについての情報収集が必要である。特に退院後の生活環境の整備や介護サービスの利用を検討する上で、経済状況の把握は重要となる。一般的に高齢者世帯では、年金が主な収入源となり、医療費や介護費用の増加により経済的負担が大きくなる可能性があるため、必要に応じて社会資源の活用についても検討する必要がある。

加齢に伴う役割変化として、A氏は退職により職業上の役割を喪失し、家庭内での役割に重点が移行している状況である。高齢期における役割移行は自己アイデンティティに影響を与えることがあり、特に今回の骨折により家庭内での役割遂行も困難になっていることから、役割喪失感や無力感を抱く可能性がある。また、高齢夫婦の相互依存関係が強まる中で、一方の健康問題は家族システム全体に影響を与えるため、夫との関係性の変化にも注意を払う必要がある。

看護介入としては、まず家族を含めた情報収集を行い、A氏の役割認識や家族内の役割期待を明確にすることが重要である。特に退院後の生活を見据えた役割調整や環境整備について、早期から家族と共に検討を始めることが望ましい。具体的には、家族カンファレンスを開催し、A氏の回復状況や退院後の生活上の注意点を共有するとともに、家族の支援可能性や社会資源の活用方法について話し合うことが有効である。また、A氏自身の役割認識や価値観を尊重しながら、必要に応じて役割の再分配や調整を提案することも重要である。特に「退院後も家事ができるか不安」という思いに対しては、段階的な家事復帰の方法や補助具の活用、家族の協力体制などについて具体的な提案を行うことで不安の軽減を図ることができる。

継続的な観察が必要な点としては、A氏と家族の関係性の変化、面会時の様子、A氏の役割に対する認識や思いの変化、退院への準備状況などが挙げられる。特に、入院の長期化に伴う夫の生活状況の変化や、長女の支援状況、A氏自身の心理的適応過程についても注意深く観察する必要がある。また、退院が近づくにつれ、具体的な生活再建に向けた不安や懸念が顕在化する可能性があるため、その都度適切な情報提供や支援を行うことが重要である。

9.性-生殖

A氏は75歳の女性であり、夫(78歳)との二人暮らしで、長女(50歳)がキーパーソンとなっている。長女の年齢から推測すると、A氏は20代半ばで出産したことが考えられる。現在の年齢から考えると、閉経後約25年程度が経過していると推測される。一般的に日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後とされているため、更年期症状は既に消失していると考えられるが、具体的な閉経年齢や更年期症状の有無、その経過に関する情報は記載されていないため、詳細な情報収集が必要である。

家族構成については、夫と二人暮らしであり、長女は別居している状況である。長女以外の子どもの有無や、家族関係の詳細については情報が不足している。家族関係は心理的サポートや退院後の生活支援において重要な要素となるため、詳細な家族構成や関係性についての情報収集が必要である。また、夫婦関係の質や親密さについても、A氏の回復過程や退院後の生活再建に影響を与える可能性があるため、適切な範囲での情報収集が望ましい。

加齢に伴う生殖器系の変化として、閉経後のエストロゲン低下により、骨密度の減少が進行することが知られている。A氏の骨粗鬆症(T-score:腰椎-2.8、大腿骨頸部-2.5)はこの生理的変化が基盤にあると考えられる。エストロゲン低下は骨代謝に直接影響を与え、骨形成と骨吸収のバランスが崩れることで骨密度が低下する。今回の腰椎圧迫骨折もこの骨粗鬆症が背景にあると考えられ、女性としての加齢変化が健康問題に直結している事例といえる。また、閉経後の女性では尿生殖器系の萎縮も生じやすく、尿失禁や性交痛などの症状を引き起こす可能性があるが、これらに関する情報は記載されていない。

高齢女性の性に関する問題としては、身体的変化(尿生殖器系の萎縮など)に加え、パートナーの健康問題や社会的規範による性的表現の抑制などが挙げられるが、これらに関する情報も不足している。しかし、高齢者の性と親密さのニーズは個人差が大きく、プライバシーに配慮した慎重なアプローチが必要である。特に入院という環境下では、夫婦の親密さを表現する機会が制限される可能性があるため、面会環境の配慮や心理的サポートが重要となる場合もある。

骨粗鬆症と更年期後の健康管理については、A氏は既に骨粗鬆症の診断を受け、ビスホスホネート製剤、カルシウム、ビタミンDによる治療を受けているが、「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」という発言からは、閉経後の骨密度低下のリスクについての認識が十分でなかった可能性がある。これは更年期以降の女性の健康教育の重要性を示唆している。

看護介入としては、まず更年期後の女性としての健康管理に関する教育的アプローチが重要である。特に骨粗鬆症の進行予防のための生活指導(カルシウムやビタミンDを豊富に含む食品の摂取、適切な運動の継続、禁煙など)を行うことが効果的である。また、必要に応じて尿生殖器系の健康管理(適切な水分摂取、骨盤底筋訓練など)についても情報提供を行うことが望ましい。プライバシーに配慮しながら、夫婦関係や親密さのニーズについても評価し、必要に応じて面会環境の調整や心理的サポートを提供することも重要である。

さらに、骨粗鬆症の治療アドヒアランスを高めるために、治療の重要性や期待される効果、服薬方法などについて詳細な説明を行い、定期的なフォローアップの必要性を強調することも必要である。特にビスホスホネート製剤は正しい服用方法が効果に大きく影響するため、具体的な指導が重要となる。

継続的な観察が必要な点としては、骨粗鬆症治療の副作用や効果、尿生殖器系のトラブル(尿失禁など)の有無、心理的適応状態の変化などが挙げられる。また、退院後の夫婦生活において、今回の骨折がどのような影響を与えるかについても考慮し、必要に応じて生活様式の調整や支援体制の構築を検討することが重要である。

10.コーピング-ストレス耐性

A氏の入院環境については、救急搬送後即日入院となり、急な環境変化を経験している。入院時はNRSで8/10と強い腰痛があり、体動時に増強していた状態であった。現在は入院5日目で腰痛はNRSで3/10まで軽減し、コルセット装着下で歩行器を使用した歩行が病棟内で20m程度可能となっているが、長時間の座位保持や立位でまだ疼痛が増強する傾向にあり、日中は臥床時間が長い状態である。また、夜間は腰痛により睡眠が中断されることがあり、眠剤を使用している。このような状況から、身体的不快感と活動制限がA氏にとって主要なストレス要因となっていることが推測される。入院環境への適応状況や病室の快適さ、他患者との関係、医療スタッフとの関係性など、環境的側面に関する詳細な情報は記載されていないため、これらの点についての情報収集が必要である。

仕事や生活でのストレス状況については、A氏は10年前に小学校教諭を退職しており、現在は専業主婦として家事全般を担当していた。入院前のストレス要因や対処方法に関する具体的な情報は不足しているが、「夫が一人で心配」「退院後も家事ができるか不安」という発言からは、家庭内での役割遂行に対する責任感がA氏にとって重要な価値観であり、その役割が果たせないことがストレスとなっていることがうかがえる。また、「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」という発言からは、自身の健康状態の変化に対する受容過程にあることが推測される。ストレス発散方法については明確な記載がないため、趣味や楽しみ、リラックス方法などについての情報収集が必要である。入院前の生活リズムや習慣なども、ストレス対処能力を評価する上で重要な情報となる。

家族のサポート状況としては、夫(78歳)との二人暮らしで、キーパーソンは長女(50歳)である。長女は車で30分の距離に住んでおり、週に2回ほど様子を見に来ていたが、「退院後は週に3~4回は様子を見に行きたい」と支援の意思を示している。また、「両親が二人で暮らし続けられるよう、家の環境整備を考えている」という前向きな姿勢も見られる。夫は面会時に「早く良くなって帰ってきてほしい」と話しており、A氏の回復を望んでいる様子がうかがえる。家族全体として、A氏の回復と安全な在宅生活に向けて協力的であり、家族の支持的態度はA氏のストレス対処資源として重要である。しかし、夫自身も高齢であり、介護力には限界がある可能性があるため、退院後の具体的なサポート体制についての詳細な評価が必要である。

生活の支えとなるものについては、具体的な情報が不足している。A氏の価値観や信念、生きがい、社会的つながり、精神的支柱となるものなどについての情報収集が必要である。特に退職教員という背景から、教育や社会貢献に価値を置いている可能性や、元教え子とのつながりが心の支えとなっている可能性なども考慮すべきである。また、信仰や宗教的活動が支えとなっているかどうかについても確認が必要である。

加齢に伴うストレス対処能力の変化として、高齢者は環境変化への適応能力が低下していることが多く、特に突然の入院という状況はストレス負荷が大きい。また、認知的柔軟性の低下により、新たな対処方法の獲得が困難になる傾向がある。一方で、長年の人生経験から培われた対処資源や知恵も有しており、これらを活用することでストレスに対応している場合も多い。A氏の場合、「痛みはあるけれど、動けないと筋力が落ちる」という発言からは、健康問題に対する理解と積極的な対処姿勢がうかがえる。このような前向きな認知的評価は、ストレス対処において重要な資源となる。

看護介入としては、まずA氏のストレス要因を詳細に評価し、個別的な支援計画を立案することが重要である。具体的には、疼痛管理の強化による身体的不快感の軽減、入院環境の調整(音、光、温度など)による快適さの確保、段階的な活動範囲の拡大によるコントロール感の回復などが有効である。また、A氏の不安や心配事に対しては、傾聴と共感的理解を基本とし、具体的な情報提供や問題解決支援を行うことが重要である。特に退院後の生活に対する不安については、家族を含めた退院支援計画の立案と、必要な社会資源の活用方法についての情報提供が効果的である。

ストレス対処方法の強化として、リラクゼーション技法(深呼吸、漸進的筋弛緩法など)の指導や、可能な範囲での趣味や楽しみの継続支援も有効である。さらに、A氏の強みや対処資源を見出し、それらを積極的に活用できるよう支援することも重要である。例えば、教員としての経験を活かした自己表現や、家族との関係性を通じた情緒的サポートの強化などが考えられる。

継続的な観察が必要な点としては、ストレス反応の変化(不安、焦り、抑うつ感など)、コーピング方法の効果と変化、疼痛や活動制限に対する認知的評価の変化、家族関係の変化などが挙げられる。特に退院が近づくにつれ、退院後の生活に対する不安が高まる可能性があるため、心理的変化を注意深く観察し、適切な支援を提供することが重要である。また、長期的な視点では、骨粗鬆症という慢性疾患と共に生きていくための対処能力の強化も重要な課題となる。

11.価値-信念

A氏に関する記録では、信仰は特になく、宗教的な制限や要望はないとされている。しかし、信仰がなくとも、人生における価値観や信念は存在するため、A氏の価値体系や人生観について詳細な情報収集が必要である。特に元小学校教諭という職業背景から、教育や次世代育成に対する価値観を持っている可能性が高く、これらがA氏の意思決定や生き方にどのように影響しているかを理解することが重要である。職業を通じて形成された価値観は、退職後も人生の指針として機能していることが多いため、教職経験がA氏にとってどのような意味を持つかについての情報収集も有益である。

意思決定を決める価値観や信念については、A氏の発言や行動から推測すると、自立と家族への責任を重視している傾向がうかがえる。「夫が一人で心配」「退院後も家事ができるか不安」という発言からは、家族内での役割遂行や夫への配慮を重要視していることが推察される。また、「早く自分の力で眠れるようになりたい」という発言からは、薬物依存への懸念と自己管理能力の回復への強い願望が感じられる。さらに、「痛みはあるけれど、動けないと筋力が落ちる」という発言からは、短期的な不快感よりも長期的な機能回復を優先する価値観がうかがえる。これらの情報から、A氏は自律性、責任感、将来を見据えた判断を重視する価値体系を持っていると推測されるが、より詳細な価値観の理解のためには、人生における重要な選択や困難な状況での対処方法などについての情報収集が必要である。

目標については、「早く痛みがなくなって家に帰りたい」という直接的な希望が表明されている。この短期的な目標は、より長期的な人生目標や価値観に基づいていると考えられるが、その背景にある意味や価値については十分な情報がない。A氏にとっての健康の意味、家庭生活における自己の役割の重要性、人生後半における生きがいや目標など、価値観に基づく長期的な目標についての情報収集が必要である。特に今回の骨折という健康危機が、A氏の人生目標や優先順位にどのような影響を与えているかを理解することは、個別性のあるケア計画の立案において重要となる。

加齢に伴う価値観や信念の変化として、高齢期には多くの場合、物質的・社会的成功よりも、意味のある人間関係や精神的充足が重視されるようになる傾向がある。また、時間的展望が変化し、将来への計画より現在の充実や過去の統合に価値が置かれることも多い。A氏の場合、75歳という年齢を考慮すると、これらの発達的変化が生じている可能性があるが、具体的にどのような価値の移行があったかについては情報が不足している。高齢期における価値観の変化を理解することは、A氏の意思決定や行動の背景を理解する上で重要である。

また、高齢者は長年の人生経験を通じて形成された強固な信念体系を持っていることが多く、これが健康行動や治療への取り組みに影響を与える場合がある。A氏の骨粗鬆症に対する「この年になって骨が弱くなるとは思わなかった」という発言は、自身の健康状態に対する信念と現実とのギャップを示している可能性がある。このような健康信念は、治療アドヒアランスや健康行動の変容に影響を与えるため、詳細な評価が必要である。

看護介入としては、まずA氏の価値観や信念を尊重し、それに基づいた意思決定を支援することが基本となる。具体的には、A氏の自立への価値観を尊重しながら、可能な範囲で自己決定と自己管理を促進する関わりが重要である。例えば、日常ケアやリハビリテーションの計画において、A氏の意見や希望を積極的に取り入れることで、自律性を支援することができる。また、治療や退院計画に関する意思決定においては、A氏の価値観に沿った選択ができるよう、十分な情報提供と意向確認を行うことが重要である。

さらに、A氏の人生目標や価値観を理解し、それに沿った回復支援を行うことで、治療意欲や回復への動機づけを高めることができる。例えば、家族内での役割遂行を重視するA氏に対しては、退院後の役割再開に向けた具体的な支援計画(段階的な家事再開の方法、補助具の活用など)を提案することが効果的である。また、人生の意味や目的についての対話を通じて、A氏の精神的側面のニーズを満たす支援も重要である。

継続的な観察が必要な点としては、治療や入院生活における意思決定パターン、価値観と現実のギャップに対する反応、回復過程における目標の変化などが挙げられる。特に長期化する療養過程においては、価値観や優先順位が変化する可能性があるため、定期的に再評価を行い、ケア計画を調整していくことが重要である。また、退院に向けての意思決定においては、A氏の価値観だけでなく、家族の意向や医療的判断との調和を図ることも重要な課題となる。これらの過程において、A氏の自律性を最大限尊重しながらも、安全で実現可能な計画を立案することが看護の役割である。

看護計画#1

看護問題

疼痛に関連した活動耐性の低下

長期目標

コルセット装着下で自立歩行が可能となり、基本的なADLが自立して行えるようになる。

短期目標

・1週間以内に疼痛がNRS 2/10以下に軽減し、歩行器を使用して病棟内を50m以上移動できるようになる。
・2週間以内に30分以上の座位保持が可能となり、食事や整容を自立して行うことができる。

≪O-P≫観察計画

・疼痛の程度(NRS)、部位、性質、増強因子、緩和因子を評価する
・疼痛に対する表情や行動の変化を観察する
・鎮痛薬使用後の効果と副作用の有無を確認する
・歩行可能距離および歩行時の姿勢、安定性を評価する
・座位保持可能時間と疼痛の関係を評価する
・日常生活動作(食事、排泄、整容、更衣など)の自立度を評価する
・活動後の疲労度と回復状況を観察する
・バイタルサインの変動(特に起立時の血圧変化)を観察する
・睡眠状態(入眠状況、中途覚醒の有無、熟眠感)を評価する
・活動に対する意欲や不安の程度を評価する
・活動量の増加に伴う腰部への負担状況を観察する
・リハビリテーションの進捗状況と効果を評価する

≪T-P≫援助計画

・疼痛の程度に応じた鎮痛薬を適切なタイミングで提供する
・非薬物的疼痛緩和法(温罨法、冷罨法、クッションによる体位保持など)を実施する
・コルセットの適切な装着を確認し、必要時調整を行う
・活動と休息のバランスを考慮したスケジュールを立案する
・移動時は歩行器を適切に使用できるよう見守り支援する
・疼痛が少ない動作方法(ベッドからの起き上がり方、座位の取り方など)を実施支援する
・段階的に活動範囲と時間を拡大し、徐々に自立度を高める
・環境整備(ベッド周囲の整理、必要物品の配置など)を行い、安全に活動できるようにする
・睡眠の質を高めるための環境調整(室温、照明、騒音など)を行う
・食事や整容などのADLを座位で行えるよう、姿勢保持の補助や環境調整を行う
・リハビリテーション計画と連携し、病棟での活動を調整する
・転倒予防のための環境整備と移動時の見守りを行う

≪E-P≫教育・指導計画

・腰椎圧迫骨折の病態と回復過程について説明する
・疼痛の自己評価方法とその重要性について指導する
・疼痛悪化時の対処法(体位変換、休息の取り方、医療者への報告など)を説明する
・コルセットの正しい装着方法と必要性について指導する
・腰部に負担をかけない動作方法(前屈の制限、重いものを持ち上げない等)を指導する
・段階的な活動拡大の意義と計画について説明する
・活動と休息のバランスの重要性とその取り方について指導する
・自宅環境での活動継続と安全確保の方法について家族を含めて指導する
・骨粗鬆症の進行予防のための生活習慣(食事、運動など)について説明する
・退院後の生活における注意点と医療機関の受診計画について説明する

看護計画#2

看護問題

骨粗鬆症と加齢に関連した転倒リスク

長期目標

退院後も安全に移動でき、転倒なく在宅生活を送ることができる。

短期目標

・1週間以内に転倒予防に必要な安全な移動方法を理解し、実践できるようになる。
・2週間以内に看護師の見守りのもと、歩行器を適切に使用して安全に病棟内を移動できるようになる。

≪O-P≫観察計画

・立位時や歩行時のバランス能力を評価する
・起立時の血圧変動(特に起立性低血圧の有無)を観察する
・歩行時の姿勢や安定性、歩容を評価する
・環境の変化に対する適応能力を観察する
・移動時の補助具(歩行器)の使用状況を評価する
・視力・聴力の状態と日常生活への影響を評価する
・認知機能や判断力の状態を観察する
・夜間の覚醒状況と排泄行動を観察する
・睡眠薬使用後の反応(ふらつき等)を評価する
・転倒に対する不安や恐怖心の程度を評価する
・疼痛の程度と移動への影響を観察する
・変形性膝関節症による歩行への影響を評価する
・筋力や関節可動域の改善状況を観察する

≪T-P≫援助計画

・ベッド周囲の環境整備(障害物の除去、必要物品の配置)を行う
・夜間のトイレ移動時には必ず見守りを行う
・適切な照明(夜間も含む)を確保する
・転倒リスクの高い時間帯(夜間や薬剤投与後)は特に注意して観察する
・活動前後の血圧測定を行い、低下傾向がある場合は十分な休息をとる
・歩行器の高さや握り方が適切か確認し調整する
・移動の介助は患者の右側(視力の良い方)から行う
・ナースコールを手の届く位置に配置し、使用方法を確認する
・履物は滑りにくく脱げにくいものを選択し、着用を確認する
・移動時は必ずコルセットを正しく装着していることを確認する
・歩行訓練は疲労度を考慮し、段階的に距離や時間を延長する
・リハビリテーション部門と連携し、病棟での移動方法を統一する
・起立時はゆっくり体位変換を行い、めまいの有無を確認する

≪E-P≫教育・指導計画

・骨粗鬆症と転倒リスクの関連について説明する
・転倒予防のための環境調整の重要性について指導する
・歩行器の正しい使用方法と効果について説明する
・安全な移動方法(ゆっくり立ち上がる、小幅で歩くなど)を指導する
・転倒リスクが高まる状況(夜間、薬剤投与後、疲労時など)について説明する
・めまいやふらつきを感じた際の対処法を指導する
・適切な履物の選択と着用の重要性について説明する
・家族に対して自宅環境の安全確保の方法(手すりの設置、段差の解消など)を指導する
・起立性低血圧予防のための対策(ゆっくり起き上がる、水分摂取など)を説明する
・骨粗鬆症の治療継続の重要性とその方法について指導する
・退院後の活動と安全確保の計画について家族を含めて話し合う

看護計画#3

看護問題

長期臥床と活動制限に関連した便秘

長期目標

退院後も規則的な排便パターン(2日に1回程度)を維持できるようになる。

短期目標

・1週間以内に下剤に頼らず3日以内の間隔で自然排便ができるようになる。
・2週間以内に排便コントロールのための食事・水分・運動の関連性を理解し、実践できるようになる。

≪O-P≫観察計画

・排便の頻度、量、性状、色調を評価する
・腹部の状態(膨満感、腸蠕動音、圧痛の有無)を観察する
・水分摂取量と内容を確認する
・食事摂取状況(特に食物繊維の摂取量)を評価する
・活動量と排便状況の関連性を観察する
・下剤使用の頻度と効果を評価する
・排便時の姿勢や腰痛の影響を観察する
・排便に関連した自覚症状(腹部不快感、ガス停滞感など)を確認する
・排便パターンの変化や改善傾向を評価する
・排便動作の自立度と所要時間を観察する
・プライバシー確保と排便環境への適応状況を評価する
・排便コントロールに対する理解度と実践状況を観察する

≪T-P≫援助計画

・医師と相談し、適切な下剤の種類と用量を調整する
・毎日一定の時間帯(朝食後など)にトイレ誘導を行う
・水分摂取を促進し、1日1500ml以上の摂取を目標とする
・食物繊維を多く含む食品の摂取を促進する
・腹部マッサージを定期的に実施し、腸蠕動を促進する
・腰痛に配慮しながら段階的に活動量を増やす
・プライバシーに配慮した排便環境を整える
・ポータブルトイレ使用時は腰への負担を軽減する姿勢を工夫する
・排便時の腹圧のかけ方を指導し、必要に応じて支援する
・便秘による二次的症状(食欲不振、腹部膨満感など)の緩和を図る
・腰痛に配慮した排便動作の介助方法を統一する
・排便状況に合わせた個別的なケアプランを継続的に見直す

≪E-P≫教育・指導計画

・長期臥床と便秘の関係について説明する
・食物繊維が豊富な食品とその摂取方法について指導する
・適切な水分摂取の重要性と効果的な摂取方法を説明する
・腸蠕動を促進する簡単な運動方法を指導する
・規則的な排便習慣を確立するための生活リズムについて説明する
・下剤の適切な使用方法と過剰依存のリスクについて指導する
・腹部マッサージの方法と効果について説明し、自己実施できるよう指導する
・腰痛に配慮した効果的な排便姿勢について指導する
・自然排便を促すための生活習慣の工夫について説明する
・退院後の排便管理について家族を含めた指導を行う

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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