本事例の要約
右胸部痛を主訴に救急搬送され、急性心筋梗塞と診断された65歳男性に対し、緊急カテーテル検査の結果、右冠動脈#2に99%狭窄を認め、経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行。術後、CCUでの管理を経て、一般病棟へ転棟となった入院2日目の事例。介入日は3月15日である。
2.栄養-代謝
A氏の栄養状態について、身体計測値は身長168cm、体重75kg、BMI26.6であり、軽度肥満を示している。身体活動レベルは、入院前は会社経営者として主にデスクワークを行っており、定期的な運動習慣はなかった。現在は入院2日目で安静度制限があるため、身体活動レベルは低い状態である。
食事摂取状況について、入院前は1日3食摂取していたが、社用での会食が週3-4回あり、塩分・脂質の多い食事が続いていた。現在は心臓病食1600kcal・塩分6g/日の制限食が開始となっており、摂取量は3割程度である。食事に関するアレルギーの情報は得られていないため、確認が必要である。また、好みの食事に関する情報も収集し、制限食への適応を支援する必要がある。
嚥下機能は良好で、口腔内の状態も問題なく、自力での経口摂取が可能である。吐気や嘔吐の症状は認めていない。しかし、入院による環境変化や疾病による心理的影響から、食欲は低下している可能性があり、継続的な観察が必要である。
血液データについて、栄養状態に関連する指標を見ると、入院時の検査では赤血球数4.8×10⁶/μL、ヘモグロビン値14.2g/dL、ヘマトクリット値42.5%と正常範囲内である。現在(3月15日)の値も赤血球数4.6×10⁶/μL、ヘモグロビン値13.8g/dL、ヘマトクリット値41.2%と、貧血は認めていない。電解質バランスも、ナトリウム138mEq/L、カリウム4.0mEq/Lと正常範囲内で維持されている。
現在の栄養状態を総合的に分析すると、急性心筋梗塞後の回復過程にある。入院時の白血球数上昇(12.5×10³/μL)や心筋逸脱酵素の上昇(CK 2856U/L)は、心筋梗塞による急性炎症反応を示している。また、トロポニンTの上昇(2.85ng/mL)も認められ、心筋障害が確認されている。これらの値は現在改善傾向にあるものの、なお正常範囲を超えている。
心臓病食1600kcal・塩分6g/日の制限食は、循環器負荷の軽減と体重管理を目的として設定されている。BMI26.6の軽度肥満状態であり、また高血圧症、糖尿病、脂質異常症を基礎疾患として有していることから、適切なカロリー制限と栄養バランスの管理が重要である。現在の食事摂取量が3割程度に留まっていることは、急性期の食欲低下によるものと考えられるが、段階的に必要カロリーを確保していく必要がある。特に、心臓リハビリテーション開始に向けて、適切な栄養摂取が重要となる。
代謝面では、血糖コントロールと脂質管理が不十分な状態が続いている。血糖値は入院時235mg/dlから現在142mg/dlと改善傾向にあるものの、なお高値である。HbA1c値は7.2%と血糖コントロールが不良であることを示している。これは入院前の服薬コンプライアンスが不良で、多忙を理由に内服を自己中断することがあったことが大きな要因と考えられる。現在は看護師管理下で確実な服薬が行われているが、退院後の確実な服薬継続に向けた支援が必要である。また、脂質データでは、総コレステロール228mg/dl、LDLコレステロール142mg/dl、HDLコレステロール41mg/dl、中性脂肪145mg/dlと、脂質異常の状態が継続している。
皮膚の状態は良好で、褥瘡は認めていない。現在はベッド上での体位変換が可能であり、皮膚統合性は保たれている。ただし、安静度制限が継続する間は、褥瘡予防の観察と介入を継続する必要がある。
必要な看護介入として、まず食事摂取量の改善に向けた支援が重要である。具体的には、食事時の体位を整え、リラックスした環境を整備する。また、本人の嗜好を考慮しながら、制限食への理解と受け入れを促進する働きかけを行う。特に、塩分制限と脂質制限の必要性について、血液データの変化と関連づけて説明することが効果的である。
栄養状態の評価として、食事摂取量、水分出納、体重の推移を継続的にモニタリングする。また、血糖値の変動にも注意を払い、必要に応じて医師と相談の上、食事内容や投薬の調整を検討する。退院後の食事管理に向けて、妻の協力を得ながら具体的な食事内容や調理方法について指導を行うことも重要である。
加齢による影響として、65歳という年齢を考慮し、急激な食事制限による体力低下や栄養状態の悪化を防ぐため、段階的な改善を目指す必要がある。また、味覚の変化や食欲低下などの加齢性変化の有無についても観察を継続する。
看護問題の明確化
#疾患に伴う食事制限の必要性に関連した栄養摂取量の不足
#疾患に伴う服薬コンプライアンス不良に関連した血糖コントロール不良
事例の目次
【ゴードン】心筋梗塞 入院2日目 (0014)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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