【ゴードン】慢性閉塞性肺疾患”COPD” 入院4日目 (0008)| 7.自己知覚-自己概念

ゴードン

本事例の要約

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の入院4日目の事例である。長年の喫煙習慣があり、入院前から呼吸困難感の増強を認めていた。入院後、酸素療法と薬物療法により症状は改善傾向にあるが、禁煙への意欲は低く、ADLの低下と再発予防が課題となっている。妻は今後の介護に不安を抱えており、包括的な支援を必要としている事例である。

7.自己知覚-自己概念

A氏は几帳面で頑固な性格であり、「自分のことは自分でやりたい」という強い自立心を持っている。この性格特性は、これまでの大工としての職業生活においては有利に働いていたと考えられるが、現在の療養生活においては、時として必要な介助を受け入れることへの抵抗感となって表れている。また、呼吸困難感による活動制限がある中で、自己効力感の低下や自尊心の揺らぎが生じている可能性がある。

社会的役割としては、65歳まで大工として勤務していたが、退職している。職業人としての役割喪失は、特に几帳面で仕事熱心な性格のA氏にとって、大きな心理的影響を及ぼしていると考えられる。現在は趣味の庭いじりや将棋を通じて自己実現を図っているが、体力低下により活動が制限されている状況である。

家族内での役割については、70歳の妻との2人暮らしであり、夫婦間のコミュニケーションは良好である。しかし、禁煙に関する家族からの働きかけに対して「こんな年になって今更」「どうせ長くない」という投げやりな発言がみられ、家族の心配や期待に応えられない自責の念を抱えている可能性がある。また、妻の「このまま悪化したら介護が必要になるのでは」という不安に対して「心配かけてすまない」とつぶやく場面がみられ、家族への気遣いと自身の状況との間で葛藤を抱えていることが推察される。

疾患の見通しについては、呼吸困難感は改善傾向にあるものの、慢性閉塞性肺疾患の進行性という特性や、喫煙継続への執着が予後に影響を及ぼす可能性がある。医療者に対して「どうしたら楽に呼吸ができるようになるか」と積極的に質問する一方で、禁煙に対しては消極的な態度を示しており、疾患管理における矛盾した心理状態が窺える。

必要な看護介入として、まずA氏の自尊心や自己効力感を支持する関わりが重要である。具体的には、呼吸リハビリテーションでの成果を共に評価し、できることを維持・拡大していく過程を支援することが必要である。また、禁煙に対する抵抗感の背景にある感情を理解し、A氏のペースに合わせた段階的な目標設定を行うことで、自己管理への動機づけを高める必要がある。

家族との関係性については、A氏の自尊心を尊重しながら、家族の思いも含めた話し合いの場を設けることが重要である。特に、妻の不安に対しては、具体的な支援方法を共に検討し、退院後の生活に向けた準備を進めることで、A氏と家族双方の不安軽減を図る必要がある。

今後の観察ポイントとして、呼吸状態の改善に伴う自己効力感の変化、家族との関係性の変化、疾患管理に対する意欲の程度を継続的に評価する必要がある。また、退院後の生活再開に向けて、社会的役割の再構築や、新たな生きがいの発見についても支援していく必要がある。さらに、喫煙に対する考えの変化や、禁煙への動機づけの程度についても、定期的な評価を行うことが重要である。

看護問題の明確化

#疾患に伴う活動制限に関連した自己効力感の低下

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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