【ゴードン】慢性閉塞性肺疾患”COPD” 入院4日目 (0008)| 2.栄養-代謝

ゴードン

本事例の要約

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の入院4日目の事例である。長年の喫煙習慣があり、入院前から呼吸困難感の増強を認めていた。入院後、酸素療法と薬物療法により症状は改善傾向にあるが、禁煙への意欲は低く、ADLの低下と再発予防が課題となっている。妻は今後の介護に不安を抱えており、包括的な支援を必要としている事例である。

2.栄養-代謝

栄養状態について、入院時の身長165cm、体重48kg、BMI17.6と、標準体重61.3kgと比較して著しい低体重状態にある。さらに過去3ヶ月間で7kgの体重減少がみられており、慢性閉塞性肺疾患の増悪に伴う呼吸困難感の増強が、食事摂取量の低下に影響していると考えられる。血液検査では、総蛋白6.2g/dL、アルブミン3.5g/dLと低値を示しており、慢性的な栄養不良状態が示唆される。また、ヘモグロビン13.8g/dL、ヘマトクリット41.2%、赤血球数445万/μLと基準値内ではあるが、低値傾向にある。これらの値から、慢性的な低栄養状態にあることが確認できる。

必要栄養量については、ハリス・ベネディクト式を用いて基礎エネルギー消費量を算出すると約1,200kcal/日となる。身体活動レベルは、呼吸困難により活動が制限されているため低めと判断され、ストレス係数を考慮すると、1日の必要エネルギー量は約1,800kcal/日と推定される。また、呼吸不全患者では呼吸筋の活動亢進により、エネルギー消費量が増加していることも考慮する必要がある。

食事摂取状況については、常食を自力摂取可能であるが、セッティングに介助を要する状態である。嚥下機能に問題はなく、むせ込みなどの症状は認められていない。しかし、呼吸困難感により食事に時間を要していた経緯がある。食事の好み、アレルギーについての具体的な情報は得られていないため、詳細な聴取が必要である。
水分必要量は体重から算出すると約1,920mL/日(体重48kg×40mL/kg/日)と推定される。現在の水分摂取については具体的な記録はないものの、食事は全量摂取できており、お茶やお水も自発的に摂取できている。電解質データではナトリウム140mEq/L、カリウム4.0mEq/Lと正常範囲内にあり、現時点での電解質バランスは維持されている。しかし、慢性閉塞性肺疾患患者では、気道の分泌物の粘調度を下げるために十分な水分摂取が重要となるため、1日の水分出納のより詳細な把握と記録が必要である。また、利尿薬の使用や発熱時の不感蒸泄の増加なども考慮し、必要に応じて水分摂取量の調整を行う必要がある。

口腔内の状態については、具体的な情報が得られていないため、口腔内の乾燥や衛生状態、歯の状態などの詳細な観察が必要である。特に高齢者では、口腔内乾燥や歯の状態が食事摂取に影響を与えることが多いため、重要な観察項目となる。吐気や嘔吐の症状は報告されていない。

皮膚の状態については、具体的な記載がないため、低栄養や活動制限による皮膚トラブルのリスク評価が必要である。特に、低アルブミン血症は浮腫や創傷治癒の遅延につながる可能性があるため、全身の皮膚状態の観察が重要である。褥瘡のリスク要因として、BMI17.6の低栄養状態、血清アルブミン値3.5g/dLの低値、呼吸困難による活動制限、高齢による皮膚の脆弱化が挙げられる。特に、呼吸困難による同一体位の持続や、ベッド上での活動制限は褥瘡発生の重要な危険因子となる。また、低栄養状態は組織の修復能力を低下させ、褥瘡発生のリスクを高める。そのため、褥瘡予防には、定期的な体位変換、除圧マットレスの使用、皮膚の保湿ケア、栄養状態の改善が必要である。さらに、褥瘡好発部位である仙骨部、腸骨部、踵部などの観察を1日1回以上実施し、発赤や皮膚損傷の早期発見に努める必要がある。座位時間の延長に伴い、坐骨部の圧迫にも注意が必要である。これらの予防的ケアは、本人の呼吸状態に配慮しながら実施し、体位変換時の呼吸困難感の増強に注意を払う必要がある。

このアセスメントから、以下の看護介入が必要である。まず、食事摂取量の改善に向けて、呼吸困難感を最小限に抑えるための体位の工夫や、食事のタイミングの調整が重要である。可能な限り座位を保持し、呼吸が落ち着いている時間帯に食事を提供する。また、一回の食事量を調整し、複数回に分けて提供することで、呼吸困難感の軽減を図る。食事内容については、高カロリー、高タンパクの栄養補助食品の併用を検討し、栄養士と連携して個別の栄養プランを検討する必要がある。

水分摂取については、1日の摂取量の把握と記録を行い、必要に応じて飲水を促す介入が必要である。また、口腔ケアの支援を行い、食事摂取が快適に行えるよう配慮する。皮膚の観察は毎日実施し、特に圧迫部位や浮腫の有無について注意深く観察を行う。

高齢者の低栄養は、免疫機能の低下や筋力低下、創傷治癒の遅延など、多岐にわたる影響を及ぼすため、定期的な体重測定と血液検査データの評価を継続する必要がある。また、退院後の栄養管理についても、家族を含めた指導を行い、継続的な栄養状態の改善を図ることが重要である。

看護問題の明確化

#慢性閉塞性肺疾患に伴う呼吸困難に関連した栄養摂取不足
#慢性閉塞性肺疾患に伴う活動制限と低栄養に関連した褥瘡発生のリスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

看護の攻略部屋wiki

看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK


コメント

タイトルとURLをコピーしました