【ゴードン】統合失調症 入院21日目 (0010)| 2.栄養-代謝

ゴードン

本事例の要約

大手IT企業に勤務するシステムエンジニアが、重要なプロジェクトをきっかけに不眠と被害妄想が出現し、その後幻聴も伴うようになった。自宅での興奮行動がみられたため医療保護入院となり、薬物療法により徐々に症状が改善している統合失調症の事例。介入日は2月3日。

2.栄養-代謝

栄養状態は、入院前と比較して明らかな変化が認められる。入院前は母親が作る食事を規則正しく摂取しており、水分摂取量も1日1.5L程度を確保できていた。しかし現在は、「毒が入っているかもしれない」という被害妄想の影響により、食事摂取量は提供量の7割程度にとどまっている。水分摂取量も看護師の声かけにより800ml程度と、入院前と比較して著しく減少している。

身体計測値としては、身長172cm、体重は入院前65kgから現在58kgと7kgの減少が認められ、現在のBMIは19.6と低体重傾向にある。身体活動レベルは、日中デイルームで過ごし、基本的な日常生活動作は自立しているものの、活動量は入院前と比較して低下している。必要栄養量について、ハリス・ベネディクト法を用いて基礎代謝量を算出すると、男性で身長172cm、体重58kg、28歳の場合、約1,450kcal/日となる。現在の活動レベルは軽度の活動(活動係数1.3)と考えられ、総エネルギー必要量は約1,885kcal/日と推定される。体重減少を考慮すると、これに加えて約500kcal/日の付加が必要で、合計約2,400kcal/日の摂取が望ましいと考える。現在の食事摂取量が7割程度であることから、実際の摂取カロリーは1,700kcal/日程度と推測され、必要量を大きく下回っている状態である。

必要水分量については、体重あたりの必要量(30ml/kg/日)から算出すると、現在の体重58kgに対してである。現在の摂取量は800ml程度であり、必要量の半分以下となっている。脱水のリスクは血液データからは認められていないものの、今後の活動量増加に伴い、より積極的な水分摂取の支援が必要である。特に、抗精神病薬の副作用による口渇や便秘予防の観点からも、十分な水分摂取が重要である。

食欲については、被害妄想による食事への不信感が影響していると考えられるが、嘔吐や吐気の訴えは認められていない。嚥下機能は良好で、口腔内の状態に関する特記事項はない。好きな食べ物や食事に関するアレルギーについての情報は得られていないため、本人や家族からの追加情報収集が必要である。

血液データについては、赤血球数472×10⁴/µL、ヘモグロビン14.0g/dL、ヘマトクリット43.1%と貧血は認められない。電解質バランスについても、ナトリウム141mEq/L、カリウム4.1mEq/Lと基準値内で維持されている。血糖値は92mg/dLと安定している。ただし、総タンパク質やアルブミン値、中性脂肪、総コレステロール、糖化ヘモグロビンについての情報は得られていないため、栄養状態の詳細な評価のために追加の検査が必要である。

皮膚の状態については、体重減少に伴う皮膚の乾燥や脆弱性についての記載はなく、褥瘡の有無についても情報が不足している。活動量が保たれていることから褥瘡のリスクは低いと考えられるが、体重減少が続いていることから、皮膚の状態についての詳細な観察が必要である。

以上のアセスメントから、以下の看護介入が必要である。まず、被害妄想による食事摂取量の低下に対して、食事時の環境調整や安心できる雰囲気作りが重要である。食事摂取量と水分摂取量の正確な記録を継続し、必要に応じて栄養補助食品の検討も必要である。また、体重測定を定期的に実施し、減少傾向が続く場合は、栄養サポートチームとの連携も検討する必要がある。

また、本人の食事に対する認識や不安について傾聴し、段階的に食事への信頼感を取り戻せるよう支援することが重要である。家族の面会時には、本人の好みの食べ物や食習慣について情報収集を行い、食事内容の調整に活かすことも有効である。

さらに、日中の活動量を適度に増やしていくことで、食欲の改善も期待できる。作業療法への参加を促進しながら、活動量に応じた適切な栄養摂取量の確保を目指す必要がある。皮膚の状態についても定期的な観察を行い、必要に応じてスキンケアを実施する。

不足している情報として、食事の嗜好や食事に関するアレルギーの有無、過去の食生活の詳細、体重減少の経過、皮膚の状態、栄養状態を示す詳細な血液データなどについて、追加の情報収集が必要である。また、本人の食事に対する認識や不安の具体的な内容についても、より詳細な情報収集が必要である。

看護問題の明確化

#精神症状(被害妄想)に関連した栄養摂取量不足

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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