【ゴードン】統合失調症 入院21日目 (0010)| 6.認知-知覚

ゴードン

本事例の要約

大手IT企業に勤務するシステムエンジニアが、重要なプロジェクトをきっかけに不眠と被害妄想が出現し、その後幻聴も伴うようになった。自宅での興奮行動がみられたため医療保護入院となり、薬物療法により徐々に症状が改善している統合失調症の事例。介入日は2月3日。

6.認知-知覚

A氏の意識レベルは清明であり、見当識障害は認められていない。現在28歳と若年であることから、加齢による認知機能への影響は考えられない。統合失調症の急性期症状として認められた興奮状態は、リスペリドンによる薬物療法の効果により改善傾向にある。しかし、幻聴や妄想は残存しており、特に「誰かが私の考えを盗んでいる」、「毒が入っているかもしれない」という被害妄想が継続していることから、現実検討力の低下が認められる。

視力・聴力に関する情報については、特記事項がないとの記載があるが、統合失調症の治療において重要な要素となるため、より詳細な評価が必要である。特に、抗精神病薬の副作用による視覚障害の可能性もあることから、定期的に視力常体の確認が必要がある。また、幻聴の評価において、基礎となる聴力の状態を正確に把握することは重要であり、聴力検査の実施も考慮すべきである。

認知機能に関して、MMSEやHDSRによる評価は実施されていないが、システムエンジニアとしての職務遂行が可能であった既往や、現在の会話内容から、基本的な認知機能は保たれていると考えられる。ただし、統合失調症の急性期症状による一時的な認知機能への影響の可能性があるため、症状の安定後に認知機能検査の実施を検討する必要がある。

不安の程度と表情については、両親との面会時には穏やかに会話ができ、「仕事のことが心配」という現実的な発言も見られるようになってきている。これは治療による症状改善の兆候として捉えることができる。一方で、突発的な妄想の表出や、食事に対する被害妄想が残存していることから、基底に強い不安が存在していると考えられる。表情の観察については、記載された情報が限られているため、より詳細な観察と記録が必要である。

必要な看護介入として、以下の取り組みが重要である。まず、幻聴や妄想による不安を軽減するため、患者の訴えに傾聴的な態度で接し、否定せずに受容的な環境を提供する。デイルームでの活動時には、他患者との交流状況や表情の変化を注意深く観察し、必要に応じて介入を行う。また、現実検討力の向上を支援するため、日常生活の中で現実的な話題を取り入れながら、段階的に社会性の回復を図る。

観察を継続すべき点として、幻聴の頻度や内容の変化、妄想の種類や程度の推移、対人交流場面での表情や態度の変化がある。特に、「薬のおかげで声が小さくなってきた」という発言に関連して、幻聴の変化を詳細に記録し、治療効果の評価に活用する必要がある。また、リスペリドンによる副作用の早期発見のため、錐体外路症状の出現や、視覚障害の有無についても定期的な観察が必要である。

家族との関係性については、両親が毎日面会に訪れ、妹も定期的に面会していることから、支援が得られる状況だと考える。この家族の支援を治療に活用するため、面会時の患者の反応や表情の変化を観察し、記録する必要がある。特に、家族との会話中に現れる現実的な発言は、回復の指標として重要である。

また、職場復帰に向けた準備段階として、認知機能の回復過程を評価することも重要である。システムエンジニアとしての職務遂行には高度な認知機能が要求されるため、作業療法への参加状況や課題遂行能力の観察を通じて、職業復帰に向けた準備状態を評価していく必要がある

看護問題の明確化

#統合失調症の症状に関連した不安

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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