本事例の要約
大手IT企業に勤務するシステムエンジニアが、重要なプロジェクトをきっかけに不眠と被害妄想が出現し、その後幻聴も伴うようになった。自宅での興奮行動がみられたため医療保護入院となり、薬物療法により徐々に症状が改善している統合失調症の事例。介入日は2月3日。
4.活動-運動
活動と運動の状況について、入院前は大手IT企業でシステムエンジニアとして勤務しており、デスクワークが中心の生活を送っていた。父(58歳、会社役員)、母(55歳、専業主婦)との3人で実家の一戸建てに居住しており、日常生活動作は全て自立していた。具体的な運動歴については情報が得られていない。
現在の日常生活動作については、歩行、移乗、排泄、入浴、衣類の着脱などの基本的な動作は自立しており、介助を必要としない状態である。日中はデイルームで過ごすことができ、他患者との簡単な会話も可能となっている。しかし、「誰かが私の考えを盗んでいる」という被害妄想の訴えが突発的にあり、この際の行動変化について注意深い観察が必要である。
バイタルサインは、入院時は体温37.2℃、脈拍98回/分、血圧142/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度98%と、軽度の興奮状態を反映していたが、現在は体温36.7℃、脈拍76回/分、血圧118/72mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度99%と安定している。呼吸機能について具体的な評価は行われていないが、酸素飽和度は良好に保たれている。
血液データについては、赤血球数472×10⁴/µL、ヘモグロビン14.0g/dL、ヘマトクリット43.1%と貧血は認められず、C反応性タンパク0.05mg/dLと炎活動性の所見も認められない。これらの検査値からは、活動に影響を与えるような身体的な問題は示唆されない。
転倒転落のリスク評価について、向精神薬(リスペリドン4mg/日、ブロチゾラム2.5mg/日、ビペリデン2mg/日)を服用しており、これらは傾眠や錐体外路症状による転倒リスクを高める可能性がある。また、被害妄想による突発的な行動変化の可能性もあり、注意が必要である。しかし、現時点での転倒歴についての情報はなく、基本的な移動能力は保たれている。
以上のアセスメントから、以下の看護介入が必要である。まず、薬物療法に伴う副作用(傾眠、錐体外路症状など)の観察を継続し、転倒予防に努める必要がある。特に、夜間のトイレ歩行時や急な体位変換時には注意が必要である。
また、日中の活動性を高めるため、作業療法への参加を促進していく必要がある。その際、被害妄想による不安や緊張が活動の妨げとならないよう、安心できる環境の提供と段階的な活動量の増加が重要である。運動機能は保たれているため、この機能を維持しながら、徐々に活動範囲を広げていくことが望ましい。
家族との面会時には、入院前の生活習慣や運動習慣について情報収集を行い、退院後の生活環境の調整に活かすことも重要である。特に、システムエンジニアとしての復職を見据え、デスクワーク中心の生活における適切な運動習慣の確立について、計画的な支援が必要である。
不足している情報として、入院前の具体的な運動習慣、自宅の住環境、転倒リスクの評価、日中の活動量の具体的な記録などについて、追加の情報収集が必要である。また、本人の運動に対する認識や意欲についても、より詳細な情報収集が必要である。これらの情報を基に、個別性のある活動・運動プログラムを立案していく必要がある。
看護問題の明確化
#精神症状と抗精神病薬の使用による傾眠や錐体外路症状に関連した転倒転落のリスク
事例の目次
【ゴードン】統合失調症 入院21日目 (0010)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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