【ゴードン】統合失調症 入院21日目 (0010)| 10.コーピング-ストレス耐性

ゴードン

本事例の要約

大手IT企業に勤務するシステムエンジニアが、重要なプロジェクトをきっかけに不眠と被害妄想が出現し、その後幻聴も伴うようになった。自宅での興奮行動がみられたため医療保護入院となり、薬物療法により徐々に症状が改善している統合失調症の事例。介入日は2月3日。

10.コーピング-ストレス耐性

A氏の入院環境について、入院当初は強い興奮状態により隔離室での管理を要したが、リスペリドンによる薬物療法の効果により症状が改善し、入院8日目には一般病室への移動が可能となっている。現在はデイルームでの活動や他患者との簡単な会話が可能な状態まで回復している。ただし、「誰かが私の考えを盗んでいる」という妄想や「毒が入っているかもしれない」という被害妄想は残存しており、これらが入院環境への適応に影響を与えている可能性がある。

仕事や生活でのストレス状況については、入院前は大手IT企業でシステムエンジニアとして勤務しており、完璧主義的な性格と強い責任感から、重要なプロジェクトを任されたことをきっかけに不眠が続いていた。睡眠時間は平均4-5時間程度と不規則であり、仕事が忙しい時期には夜遅くまで仕事をする状況が続いていた。このような過度の仕事へのコミットメントと睡眠リズムの乱れが、現在の疾患発症の誘因となった可能性が高い。ストレス発散方法については、休日に友人と飲酒をする程度の記載はあるものの、具体的な趣味や気分転換の方法に関する情報が不足している。

家族のサポート状況は非常に良好である。両親が毎日面会に訪れており、特に父は「息子の体調が落ち着いてきたら、会社と復職について相談したい」と前向きな姿勢を示している。母は自責的な様子を見せながらも毎日の面会で息子を気遣い、入院前は食事の準備など日常生活面での支援を行っていた。妹も週末に面会に訪れ、本人の興味のあるプログラミングの本を持参するなど、具体的な支援行動を示している。このような強力な家族支援は、患者の回復過程における重要な資源となっている。

生活の支えとなるものについては、システムエンジニアとしての職業的アイデンティティが重要な要素であると考えられる。現在も「仕事のことが心配」という発言が見られ、職業への関心が維持されていることが窺える。また、妹が持参したプログラミングの本への関心も、回復への動機付けとなる可能性がある。

必要な看護介入として、まず入院環境への適応を促進するため、デイルームでの活動や他患者との交流を段階的に支援する必要がある。残存する妄想に対しては、患者の不安や恐れに共感的な態度で接しながら、現実検討力の回復を支援する。また、規則正しい生活リズムの確立と適切な睡眠時間の確保を支援し、ストレス耐性の回復を図る。

新たなストレス対処方法の獲得に向けて、作業療法への参加や趣味活動の導入を検討する。特に、プログラミングへの関心を活かした活動を通じて、ストレス発散と職業的スキルの維持を同時に図ることができる可能性がある。

継続的な観察が必要な点として、残存する妄想の内容や程度の変化、デイルームでの活動状況、他患者との交流場面での言動、家族との面会時の反応などがある。特に、ストレス状況下での対処行動や症状の変化について注意深く観察する必要がある。

追加の情報収集が必要な点として、発症前の具体的なストレス対処方法、趣味や関心事、社会的支援ネットワークの状況(友人関係など)、職場でのストレス要因の詳細などがある。また、今後の復職に向けて、職場でのストレスマネジメント方法についても検討が必要である。

看護問題の明確化

#統合失調症の症状に関連したストレス対処能力の低下と不適切な生活リズム

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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