本事例の要約
大手IT企業に勤務するシステムエンジニアが、重要なプロジェクトをきっかけに不眠と被害妄想が出現し、その後幻聴も伴うようになった。自宅での興奮行動がみられたため医療保護入院となり、薬物療法により徐々に症状が改善している統合失調症の事例。介入日は2月3日。
3.排泄
排泄状況について、入院前は排泄に関する問題はなく自立していた。現在も排泄は自立しており、特に問題は見られていない。しかし、排便と排尿の具体的な回数、量、性状についての詳細な情報は得られていない。また、下剤の使用状況についても情報が不足している。
排泄に影響を与える要因として、現在の食事摂取量は提供量の7割程度にとどまっており、水分摂取量も800ml程度と必要量(1,740ml/日)を大きく下回っている状態である。特に、抗精神病薬であるリスペリドン4mg/日の服用は便秘のリスク因子となり得る。また、錐体外路症状予防のためのビペリデン2mg/日も抗コリン作用により、便秘を助長する可能性がある。水分摂取量が少ないことと合わせて、便秘のリスクが高い状態にあると考えられる。
活動面については、日中デイルームで過ごすことができ、基本的な日常生活動作は自立している。バルーンカテーテルは使用していない。しかし、入院前と比較して活動量は低下しており、これも便秘のリスク因子となり得る。腹部膨満や腸蠕動音についての情報は得られていないため、アセスメントが必要である。
体液バランスに関する検査データとして、血中尿素窒素14.8mg/dL、クレアチニン0.80mg/dLと腎機能は正常範囲内である。糸球体濾過量(GFR)については情報が得られていないため、算出が必要である。また、水分出納バランス(in-outバランス)についての詳細な記録は得られていない。
以上のアセスメントから、以下の看護介入が必要である。まず、排便・排尿の回数、量、性状について定期的な観察と記録を行う必要がある。特に便秘のリスクが高いことから、排便状況の詳細な把握が重要である。また、腹部の触診による膨満感の有無や腸蠕動音の確認を定期的に実施する必要がある。
水分摂取量の増加に向けた支援も重要である。現在の摂取量800ml程度から、目標量1,740ml/日に向けて段階的に増やしていく必要がある。その際、被害妄想による飲水への不安がある可能性も考慮し、安心できる環境での摂取を支援する。また、日中の活動量を徐々に増やしていくことで、腸管運動の促進も期待できる。
服薬に関連する便秘のリスクについて観察を継続し、必要に応じて下剤の使用も検討する必要がある。ただし、下剤使用の前に、非薬物的な介入(水分摂取量の増加、活動量の増加、規則的なトイレ誘導など)を優先的に実施することが望ましい。
不足している情報として、排便・排尿の具体的な回数と性状、下剤使用の有無、腹部症状の有無、水分出納バランスの詳細、糸球体濾過量などについて、追加の情報収集が必要である。また、排泄に関する本人の認識や習慣についても、より詳細な情報収集が必要である。これらの情報を基に、個別性のある排泄ケア計画を立案していく必要がある。
看護問題の明確化
#向精神薬(リスペリドン・ビペリデン)投与に関連した便秘のリスク状態
事例の目次
【ゴードン】統合失調症 入院21日目 (0010)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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