本事例の要約
大手IT企業に勤務するシステムエンジニアが、重要なプロジェクトをきっかけに不眠と被害妄想が出現し、その後幻聴も伴うようになった。自宅での興奮行動がみられたため医療保護入院となり、薬物療法により徐々に症状が改善している統合失調症の事例。介入日は2月3日。
8.役割-関係
A氏は大手IT企業でシステムエンジニアとして勤務していたが、現在は統合失調症の発症により休職中である。職場での役割については、重要なプロジェクトを任されるなど、高い職務遂行能力を期待される立場にあったことが推察される。同僚との関係は良好であったものの、自ら積極的に交流することは少なく、仕事上の関係性が中心であったと考えられる。現在の休職により、職業的役割の一時的な喪失状態にあり、本人も「仕事のことが心配」と表現している状況である。
家族関係において、A氏は58歳の会社役員である父、55歳の専業主婦である母との3人暮らしで、実家の一戸建てに居住している。キーパーソンは毎日面会に来ている父母であり、特に父は「息子の体調が落ち着いてきたら、会社と復職について相談したい」と前向きな姿勢を示している。母は「もっと早く気づいてあげられれば」と自責的な様子を見せながらも、毎日の面会で息子を気遣い、支援を続けている。26歳の妹は結婚して別居しているが、定期的に面会に訪れ、「お兄ちゃんの好きなプログラミングの本を持ってきたよ」と支援的な態度を示している。このように、家族全体として積極的な支援体制が構築されている。
経済状況については、直接的な情報の記載がないため、詳細な評価が必要である。ただし、大手IT企業のシステムエンジニアとしての就労歴があり、実家の一戸建てに居住していることから、一定の経済的基盤は存在すると推測される。父親が会社役員として勤務していることも、家族全体としての経済的安定性を示唆している。しかし、休職に伴う収入の変化や、傷病手当金の申請状況、医療費の負担状況などについて、追加の情報収集が必要である。
必要な看護介入として、まず家族の支援力を治療に活用することが重要である。両親の毎日の面会は患者の情緒的安定に影響を与えており、この関係性を維持・強化するため、面会時の様子を観察し、必要に応じて家族への支援も行う。特に母親の自責的な感情に対しては、専門的な立場から助言を行い、支援者としての役割を支える必要がある。
また、職場復帰に向けた支援として、父親の意向を踏まえつつ、段階的な準備を進めることが重要である。妹が持参したプログラミングの本を活用した活動を通じて、職業的スキルの維持を図ることも検討する。デイルームでの活動や作業療法への参加状況を観察し、社会性の回復過程を評価する必要がある。
継続的な観察が必要な点として、家族との面会時の言動や表情の変化、デイルームでの他患者との交流状況、日常生活における役割行動の回復過程がある。特に、「誰かが私の考えを盗んでいる」という妄想が他者との関係形成にどのような影響を与えるか、注意深く観察する必要がある。
追加の情報収集が必要な点として、以下の項目がある。休職前の具体的な職務内容や職場での人間関係、休職に関する会社側の対応や支援体制、傷病手当金などの社会保障制度の利用状況、医療費の負担状況、今後の復職に向けた経済的な見通しなどである。これらの情報は、より具体的な支援計画の立案に不可欠である。
また、地域の社会資源の活用可能性についても検討が必要である。退院後の通院治療や就労支援サービスの利用、経済的支援制度の活用など、利用可能な社会資源について情報を収集し、患者と家族に提供することで、長期的な支援体制の構築を図る必要がある。
看護問題の明確化
#統合失調症の症状に関連した役割遂行能力の低下
事例の目次
【ゴードン】統合失調症 入院21日目 (0010)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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