本事例の要約
右胸部痛を主訴に救急搬送され、急性心筋梗塞と診断された65歳男性に対し、緊急カテーテル検査の結果、右冠動脈#2に99%狭窄を認め、経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行。術後、CCUでの管理を経て、一般病棟へ転棟となった入院2日目の事例。介入日は3月15日である。
10.コーピング-ストレス耐性
A氏は突然の胸痛による救急搬送後、緊急処置を経て入院となり、現在は心電図モニター管理下で活動が制限された状態である。入院環境については、心電図モニターの装着や病室の環境変化により夜間に2-3回の中途覚醒があり、入眠にも時間を要している状況である。これまで自宅での6-7時間の睡眠は確保できていたことから、環境の変化による睡眠への影響が顕著である。また、ベッド上での活動制限により排便がないことや、尿器での排泄を強いられることなど、生活様式の急激な変化がストレス要因となっている可能性がある。
入院前の生活では、会社経営者としての強い責任感と几帳面な性格が特徴的である。多忙な仕事により、通院や服薬が不規則となり、定期的な運動習慣もなく、外食が多い生活を送っていた。週3-4回の社用での会食があり、塩分・脂質の多い食事が続いていたことから、仕事中心の生活スタイルが確立されていたことがわかる。ストレス発散方法としては、週2-3回程度のビール摂取と喫煙(20本/日を30年間)が習慣化していたが、これらは心疾患のリスク要因となっており、現在は両者とも制限されている状態である。このため、これまでのストレス発散方法が使えない状況での新たなストレス対処方法の確立が必要である。
家族のサポート状況については、キーパーソンである妻が毎日面会に訪れており、夫の健康管理に対する強い関心と支援の意思を示している。妻は食事管理や服薬確認などの具体的なサポート方法を自ら提案しており、退院後の生活改善に向けた重要な支援者となることが期待できる。ただし、妻は夫の性格から退院後すぐに仕事中心の生活に戻ることを懸念しており、この点については夫婦間での十分な話し合いと、医療者を交えた具体的な生活設計が必要である。
A氏自身も「今まで仕事一筈で、自分の健康管理は後回しにしてきた」と振り返りつつ、「仕事は大切だが、これを機に生活を見直したい」と語っており、生活改善への意欲が見られる。しかし同時に「会社のことが心配で、早く仕事に戻りたい」という発言もあり、仕事と健康管理の両立に対する不安を抱えている。これは65歳という年齢でありながら現役の経営者として重要な役割を担っているという社会的背景が影響していると考えられる。
必要な看護介入として、まず入院環境への適応を促進するため、睡眠環境の調整や日中の活動時間の確保が重要である。また、現在の活動制限下でも実施可能なストレス軽減方法(呼吸法やリラクゼーション技法など)を提案し、指導していく必要がある。さらに、禁煙継続のための支援として、禁煙外来の紹介や禁煙補助薬の使用を検討する。
退院後の生活に向けては、A氏と妻の両者に対して、仕事と健康管理の両立に向けた具体的な方策を提案していく。特に、定期的な通院と服薬の習慣化、食事管理、適度な運動習慣の確立など、実行可能な目標設定を行う。また、職場における協力体制の構築についても助言し、必要に応じて産業医との連携も検討する。
継続的な観察が必要な点として、環境の変化に伴う睡眠状態の変化、活動制限による心理的ストレスの程度、禁煙・禁酒に伴う離脱症状の有無などがある。また、仕事と健康管理の両立に関する具体的な計画の進展状況についても、定期的な確認と支援が必要である。
追加で収集が必要な情報として、これまでの人生における重要な危機的状況での対処方法、職場における具体的な役割と代替可能性、利用可能な社会資源についての情報が必要である。これらの情報は、より効果的な支援計画の立案に活用できる。
看護問題の明確化
#疾患に伴う生活様式の急激な変化に関連したストレスコーピング効果の低下
事例の目次
【ゴードン】心筋梗塞 入院2日目 (0014)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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