本事例の要約
右胸部痛を主訴に救急搬送され、急性心筋梗塞と診断された65歳男性に対し、緊急カテーテル検査の結果、右冠動脈#2に99%狭窄を認め、経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行。術後、CCUでの管理を経て、一般病棟へ転棟となった入院2日目の事例。介入日は3月15日である。
6.認知-知覚
A氏の意識レベルは、急性心筋梗塞発症時から現在まで清明を維持している。来院時の意識レベルは意識清明でJCS 0であり、その後も意識状態の変化は認められていない。医療者の説明を適切に理解し、自身の状態や症状を明確に表現できていることから、認知機能は正常に保たれていると判断される。
感覚機能に関して、視力は両眼とも裸眼で0.7であり、必要時に老眼鏡を使用している。65歳という年齢を考慮すると、老眼は生理的な加齢変化として捉えられる。現在の入院環境において、医療者からの説明文書の読解や薬剤の確認などに支障をきたす可能性があるため、老眼鏡の使用状況と文字の視認性について継続的な確認が必要である。聴力は正常であり、会話によるコミュニケーションに支障はない。
知覚に関しては、四肢の感覚は良好であり、特に異常は認められていない。胸痛に関しては、来院時にNRSで8/10の強い疼痛を認めていたが、経皮的冠動脈形成術後は消失している。今後の疼痛の再発や違和感の出現には注意が必要であり、継続的な観察と評価が重要である。
A氏の表情や言動からは、今後の生活や仕事に対する不安が読み取れる。「まさか自分が心筋梗塞になるとは思わなかった」という発言からは、突然の発症による心理的な動揺が伺える。また、「仕事は大切だが、これを機に生活を見直したい。でも会社のことが心配で、早く仕事に戻りたい」という発言には、健康管理と仕事の両立に対する葛藤が表れている。
必要な看護介入として、まず心理的サポートが重要である。A氏は几帳面な性格で責任感が強く、会社経営者としての役割意識が高いことから、入院による役割喪失への不安が存在する可能性がある。このため、A氏の気持ちに寄り添いながら、段階的な活動再開への見通しを示すことが必要である。
また、医療者からの説明や指導に対する理解度を確認しながら、必要に応じて説明方法を工夫することも重要である。特に服薬管理については、入院前の服薬コンプライアンスが良好ではなかったことから、視覚的な資料を用いるなど、理解しやすい方法での指導が必要である。
妻の存在は重要なサポート要因となっている。妻は「食事の管理や服薬の確認など、私にできることはしっかりとサポートしていきたい」と前向きな姿勢を示しており、家族の支援体制を活用した継続的な健康管理の構築が可能であると考えられる。
今後の観察ポイントとして、心臓リハビリテーション開始に伴う身体的・精神的変化、服薬や生活改善に対する理解度と実践状況、不安の程度や内容の変化について、継続的に評価していく必要がある。特に、仕事復帰に向けては、焦りや不安が増強する可能性があるため、心理状態の変化に注意を払う必要がある。
医療者とのコミュニケーションは良好であるが、時に不安を表出することから、こまめな声かけと傾聴の機会を設け、A氏が抱える不安や懸念を表出しやすい環境を整えることが重要である。また、認知機能は正常であるが、ストレスや疲労により一時的に注意力や集中力が低下する可能性もあるため、安全面での配慮と観察も継続して必要である。
看護問題の明確化
なし
事例の目次
【ゴードン】心筋梗塞 入院2日目 (0014)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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