本事例の要約
右胸部痛を主訴に救急搬送され、急性心筋梗塞と診断された65歳男性に対し、緊急カテーテル検査の結果、右冠動脈#2に99%狭窄を認め、経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行。術後、CCUでの管理を経て、一般病棟へ転棟となった入院2日目の事例。介入日は3月15日である。
11.価値-信念
A氏は特定の宗教は持っておらず、信仰による制限はないものの、会社経営者としての責任感と几帳面な性格が価値観の中核を形成している。この価値観は、A氏の意思決定や行動選択に大きな影響を与えており、健康管理よりも仕事を優先する生活スタイルの形成につながっていたと考えられる。
現在の入院生活において、A氏は「今まで仕事一筋で、自分の健康管理は後回しにしてきた。まさか自分が心筋梗塞になるとは思わなかった」と振り返りを行っている。この発言からは、これまでの価値観や生活態度に対する再評価が始まっていることが読み取れる。同時に「確かに仕事は大切だが、これを機に生活を見直したい」という言葉からは、健康管理の重要性に対する新たな価値観の芽生えが見られる。
しかしながら、「会社のことが心配で、早く仕事に戻りたい」という発言も併存しており、仕事に対する強い責任感と新たな健康管理の必要性との間で価値の葛藤が生じている状態である。この葛藤は、65歳という年齢でありながら現役の経営者として重要な社会的役割を担っているという背景が影響している。
妻の「主人は几帳面な性格なのに、体調管理だけは疎かにしていました」という発言からは、A氏の価値観における特徴的な不均衡が示唆される。すなわち、仕事における几帳面さと自己の健康管理における放任傾向という、価値観の二面性が存在している。
今後の目標設定においては、この価値観の不均衡を是正し、仕事と健康管理の両立という新たな価値観の確立が必要である。そのためには、A氏の経営者としての自尊心や責任感を尊重しながら、健康管理もまた経営者としての重要な責務であるという認識を育むような支援が求められる。
必要な看護介入として、まずA氏の価値観や信念を十分に傾聴し、受容する姿勢を示すことが重要である。その上で、健康管理を疎かにすることが結果として経営者としての責務遂行を妨げる可能性があることを、A氏の経験に基づいて具体的に説明していく。また、仕事と健康管理の両立に成功している経営者の例を提示するなど、新たな価値観形成のためのモデルを提供することも有効である。
継続的な観察が必要な点として、価値観の変化のプロセスや、仕事と健康管理の両立に対する考え方の変化、新たな目標設定の進展状況などがある。特に、退院後の生活再開に向けて、具体的にどのような優先順位付けを行おうとしているのかについて、注意深く観察していく必要がある。
追加で収集が必要な情報として、A氏の会社における具体的な役割と代替可能性、経営者としての将来展望、健康管理に対する具体的な目標イメージ、過去の危機的状況における価値観の変化の経験などが必要である。また、妻以外の家族や親族との関係性、特に経営に関与している可能性のある家族の存在についても確認が必要である。
これらの情報は、A氏の価値観の形成過程をより深く理解し、効果的な支援計画を立案する上で重要である。また、退院後の生活における優先順位の設定や、具体的な健康管理計画の立案にも活用できる。さらに、定期的なフォローアップを通じて、新たな価値観に基づく生活の実現状況を評価し、必要に応じて支援内容を修正していく必要がある。
看護問題の明確化
#疾患に伴う生活様式の変更の必要性に関連した価値観の葛藤
事例の目次
【ゴードン】心筋梗塞 入院2日目 (0014)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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