本事例の要約
78歳男性A氏の誤嚥性肺炎による入院で、発熱と呼吸困難を主訴に救急搬送され、入院後に重度の嚥下機能低下を認め経鼻経管栄養を開始した。今後はリハビリテーションをしながら経口摂取を進めていく予定。
5.睡眠-休息
A氏は入院前、21時就寝、6時起床という規則正しい生活リズムを維持しており、睡眠導入剤等の使用なく良好な睡眠が確保できていた。日中は毎朝の30分程度の散歩を日課とし、週1-2回の地域の友人との集まりにも参加するなど、適度な活動量と社会交流を保持していた。このような生活習慣は、良質な睡眠の確保に寄与していたと考えられる。
しかし、入院後は環境の変化に加え、第4病日夜間からせん妄を発症し、「仕事に行かなければ」「会社の資料を作らないと」などの発言とともに夜間不眠と不穏状態が出現している。日中も傾眠傾向がみられ、声かけにより覚醒は可能であるものの、入院前の規則正しい睡眠-覚醒リズムが大きく乱れている状態である。この状況に対し、ハロペリドール0.75mgを不穏時に使用している。
せん妄の発症要因として、入院による環境の変化、誤嚥性肺炎による急性の身体状態の変化、夜間の不眠、そして高齢であることが挙げられる。加齢に伴う睡眠の特徴として、睡眠の質の低下、中途覚醒の増加、深睡眠の減少があり、環境変化への適応力も低下している。これらの要因が複合的に作用し、現在の睡眠障害とせん妄状態を引き起こしていると考えられる。
必要な看護介入として、まず日中の覚醒を促進し、夜間の良眠が得られるような生活リズムの確立が重要である。具体的には、日中はカーテンを開けて自然光を取り入れ、可能な範囲で座位保持や軽い運動を促す。また、患者の気力や体力に応じて日中の活動を計画的に組み込み、適度な疲労感が得られるよう調整する。
さらに、せん妄予防の観点から、時計やカレンダーを設置し、定期的な声かけによって見当識を保てるよう支援する。家族の面会時間も、生活リズムの確立に合わせて調整することが望ましい。
継続的な観察が必要な項目として、睡眠時間、睡眠の質、夜間の不穏の程度、日中の覚醒状態、せん妄症状の変化などが挙げられる。また、ハロペリドールの使用状況と効果についても観察を続け、必要に応じて用量の調整を検討する必要がある。
睡眠状態の改善は、せん妄の改善や全身状態の回復に重要な影響を与えるため、現在の睡眠障害に対する積極的な介入が必要である。また、退院後の生活を見据え、自宅での良好な睡眠習慣の再確立に向けた支援も考慮する必要がある。
さらなる情報収集が必要な項目として、入院前の具体的な日中の過ごし方、趣味活動の内容、休日の過ごし方などが挙げられる。これらの情報は、患者の興味や習慣に基づいた日中の活動計画の立案に有用である。また、自宅での睡眠環境(室温、照明など)についても情報を得ることで、入院中の環境調整の参考とすることができる。
看護問題の明確化
#入院による環境の変化とせん妄に関連した睡眠-覚醒パターンの障害
事例の目次
【ゴードン】誤嚥性肺炎 入院5日目(0006)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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