【ゴードン】乳癌 壮年期 入院10日目 (0012)| 7.自己知覚-自己概念

ゴードン

本事例の要約

定期的な乳がん検診により右乳がんStageⅡAと診断され、右乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を受けた45歳女性の術後10日目の事例。術後経過は良好だが、右上肢の可動域制限により日常生活動作に支障をきたしており、今後の抗がん剤治療への不安が強く、特に中学生の娘たちへの母親としての役割遂行に対する懸念を抱えている事例。

7.自己知覚-自己概念

A氏は几帳面で明るい性格の持ち主であり、医療者や他患者とのコミュニケーションを積極的に図る社交性を有している。自分の思いや不安を言語化して表現できる能力を持ち合わせており、感情表出が適切である。

ボディイメージについて、乳房部分切除後の創部を見ることへの強い恐怖感を表出している。「傷跡を見るのが怖い」という発言が頻繁にみられ、術後のボディイメージの変化への適応に著しい困難を示している。また、今後予定されている抗がん剤治療による脱毛などの外見変化に対する不安も強く、自己イメージの揺らぎが認められる。

疾患に対する認識として、母親が40代後半で乳がんに罹患した家族歴があることから、定期的な乳がん検診を欠かさず受診するなど、乳がんに対する予防的な健康行動を実践してきた。現在の病状や治療の必要性については理解を示しているものの、トリプルネガティブタイプという予後に影響する要因について、どの程度理解し受容できているかの評価が必要である。

自尊感情については、家族の中心的存在として、料理や家事、育児などの役割を担うことで自己価値を見出してきた様子が伺える。しかし、現在は手術後の身体機能の制限や今後の治療による役割遂行への影響を懸念しており、自己効力感の低下がみられる。特に「家族に負担をかけたくない」という発言からは、自己価値を家族への貢献度と結びつけて考える傾向が示唆される。

育った文化や周囲の期待に関する具体的な情報は不足している。特に、家族観や健康観に影響を与えた文化的背景、両親との関係性、教育歴などについての情報収集が必要である。現在は、妻として、母親として周囲から期待される役割の遂行に対するプレッシャーを強く感じている状態である。

必要な看護介入として、まずボディイメージの受容に向けた段階的な支援が重要である。創部の観察や処置の際には、患者の心理的準備状態を確認しながら進め、必要に応じて看護師が同伴して鏡を見る機会を設けるなど、自己受容を促進する介入が求められる。

また、自尊感情の維持・向上に向けて、できることとできないことを明確にし、現状で可能な役割遂行の方法を共に検討する必要がある。家族との関係性を維持しながら、新たな役割調整を図ることで、自己価値感の再構築を支援する。

疾患の理解を深めるため、トリプルネガティブタイプの特徴や治療の意義について、患者の理解度に応じた説明を行う。また、同様の経験をもつ患者会や支援グループの情報提供を行い、ピアサポートの機会を提供することも有効である。

継続的な観察が必要な点として、創部に対する受容度の変化、自己イメージの変化、家族との関係性の変化、疾患理解の程度について注目する。特に、抗がん剤治療開始後の外見変化に対する心理的影響を慎重に観察し、適切な時期に心理的支援を強化する必要がある。

文化的背景や価値観についての理解を深めるため、入院中の関わりを通じて、患者の生活史や家族関係、健康に対する考え方などの情報収集を継続する。これらの情報は、個別性の高い看護支援を展開する上で重要な基盤となる。

看護問題の明確化

#乳がん手術に伴う身体変化に関連したボディイメージの障害
#乳がん治療に伴う役割変化に関連した自己効力感の低下

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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