本事例の要約
定期的な乳がん検診により右乳がんStageⅡAと診断され、右乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を受けた45歳女性の術後10日目の事例。術後経過は良好だが、右上肢の可動域制限により日常生活動作に支障をきたしており、今後の抗がん剤治療への不安が強く、特に中学生の娘たちへの母親としての役割遂行に対する懸念を抱えている事例。
6.認知-知覚
A氏の意識レベルは清明であり、認知機能は正常に保たれている。視力・聴力ともに異常はなく、補助具の使用もないため、感覚器の機能は良好である。コミュニケーション能力も保持されており、医療者や家族との意思疎通に問題は認められない。几帳面で明るい性格特性を持ち、自身の思いや不安を適切に言語化できている。
知覚面について、術後の右上肢に軽度のしびれ感がみられるものの、重度の感覚障害は認めていない。手術創部周辺の痛みに関しては、ロキソプロフェン60mgやアセトアミノフェン400mgを疼痛時に使用することで対応している。この疼痛は術後の回復過程として予測される範囲内であるが、継続的な観察と評価が必要である。
心理的側面において、今後の抗がん剤治療に対する強い不安が認められる。特に、中学生の娘たちの受験や進学を控え、母親としての役割が果たせないことへの懸念が顕著である。また、「傷跡を見るのが怖い」という発言が多くみられ、ボディイメージの変化への適応に困難を示している。これらの不安は、術後の回復過程における重要な心理的課題として捉える必要がある。
表情は基本的に明るく保たれているものの、抗がん剤治療や家族の話題が出た際には表情が硬くなる様子が観察される。入院中も他患者や医療者とのコミュニケーションを積極的に図っており、社会的な交流は維持できている。
必要な看護介入として、まず右上肢のしびれ感に対する定期的なアセスメントと、症状緩和のためのケアが重要である。また、疼痛の性質や程度、日内変動についても継続的な評価が必要である。特に、リハビリテーション実施時の痛みの変化について、詳細な観察を行う必要がある。
心理面への支援として、不安の具体的な内容や程度を定期的に評価し、傾聴と共感的な関わりを通じて精神的サポートを提供する。ボディイメージの受容を促進するため、段階的な創部の観察や、必要に応じて心理専門家との連携を検討する。また、家族を含めた支援体制の構築が重要であり、特に夫との連携を強化し、家族全体での心理的サポート体制を整える必要がある。
今後も以下の点について継続的な観察が必要である。右上肢のしびれ感の変化、疼痛の推移、不安の内容と程度の変化、ボディイメージの受容過程、家族との関係性の変化について、詳細に観察を続ける。特に、抗がん剤治療開始に向けて、心理的準備状態を慎重に評価していく必要がある。
退院後の生活に向けて、疼痛管理や心理的ストレスへの対処方法について具体的な指導を行う。また、利用可能な社会資源や支援システムについての情報提供も重要である。家族を含めた支援体制の確立と、定期的な外来フォローアップを通じて、継続的な支援を提供していく必要がある。
看護問題の明確化
#乳がん手術に伴う神経損傷に関連した右上肢のしびれ感
事例の目次
【ゴードン】乳癌 壮年期 入院10日目 (0012)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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