本事例の要約
定期的な乳がん検診により右乳がんStageⅡAと診断され、右乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を受けた45歳女性の術後10日目の事例。術後経過は良好だが、右上肢の可動域制限により日常生活動作に支障をきたしており、今後の抗がん剤治療への不安が強く、特に中学生の娘たちへの母親としての役割遂行に対する懸念を抱えている事例。
8.役割-関係
A氏は週3日のパート事務職として働きながら、家計を支える役割を担っている。入院前は仕事と家事を両立させ、PTAや学校行事にも積極的に参加するなど、社会的役割を十分に果たしていた。現在は「手術後も今まで通り仕事を続けたい」という強い意向を示しているが、今後開始される抗がん剤治療との両立については具体的な見通しが立っていない状況である。
家族構成は、システムエンジニアの夫47歳、中学3年生の長女15歳、中学1年生の次女12歳との4人暮らしである。キーパーソンは夫であり、仕事の都合で面会時間は限られているものの、毎日電話で連絡を取り合い、精神的なサポートを提供している。夫からは「私が家のことは引き受けるから、治療に専念して」という言葉かけがあり、協力的な姿勢を示している。娘たちも母親の病気を理解し、早期の回復を願っている様子である。
経済状況については、夫の収入に加えてA氏のパート収入が家計を支えている状況であるが、具体的な収入額や医療費の負担状況、医療保険の加入状況などの詳細な情報が不足している。今後の長期的な治療を考慮すると、経済的側面についての詳細な情報収集と、必要に応じた社会資源の活用の検討が必要である。
必要な看護介入として、まず家族関係の維持・強化に向けた支援が重要である。面会時には家族との対話の機会を設け、治療や今後の生活について家族で話し合える環境を整える。特に、中学生の娘たちが母親の病気や治療について抱く不安や疑問に対しても、年齢に応じた説明と心理的支援を提供する必要がある。
また、仕事復帰に向けた具体的な計画立案の支援も重要である。抗がん剤治療のスケジュールを考慮しながら、職場との調整方法や利用可能な制度について情報提供を行う。必要に応じて医療ソーシャルワーカーと連携し、両立支援に関する相談援助を実施する。
経済面については、医療費の見込みや利用可能な医療費助成制度について情報提供を行い、必要に応じて医療ソーシャルワーカーによる相談支援につなげる。特に高額療養費制度や傷病手当金など、利用可能な社会保障制度についての説明が必要である。
継続的な観察が必要な点として、家族関係の変化、特に夫や娘たちとの関係性の変化に注目する必要がある。また、仕事に対する考え方や意向の変化、経済状況に対する不安の有無についても観察を続ける。これらの観察を通じて、必要時に適切な支援を提供できる体制を整える。
退院後の生活に向けて、家族内での役割分担の再調整や、必要な社会資源の活用について具体的な計画を立案する。特に、受験を控えた娘たちへの支援体制の確立や、家事分担の方法について家族で話し合う機会を設けることが重要である。また、定期的な外来受診時にも、家族関係や社会的役割の遂行状況について継続的な評価を行う必要がある。
医療者間の連携も重要であり、主治医、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、外来看護師などと情報共有を図り、包括的な支援体制を構築する。特に、外来化学療法室の看護師との連携を密にし、治療と日常生活の両立に向けた支援を継続する必要がある。
看護問題の明確化
#疾患・治療に伴う身体機能の制限に関連した役割遂行機能の低下
事例の目次
【ゴードン】乳癌 壮年期 入院10日目 (0012)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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