本事例の要約
定期的な乳がん検診により右乳がんStageⅡAと診断され、右乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を受けた45歳女性の術後10日目の事例。術後経過は良好だが、右上肢の可動域制限により日常生活動作に支障をきたしており、今後の抗がん剤治療への不安が強く、特に中学生の娘たちへの母親としての役割遂行に対する懸念を抱えている事例。
5.睡眠-休息
入院前は規則正しい生活を送り、十分な睡眠時間を確保できていたA氏であるが、現在は術後10日目で睡眠時間が4-5時間程度まで減少している。この睡眠時間の減少は、術後の創部痛による身体的ストレスと、今後の抗がん剤治療に対する精神的ストレスが主な要因として考えられる。特に、中学生の娘二人の受験や進学に関する心配が、入眠を妨げる不安要素となっている。
睡眠の質に関して、夜間の疼痛コントロールは必要時の鎮痛剤使用で対応しているが、不安による入眠困難と中途覚醒がみられる。睡眠導入剤の使用は本人が希望していないため行っていないが、日中の断続的な傾眠がみられることから、睡眠-覚醒リズムの乱れが生じている。このような睡眠の質の低下は、術後の回復過程や心理的適応に影響を及ぼす可能性がある。
日中の過ごし方について、術後7-9日目からリハビリテーションを開始し、上肢可動域訓練を実施している。しかし、ボディイメージの変化への適応が困難な状態であり、創部を見ることへの恐怖感が表出されている。これらの心理的ストレスが、休息時間の確保や睡眠の質に影響を与えている可能性がある。
必要な看護介入として、以下の対応が重要である。まず、就寝前の環境調整として、室温や照明、音などの環境因子の最適化を図る。また、就寝前の疼痛評価を適切に行い、必要に応じて鎮痛剤の使用を検討する。精神的な不安に対しては、傾聴と共感的な関わりを通じて不安の軽減を図り、必要に応じて医師と相談の上で睡眠導入剤の使用を検討する。
日中の活動については、リハビリテーションと休息のバランスを考慮した活動計画を立案する必要がある。特に、上肢可動域訓練後の疲労度を評価し、適切な休息時間を確保することが重要である。また、家族との面会時間を効果的に活用し、家族の支援体制について具体的な相談を行うことで、不安の軽減を図ることができる。
今後も以下の点について継続的な観察と評価が必要である。睡眠時間と質の変化、疼痛の程度とその日内変動、不安の内容と程度の変化、日中の活動量と疲労度、家族との関わりの状況について、詳細に観察を続ける。特に、退院後の生活を見据えた睡眠-覚醒リズムの確立と、抗がん剤治療開始に向けた心理的サポートが重要となる。
看護問題の明確化
#疾患・治療に伴う身体的・心理的ストレスに関連した睡眠パターンの混乱
事例の目次
【ゴードン】乳癌 壮年期 入院10日目 (0012)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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