【ゴードン】乳癌 壮年期 入院10日目 (0012)| 11.価値-信念

ゴードン

本事例の要約

定期的な乳がん検診により右乳がんStageⅡAと診断され、右乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を受けた45歳女性の術後10日目の事例。術後経過は良好だが、右上肢の可動域制限により日常生活動作に支障をきたしており、今後の抗がん剤治療への不安が強く、特に中学生の娘たちへの母親としての役割遂行に対する懸念を抱えている事例。

11.価値-信念

A氏の価値観と信念の中核には、家族を第一に考える母親としての強い責任感が存在している。特に中学生の娘たちの教育と成長に対する支援を最優先の価値として位置づけており、この価値観が現在の治療過程における意思決定に大きな影響を与えている。入院時から「手術後も今まで通り仕事を続けたい」という意向を示していたことからも、家庭と仕事の両立を自身の生活の重要な価値として捉えていることが理解できる。

宗教的信仰については特別な信条を持っておらず、医療行為や日常生活における制限や特別な配慮は必要としていない。しかし、母親が40代後半で乳がんに罹患した経験から、定期的な乳がん検診を欠かさず受診してきた経緯があり、健康管理に対する強い意識と予防的な健康行動を重視する価値観を持っている。

意思決定の基準となる価値観として、家族の生活の質を維持することを重視している。これは「早く家に帰って家族の食事を作りたい」「家族に負担をかけたくない」という発言に表れている。自身の病気や治療よりも、家族への影響を優先して考える傾向が強く、このことが治療に専念することへの心理的障壁となっている可能性がある

現在の目標として、治療の完遂と早期の役割復帰を掲げているが、特に抗がん剤治療に対する不安が強く、母親としての役割遂行との両立に悩んでいる状況がある。几帳面な性格から、これまで家族の中心として完璧に役割を果たすことを自己の価値としてきたが、疾患による制限がその価値観との葛藤を生じさせている。

必要な看護介入として、まず患者の価値観を十分に理解し、尊重する姿勢を示すことが重要である。その上で、治療と家族への支援の両立が可能となるような具体的な方策を、患者・家族とともに検討していく必要がある。例えば、娘たちの学業支援について、夫や学校との連携方法を具体的に計画することで、母親としての価値観を満たしながら治療に取り組める環境を整えることができる。

また、完璧主義的な価値観が心理的負担となっている可能性があるため、治療中は家族との役割分担を柔軟に考えられるよう支援することも重要である。家族全体でこの状況を乗り越えていくという新たな価値観の構築を促進することで、治療と家族生活の調和を図ることができる。

今後も継続的な観察が必要な点として、抗がん剤治療開始後の価値観の変化や、家族関係の変化に注目する必要がある。特に、治療による身体的制限が増える中で、患者の価値観がどのように適応していくかを注意深く観察し、必要に応じて支援を提供することが重要である。また、家族全体の価値観や役割認識の変化についても継続的に確認し、必要に応じて家族カウンセリングなどの導入を検討する

患者の明確な目標設定を支援するため、短期的な目標と長期的な目標を分けて考え、段階的な達成が可能となるよう支援することも重要である。特に、治療期間中の具体的な目標設定を通じて、患者が自身の価値観に沿った生活を維持できるよう支援する必要がある。

情報収集が必要な点として、患者の人生における重要な出来事や、それらが現在の価値観形成にどのように影響しているかについて、より詳細な把握が必要である。また、家族メンバー各々が持つ価値観や信念についても、より深い理解が求められる。これらの情報は、今後の支援方針を検討する上で重要な指針となる。

看護問題の明確化

#疾患に伴う役割制限に関連した価値観の葛藤

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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