本事例の要約
非小細胞肺癌(腺癌)Stage IIIBと診断され、化学放射線療法後に維持療法としてペムブロリズマブによる免疫チェックポイント阻害剤治療を受けている患者が、治療3クール目で間質性肺炎を発症し、ステロイドパルス療法を行った事例。11月15日介入(入院11日目)。
5.睡眠-休息
A氏は入院前、22時就寝、6時起床の規則的な睡眠習慣を持ち、概ね8時間の睡眠時間を確保していた。慢性的な咳による中途覚醒はあったものの、睡眠薬を使用せずに休息を取れていたことから、睡眠の質は比較的保たれていたと考えられる。しかし、入院後は複合的な要因により睡眠の質に変化が生じている。まず、環境の変化によるストレスやステロイド(プレドニゾロン)投与による興奮作用から入眠困難が見られている。さらに、夜間の点滴管理や血糖測定による中断、夜間排尿の増加(2~3回)が睡眠の分断を引き起こしている。こうした状況から、現在はゾルピデム5mgを頓用で使用しており、服用することで約6時間程度の連続した睡眠が得られるようになったが、朝方の早期覚醒が見られ、十分な熟眠感は得られていない可能性がある。
A氏は65歳と高齢であることも考慮すべき要素である。加齢に伴い徐々に睡眠構造が変化し、深睡眠(ノンレム睡眠の第3、第4段階)の減少や、中途覚醒の増加、早朝覚醒の傾向が生理的に起こりうる。こうした加齢変化に加えて、入院環境やステロイド療法の影響が重なり、睡眠の質低下が増強されていると考えられる。ただし、ステロイド減量に伴い睡眠の質は徐々に改善傾向にあるという情報は肯定的な変化として評価できる。
日中の過ごし方については詳細な情報が不足しているため、活動と休息のバランスや日中の臥床時間、昼寝の有無と時間帯、日中の覚醒度などの情報収集が必要である。これらは夜間の睡眠に直接影響するため、A氏の一日の生活リズム全体を把握することが重要である。また、入院前の休日の過ごし方についても情報収集し、A氏にとっての快適な休息方法を理解することが必要である。
睡眠障害はA氏の回復過程や全身状態に影響を及ぼす重要な問題である。十分な睡眠は免疫機能の維持や組織修復に必須であり、特に間質性肺炎からの回復を目指すA氏にとって重要である。また、不眠は昼夜のリズム障害や倦怠感、集中力低下を引き起こし、血糖コントロールにも悪影響を及ぼす可能性がある。現在、強化インスリン療法中であることを考慮すると、睡眠障害が血糖値の変動にどのような影響を与えるか観察を続ける必要がある。
A氏の睡眠改善に向けた看護介入としては、まず環境調整が重要である。夜間の点滴やライン管理を工夫し、不必要な中断を最小限にすること、夜間の血糖測定のタイミングを睡眠サイクルに合わせて調整することが考えられる。また、睡眠前のルーティンを確立し、リラックスできる環境づくりを支援することも有効であろう。温かい飲み物の提供や、入眠前の緊張緩和のための会話、必要に応じたリラクゼーション技法の指導なども検討すべきである。
また、日中の活動量を適度に増やすことも夜間の睡眠を促進する上で重要である。A氏は間質性肺炎の影響で活動制限があるものの、症状の改善に伴い、リハビリテーションと連携して日中の活動を計画的に増やしていくことが望ましい。ただし、呼吸困難感が増強するような過度な活動は避け、休息と活動のバランスを取ることが重要である。
薬物療法としては、現在使用しているゾルピデム5mgの効果と副作用(特に高齢者では転倒リスクの増加や認知機能への影響)を継続的に評価する必要がある。また、ステロイド減量に合わせて睡眠の質がどのように変化するか観察することも重要である。プレドニゾロンの投与時間を朝にすることで夜間の興奮作用を最小限にする工夫も継続すべきである。
A氏の几帳面で真面目な性格を考慮すると、睡眠に関する自己管理教育も効果的と考えられる。睡眠日誌をつけてもらい、睡眠パターンを自己認識してもらうことや、良質な睡眠のための生活習慣指導(カフェインの摂取制限、就寝前の電子機器使用制限など)も検討すべきである。
退院後の生活を見据え、家族(特に妻)も含めた睡眠環境の調整についての指導も必要である。A氏の自宅での寝室環境や就寝前の習慣について情報収集し、退院後も良質な睡眠が継続できるよう支援することが重要である。特に、ステロイド減量に伴う不眠症状や、今後予定されている化学療法(ドセタキセル単剤療法)が睡眠に与える影響についても説明し、対処法を指導する必要がある。
看護問題の明確化
#ステロイド治療と入院環境の変化に関連した睡眠パターンの障害
事例の目次
【ゴードン】肺癌 化学療法中に副作用(0020)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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