本事例の要約
非小細胞肺癌(腺癌)Stage IIIBと診断され、化学放射線療法後に維持療法としてペムブロリズマブによる免疫チェックポイント阻害剤治療を受けている患者が、治療3クール目で間質性肺炎を発症し、ステロイドパルス療法を行った事例。11月15日介入(入院11日目)。
3.排泄
A氏の排泄状況について、排尿は入院前1日7〜8回で、夜間排尿は1〜2回程度であった。入院後は点滴による水分負荷とステロイド投与の影響により、排尿回数は1日8〜10回と増加傾向にある。特に夜間排尿が2〜3回と増加しており、これが睡眠の質低下の一因となっていると考えられる。排尿量については具体的な記載がないため、1回排尿量や1日総排尿量の測定が必要である。ステロイド療法中は水分貯留のリスクがあり、また高血糖による浸透圧利尿も生じる可能性があるため、排尿パターンと量の継続的なモニタリングが重要である。排尿の性状については異常の記載がなく、血尿や混濁などはないと推測される。排尿は自立しており、バルーンカテーテルは使用していない。
排便については、入院前は1日1回の規則的な習慣があり、便秘や下痢の問題はなく下剤使用もなかった。しかし、入院後は活動量の低下とオピオイド系鎮咳薬の使用により軽度の便秘傾向がみられている。現在は酸化マグネシウム330mg 1日3回の内服を行っており、下剤使用により1日1回の排便が得られるようになったが、便の硬さは硬めでブリストルスケール2〜3程度である。便の量については具体的な記載がないため、評価が必要である。65歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う腸管運動の低下も便秘傾向に影響している可能性がある。また、間質性肺炎による活動制限も腸蠕動低下の一因となっていると考えられる。
In-outバランスについては詳細な記録がないが、点滴による水分負荷と、ステロイド投与による水分貯留の可能性、高血糖による浸透圧利尿の可能性を考慮すると、水分バランスの評価が必要である。特にステロイド減量時に浮腫や体重の変化がないか観察することが重要である。毎日の体重測定と、必要に応じて出入力のバランスチェックを行うことが望ましい。
排泄に関連した食事・水分摂取状況については、現在糖尿病食1600kcal(塩分6g制限)が提供されており、全量摂取できている。水分摂取量は明示されていないが、排尿回数の増加から十分量が確保されていると推測される。しかし、便秘傾向があることから、水分摂取量と食物繊維の摂取量についてより詳細な評価が必要である。特に、食物繊維の摂取量増加と十分な水分摂取(1日1500〜2000mL程度)を促すことが便秘改善に有効と考えられる。
安静度は、間質性肺炎による呼吸困難のため、長距離歩行時や階段昇降時に息切れを認めるものの、病棟内の平地歩行は自立しており、トイレまでの移動も問題なく行えている。夜間は点滴ラインがあるため、ポータブルトイレを使用することもあるが、日中はトイレを使用している。この程度の活動レベルであれば、通常は便秘を促進するほどの活動制限ではないが、入院前と比較すると活動量は明らかに低下しており、これが便秘傾向の一因となっていると考えられる。間質性肺炎の改善に伴い、徐々に活動量を増やしていくことが便秘改善にも寄与すると考えられる。
腹部症状については、膨満感や腸蠕動音に関する記載がないため、評価が必要である。便秘傾向があることから、腹部膨満感の有無、腸蠕動音の頻度や性状、腹部不快感の有無などを定期的に評価することが重要である。
腎機能に関する血液データでは、BUN 19mg/dL(基準値8-20)、Cre 0.9mg/dL(基準値0.6-1.1)、eGFR 72mL/min/1.73m²(基準値≥60)と、いずれも基準値内であるが、eGFRは年齢相応の軽度低下を示している。これは65歳という年齢による生理的な腎機能低下と考えられるが、シスプラチンによる化学療法歴があることから、薬剤性腎障害の既往が影響している可能性もある。現時点では明らかな腎機能障害はないが、今後の抗がん剤治療再開時には腎機能への影響を注意深くモニタリングする必要がある。
A氏の排泄パターンの特徴として、夜間頻尿と軽度の便秘傾向が挙げられる。夜間頻尿については、ステロイド減量に伴い徐々に改善する可能性があるが、夜間の水分摂取のタイミングを調整する(就寝前2時間は控えめにするなど)ことで症状の軽減が期待できる。便秘については、現在の下剤使用で1日1回の排便は確保されているが、便性状の改善が望ましい。食物繊維の摂取増加、水分摂取量の確保、可能な範囲での活動量増加、腹部マッサージ指導などの非薬物的介入も併用することが有効と考えられる。
今後の看護介入としては、①排尿・排便の回数・量・性状の継続的モニタリング、②便秘改善のための食事・水分摂取指導、③活動量増加の支援、④下剤の効果と副作用の評価、⑤腹部症状の定期的評価が重要である。また、退院に向けて、自宅での排泄管理について具体的な指導を行うことも必要である。特に、ステロイド減量に伴う水分バランスの変化や、インスリン療法のコントロールによる多尿・頻尿の変化などを予測し、それに応じた対応方法を指導することが重要である。
看護問題の明確化
#活動制限とオピオイド系鎮咳薬使用に関連した便秘傾向
#ステロイド療法と点滴による水分負荷に関連した夜間頻尿
事例の目次
【ゴードン】肺癌 化学療法中に副作用(0020)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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