【ゴードン】肺癌 化学療法中に副作用(0020)| 6.認知-知覚

ゴードン

本事例の要約

非小細胞肺癌(腺癌)Stage IIIBと診断され、化学放射線療法後に維持療法としてペムブロリズマブによる免疫チェックポイント阻害剤治療を受けている患者が、治療3クール目で間質性肺炎を発症し、ステロイドパルス療法を行った事例。11月15日介入(入院11日目)。

6.認知-知覚

A氏の意識レベルは清明であり、日常会話や意思疎通に問題はなく、治療の説明も十分理解できている。認知機能は正常であり、性格は几帳面で真面目、積極的に自分の病気や治療について知識を得ようとする姿勢が見られる。このことから、情報処理能力や判断力は保たれていると考えられる。65歳という年齢を考慮しても、現時点では認知機能の低下を示す所見は認められない。

感覚機能については、視力は軽度の老視があり、新聞や書類を読む際には老眼鏡を使用している。遠方視力は問題なく、日常生活に支障はない。白内障の初期所見を指摘されているが現在は経過観察中である。聴力については年齢相応であり、通常の会話レベルでは問題なく聞き取れているが、騒がしい環境では聞き取りにくさを感じることがある。これらの視覚・聴覚の変化は65歳という年齢を考慮すると、生理的な加齢変化の範囲内と考えられる。ただし、白内障の進行や聴力の変化については、今後も継続的な観察と評価が必要である。

知覚に関しては、両下肢末端に軽度のしびれ感があり、糖尿病による末梢神経障害の初期症状と考えられる。痛覚・温度覚・触覚などの表在感覚は保たれているが、振動覚がやや低下している。上肢の感覚は正常である。糖尿病歴が8年であることを考慮すると、末梢神経障害の発症は病態経過として矛盾しない。現在はステロイド治療による高血糖があり、インスリン療法が導入されているが、血糖コントロールの状態が末梢神経障害に及ぼす影響についても注意深く観察する必要がある。

A氏の心理状態については、間質性肺炎の発症により免疫療法が中断されたことで、「癌が進行するのではないか」という不安を抱えていることが確認されている。症状の改善に伴い精神的には落ち着きを取り戻しつつあるが、「この先の治療はどうなるのだろうか」という将来への不確実性に悩んでいる状況である。几帳面で自己管理能力が高いという性格特性から、病気と向き合い積極的に取り組む姿勢がある一方で、不確かな状況に対する不安も生じやすい可能性がある。

A氏はインスリン療法については「間違えたら危険だから、しっかり覚えてから自分でやりたい」と慎重な態度を示している。これは認知機能が保たれており、自分の状態を正確に把握し、安全に配慮した判断ができていることを示している。また、妻からは「主人は心配させないように我慢するタイプ」という情報もあり、A氏が不安や心配事を表出せずに抱え込む可能性があることに注意が必要である。

今後の看護介入としては、まず認知機能と感覚機能の定期的な評価を継続することが重要である。高齢者であること、ステロイド治療中であること、血糖値の変動があることなどを考慮し、意識レベルや認知機能の変化がないか注意深く観察する必要がある。特に、ステロイド治療による精神症状(興奮、うつ状態など)や、血糖値の急激な変動による意識レベルの変化に注意を払うべきである。

感覚・知覚機能については、糖尿病性末梢神経障害の進行予防のために血糖コントロールの重要性をA氏に教育するとともに、しびれの範囲や程度の変化を定期的に評価することが必要である。また、足部の観察方法や保護方法についての指導も併せて行うことが望ましい。老視や聴力低下に対しては、コミュニケーションの際に適切な環境(明るさの調整、騒音の少ない環境での会話など)を整えることが重要である。

不安に対する介入としては、定期的な声かけや傾聴の機会を意図的に設け、A氏が抱える不安や疑問を表出できるよう支援することが重要である。特に妻からの情報にあるように、A氏は不安を表出せずに抱え込む傾向があるため、表情や言動の細かな変化に注意を払い、非言語的コミュニケーションからも心理状態を把握するよう努める必要がある。また、治療の見通しや今後の計画について、医師と連携して適切な情報提供を行い、不確実性による不安を軽減することも重要である。

インスリン療法に関する教育については、A氏の理解度や手技の習得状況を段階的に評価しながら進めることが適切である。認知機能が保たれていることを活かし、A氏の几帳面さや自己管理能力の高さを肯定的に評価しつつ、自己効力感を高められるよう支援することが重要である。視力に配慮したインスリン注射器の選択や、老視に対応した説明資料の提供なども検討すべきである。

また、家族(特に妻)との連携も重要である。妻はA氏の性格をよく理解しており、退院後の支援者となることが期待される。家族に対しても、A氏の認知・感覚機能の状態や不安の表出状況について情報共有を行い、協力して支援していく体制を整えることが望ましい。

以上のアセスメントから、A氏の認知・知覚機能は現在保たれているが、疾患や治療に関連した変化の可能性や不安の存在があり、継続的な観察と適切な看護介入が必要な状態であると判断される。

看護問題の明確化

#肺癌治療の中断と予後の不確実性に関連した不安

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この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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