本事例の要約
非小細胞肺癌(腺癌)Stage IIIBと診断され、化学放射線療法後に維持療法としてペムブロリズマブによる免疫チェックポイント阻害剤治療を受けている患者が、治療3クール目で間質性肺炎を発症し、ステロイドパルス療法を行った事例。11月15日介入(入院11日目)。
2.栄養-代謝
A氏は入院前、1日3食を規則的に摂取していたが、ペムブロリズマブ投与後の倦怠感や食欲不振により、食事量は全体の約7割程度に減少していた。しかし、現在はステロイド投与による食欲亢進の影響もあり、入院後提供されている糖尿病食1600kcal(塩分6g制限)を全量摂取できている状態である。間質性肺炎の症状改善に伴い、咳嗽による食事中断もなくなり、食事摂取状況は良好である。水分摂取量については詳細な記載がないが、点滴による水分負荷の影響で排尿回数が増加していることから、水分バランスは保たれていると推測される。ただし、ステロイド療法中の水分貯留リスクや高血糖に伴う脱水リスクを考慮し、水分摂取量と排泄量の継続的なモニタリングが必要である。
食事に関する嗜好や食物アレルギーについての具体的な情報は記載されていないため、退院後の食事指導に向けて情報収集が必要である。特に、2型糖尿病があり現在インスリン療法を受けていることから、食事内容と血糖値の関連について患者教育を行う必要があり、そのためにも嗜好や食習慣を把握することが重要である。
身体状況として、身長170cm、体重58kg、BMI 20.1と標準体型である。しかし、肺癌治療と間質性肺炎の影響で体重減少のリスクがあるため、定期的な体重測定によるモニタリングが必要である。A氏の基礎代謝量は65歳男性としてハリス・ベネディクト式で算出すると約1350kcal/日と推定される。現在の身体活動レベルは、間質性肺炎による労作時呼吸困難のため低下しており、連続歩行は100m程度が限界である。このことから、身体活動レベルは「低い〜やや低い」と判断され、必要エネルギー量は約1600〜1800kcal/日程度と推計される。現在提供されている1600kcalの食事は、活動量を考慮するとほぼ適切なエネルギー量と考えられるが、間質性肺炎の改善とともに活動量が増加した場合には、必要エネルギー量の再評価が必要となる。
嚥下機能については問題なく、むせや誤嚥の既往はない。口腔内の状態に関する具体的な記載はないが、抗癌剤治療やステロイド療法による口腔粘膜炎や口腔カンジダ症のリスクがあるため、定期的な口腔アセスメントが必要である。特にステロイド長期使用による免疫抑制状態では、口腔内感染のリスクが高まるため、口腔ケアの指導と実施が重要である。
嘔吐・吐気については、入院時の主訴にはなく、現在も記載されていないことから、現時点では問題ないと考えられる。しかし、過去に化学療法(シスプラチン+ペメトレキセド)を受けており、今後再開される可能性のあるドセタキセル単剤療法でも、嘔吐・吐気のリスクがあるため、予防的な制吐剤の使用と対処法の指導が必要である。
皮膚の状態については具体的な記載がないが、ステロイド長期投与による皮膚脆弱化や皮下出血、浮腫のリスクがあるため、定期的な皮膚アセスメントが必要である。特に安静時間が長くなることによる褥瘡発生リスクや、ステロイドによる創傷治癒遅延リスクも考慮する必要がある。褥瘡の有無については明示されていないが、A氏は移動や体位変換が自立しており、現時点での褥瘡リスクは低いと判断できる。ただし、全身状態の変化に伴いリスク評価を継続する必要がある。
血液データを評価すると、Alb 3.6g/dL(基準値3.8-5.2)とTP 6.7g/dL(基準値6.5-8.2)の値から、軽度の低アルブミン血症がみられるが、総タンパク値は正常範囲内である。これは肺癌と間質性肺炎による炎症反応や、化学療法の影響による栄養状態の軽度低下を示唆している。赤血球系データでは、RBC 4.3×10⁶/μL(基準値4.0-5.5)、Hb 12.5g/dL(基準値13.0-17.0)、Ht 40.2%(基準値40.0-50.0)と、ヘモグロビン値がわずかに低値を示している。これは慢性疾患に伴う貧血や、化学療法の影響と考えられる。電解質では、Na 139mEq/L(基準値135-145)とK 4.3mEq/L(基準値3.5-5.0)は正常範囲内であり、電解質バランスは保たれている。
特に注目すべきは血糖コントロールの状況である。空腹時血糖132mg/dL(基準値70-109)、随時血糖156mg/dL(基準値<140)、HbA1c 6.9%(基準値4.6-6.2)と、いずれも基準値より高値を示している。入院時にはステロイド投与による高血糖(随時血糖値最高340mg/dL)を認め、強化インスリン療法が導入された。現在はステロイド減量に伴い血糖値も改善傾向にあるが、依然としてインスリン管理が必要な状態である。今後、ステロイドの漸減に伴う血糖値の変動が予測されるため、頻回な血糖測定と適切なインスリン用量調整が必要である。また、退院に向けて血糖自己測定とインスリン自己注射の手技獲得が重要である。
脂質代謝に関するデータ(TG、TC)は提供されておらず、2型糖尿病患者では脂質異常症を合併するリスクが高いため、これらの評価も必要と考えられる。
A氏の栄養-代謝パターンにおける主な問題点は、ステロイド治療に伴う高血糖と、低アルブミン血症に示される軽度の栄養状態低下である。今後の看護介入としては、①定期的な血糖測定と記録、②食事内容と血糖値の関連についての患者教育、③インスリン自己注射の手技指導、④必要栄養素(特にタンパク質)の適切な摂取促進、⑤口腔ケアの実施と指導が重要である。また、ステロイド減量に伴う食欲の変化や血糖値の変動についても注意深く観察し、必要に応じて栄養指導や薬剤調整を行うことが必要である。退院後の継続的な栄養管理に向けて、患者と家族への具体的な食事指導と記録方法の教育が重要となる。
看護問題の明確化
#ステロイド療法に関連した高血糖状態
#肺癌と間質性肺炎に関連した軽度の低アルブミン血症
#ステロイド長期投与に関連した皮膚統合性のリスク
事例の目次
【ゴードン】肺癌 化学療法中に副作用(0020)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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