【ゴードン】肺癌 化学療法中に副作用(0020)| 8.役割-関係

ゴードン

本事例の要約

非小細胞肺癌(腺癌)Stage IIIBと診断され、化学放射線療法後に維持療法としてペムブロリズマブによる免疫チェックポイント阻害剤治療を受けている患者が、治療3クール目で間質性肺炎を発症し、ステロイドパルス療法を行った事例。11月15日介入(入院11日目)。

8.役割-関係

A氏は定年まで建設会社の現場監督として勤務していたが、現在は退職して年金生活を送っている。現場監督という立場は、工事の進行管理や作業員の統括、安全管理など責任ある役割を担うものであり、リーダーシップや決断力、几帳面さが求められる職業であったと考えられる。A氏の「几帳面で真面目」という性格特性は、こうした職業的背景により培われた可能性がある。また、長年にわたり現場監督として働いてきたことは、A氏のアイデンティティの重要な構成要素となっていたことが推測される。

現在、退職して年金生活を送っているA氏にとって、職業上の役割喪失が生じている。65歳という年齢は社会的にも退職という役割移行を経験する時期であり、A氏は職業人としての役割から退職者という新たな役割への適応過程にあると考えられる。しかし、退職後の新たな社会的役割や地域での活動状況に関する詳細な情報は不足しているため、退職前後での役割変化や新たな生きがいの有無についての情報収集が必要である。

家族構成としては、A氏は妻(62歳)との二人暮らしであり、長男(38歳)と長女(35歳)は独立して別世帯である。キーパーソンは妻であり、入院中も頻繁に面会に訪れている。妻は「大丈夫よ、良くなってきているんだから」とA氏を励ましており、夫婦間の関係性は良好であることが窺える。また、妻はA氏の性格をよく理解しており、看護師に「主人は心配させないように我慢するタイプ」と伝えるなど、A氏の代弁者としての役割も果たしている。

長男と長女は週末を中心に訪問しており、家族全体でA氏の回復を支援する姿勢を示している。このことから、親子関係も良好であると推測される。しかし、長男・長女が具体的にどのような役割を担っているか、退院後の支援体制としてどのような協力が得られるかについては詳細な情報がない。また、家族間のコミュニケーションパターンや意思決定プロセスについても十分な情報がないため、さらなる情報収集が必要である。

経済状況については、A氏は退職して年金生活を送っているとの情報があるが、具体的な経済状況や医療費の負担感については明記されていない。肺癌の治療は長期にわたり、高額な医療費がかかる可能性があるため、経済的な状況や医療保険の加入状況、高額療養費制度の利用状況などについての情報収集が必要である。また、間質性肺炎の発症による入院期間の延長や、今後予定されている化学療法に伴う費用負担についても考慮する必要がある。

A氏の役割関係について重要なのは、疾患や治療による役割変化の可能性である。肺癌診断や間質性肺炎の発症により、A氏は「患者」という役割を担うこととなり、治療や療養生活の中で新たな役割適応が求められている。特に、自己管理能力の高いA氏にとって、看護師管理となっている現状や身体機能の制限は、自律性や役割遂行の感覚に影響を与えている可能性がある。

また、家族関係においては、A氏が家庭内でどのような役割を担っていたか、疾患によりその役割遂行に変化が生じているかについての情報が不足している。特に、妻との二人暮らしの中で、家事分担や意思決定など日常生活における役割分担がどのようになっていたのか、また疾患により役割調整が必要となっているのかを把握することが重要である。

今後の看護介入としては、まず家族を含めた詳細な情報収集を行い、A氏の役割関係の全体像を把握することが重要である。具体的には、家族内での役割、退職前後での役割変化、社会的な役割喪失の受け止め方、経済的な側面を含めた情報収集が必要である。

また、A氏の自律性を尊重し、治療やケアへの参加を促進することで、「患者」としての役割にもポジティブな意味づけができるよう支援することが重要である。具体的には、インスリン自己注射や血糖測定の手技獲得を段階的に支援し、自己管理能力を活かせる場面を増やしていくことが有効であろう。

家族関係においては、妻を中心とした家族の支援体制を強化し、A氏と家族が協力して疾患管理に取り組めるよう支援することが重要である。特に、A氏が「心配させないように我慢するタイプ」であることを考慮し、家族間のオープンなコミュニケーションを促進する介入が必要である。また、退院後の生活を見据え、家族内での役割調整や退院後の支援体制について具体的に話し合う機会を設けることも重要である。

経済面については、医療ソーシャルワーカーと連携し、必要に応じて利用可能な社会資源や支援制度の情報提供を行うことが望ましい。特に、間質性肺炎の発症により当初の治療計画に変更が生じている状況を考慮し、今後の治療方針や経済的負担について情報提供を行い、A氏と家族が見通しを持って対応できるよう支援することが重要である。

加齢に伴う役割変化も考慮すべき要素である。65歳という年齢は、老年期への移行期であり、職業役割の喪失だけでなく、身体機能の変化や社会的役割の再構築など、多様な発達課題に直面する時期である。A氏の場合、退職による役割喪失と肺癌診断というライフイベントが重なり、役割適応の課題がより複雑になっている可能性がある。このような発達的視点から、A氏の役割適応を支援することも重要である。

観察を続けるべき点としては、家族の面会状況や関わり方の変化、A氏自身の役割認識の変化、治療や療養生活における自律性の表出などが挙げられる。特に、治療の進行や身体状態の変化に伴い、A氏の役割遂行能力や家族関係にも変化が生じる可能性があるため、継続的な評価と支援が必要である。

看護問題の明確化

#疾患の治療と活動制限に関連した役割遂行能力の変化

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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