本事例の要約
右大腿骨転子部骨折後、γネイル固定術を施行し、術後3週間が経過した85歳女性の事例。骨粗鬆症、高血圧症、高脂血症の既往があり、術後のリハビリテーションは概ね順調に進んでいるものの、ADLに一部介助を要する状態。本人は早期の茶道教室再開を希望しているが、家族は安全な在宅復帰を重視しており、目標設定に違いがみられる事例。介入は術後3週間目である。
5.睡眠-休息
A氏の睡眠-休息の状況について、入院前は21時就寝、6時起床と規則正しい生活リズムが確立されており、睡眠に関する問題は報告されていなかった。しかし、術後3週間が経過した現在、21時に床につくものの入眠までに1時間程度を要し、夜間の排尿や疼痛により1-2回の中途覚醒がみられ、再入眠にも時間を要する状態である。これは高齢者の睡眠特性として睡眠の質が低下しやすい傾向に加え、入院による環境の変化や術後の不安感が影響していると考えられる。
不眠時の頓用薬としてゾルピデム5mgが処方されているが、本人の希望で最小限の使用にとどめている。この背景には薬剤への依存を避けたい意向があると推測される。良質な睡眠の確保は術後の回復や日中の活動性維持に重要であるが、睡眠薬の使用は、夜間の覚醒時の意識レベル低下や転倒リスクの増加につながる可能性があるため、非薬物的な介入を優先して検討する必要がある。特にA氏は夜間のポータブルトイレ使用があり、転倒リスク要因が重複することから、睡眠薬の使用については慎重な判断が求められる。
日中の過ごし方については、午後2時頃から1時間程度の臥床休息を取っているが、これは術後の疲労や軽度の貧血(ヘモグロビン値11.2g/dL)の影響と考えられる。入院前は茶道教室の運営や週1回の読経会への参加など、活動的な生活を送っていたことから、現在の活動制限が睡眠-覚醒リズムに影響を与えている可能性がある。
必要な看護介入として、まず睡眠を妨げる要因の軽減が重要である。夜間の排尿については、夕方以降の水分摂取量の調整や就寝前の排尿を習慣化すること、ポータブルトイレの位置や照明の工夫により、中途覚醒時の覚醒度を抑える工夫が必要である。また、疼痛に関しては、就寝前の体位調整や疼痛時の対処方法について具体的な指導を行う必要がある。疼痛が出た場合は医師に報告し、頓服薬の処方を検討してもらうことも重要である。
入眠を促進するための環境調整として、室温や湿度の管理、適度な運動や日光浴による概日リズムの調整、就寝前のリラックス法の指導なども有効である。
日中の活動については、リハビリテーションの時間帯や強度を考慮しながら、過度な疲労を避けつつ適度な活動量を確保する必要がある。また、昼寝の時間を13-14時の間に限定し、30分程度とすることで、夜間睡眠への影響を最小限に抑える工夫が必要である。
継続的な観察項目として、睡眠時間、入眠までの時間、中途覚醒の頻度と要因、日中の活動量と疲労度、睡眠薬の使用状況などをモニタリングする必要がある。また、睡眠障害が続く場合は、不安や抑うつ症状との関連性についても評価する必要がある。
退院に向けては、自宅での睡眠環境の整備や、日中の活動計画の立案が重要となる。特に、茶道教室再開後の活動と休息のバランスについて、本人と家族を交えて具体的な検討が必要である。
看護問題の明確化
# 入院環境の変化・術後の不安・夜間の軽度頻尿に関連した睡眠障害
事例の目次
【ゴードン】大腿骨転子部骨折 在宅復帰を目指す(0004) | 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK
コメント