【ゴードン】肝硬変 アルコール依存症(0016) | 5.睡眠-休息

ゴードン

本事例の要約

アルコール性肝硬変による腹水貯留、全身浮腫の増強に加え、血液検査で肝機能の悪化を認めたため緊急入院となった。長年の飲酒習慣があり、これまでも禁酒指導を受けていたが継続できず、今回は黄疸の出現と食欲低下、倦怠感の増強により日常生活に支障をきたすようになったため入院加療となった事例。介入日は1月23日(入院2日目)である。

5.睡眠-休息

入院前は午後11時就寝、午前6時起床の7時間の睡眠時間を確保していたが、腹水による腹部膨満感や下肢浮腫によるだるさにより、体動が増加し熟眠感が得られにくい状態が続いていた。睡眠薬の使用はなく、日中活動への支障は見られなかったことから、睡眠の質の低下は比較的軽度であったと考えられる。

しかし入院後は、環境の変化に加え、腹部症状の増悪が睡眠に大きな影響を及ぼしている。21時頃からの臥床にもかかわらず入眠困難を訴え、利尿薬投与による夜間排尿のための中途覚醒も頻回となっている。そのため、ブロチゾラム0.25mgを就寝前に使用している状況である。この睡眠障害は、疾患の進行に伴う身体症状の悪化と、入院による生活環境の変化が複合的に影響していると考えられる。

日中の過ごし方に関しては、強い疲労感により臥床して過ごすことが多く、活動性が著しく低下している。これは肝機能障害による倦怠感に加え、夜間の睡眠の質の低下が影響していると推測される。また、腹水による腹部膨満と下肢浮腫により、移動時の負担が大きいことも活動量減少の要因となっている。

63歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う睡眠の質の変化(浅睡眠の増加、中途覚醒の増加)も基礎にあると考えられるが、現在の睡眠障害は疾患による身体症状が主たる原因である。特に腹水による腹部膨満感は、体位変換時の不快感を引き起こし、安楽な睡眠体位の確保を困難にしている。

看護介入としては、まず睡眠環境の調整が重要である。病室の温度調整(室温26-28℃)、適度な採光と遮光の管理、不必要な物音の軽減などの環境整備を実施する。また、腹部膨満感や下肢浮腫による不快感を軽減するために、就寝時の体位調整(ファーラー位30度程度)や下肢挙上の工夫を行う。

夜間の排尿に関しては、転倒リスクが高いため、必ずナースコールを使用するよう指導を継続する。また、夜間のトイレ歩行時は、手すりの使用と看護師の付き添いを徹底し、安全確保に努める。

日中の活動に関しては、過度の臥床を避け、適度な活動と休息のバランスを図ることが重要である。病状が安定してきた段階で、リハビリテーション科と連携し、段階的な活動量の増加を検討する。また、日中の覚醒を促すために、可能な範囲での日光浴や軽い運動(ベッドサイドでの足踏み運動など)を取り入れることも検討する。

睡眠薬の使用に関しては、肝機能障害による薬物代謝能の低下があることから、投与量や副作用の観察を特に慎重に行う必要がある。使用中のブロチゾラムは主に肝臓で代謝される超短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、肝機能障害患者では血中濃度が上昇しやすい。そのため、持ち越し効果による日中の傾眠や、ふらつき、見当識障害、記憶障害などの副作用が出現するリスクが高い。また、腹水による体重増加と浮腫があることから、薬物分布容積の変化も考えられ、通常より効果が増強される可能性がある。さらに、高齢であることも副作用のリスクを高める要因となる。これらの要因に加え、夜間頻尿による起き上がり動作が必要な状況であることから、転倒リスクは特に高い状態にある。そのため、夜間の見当識状態、ふらつきの有無、起床時の覚醒状態について、注意深く観察を継続する必要がある。

今後の継続的な観察と評価においては、睡眠時間や睡眠の質に関する変化を注意深く観察する必要がある。具体的には入眠時間、中途覚醒の頻度、熟眠感などの変化について継続的に確認していく。また、日中の活動量と疲労感の程度についても評価を続け、腹部膨満感や下肢浮腫が睡眠に与える影響についても観察を怠らない。さらに、睡眠薬の効果と副作用の有無について慎重にモニタリングを行うとともに、夜間の排尿回数とその際の安全な移動の確保についても継続的な観察と評価が必要である。

また、妻の面会時に、入院前の睡眠習慣や生活リズムについて、より詳細な情報収集を行うことで、退院後の睡眠環境調整に活かすことができる。

看護問題の明確化

#肝硬変に伴う身体症状(腹部膨満感、下肢浮腫、夜間頻尿)に関連した睡眠パターンの障害

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

看護の攻略部屋wiki

看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK


コメント

タイトルとURLをコピーしました