【ゴードン】肝硬変 アルコール依存症(0016) | 8.役割-関係

ゴードン

本事例の要約

アルコール性肝硬変による腹水貯留、全身浮腫の増強に加え、血液検査で肝機能の悪化を認めたため緊急入院となった。長年の飲酒習慣があり、これまでも禁酒指導を受けていたが継続できず、今回は黄疸の出現と食欲低下、倦怠感の増強により日常生活に支障をきたすようになったため入院加療となった事例。介入日は1月23日(入院2日目)である。

8.役割-関係

A氏は63歳の男性で、以前は建設会社で現場監督として働いていたが、体調不良により1年前に退職している。長年にわたる職業人としての役割を喪失した状態であり、退職後の新たな社会的役割の確立ができていない可能性がある。特に、男性としての社会的地位や経済的貢献者としての自己認識が低下していることが予測される。このような役割の喪失感が、アルコール依存の悪化や治療への消極的な姿勢に影響している可能性があるため、退職後の日常生活の過ごし方や趣味活動などの情報収集が必要である。

家族構成としては妻と二人暮らしであり、キーパーソンは妻である。妻は毎日面会に訪れており、A氏の健康状態に強い関心と不安を示している。「主人の体のことを考えると眠れない日もあります」と涙ぐみながら話す様子から、妻の精神的負担が大きいことがわかる。また、妻はこれまでも禁酒を勧めてきたが成功していないことに対して自責の念を抱いており、「今回こそは本当に酒を止めてほしい。私にできることは何でもしますから」と発言していることから、介護者としての役割を強く自覚していることがうかがえる。しかし、この状況は妻への過度な負担となっている可能性があり、妻自身のケアや支援システムの構築も重要である。

A氏本人は「妻に迷惑をかけて申し訳ない。でも、家に帰ればなんとかなる」と話しており、病状の深刻さに対する認識が不十分であることがうかがえる。このように現実認識にずれがある状態で退院すると、再び同様のパターンを繰り返す可能性が高い。また、「早く良くなって帰りたい」という発言は焦りを示しているが、具体的な生活改善への意欲は乏しく、夫婦間での役割調整や将来的な生活設計について十分な話し合いができていない可能性がある。

経済状況については具体的な情報が不足しているが、A氏が1年前に退職していることから、収入源として年金や退職金、または傷病手当金などを受給している可能性がある。長期的な治療を要する疾患であるため、経済的基盤の安定性を確認することが重要である。特に、医療費や介護費用の負担、生活費の確保などについての情報収集が必要である。

看護介入としては、まず、A氏に対して病状の理解を深めるための教育的アプローチが必要である。アルコール性肝硬変の重症度と禁酒の重要性について繰り返し説明し、現実的な認識を促す必要がある。同時に、妻も含めた家族カンファレンスを設定し、退院後の生活における役割分担や具体的な対処法について話し合う機会を設けることが重要である。

また、地域の断酒会や支援グループへの参加を促すことで、A氏の社会的役割の再構築を支援することができる。同様の経験を持つ仲間との交流は、禁酒継続の動機づけとなり得る。加えて、アルコール依存症専門医との連携を強化し、退院後も継続的な支援が受けられる体制を整えることが重要である。

妻に対しては、介護負担の軽減を図るための支援策として、地域包括支援センターや保健師との連携を検討する。また、妻自身のストレスマネジメントや休息の確保についても助言し、介護者としての妻の健康維持をサポートする必要がある。

今後も、入院中のA氏と妻の言動や関係性を注意深く観察し、必要に応じて医療ソーシャルワーカーなどの多職種連携による支援を検討していくべきである。特に、退院に向けては禁酒継続のための環境調整が重要であり、夫婦関係を理解した上での介入が求められる。高齢期に向かう夫婦としての将来的な生活設計についても話し合いの機会を設け、互いに支え合える関係構築をサポートしていく必要がある。

看護問題の明確化

#アルコール性肝硬変に関連した役割機能の障害
#アルコール依存と疾患管理の困難さに関連した家族の対処能力の緊張

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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