本事例の要約
アルコール性肝硬変による腹水貯留、全身浮腫の増強に加え、血液検査で肝機能の悪化を認めたため緊急入院となった。長年の飲酒習慣があり、これまでも禁酒指導を受けていたが継続できず、今回は黄疸の出現と食欲低下、倦怠感の増強により日常生活に支障をきたすようになったため入院加療となった事例。介入日は1月23日(入院2日目)である。
看護計画#1
看護問題
#アルコール性肝硬変に関連した急性増悪のリスク状態
長期目標
退院までに肝機能の安定化が図られ、退院後の自己管理方法を理解し実践できる
短期目標
1週間以内に腹水・浮腫が軽減し、症状の安定が図られる
2週間以内に肝機能検査値(AST、ALT、T-Bil、アンモニア値)の改善傾向が見られる
入院中に禁酒の重要性を理解し、断酒継続への意欲を表明できる
退院前に食事・水分制限の必要性を理解し、具体的な管理方法を説明できる
≪O-P≫観察計画
・ 意識レベルの変化や見当識障害の有無を1日3回以上評価する
・ 血圧・脈拍・呼吸数の変動を1日6回測定し、特に低血圧や頻脈の出現に注意する
・ 腹部膨満感の程度を患者の主観的評価(VASスケール等)で毎日確認する
・ 腹囲測定を毎日同一条件(時間・体位)で実施し、変化を記録する
・ 両下肢の浮腫の程度をグレード評価(0~4+)で1日1回確認する
・ 体重測定を毎日朝食前に実施し、前日との変化を確認する
・ 尿量と飲水量のバランスを1時間ごとに記録し、24時間の出納を評価する
・ 食事摂取量を毎食記録し、栄養摂取状況を評価する
・ 排便の有無とその性状、回数を確認する
・ 黄疸の程度を結膜および皮膚の観察によって評価する
・ 肝性脳症の初期症状(睡眠覚醒リズムの乱れ、簡単な計算ミス、不適切な行動)の出現を観察する
・ 血液検査結果(肝機能検査、血清アルブミン、アンモニア値、電解質)の推移を確認する
≪T-P≫援助計画
・ 安静時の体位は半座位(30~45度)とし、腹水による横隔膜圧迫を軽減する
・ 医師の指示に基づき、塩分制限食(6g/日)の摂取を支援する
・ 水分摂取量は1日1000ml以下に制限し、1日分の飲水を容器に準備して可視化する
・ 腹部膨満による不快感軽減のため、腹部の圧迫を避ける衣類選択を支援する
・ 下肢浮腫に対して、15度程度の挙上を促し、定期的な体位変換を支援する
・ 浮腫部の皮膚統合性を維持するためのスキンケアを1日2回実施する
・ 利尿薬投与後1時間は安静を促し、急激な血圧低下に備える
・ 移動時は転倒予防のため、看護師が付き添い安全確保を行う
・ 睡眠障害に対して、就寝前の環境調整(室温、照明、音)を行う
・ 疲労度に応じた活動と休息のバランスを調整し、過度な疲労を防止する
・ 便秘予防のため、医師の指示に基づき緩下剤の内服を確実に実施する
・ 肝性脳症予防のため、過度な利尿を避け、電解質バランスの維持を図る
≪E-P≫教育・指導計画
・ アルコール性肝硬変の病態と進行過程について、視覚的資料を用いて説明する
・ 禁酒の重要性と断酒継続のための具体的な対処法について指導する
・ 塩分制限食の必要性と具体的な食品選択について栄養士と連携して指導する
・ 水分制限の必要性と摂取量の自己管理方法について具体的に指導する
・ 服薬管理の重要性と各薬剤の作用・副作用について説明する
・ 退院後の自己モニタリング(体重、腹囲、浮腫の観察)の方法を指導する
・ 肝性脳症の初期症状と受診が必要な状態について具体的に説明する
・ リカバリーノートの記載方法と活用法について指導する
・ 断酒会や自助グループなどの社会資源について情報提供する
・ 家族(特に妻)に対して、退院後の生活支援方法と観察ポイントを指導する
看護計画#2
看護問題
#食事摂取不足に関連した栄養状態低下
長期目標
退院までに栄養状態の改善を示す客観的指標(アルブミン値の上昇、体重の安定)が認められ、退院後の栄養管理方法を理解し実践できる
短期目標
1週間以内に食事摂取量が5割以上に増加する
2週間以内に腹水・浮腫が軽減し、腹部膨満感による食欲不振が改善する
入院中に低栄養のリスクとなる要因を理解し、栄養状態改善への意欲を表明できる
退院前に塩分・水分制限と必要栄養素の確保を両立した食事内容を説明できる
≪O-P≫観察計画
・ 毎食の食事摂取量を記録し、1日の総摂取カロリーとタンパク質摂取量を算出する
・ 毎日の体重測定を同一条件(時間・服装)で実施し、変化を評価する
・ 腹囲測定を毎朝同一部位で実施し、腹水貯留の程度を評価する
・ 両下肢の浮腫の程度を部位を特定して毎日評価する
・ 皮膚の乾燥状態や掻痒感の有無を観察し、皮膚統合性の変化を評価する
・ 腹部膨満感の主観的評価を食前・食後に聴取し、食事摂取への影響を評価する
・ 血液検査結果(アルブミン値、総タンパク値、ヘモグロビン値、電解質)の推移を確認する
・ 食事中の疲労度や姿勢保持の状況を観察し、摂取時の体位調整の必要性を評価する
・ 口腔内の状態(乾燥、口内炎、歯の状態)を毎日観察し、食事摂取への影響を評価する
・ 排便の性状・回数・量を記録し、消化吸収状態と便秘の有無を評価する
・ 水分摂取量と尿量のバランスを確認し、1日の水分出納を評価する
・ 倦怠感や活動耐性の程度を観察し、エネルギー消費と栄養状態の関連を評価する
≪T-P≫援助計画
・ 食事摂取時はファーラー位30度を基本とし、腹部圧迫感を軽減する体位を工夫する
・ 食事は小分けにして提供し、一度に多量の食事摂取による腹部膨満感を予防する
・ 食事の時間は十分に確保し、ゆっくりと摂取できる環境を整える
・ 検査や処置は食事時間を避けて計画し、食事に集中できる環境を提供する
・ 食事前の口腔ケアを支援し、口腔内を清潔に保つことで食欲を促進する
・ 本人の嗜好を考慮した範囲内で、塩分制限食の味付けや内容の調整を栄養部と協議する
・ 栄養補助食品の活用を検討し、主食と合わせて提供する
・ 医師の指示に基づき、分岐鎖アミノ酸製剤の内服を確実に実施する
・ 医師の指示に基づき、アルブミン製剤投与後の栄養摂取を積極的に促す
・ 褥瘡予防のため、体圧分散マットレスの使用と2時間ごとの体位変換を実施する
・ 皮膚の乾燥予防と掻痒感軽減のために保湿ケアを1日2回以上実施する
・ リハビリテーションスタッフと連携し、栄養状態に応じた適切な運動プログラムを実施する
≪E-P≫教育・指導計画
・ 低栄養状態が肝臓の回復や浮腫・腹水に与える影響について視覚的資料を用いて説明する
・ アルコールが栄養状態や肝機能に与える影響について具体的に説明し、禁酒の重要性を強調する
・ 塩分制限(6g/日)の具体的な方法について、食品選択や調理法を含めて指導する
・ 水分制限(1000ml/日)の必要性と具体的な管理方法を指導する
・ 高タンパク質食品の選択方法と、肝機能障害時に注意すべき食品について説明する
・ 少量頻回の食事摂取の重要性と、腹部膨満感を軽減するための食事方法を指導する
・ 自宅での体重・腹囲測定の方法と記録の仕方について実践を交えて指導する
・ 栄養状態の悪化を示す徴候(浮腫増強、倦怠感増加、食欲低下)とその対処法を説明する
・ 退院後の外来通院の重要性と、栄養状態に関する検査項目の意味について説明する
・ 妻に対して、退院後の食事管理方法や献立立案の具体的な方法を指導する
事例の目次
【ゴードン】肝硬変 アルコール依存症 (0016)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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