本事例の要約
アルコール性肝硬変による腹水貯留、全身浮腫の増強に加え、血液検査で肝機能の悪化を認めたため緊急入院となった。長年の飲酒習慣があり、これまでも禁酒指導を受けていたが継続できず、今回は黄疸の出現と食欲低下、倦怠感の増強により日常生活に支障をきたすようになったため入院加療となった事例。介入日は1月23日(入院2日目)である。
9.性-生殖
A氏は63歳の男性で、妻と二人暮らしをしている。子どもについての情報は提供されていないため、夫婦のみの家庭構成である可能性が高い。A氏はアルコール性肝硬変(Child-Pugh分類 Grade B)と診断されており、現在は肝性浮腫と腹水の症状が顕著である。性機能に関する直接的な情報は提供されていないが、アルコール性肝硬変の患者においては、性ホルモンバランスの変化による性機能障害が生じている可能性がある。特に男性の肝硬変患者では、テストステロン値の低下、エストロゲン値の上昇が見られることがあり、これらは性欲減退や勃起障害、女性化乳房などの症状に関連する可能性がある。
また、A氏の現在の身体状態として著明な腹水と下肢浮腫があり、これらは身体イメージの変化や性的自己概念に影響を与えていることが考えられる。特に腹部膨満による不快感や外見の変化は、自尊心の低下や性的関心の減少につながる可能性がある。加えて、全身倦怠感や食欲低下などの症状も性的欲求に影響を及ぼしていることが推測される。
63歳という年齢を考慮すると、一般的な加齢に伴う生理的変化として、勃起力の低下や性反応の遅延などが生じている可能性もある。これらの加齢変化に加えて、アルコール性肝硬変による病態生理学的変化が重なることで、性機能障害のリスクが高まっていると考えられる。
また、A氏は建設会社で現場監督として働いていたが体調不良により1年前に退職しており、社会的役割の変化が男性性の認識にも影響を与えている可能性がある。肝硬変の進行による身体機能の制限は、男性としての自己認識やアイデンティティにも関わる問題であることを理解する必要がある。
夫婦関係については、妻がキーパーソンであり毎日面会に訪れるなど、支持的な関係性がうかがえる。しかし、A氏の長期にわたるアルコール問題や現在の疾病状態が、夫婦間の親密性や性的関係にどのような影響を与えているかについての情報は不足している。この点については、プライバシーに配慮しながら適切な時期に情報収集を行う必要がある。
看護介入としては、まず現在の疾患状態と性機能への影響について、A氏が知識を得られるような教育的アプローチが重要である。特に肝硬変と性機能の関連性についての情報提供は、A氏自身の身体変化への理解を深める助けとなる。また、禁酒の継続が性機能の改善にもつながる可能性があることを伝えることは、治療への動機づけとなる可能性がある。
さらに、必要に応じて夫婦間のコミュニケーションを促進する支援も考慮すべきである。疾患や治療に伴う身体的変化が夫婦の親密性にどのように影響しているか、また互いのニーズや懸念について話し合う機会を設けることが有益である。ただし、これらの介入は患者の意向やプライバシーを尊重しながら慎重に進める必要がある。
今後の観察ポイントとしては、A氏の全身状態の改善に伴う自己認識や心理状態の変化、特に自尊心や身体イメージに関する言動に注意を払うことが重要である。また、夫婦関係のダイナミクスや、疾病管理における妻の役割についても継続的に評価していく必要がある。必要に応じて、専門的な性カウンセリングや夫婦療法の紹介も検討すべきである。
なお、情報が不足している性生活や性機能に関する詳細、子どもの有無や家族計画の状況、妻との関係性の質、性的自己概念の変化などについては、信頼関係を構築した上で、適切なタイミングと方法で情報収集を行うことが望ましい。
看護問題の明確化
なし
事例の目次
【ゴードン】肝硬変 アルコール依存症 (0016)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK
コメント